●リプレイ本文
●悲しきさだめ
「仲間と別行動を取ったのが運の尽きだ。‥‥悪いがここで死んでもらう」
挑発役の山鬼戦士が餌を取りに行った瞬間を狙い、山崎剱紅狼(ea0585)が褌一丁になって逃げ道を塞ぐ。
山鬼戦士は一瞬だけ驚いたようだが、すぐにケラケラと笑い出して舌を出す。
「この野郎‥‥、さっそく俺達を馬鹿にしてきやがったな」
さすがにカチンと来たため、剱紅狼が霞刀を素早く抜くと山鬼戦士を睨みつける。
「京都での初依頼、頑張らせて頂きますね」
ほんわかとした表情を浮かべ、大宗院鳴(ea1569)が山鬼戦士に頭を下げた。
山鬼戦士は驚いた様子で鳴を見つめ、物凄く対応に困っている。
「‥‥どうやらあんたの行動が山鬼戦士にとって意外だったらしい‥‥」
苦笑いを浮かべながら、山鬼戦士の背後から攻撃を仕掛けた。
それと同時に山鬼戦士がクルリと飛び跳ね、剱紅狼をからかうようにしてプリンと尻を出す。
「この桃尻がっ!」
今にも感情が爆発しそうな雰囲気を漂わせ、剱紅狼がこめかみを激しくピクつかせる。
「可愛らしいお尻ですね♪」
そんな剱紅狼とは異なり、鳴が山鬼戦士を嬉しそうに拍手した。
「ウグゥ‥‥」
再び鳴の言葉に動揺し、山鬼戦士が尻を隠す。
あまり人に褒められた事がないのか、顔を真っ赤に染めている。
「‥‥何だかコイツが一番マトモに見えてきたな」
呆れた様子で頬を掻き、剱紅狼が霞刀を握りなおす。
山鬼戦士はブンブンと首を横に振り、大きく深呼吸してからふたりを睨む
「あら、睨めっこ勝負ですか? わたくしも結構、自信がありますわよ。‥‥意外と難しいんですね」
山鬼戦士と同じような顔を作ろうとして失敗し、鳴が可愛らしくてへっと舌を出す。
「かなり動揺しているな。これなら俺達にも勝ち目があるっ!」
それと同時に剱紅狼がフェイントアタックを放ち、ダブルアタックを使って揺さぶりをかける。
「グガゴ‥‥」
フラつきながらも奇声を上げ、山鬼戦士が鳴を狙って一直線に走り出す。
「あら、ごめんなさい」
申し訳なさそうな表情を浮かべ、鳴がライトニングアーマーを発動させる。
「ぐぎゃぎゃ」
予想外の一撃を喰らい、山鬼戦士が身体をビクビクと痙攣させた。
「もらったぁ!」
次の瞬間、剱紅狼が霞刀を振り下ろし、山鬼戦士を斬りつける。
「ががががぁ!」
頭を割られた事でパニックに陥り、山鬼戦士が辺りに大量の血を撒き散らす。
それでも剱紅狼は続けざまに斬撃を放ち、山鬼戦士にトドメをさした。
「なんだか可哀想な事をしましたね」
山鬼戦士の死体を見つめ、鳴が寂しそうに両手を合わす。
「‥‥仕方ないさ。人を襲った時点でコイツの運命は決まっていたのだから‥‥」
一緒に祈る気もなれず、剱紅狼が刀についた血を払う。
どこか寂しげな表情を浮かべながら‥‥。
●三本目の金棒
「うわぁ‥‥京美人と戯れに来たのに変態相手かよ‥‥。腐ったのは大量にいるし、どうなってんのかねぇ」
挑発役の山鬼戦士が倒され、攻撃役の山鬼戦士が様子を見に来たため、夜神十夜(ea2160)が不満げに愚痴をこぼしながら狭い道を選んで進む。
「何だか物凄い事になってないか。‥‥3本目が」
今にも泣き出しそうな表情を浮かべ、秋月雨雀(ea2517)が次第にスピードを上げていく。
それでも山鬼戦士は荒く息を吐きながら、地響きを立てて十夜達の尻を追う。
「き、気にするな! そんな事より落ち着けよ」
やけにクールな表情を浮かべ、十夜が雨雀の肩をガッシリと掴む。
「まさか‥‥、俺を盾にするとか言わないよな、とーや?」
嫌な予感が脳裏を過ぎり、雨雀がダラリと汗を流す。
「ああ、そのまさかだ。行け、人間盾!」
山鬼戦士のナニがアレしそうになったため、十夜が天使のような笑みを浮かべて雨雀を後ろにむかって突き飛ばす。
「裏切ったな、とーや〜!」
恨みの言葉を吐き捨てながら、雨雀が大きくバランスを崩して山鬼戦士に激突する。
「ウホッ!」
山鬼戦士は雨雀の身体を抱きとめ、ニンマリと笑って嬉しそうに撫で回す。
「お前の犠牲は無駄にはしない。迷わず成仏してくれよ!」
真っ白な歯をキラリと光らせ、十夜が元気よく手を振った。
「じょ、冗談だろ? うわぁ! お前もそんな目で俺を見るな!」
まるで乙女のような表情を浮かべる山鬼戦士に恐怖を感じ、雨雀が必死になって抵抗し何とか逃げ出そうと試みる。
「まぁ、そんなに慌てるな。お前のおかげで金棒を奪う事も出来たし‥‥なっと‥‥」
金棒を引きずるようして運び、十夜が山鬼戦士の股間めがけて長槍を放つ。
十夜の投げた長槍は見事に山鬼戦士の股間を傷つけ、ケモノにも似た雄叫びがしばらく辺りに響き渡る。
「あまり驚かせないでくれないか。俺はてっきり‥‥って、なぜそこで視線をそらすんだ」
一瞬だけ笑顔を浮かべ、雨雀が胡散臭そうに十夜を睨む。
「ははっ、小さい事は気にするな。そんな事よりヤツが来るぞ」
内心危なかったと思いつつ、十夜が山鬼戦士と間合いを取る。
山鬼戦士は自分の男が横取りされたと思ったため、長槍を地面に叩きつけて雄叫びを上げる。
「かなりお怒りのご様子だな。‥‥どうする、とーや?」
すぐさま十夜の背後に隠れ、雨雀がクスリと笑って返事を待つ。
「まさか‥‥、押したりしないよな?」
先程の光景を思い出し、十夜がダラダラと汗を流す。
「それは、とーや次第だな。‥‥今の内に覚悟を決めておけ」
雄叫びと共に突進してきた山鬼戦士を睨みつけ、雨雀が素早く横に走ってバキュームフィールドを発動させた。
それでも山鬼戦士は血飛沫を上げ、力任せに十夜の腹を殴りつける。
「ぐはっ‥‥、効いた‥‥」
山鬼戦士の一撃によって宙を舞い、十夜が長屋の屋根に落下した。
「いくら変態と言えども、山鬼戦士には変わりない。ここはいったん退くしかないな」
多少のダメージは与える事が出来たものの、ふたりで倒すには荷が重過ぎるため雨雀が十夜に撤退を提案する。
「こんなイロモノ相手に手ぶらで帰れるか! せめてあの物騒なモンだけでも、ぶった切ってやらぁ!」
悔しそうな表情を浮かべ、十夜が屋根から飛び降り山鬼戦士に斬撃を放つ。
山鬼戦士はすぐさま棍棒のようにぶっとい腕で反撃し、物騒なものを荒々しく揺らして叫ぶ。
「長槍の一撃を喰らっても、大丈夫なモノって‥‥、かなりマズくないか」
だんだん笑えなくなってきたため、雨雀がライトニングアーマーをかけて十手を抜く。
「ぐおおおおおおっ!」
興奮気味に雨雀の顔を見つめ、山鬼戦士が雄たけびを上げて飛び上がる。
「デ、デカくなってる!?」
小動物にも似たような表情を浮かべ、雨雀が青ざめた表情を浮かべて汗を流す。
山鬼戦士は連続的に攻撃を放ち、雨雀の持っていた十手を弾く。
「うおりゃ! 逃げろ、雨雀!」
雨雀を助け出すため背後から長槍を突き刺し、十夜が力任せに山鬼戦士のブツを踏む。
「ああっ‥‥、夢に出てきそうな感じだよ。まさか‥‥夜中に復讐したりしないよな?」
そして雨雀は汗を拭い、十夜と一緒に逃げ出した。
何か嫌な予感に襲われながら‥‥。
●艶鬼
「先に言っておくが! 僕を指差して『役立たず』とか言わないように!」
防御役の山鬼戦士がのんびりと酒を飲んでいるため、八幡伊佐治(ea2614)が予め言っておく。
かなり気にしているのか、伊佐治が妙に厳しい表情を浮かべている。
「こうやって山鬼戦士の退治に協力してくれたんですから、感謝する事はあっても役立たずだとは思いません。‥‥。他の方達はみんな山鬼戦士を(色々な意味で)恐れて依頼に参加してくれませんでしたから‥‥」
酒場での出来事を思い出し、シャクティ・シッダールタ(ea5989)が伊佐治に対して感謝した。
山鬼戦士相手にふたりで勝てる見込みはないのだが、一緒に戦ってくれるだけでも心強い事である。
「そ、そうか‥‥。なら、いいんだが‥‥。少し考えすぎなのかも知れんな」
苦笑いを浮かべながら、伊佐治がホッとした様子で溜息をつく。
その笑い声に気づき、防御役の山鬼戦士がムックリと立ち上がる。
「あっ‥‥」
自分が大きなミスをした事に気づき、伊佐治が青ざめた表情を浮かべて汗を流す。
「ぼ、僕は役立たずなんかじゃないぞ!」
シャクティと顔を見合わせ、伊佐治がキッパリと断言する。
「わ、分かっています」
伊佐治の顔をマジマジと見つめ、シャクティが何か言いたそうな表情を浮かべて頷いた。
その間に山鬼戦士が金棒を振り上げ、伊佐治の背後に迫っていく。
「あ、危ないっ! け、怪我はありませんか?」
すぐさまシャクティが伊佐治に飛びつき、体勢を立て直すと山鬼戦士を睨みつける。
「あ、ああ‥‥、何とか。‥‥生きてはいるようだ」
ザックリと割れたイチヂクを思い浮かべ、伊佐治が冷や汗を流してグットラックを発動させた。
「しかし‥‥、困りましたね。ふたりとも僧侶では圧倒的にこちらが不利な立場です。一応、わたくしが前に出ますが、何かあった場合は宜しくお願いします」
自ら囮となって山鬼戦士を誘き寄せ、シャクティが容赦なく金棒を振り下ろす。
「グッ‥‥、グォン」
次の瞬間、山鬼戦士は恍惚とした表情を浮かべ、シャクティにおねだりするような表情を浮かべる。
「も、悶えないで下さいましっ!? ‥‥何だか、あの男色絵師・清十郎様の作品を思い出しますわねェ」
一気に戦意が殺がれてしまい、シャクティが大粒の汗を流す。
山鬼戦士の求めるような視線が恐くて、続けざまに攻撃を放つ事が出来ないようだ。
「そうじゃないだろ、シャクティ殿。こう言う場合はこうやるんだっ!」
山鬼戦士を完全に無視し、伊佐治がシャクティに正しい苛め方を伝授した。
「えっと‥‥こんな感じですかね。 な、なんでしょうか、その顔は。私の金棒、そんなにお好きですか‥‥? このド変態が!! こ、こんな臭くて! 醜くて! 歪んだ(ピー)の塊‥‥、生きてる価値も無い惨めなカスの畜生! 死ぬといいのに! ああっ‥‥、無理です。‥‥出来ません」
途中で辛くなったのか、シャクティが嫌々と首を振る。
山鬼戦士はシャクティの言葉を聞いて、天にも昇るような表情を浮かべて声を漏らす。
「ぼ、僕も気分が悪く‥‥って、コイツ元気になってる!? こんなに血まみれなのにっ!」
至福の表情を浮かべる山鬼戦士に驚き、伊佐治が慌ててシャクティの身体にしがみつく。
「この様子では攻撃するだけ無駄かも知れませんね。山鬼戦士のMフィールド(何)を超える力を持った戦士でなければ‥‥」
そしてシャクティは少しずつ山鬼戦士から遠ざかり、そのままダッシュで逃げ出した。
‥‥いわゆる放置プレイというヤツだ。