玄武&青龍親睦会

■ショートシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 46 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:03月25日〜03月28日

リプレイ公開日:2005年03月29日

●オープニング

「く、悔しい〜! なんであたしが玄武なんかに負けなくちゃいけないのよっ!」
 納得の行かない様子で愚痴をこぼし、朱雀が不機嫌な表情を浮かべて玄武を睨む。
 京都行きの冒険者達を雇って膏薬の輸送を頼んでいたのだが、途中で河童忍者達の妨害に遭ったため朱雀と白虎の膏薬は京都で売る事が出来なくなったらしい。
「まあまあ、落ち着いて。これも勝負のうちだから‥‥。ここで愚痴を言っても仕方がないわ。 私達の膏薬は数が多かったのにも関わらず、京都まで運びきれなかったんだから‥‥」
 いまにも玄武を殴りそうな朱雀を引き止め、白虎が苦笑いを浮かべて溜息をつく。
 最近、朱雀は悪い事が続いている事もあり、ちょっとした事でも怒りやすくなっている。
「どうしてそんなにのほほんとしてられるの! コイツは落ちこぼれの河童モドキなのよ! まったく信じられないわ」
 玄武の顔を何度も指差し、朱雀が不満げに文句を言う。
「つーか、お前も人間だろうがっ!」
 朱雀の胸をムンズと掴み、玄武がジト目で彼女を睨む。
「こ、この変態がっ!」
 予想外の出来事に驚き、朱雀が玄武の股間を蹴る。
「イテェな! だいたい何で俺ばっかり責められなきゃなんねえんだよ! 青龍だって京都で膏薬を売るんだぜ!」
 涙目になって股間を押さえ、玄武が納得の行かない様子でゴルゴを指す。
「俺を呼ぶ時は‥‥ゴルゴと呼べ!」
 すぐさま玄武の喉元に刀を押し当て、ゴルゴが瞳をギラリと輝かせる。
「そういう問題じゃないと思うけど‥‥」
 苦笑いを浮かべながら、白虎が大粒の汗を流す。
 何処からツッコんでいいのか分からないため、ほとんど放置状態である。
「とにかくアンタは別格なの! このエロ河童っ!」
 玄武の頭をポカンと殴り、朱雀がベェッと舌を出す。
「さっきモドキって言ったろうがっ!」
 頭の皿がズレたため、玄武が彼女の胸倉を掴む。
「いい度胸じゃない! やってやるわ!」
 朱雀もブチ切れているためか、玄武に対して容赦がない。
「まったく騒がしい奴らだな。のんびり酒も飲む事が出来ん」
 一人寂しく酒を飲み、ゴルゴが気まずく視線を逸らす。
 もともと賑やかな場所は苦手なため、早く何処かに行きたいらしい。
「せっかく親睦会をやるのにね」
 麒麟衆から届いた書状を見つめ、白虎がニコリと微笑んだ。
「‥‥くだらんな。五輪祭にする事じゃないだろ」
 呆れた様子で溜息をつきながら、ゴルゴが一気に酒を飲み干した。
「噂じゃ、麒麟衆の審判が度重なるミスを犯したから、お詫びの意味も込めてやるそうよ。たまにはいいんじゃない? ‥‥相手の手の内も探れるしね」
 含みのある笑みを浮かべ、白虎がゴルゴの杯に酒を注ぐ。
 まるでゴルゴの心を探るかのように‥‥。
「‥‥恐ろしい女だな」
 警戒した様子で白虎を睨み、ゴルゴが酒をクイッと飲む。
「それはお互い様じゃない」
 そして白虎はクスリと笑い、扇子で顔を隠すのであった。

●今回の参加者

 ea0031 龍深城 我斬(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0282 ルーラス・エルミナス(31歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea1050 岩倉 実篤(37歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea2657 阿武隈 森(46歳・♂・僧兵・ジャイアント・ジャパン)
 ea3809 山浦 とき和(33歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea5999 不動 金剛斎(34歳・♂・志士・ジャイアント・ジャパン)
 ea9885 レイナス・フォルスティン(34歳・♂・侍・人間・エジプト)

●リプレイ本文

●玄武衆
「‥‥こっちから玄ちゃんの匂いがする。うん‥‥、間違いない!」
 鼻をヒクヒクとさせながら、山浦とき和(ea3809)がフラフラと混浴温泉の脱衣所にむかう。
 脱衣所には玄武の服が散らばっており、棚には彼の甲羅が立て掛けてある。
「‥‥この甲羅は間違いなく玄ちゃんの物♪ やっぱりお風呂に入る時には外しておくんだねぇ〜」
 辺りに散らばった服を畳み、とき和がクスリと笑って服を脱ぐ。
 温泉には玄武がひとり寂しく浸かっており、月を眺めて暢気に鼻歌を歌っている。
「‥‥据え膳食わぬは女の恥って言う言葉はこんな事を言うんだよねぇ? 今から参りますわ、あ・な・た♪ げ〜んちゃん、来ちゃった♪」
 念のため襦袢を羽織っておき、とき和が恥かしそうに顔を出す。
「お、お前っ! なんでこんな所に来てるんだよっ! ここは女子禁制だぞ!?」
 玄武は驚いた様子で目を丸くさせ、慌てた様子で手拭いを掴む。
「別に恥ずかしがる事なんてないじゃない♪ 知らない仲じゃないんだからさぁ〜」
 満面の笑みを浮かべながら、とき和が玄武に近づいた。
「ま、待て。まだ心の準備が‥‥」
 壁に背中をつけるようにしながら、玄武が必死になって逃げ道を探す。
「一体、どこにいくつもりなんだい? せっかくふたりっきりになれたんだから、ここで私に恥をかくような真似はさせないでおくれよ〜」
 潤んだ瞳で玄武を見つめ、とき和が手拭いで涙を拭く。
「わ、分かったから泣くな! 女の涙は好きじゃねぇ‥‥」
 気まずい様子で頬を掻き、玄武がとき和を抱き寄せた。
「あらっ☆ こんなところで愛の告白かい?」
 含みのある笑みを浮かべ、とき和がニコリと微笑んだ。
「ば、馬鹿! そんなんじゃねぇやい!」
 顔を真っ赤に染めながら、玄武がそっぽを向いて酒を飲む。
 よほど恥かしかったのか、大袈裟にコホンと咳をする。
「ふふっ‥‥、そういや聞いたよ〜。京都の仕事も上手くいったんだろ。手酌酒なんて味気ない事はしないで、私に任せておきなよ〜。今日は月も綺麗だし♪」
 玄武に寄り添い晩酌し、とき和がニコリと微笑んだ。
「たくっ‥‥、今日だけだぞ」
 少し嬉しそうな表情を浮かべ、玄武がとき和の注いだ酒を飲む。
 ふたりで月を眺めながら‥‥。

●青龍衆
「‥‥見かけぬ顔だな。新入りか」
 レイナス・フォルスティン(ea9885)の気配に気づき、ゴルゴが脱衣所を睨んで酒を飲む。
「さすが噂通りの事はある。五輪祭に参加した事はないが、仲間に入れてくれないか?」
 苦笑いを浮かべながら、レイナスがどぶろくを手土産にして温泉に浸かる。
 男湯は麒麟衆の計らいで貸切になっているため、五輪祭の関係者以外は誰もいない。
「優秀なヤツなら差別はしない。‥‥飲むか?」
 レイナスからどぶろくを受け取り、ゴルゴが自分の飲んでいた酒を渡す。
「これが世に言う『杯を交わす』というヤツか? それじゃ、遠慮なく戴くとするかな」
 渡された酒を一気に飲み干し、レイナスがニヤリと笑う。
 ゴルゴの酒は彼の性格を現すかのように刃物のように鋭い味だ。
「死ぬほど美味い酒だからな。飲みすぎに注意しろ」
 冗談交じりに微笑みながら、ゴルゴが再び何者かの気配に気づく。
「よっ、久しぶりだな! それとも俺の顔を忘れたか?」
 手土産に酒とツマミを持って行き、龍深城我斬(ea0031)が正面から堂々と男湯の中に入ってくる。
「‥‥忘れるわけがないだろ。たまには五輪祭にも顔を出せ」
 鋭い視線を我斬に送り、ゴルゴがゆっくりと口を開く。
 ゴルゴは不意打ちを警戒しているのか、一瞬たりとも我斬から視線を離さない。
「まあ、そう邪険にするな。別に騒ぎに来たわけじゃないんだから‥‥。それよりも聞いたぜ。京都で商売するんだってな。まあ河童の軟膏と言えば万能薬として有名だろうし、売れるだろうな」
 味噌とキュウリをゴルゴに手渡し、我斬が温泉に浸かって酒を注ぐ。
 横の混浴がやけに騒がしくなっている事もあり、ゴルゴが不機嫌そうな表情を浮かべて溜息をつく。
「‥‥これからが本番だ。‥‥やらなきゃならない事がいくつもある。‥‥ところでお前は飲まないのか?」
 杯に並々と注がれた酒を見つめ、ゴルゴがボソリと呟いた。
「ああ、酒は全部呑んじまってくれないか。暫くは呑まない事にしたんだ。そっちは変わりないか?」
 キュウリに味噌をつけてポリッとかじり、我斬が夜空を見つめてクスリと笑う。
 ゴルゴの警戒が解けたのか、張り詰めた空気が和らいだ。
「‥‥本音を言えば厳しいな。他の忍軍が徐々に力をつけている‥‥」
 酒をチビチビと飲みながら、ゴルゴがクールにキュウリを齧る。
 一瞬、キュウリが葉巻に見え、ゴルゴがやけにダンディだ。
「俺はアレから那須に出ずっぱりで鬼退治さ。ようやく一段落ついたと思ったら、今度は更に厄介な物が出てきちまってね。‥‥見事なまでにしてやられたよ。あのままじゃ、俺も終われないんでね。最後まで関わるつもりさ」
 ゴルゴがキュウリを気に入ってくれた事もあり、我斬はホッとした様子で酒を注ぐ。
「暇になったら帰って来い。お前の席は空けておく」
 そう言ってゴルゴが立ち上がる。
 傷だらけの身体を恥じる事なく‥‥。

●親睦会
「はぁ‥‥」
 度重なる失敗により禁断にお仕置を受け、ルーラス・エルミナス(ea0282)が身も心も真っ白になった状態で腹の底から溜息をつく。
「なぁに、暗い顔してるんだよっ! まぁ、確かにあんな事をされたらヘコむかも知れないが、誰だって一度は通るかも知れない道だぜ! そんなに落ち込むなって!」
 ルーラスの背中をポンポンと叩き、玄武が並々と酒を注いでいく。
「確かにそうかも知れませんね。まさか玄武さんにあんな趣味があるとは‥‥」
 玄武の酒を一気に飲み干し、ルーラスが遠くを見つめてにへらと笑う。
 勧めた酒がアルコールのキツイ酒だった事もあり、一瞬にして酔いが回ってしまったらしい。
「ば、馬鹿! そんなんじゃねぇよ! 勘違いされたら、どうするんだよ!」
 慌てた様子でルーラスの口を塞ぎ、玄武が警戒した様子で辺りを睨む。
 会場にいる仲間達は胡散臭そうな視線を玄武達に送っているが、ルーラスは全く気にせず玄武の酒を奪って飲む。
「‥‥ある意味、弱みにもなりますものね」
 玄武の飲ませた酒で悪酔いしたのか、ルーラスが玄武の肩を抱き寄せニヤリと笑う。
「お、おい! 大丈夫か? ちょっとアルコールが強すぎたかな」
 ルーラスに飲ませた酒を睨みつけ、玄武が心配した様子で汗を流す。
 色々なモノがチャンポンしてあるため悪酔いするとは聞いていたが、まさかここまで酷いとは思っていなかったため玄武が小動物のような表情を浮かべている。
「‥‥相変らずヘッポコだな。やはり河童膏が売れたのは偶然か」
 玄武とは全く視線を合わさず、ゴルゴが呆れた様子で溜息をつく。
「悪いがアレは実力だっ! オレの雇った冒険者が優秀なヤツばかりだったからな。白虎や朱雀にゃ、負けねぇよ!」
 不機嫌そうな表情を浮かべ、玄武がゴルゴの胸倉を掴む。
 それと同時にゴルゴの短刀が首に当たり、玄武が青ざめた表情を浮かべて汗を流す。
「‥‥相変らず隙がねぇな。別にここで殺り合うつもりはねぇ。それじゃ、昔に逆戻りだろ」
 ゴルゴの恐ろしさを改めて確認し、玄武がクスリと笑ってその場に座る。
「‥‥あの頃のお前は狼だったな。戦いに飢えたケモノ


「‥‥俺はあの頃のお前が好きだ。まるで狼のようにギラギラとした

ギラギラとした瞳で、まるで狼のようなヤツだった。いまじゃ、単なるワンコロだが‥‥」
 玄武の杯に酒を注ぎ、ゴルゴが昔を懐かしむ。
 ‥‥無数に転がる死体の山。
 その中で玄武はひとり泣いていた。
「これ以上、何も失いたくないだけだ。ヤツを倒せたのも、俺が強かったからじゃない。‥‥やめようぜ。あの頃の事は‥‥」
 どこか寂しげな表情を浮かべ、玄武がゴルゴに背をむける。
「‥‥そうだったな。あの時、牙は折られたか」
 玄武から気まずく視線を逸らし、ゴルゴが寂しく酒を飲む。
「取り込み中にすまないが、膏薬を運んだ連中は京都に居るんだろう? 連中の慰労はしなくてもいいのか? まあ、俺はただ酒が飲めればそれでいいけどな」
 だんだん空気が重くなってきたため、岩倉実篤(ea1050)がまわりの事を考え話題を変える。
「あっ‥‥」
 杯をポトリと落とし、玄武がダラリと汗を流す。
「‥‥忘れていたのか」
 呆れた様子で玄武を見つめ、実篤がゴルゴと一緒に溜息をつく。
「い、いや‥‥、京都に行くついでだと思ったからさ。報酬だってあの手の依頼じゃ破格だぜ!」
 何も考えていなかった事もあり、玄武が必死になって言い訳する。
「‥‥だからお前はヘッポコなんだ。一応、こっちは飛鳥京の騒動が落ち着いたら、何とかしようと思っている」
 当然とばかりの表情を浮かべ、ゴルゴが素早く答えを返す。
 飛鳥京は不死の魔物が現れ混乱しているため、ゴルゴも時期を見計らっていたらしい。
「‥‥飛鳥京か。詳しい話は知らんが大変らしいな。そんな早くカタがつくものなのか?」
 ゴルゴの杯に酒を注ぎ、実篤もゴクリと酒を飲む。
「多分、無理だろうな。‥‥少し予定を早めるか」
 宴会場から見える月を眺め、ゴルゴがボソリと呟いた。
「まぁ、難しい話は抜きだ! せっかくの料理が冷めたらどうする」
 目の前の料理に舌鼓を打ちながら、不動金剛斎(ea5999)が気分よく酒を飲む。
 親睦会で用意された料理はどれも値の張るもので、普段ならお目にかかれないモノばかりだ。
「いつもこんな依頼ばかりだったら言う事無ぇのにな」
 料理の美味さに驚きながら、阿武隈森(ea2657)が幸せそうな表情を浮かべる。
 お品書きの端から端まで注文している事もあってか、料理をいくら食べても減っている感じがしない。
「せっかくだから一緒に一杯どうですか?」
 酔いがだいぶ醒めてきたのか、ルーラスが森の杯に酒を注ぐ。
「おっ、すまねぇな。今日は敵味方抜きで楽しもうぜ! 祝いの席で喧嘩なんかしたくねぇし‥‥」
 色々な酒の味を楽しみながら、森がルーラスの肩を抱き寄せニヤリと笑う。
「それにしても奮発したな。浪人の俺では年に一度拝めるかどうかって程の料理だぞ。ホントに喰っても良いのか? 後で代金請求されたりしないよな?」
 心配そうに料理を見つめ、実篤がボソリと呟いた。
 軽く見積もっただけでも、眩暈がしそうな金額である。
「‥‥心配するな。審判の犯したミスは重い」
 とろけるように美味い刺身を箸で取り、ゴルゴが罰を受けた審判の顔を思い出す。
 あの様子では暫くタダ働きをする事になると思うが、それだけ多くのミスを犯してきたのも事実である。
「しかし、本当に美味い物ばかりだな。メシ抜きでここに来た甲斐があった!」
 夢のような気分に浸り、金剛斎が勧められた酒を飲む。
 なるべく酒は程々にはしているが、あまりの美味さに手が止まらない。
「そりゃそうだろ。どれも一級品ばかりだからな。後悔しないように喰っとけよ」
 赤貧のためキュウリしか食べていなかったため、玄武が飢えた獣のようにガツガツと喰らう。
 よほど腹が減っていたのか、他人の分まで食べている。
「それじゃ、遠慮なくやりますか」
 青龍衆の参加者達に酒を注ぎ、ルーラスがニコリと笑う。
 何者かの視線を身体に感じ‥‥。
「‥‥いいか。世の中にはな、美味いものを食いたくても、食えねえ奴がいるって事を忘れるな」
 しみじみとした表情を浮かべ、森が白虎と朱雀の親睦会場に目をやった。
 哀れむような視線を送り‥‥。