不老長寿の水

■ショートシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:12人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月03日〜07月08日

リプレイ公開日:2004年07月08日

●オープニング

 江戸から少し離れた場所に小さな村があるのだが、そこで不老長寿の水が売られているらしい。
 この時期は若者達が江戸まで出稼ぎに行っている事もあり、村に残っているのは年寄りばかり。
 例え不老長寿の水が胡散臭いものであったとしても、年寄り達は騙された事にすら気づく事はないだろう。
 不老長寿の水は江戸にある温泉水を瓶に詰めただけで、実際に不老長寿の効果があるわけではない。
 しかし、年寄り達はこの水の効能を信じ込み、破格の値段で温泉水を買い続けているようだ。
 都合の悪い事にこの水を飲んで病気が治ったという老人もいるため、まったく効果がないわけでもないようだが、それでも騙されている事にはかわりない。
 この水を売っている商人は限定20本という言葉を売りに、毎日のようにこの水を売りに来ているのだが、それが逆にこの水を貴重なものであると年寄り達に信じ込ませ、その被害は拡大するばかりだ。
 そこでこの水が偽物である事を証明してもらい、悪徳商人を捕まえて欲しい。

●今回の参加者

 ea0031 龍深城 我斬(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0176 クロウ・ブラッキーノ(45歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea0215 六道 伯焔(41歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)
 ea0866 田島 泰二(28歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea1151 御藤 美衣(27歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea1569 大宗院 鳴(24歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea3511 柊 小桃(21歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea3546 風御 凪(31歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea3547 ユーリィ・アウスレーゼ(25歳・♂・バード・エルフ・ロシア王国)
 ea3577 紅月 将(26歳・♂・僧侶・人間・華仙教大国)
 ea4068 常 緑樹(31歳・♂・武道家・エルフ・華仙教大国)
 ea4173 十六夜 桜花(28歳・♀・侍・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

「皆さん、どうしてこちらばかり見ているんでしょうね? ここは混浴ですし何もおかしな事はないはずですが‥‥」
 男性陣の視線を一身に浴び、十六夜桜花(ea4173)が一糸纏わぬ姿で温泉に浸かる。
 この温泉は混浴であるのだが、女性はみんな肌を隠しているため、男達の視線が桜花に集中しているようだ。
「せめて胸だけでも隠したらどうだ? さすがに目立つし、怪しまれる」
 気まずい様子で視線を逸らし、田島泰二(ea0866)が大きな溜息をつく。
 温泉の管理人から詳しい話を聞いたのだが、誰かが温泉の水を汲んでいた事は知らなかったらしく、これといった情報は得られなかった。
「は、恥ずかしいですが、父様の教えは絶対なのです」
 ほんのりと頬を染め、桜花が自分自身を納得させる。
 恥ずかしい事は確かだが、ここで父の教えを破るわけにはいかないようだ。
「オッス、オイラ、ゆーりぃ! 愛と勇気と三味線だけが友達なのだ。悪い奴らはオイラが月に代わってお仕置きしちゃうのだ★」
 男性客に手を振りながら、ユーリィ・アウスレーゼ(ea3547)がザブンと温泉に浸かる。
 ユーリィは温泉に使っているにも関わらず、少し変わった格好をしているため、他の客から怪しい人物として認識されているらしい。
「調査‥‥がんばるっ!」
 拳をぎゅっと握り締め、紅月将(ea3577)が闘志を燃やす。
 少しだけ桜花の裸体が気になるが、いまは調査が優先だ。
「それにしても随分と客がいるなぁ。これじゃ誰が怪しいのか見当すらつかないぜ」
 辺りをキョロキョロと見回しながら、泰二が怪しい人物を探す。
 怪しさだけなら自分の仲間達も負けてはいないのだが、さすがに仲間達を犯人に仕立て上げるわけにはいかない。
「僕が住んでたとこはね、温泉ってなかったのーoo(><)oo」
 感動した様子で温泉を見つめ、将がバシャバシャと泳ぐ。
「負けないのだー!」
 将に続いてバシャバシャ泳ぎ、ユーリィが怖いお兄さんの背中に当たる。
「お兄さん、すごい‥‥‥‥」
 たくましい漢の背中をじーっと見つめ、将がしばらくウットリした。
「なんだ、お前は?」
 険しい表情を浮かべながら、男達がユーリィを睨む。
「わ、悪いな。ふたりとも温泉が珍しくて‥‥」
 男達にむかって頭を下げ、泰二がふたりを捕まえる。
「おにーさん、何してるの? ここのお水って飲んでもそれほど効能なさそーだよ?」
 男達の持っていた小さな樽に気づき、将が不思議そうに覗き込む。
 すると男達は気まずい様子で視線を逸らし、慌てて小さな樽を後ろに隠す。
「さっきまで温泉に、ムキムキマッチョなおにぃさんの集団が入っていたのだー! きっと漢くさい汁がたっくさん含まれていると思うのだ〜〜! 漢汁を、不老長寿の水と偽るなんて駄目なのだ!」
 男達の持っている樽を指差し、ユーリィが腹の底から大声を上げる。
「ば、馬鹿っ! 大声を出すんじゃねぇ! バレたらどうする気だっ!」
 慌てた様子でユーリィの口を塞ぎながら、男達がしぃーっと指を立てた。
「まさか‥‥この人達が‥‥」
 途端に男達を警戒し、桜花がジリジリと間合いを詰める。
「‥‥敵か」
 男達が逃げないように殺気を放ち、泰二がゴクリと唾を飲み込んだ。
「バレちゃ仕方ねぇ! ここにいる奴らもまとめて、ぶっ殺してやるっ!」
 ユーリィを人質にして辺りを睨み、男達が隠し持っていた刀を抜く。
「こんな場所で刀を振り回したら、あっという間に錆びちまうぞ‥‥」
 大きな溜息をつきながら、泰二が拳を握り締める。
 相手の数が多いためこちらに勝ち目はないのだが、このまま他の客まで巻き込むわけにはいかない。
「皆さん随分とストレスがたまっているようですね。もしよろしければ‥‥私と‥‥そのぉ‥‥」
 上目遣いで男達の顔を見つめ、桜花が身体をモジモジさせる。
「‥‥分かっているじゃねえか」
 いやらしい笑みを浮かべ、男達が桜花の事を取り囲む。
「その前に物騒なモノはしまってください‥‥。そんなものがなくても抵抗したりしませんから‥‥」
 恥ずかしさのあまり表情に出そうになりながら、桜花が男達の持っている刀をそっと指差した。
「そりゃ、そうだな。それじゃ、楽しませてもらうとするか」
 納得した様子で刀を置き、男達がいやらしい笑みを浮かべて桜花に迫る。
「えいっo(><)o!」
 背後から男達の股間を蹴り、将が桜花にむかって頷いた。
「てめー、騙したな」
 必死で股間を押さえ、男のひとりが将を睨む。
「もう最低なのだーっ! 悪い奴をぎゃふんと言わせるのだ〜!」
 他の客と一緒に男達の股間を蹴り、ユーリィが不満げにぷんすか怒る。
「それじゃ、詳しい事を聞かせてもらおうか」
 そして泰二はニコリと笑い、男達に股間をグリグリと踏みつけた。

「老人騙して金儲けなんざ、とんでもねー野郎だな‥‥仏罰当たるぞ。当たらなくても当ててやる」
 不老長寿の水を売りに来た商人の話を聞くため、六道伯焔(ea0215)が老人に変装し後ろの方で話を聞く。
 老人達は金の詰まった袋を握り、憑り依かれたように商人の話を聞いている。
「まままあ、抑えて‥‥。こんな所でバレたらシャレにならないよ」
 伯焔の孫として横に座り、大宗院鳴(ea1569)が小声で囁いた。
 商人は手下の男達に辺りを見張らせ、老人達が途中で他の場所に行かないように監視する。
「でもよぉ‥‥あんまりだと思わねえか? 何も知らねえ年寄りを騙すなんてさ」
 不満げに商人の顔を見つめ、伯焔が拳を震わせた。
 その間も何も知らない老人達は、商人の掛け声に合わせて『安い! 安い!』と何度も叫ぶ。
「そこのおふたりさん! 何か気になる事でもあるのかな? 分からない事があったら、いつでも質問していいんだよ」
 伯焔達がコソコソと話していたため、商人が満面の笑みを浮かべて口を開く。
「おじいさまがそのお薬の効能を疑っているようですの‥‥。みんなこのお薬を飲んで健康でいられるのに‥‥」
 悲しげな表情を浮かべ、鳴が商人にむかって話しかける。
 商人は一瞬だけ困った顔をしたが、不老長寿の水を持ち伯焔の傍まで歩いていく。
「本当は駄目なんだが、お前さんには特別だ。この水を飲むといい。それで信用してもらえるかな?」
 不老長寿の水を杯に注ぎ、商人が小さくコクンと頷いた。
「すまないねぇ‥‥。トシのせいか体のあちこちが痛くて‥‥、色々と試してみたんじゃが‥‥、どれも眉唾物でねえ‥‥、疑り深くなっているんじゃよ‥‥。うご‥‥うごが‥‥」
 商人から渡された水を一気に飲み干し、伯焔が少し間をおいてから、大袈裟に悲鳴を上げて倒れこむ。
「どうしてですの。どうしてお爺様が倒れるのですか。温泉の水でも大量に飲まない限り、お医者様は大丈夫だとおっしゃっていたのに‥‥」
 慌てた様子で伯焔の事を抱き起こし、鳴が商人を見つめて悲壮感を漂わす。
「何を言っているんだ。きっと刺激が強すぎたのだろう。この薬はよく効くからな」
 気まずい様子で後ろに下がり、商人が手下にむかって合図を送る。
「そいつら逃げるつもりだよっ! やっぱり薬はインチキなんじゃ!」
 ここぞとばかりに商人達を指差し、柊小桃(ea3511)が老婆の姿で大袈裟に騒ぐ。
「何を馬鹿な事を‥‥。私達は善意で薬を売っているんだぞ」
 ジリジリと後ろに下がり、商人がチィと舌打ちする。
「だったらどうしてこのジイさんが倒れたのじゃっ! それが動かぬ証拠じゃ!」
 商人達を激しく睨み、小桃が老人達の不安を誘う。
「それは‥‥運が悪かっただけだ。いままでそんな事は一度もないっ! ここにいる人達が証人だっ! お前達こそグルなんじゃないのか?」
 逃げる準備を整うまで、商人がなるべく時間を稼ぐ。
 老人達も次第に怪しみ始めているが、どちらも胡散臭いためどちらも信用していない。
「随分と往生際の悪い人デスネ。この水が温泉水である事は、あなた達の手下が保障してくれますョ。なんなら私の持ってきた水と比べてみますか?」
 そう言ってクロウ・ブラッキーノ(ea0176)が温泉で捕まえた商人達の手下を転がし、小さな樽に入った温泉水を放り投げた。
「クッ‥‥、そこまで知られていたのかっ!」
 気まずい様子で樽を握り、商人がサクラ役の老人に合図を送る。
「みんな騙されちゃイカン! コイツらはグルじゃ! わしらを騙して不老長寿の水を独占するつもりじゃ!」
 大声を上げながら、サクラ役の老人がクロウを睨む。
「残念ですが、こんなものはいりません。まったく興味もありませんし‥‥。欲しいのでしたら、皆さんにお配りしますョ」
 荷台に積んであった小さな樽を手に取り、クロウが老人達にむかって放り投げる。
 すると老人達は我先にとばかりに手を伸ばし、あっという間にクロウを囲む。
「本当に貰っていいんじゃな?」
 両手から溢れるほどの樽を抱え、老人が瞳を輝かす。
「もちろんですョ。そんなものより私が本当の奇跡の水を格安で売って差し上げます。これは俺様崇拝教の奇跡の教祖であるクロウ・ブラッキーノが朝一番に作った(!)魔法の水‥‥。これで男性はビンビン間違いナシです。‥‥ウフッ」
 凶悪な笑みを浮かべながら、クロウが黄金に輝く液体の入った樽を見せる。
「‥‥本当にそんなものが効くのか?」
 胡散臭そうに樽を見つめ、老人がボソリと呟いた。
「嘘だと思うならお飲みになって御覧なさい。ホラ、燃えてきたでショウ?」
 試飲にやってきた老人に樽を手渡し、クロウが爽やかな笑みを浮かべて液体を勧める。
「んじゃ、試しに‥‥。んぐ‥‥んぐぐ‥‥」
 一瞬吐き出し移送になりながら、老人が険しい表情を浮かべてクロウを睨む。
「ほ〜ら、効いてきたでしょう?」
 言葉巧みに老人を騙し、クロウが邪悪な笑みを浮かべて返事を待つ。
「味は悪いが‥‥確かに効果はありそうだな‥‥うぷ‥‥」
 今にも倒れそうな表情を浮かべ、老人が謎の液体を絶賛する。
「おい、あれって‥‥」
 液体の正体が何だか分かり、伯焔がしばらく言葉を失った。
「さすがに詐欺行為を見逃すわけには行かないよね。今度はあたし達が捕まっちゃう‥‥」
 クロウから液体の入った樽を奪い、小桃が大きな溜息をつく。
 その隙に商人達は逃亡を図り、慌てて馬に飛び乗った。
「小桃は怒ってるんだよ!! 大人しくしないと酷い目に遭わすからね!!」
 すぐさま変装を解き、小桃が口笛を吹いて馬を呼ぶ。
「しゃあねえな。‥‥少し下がっていろ!」
 老人達に被害が及ばないようにするため、伯焔が変装を解くと老人達を避難させる。
「‥‥逃がしませんわ」
 そして鳴は勢いよく馬に飛び乗り、商人達の足止めをするため、ライトニングサンダーボルトを放つのだった。

「今回の仕事‥‥商人も商人だけど、騙される老人達もしっかりして欲しいよね。お陰であたい達に仕事が来るんだから、ここで文句も言うもんじゃないかも知んないけど‥‥、あんまり手間かけさせないで欲しいわ〜」
 街道の途中で商人達が来るのを待ちながら、御藤美衣(ea1151)が疲れた様子で溜息をつく。
 クロウ達が村に行ってからしばらく時間が経っているが、未だに商人達が現れる気配はないようだ。
 本当なら馬の手綱に細工する予定だったのだが、手下の者達が見張っていたため、ここで待ち伏せして退路を断つらしい。
「まんざら嘘とも限りませんよ。俺は江戸で医者の真似事をして生計を立てているのだが、あるとき、診察先の老婆から不老長寿の水の噂を聞かされた‥‥。その老婆の話を聞く限り、不老長寿の水が紛い物とは思えませんし‥‥」
 老婆の顔を思い出し、風御凪(ea3546)が拳を握る。
 例え不老長寿の水が偽りだったとしても、老人達の笑顔は本物なのだから、真実を知った時の落ち込みようを考えると、胸がズキンと痛んでしまう。
「何時の世も年寄りの食い物にする外道はいるものだな‥‥。無論きっちりと灸を据えてやらんとな」
 凪の肩にポンを叩き、龍深城我斬(ea0031)が何かに気づく。
「‥‥敵は全部で5人。先頭にいるのが親玉です」
 ブレスセンサーを使って敵の数を特定し、凪が愛馬に乗って物陰で待機する。
「みんな‥‥用意はいい?」
 日本刀に手を掛け、美衣が辺りを警戒した。
 しかし商人達は逃げるのに必死で、美衣達には全く気づいていない。
「頼むぞ、我導丸」
 日本刀を構えて商人達と対峙し、我斬が迷う事なく突っ込んだ。
「なんだ、テメェらはっ!」
 慌てて手綱を引きながら、商人が興奮した馬をなだめる。
 それでは我斬は立ち止まる事なく、商人達にむかって手裏剣を飛ばす。
「うわあっ!」
 手裏剣は全く見当違いな方向に飛んだが、商人達が驚き馬から勢いよく転げ落ちる。
「降参した方がいいんじゃない?ま、降参しなきゃ殺しちゃうだけだけど〜」
 日本刀をチラつかせ、美衣が商人達に警告した。
「わ、分かった。だから勘弁してくれっ!」
 怯えた様子で両手を合わせ、商人達がボロボロと涙を流す。
「老人達から奪ったお金を返してもらえますか」
 商人の腰袋を奪い取り、凪がロープを使って彼らを縛る。
「‥‥これしか残ってないのか。本当なら老人から奪った金をすべて取り返したかったが‥‥。あとは牢獄の中で償ってもらうしかないようだな‥‥」
 そして我斬は奪われた金を老人達に返すため、馬に乗って老人達の待つ村へとむかうのだった。
 その後、悪徳商人達は役所に突き出され、自らの罪を償う事となる。