珍獣ツチノコ

■ショートシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:12人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月05日〜07月10日

リプレイ公開日:2004年07月09日

●オープニング

 江戸から少し離れた場所に大きな湖がある。
 数日前、ここで野槌が目撃されたらしい。
 野槌は別名『ツチノコ』と呼ばれる珍獣で、見かけによらず敏捷だ。
 この生物を捕まえるため、とある商人が懸賞金を掛けたのだが、それが原因で湖には賞金稼ぎが集まっている。
 賞金稼ぎの連中はツチノコに関する情報を集めているのだが、第一発見者の証言が毎回食い違っているため、未だにツチノコを発見する事が出来ないようだ。
 その事が原因かも知れないが、第一発見者が昨日から行方不明になっている。
 ひょっとすると何処かに閉じ込められて、尋問されているかも知れない。
 彼を助け出す事が出来れば、何か詳しい話しが聞けるだろう。
 いまや湖のまわりは大量のトラップで溢れ、水を飲みにやって来た野生動物達にまで悪影響を与えている。
 このままでは無関係な動物ばかりが傷つき、自然も破壊されるばかりだろう。
 そこでツチノコ騒ぎを沈静化するため、出来るだけ情報を集めて欲しい。

●今回の参加者

 ea0012 白河 千里(37歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea0023 風月 皇鬼(31歳・♂・武道家・ジャイアント・華仙教大国)
 ea0028 巽 弥生(26歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea0443 瀬戸 喪(26歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0789 朝宮 連十郎(37歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0946 ベル・ベル(25歳・♀・レンジャー・シフール・モンゴル王国)
 ea0957 リュカ・リィズ(27歳・♀・レンジャー・シフール・イギリス王国)
 ea2445 鷲尾 天斗(36歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea2751 高槻 笙(36歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea3744 七瀬 水穂(30歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea4128 秀真 傳(38歳・♂・志士・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

「ツチノコを捕まえりゃあ、懸賞金か‥‥。汚ねぇ手を使って俺のツチノコを横取りしようなんざ、許せたモンじゃねぇな」
 瞳にメラメラと炎を燃やし、朝宮連十郎(ea0789)が拳をぎゅっと握り締める。
 一刻も早くツチノコを手に入れるため、連十郎はズカズカと森の中を進んでいく。
「連十郎殿は随分と気が早いな。まだツチノコを捕まえてもおらんのに‥‥」
 罠にはまって悲鳴を上げる連十郎を遠目で見つめ、巽弥生(ea0028)がクスクスと笑う。
 それでも連十郎は拳を握り、必死になってツチノコを探す。
「私がツチノコさんを捕まえるためには、他の方の罠は邪魔なのです」
 森に仕掛けられた罠を解除し、リュカ・リィズ(ea0957)が額に浮かんだ汗を拭う。
 森の中はやけにムシムシとしており、ジッとしているだけでも汗が出る。
「私欲の為に他の動物まで巻き込む所業は許せません。仮に本物がいたとしても、幻の生物と言うからには繁栄力も少ないのでしょう。人の手に渡れば種の絶滅も免れぬのでは。出来ればそっとしておきたいものです」
 罠に掛かったウサギを助け、高槻笙(ea2751)が優しく頭を撫でた。
「目的以外にまで被害を広げる輩‥‥猟師の風上にも置けんよ‥‥」
 怒りに満ちた表情を浮かべ、風月皇鬼(ea0023)が辺りを睨む。
 賞金稼ぎの男達は森に罠を仕掛けるため、関係のない動物達まで命を落としているようだ。
 そのため皇鬼はそんな輩に怒りを感じ、なんとか責任を取らせようとしているらしい。
「無用な騒ぎで自然や動物達が痛みを負うのは遣る瀬無き事。人の欲とは詮無き事じゃのう。早々に事態の収拾に努めねばなるまい」
 ツチノコ目当ての賞金稼ぎの姿を見つめ、秀真傳(ea4128)が疲れた様子で溜息をつく。
 賞金稼ぎ達の目にはツチノコ以外の生物は映っておらず、まるでゴミでも捨てるかのような扱いだ。
「関係のない動物さんが怪我をするのは可愛そうです」
 何処か寂しげな表情を浮かべ、リュカがその場にちょこんと座る。
「どちらにしても賞金稼ぎの連中には一泡吹かせてやりたいな」
 罠で命を落としたイタチを見つめ、九条棗(ea3833)が静かに両手を合わす。
「ツチノコは誰が何と言おうと炊き込み御飯だ!」
 ツチノコと筍を勘違いしたため、白河千里(ea0012)が鍋を持参で森を歩く。
 森を歩いている間も鍋の具は集まっているが、何か違うと千里自身も気づき始めているようだ。
「ツチノコって食べれましたっけ‥‥?」
 驚いた様子で千里を見つめ、瀬戸喪(ea0443)が首を傾げる。
「まだ誰もツチノコを捕まえた奴がいないんだから、喰えるかどうかもわからねえだろ。多分、何かと勘違いしているんじゃねえか」
 怪しげな小屋を見つめ、鷲尾天斗(ea2445)が鼻歌まじりに近づいた。
「ツチノコさんって、どんな姿をしてるんでしょう?」
 そしてベル・ベル(ea0946)は胸をワクワクさせながら、辺りを何度も見回すのであった。

「ツチノコさんは、水辺にいるのかな〜?」
 湖のまわりをクルクルと飛び回り、リュカが一生懸命ツチノコを探す。
 賞金稼ぎの連中が来てからかなり時間が経っている事もあり、そう簡単にツチノコは見つかりそうにないようだ。
「この辺りに必ず隠れているいるはずだ。俺の第六感がそう言っている」
 すべての感覚を研ぎ澄ませ、連十郎がツチノコを探す。
「おるのかおらんのか‥‥。ま、どっちでも良いか」
 冷めた表情を浮かべ、弥生が大きな溜息をつく。
「‥‥よくないだろ。少なくとも捕まった奴を助けるまではな」
 途中から小声で喋り、連十郎がクスリと笑う。
「やっぱり何処にもいませんね〜」
 疲れた様子で飛びながら、ベルがちょこんと座ってしょんぼりする。
 賞金稼ぎの姿はよく見かけるのだが、何処にもツチノコの姿は見当たらない。
「そんな事より小屋の様子はどうなんだ?」
 ベルの頭をヨシヨシと撫でながら、連十郎が千里にむかって問いかける。
「敵の数は5人程度か‥‥? 見張りの連中は外でぼーっとしているな」
 遠巻きに小屋を睨み、千里がボソリと呟いた。
 賞金稼ぎの男達はかなり油断しているらしく、まったく辺りを警戒していない。
「‥‥まずは行方不明の第一発見者の身柄確保が重要じゃな。事の起こりはこの者の言に因るのじゃから」
 草むらの中に身を隠し、傳が日本刀に手をかける。
 見張りの男達は暑さでバテてはいるものの、嫌々ながら辺りを監視しているらしい。
「重い荷物は、おっきな人に持ってもらうのです。よろしくお願いします」
 だいぶ疲れてきたのか、リュカが傳に荷物を渡す。
 渡された荷物がシフールサイズのため、傳も小さく頷きながら腰に巻く。
「‥‥なんだか緊張してきたな」
 辺りの様子を窺いながら、天斗が大きく息を吸い込んだ。
「ところで、これって何ですかね?」
 木の上からぶら下がっている紐を指差し、ベルが首を傾げて紐を引く。
「ば、馬鹿! それを引くなっ!」
 慌てた様子で大声を上げ、天斗がベルの傍まで駆け寄った。
「‥‥え?」
 天斗の警告に気づき、ベルがピタリと動きを止める。
 その瞬間、鳴子がカラカラと鳴り出し、賞金稼ぎの男達が一斉にベルを睨む。
「いたぞ、ツチノコだぁ〜」
 瞳を不気味に血走らせ、男達がベルの事を追い回す。
「私はツチノコじゃありませんよぉ〜」
 何度か賞金稼ぎに捕まりそうになりながら、ベルが大粒の汗を浮かべて飛び回る。
 ベルが草むらや木の上を不規則に飛んでいるためか、賞金稼ぎの面々もすっかりツチノコであると勘違いしているらしい。
「ツチノコはあっちに逃げたぞ!」
 ベルの事を助けるため、皇鬼がまったく反対側を指差した。
「あそこに!」
 すると賞金稼ぎが一斉に振り向き、リュカの指差した方向を睨む。
「ぬ‥‥こいつはもしや‥‥ツチノコか!?」
 そして弥生はツチノコを捕まえたふりをして、小屋とは反対側の方向にむかって逃げ出した。

「カワウソやーい。ごるびー帰ってこーい」
 行方不明のカワウソを探すフリをして、千里が見張り役の警戒心を刺激する。
「獺を見ませんでしたか? 見世物小屋の人気者の‥‥ごるびー君」
 不審がる見張り役を前にして、笙が満面の笑みを浮かべて近づいた。
「何故それを知っている?」
 警戒した様子で弓矢を構え、見張り役の男達が笙を睨む。
「えっ‥‥? いるんですか?」
 予想外の答えに驚き、笙が言葉に詰まる。
 本当にごるびー君がいると思っていなかったため、その表情には戸惑いすら見えているようだ。
「だったら話が早いっ! 先日、笙とかわうそを探索した際、やんわり手合わせを逃げられたな。ここで会ったのも縁。七夕も迎えた事だし、出会いを大事にしていざ勝負!」
 動揺する笙をフォローし、千里がわざと大声を上げた。
「怪しい奴め。貴様ら何者だっ!」
 千里達に警告し、見張り役が弓を番える。
 それと同時に忍び歩きで見張り役の後ろにまわった喪が素早く当て身を食らわせ、皇鬼がホールドで残った見張り役の意識を落とす。
「‥‥危ない所でしたね」
 気絶した見張り役を千里に渡し、喪がニコリと微笑んだ。
「あまり大声を立てられると面倒だしな」
 見張り役の持っていた弓矢を取り上げ、皇鬼が網を使って見張り役のふたりを縛り上げた。
「一体、何の騒ぎだっ!」
 外の騒ぎに気づいたため、小屋の中にいた男達が入口のドアを勢いよく開ける。
「作戦を少し変更する必要があるようじゃのう」
 男達にむかて体当たりを食らわせ、傳が小屋の中へと突入した。
 小屋の中には第一発見者が縛られており、ごるびー君が人参をモショモショと食べている。
「‥‥一気に片付けるか。俺も生活かかってんだよ! 面倒ごとは御免だぜ!」
 男達が反撃する隙すら与えず、連十郎がブンスカと刀を振り回す。
「大丈夫か、助けに来た」
 グッタリとしている男に駆け寄り、天斗が素早く縄を解く。
「テメーら何者だっ!」
 お決まりの台詞を吐きながら、男達がゆっくりと立ち上がる。
「俺達自然の平和を護る緑豆っ! 金欲しさに自然を荒すてめェらを、天に代わって成敗してくれる!」
 ずびしっと男達を指差し、連十郎が啖呵をきった。
「殺しはしないから人質は返してもらうぜ」
 ダブルアタックで男達を峰打ちし、天斗がホッとした様子で溜息をつく。
「お前達は‥‥一体?」
 驚いた様子で天斗達を見つめ、第一発見者の男が身体を震わせる。
「詳しい話を聞かせてくれ。ツチノコには興味はないが、ちと金が欲しいんでな」
 鋭い視線で男を睨み、千里が怪しくニヤリと笑う。
「そ、それは‥‥」
 慌てた様子で口篭り、男が気まずく視線をそらす。
「此度の件、おぬしの二転三転する言が招いた自業自得の結果じゃとわしは思うておる。その所為で動物達がどれ程傷ついたか‥‥おぬし、責は感じておるのか?」
 厳しい態度で男に接し、傳がきつく問いかける。
「‥‥すまん。本当はごるびー君とツチノコを見間違えただけで‥‥、ツチノコなんかいなかったんだ」
 観念した様子で頭を下げ、男が何度も傳に謝った。
「だから発言に食い違いがあったのですね。それなら何故、途中で嘘だと言わなかったのですか?」
 納得した様子で頷きながら、笙が男にむかって問いかける。
「ここまで話が大きくなったら、いまさら嘘だとは言えねぇ‥‥」
 小屋の中を暴れるごるびー君を見つめ、男が疲れた様子で溜息をつく。
「俺のツチノコうはうは☆大作戦が‥‥いや、きっと何処かに居る筈だ、俺のツッチー!」
 現実を受け止める事が出来ず、連十郎が扉を蹴破り湖に走る。
「‥‥わしは出来ればおぬしが野槌を見ておらぬ方が良いと思うておる。然らばこの湖も元の静寂さを取戻すであろうしの」
 男の肩をポンと叩き、傳がボソリと呟いた。
「ならば誠だとして‥‥、敢えて違う情報を流すのはどうです? ツチノコは綺麗好き、皆で湖を掃除しましょう、とかね」
 困り果てる男を見つめ、笙がひとつの提案をする。
「悪くないですね。ついでに罠も回収させましょう♪」
 笙のまわりを飛び回り、リュカがコクンと頷いた。
「‥‥湖掃除だと? 冗談じゃない!」
 納得のいかない様子で笙を睨み、千里が激しく首を横に振る。
 しかし笙は千里を掴み、優しくニコリと微笑んだ。
「さあて、いきましょうか。途中で帰したりはしませんよ」
 そして笙は嫌がる千里を引きずりながら、賞金稼ぎの集まる湖へとむかうのだった。