●リプレイ本文
●気になる噂
「ふえっくしょん! 季節の変わり目に油断したですわね。まあ、風邪でしょうから、温泉に入って療養でもすれば何とかなると思います‥‥」
病気療養のため近くの温泉に訪れ、潤美夏(ea8214)がするりと服を脱ぐ。
えろがっぱーずの事は何も知らないため、何度も咳き込みながら温泉へとむかう。
「やっぱり息抜きするなら温泉ですね。珍しくお客も少ないようですし、今日はのんびり出来そうです」
温泉にいるお客の数を確認し、嵯峨野夕紀(ea2724)が脱いだ服を籠に入れる。
女湯はえろがっぱーずの影響もあり、普段からお客が来ていない。
「何だか久しぶりのお風呂って感じ♪ むこうじゃお金がなくて殆どサバイバル生活だったし、ようやく落ち着けるかも」
橋の下で驢馬と一緒にテント生活していた頃を思い出し、風御飛沫(ea9272)がホッとした様子で溜息をつく。
暫く武者修行で海外に渡っていた事もあり、ジャパンの温泉に入るのも数ヶ月ぶりの事である。
「私も江戸の温泉を堪能しておこうっと。もうすぐ温泉教団の関係で京都に移動する事になるから‥‥。また戻ってくるとは思うけど次はいつになるか分からないしね」
苦笑いを浮かべながら、野村小鳥(ea0547)が服を脱ぐ。
場合によってはしばらく帰れなくなるため、今日で江戸近辺の温泉は入り収めになってしまう。
「それにしても、みんなスタイルがいいなぁ。しかも美人‥‥。ま、負けないようにしておかないとっ!」
仲間達の身体を見つめ、佐伯七海(eb2168)が悔しそうに拳を握る。
今まで気づかなかった事だが、自分のスタイルは標準らしい。
「そう言えば最近、この温泉にはえろがっぱーずが出没しているらしいわね」
えろがっぱーずの噂を思い出し、佐上瑞紀(ea2001)がボソリと呟いた。
「むむ、えろがっぱーずとな? そのような輩は風呂から退場してもらわねばな」
険しい表情を浮かべながら、枡楓(ea0696)が脱衣所で服を脱ぐ。
えろがっぱーず達は先人の遺志を継ぎ、連日のように風呂場を覗きに来ているらしい。
今こうしている間にも‥‥。
●みっしょん・えろがっぱーず
「彼の者は浪漫を追い求める男。浪漫を追い求め‥‥覗きをする。ある人の言葉を胸に‥‥その浪漫を燃え上がらせる」
河童達を引き連れ息を殺し、鋼蒼牙(ea3167)がオーラエリベイションを発動させた。
温泉には冒険者の女性が入っており、蒼牙の疲れた心を癒してくれる。
「隊長殿! 我々は幸せであります!」
蒼牙にむかって敬礼しながら、河童達が滝のような涙を流す。
河童丸が副隊長として蒼牙に教えを乞う事になったため、他の河童達も彼の事を信頼し覗きのプロとして認めている。
「‥‥今回の任務は多くの危険を孕んでいる。たったひとりの失敗が全員の死を意味している事を忘れるな」
辺りに溶け込むため緑色の服を身に纏い、蒼牙がクールな表情を浮かべて物陰に潜む。
この点では河童達は身体が緑色をしているため、蒼牙より覗きに適した身体と言える。
「それともうひとつ‥‥。今回の任務は女湯を覗く事のみに重点を絞れ。いくらムラムラしたからと言って早まった行動はするんじゃないぞ」
覗きに必要ない道具を持ち込んだ河童丸の肩を掴み、蒼牙が寂しそうに首を横に振って溜息をつく。
「見逃してください。これで‥‥縛ってもらうんです‥‥」
恥ずかしそうに頬を染め、河童丸が視線をそらす。
「‥‥そっちの趣味か」
予想外の言葉が返ってきたため、蒼牙が気まずい雰囲気を漂わせる。
‥‥河童丸は何かに目覚めつつあった。
●作戦開始!
「殆ど貸切みたいですね〜。こんなにいい所なのに勿体ないです」
兄の家から無断で拝借した洗面用具を小脇に抱え、飛沫が満面の笑みを浮かべて温泉に浸かる。
女湯にはお客の姿がないため、のびのびと温泉に浸かる事が出来そうだ。
「女性だけが入れる屋外の温泉なんてとてもいいネ。此処でお酒を浮かべてチビチビとやるのも悪くないネ」
湯屋[鈴風]で行う新しいヒントを探すため、羽鈴(ea8531)が温泉の中で目新しいものを探す。
「‥‥空が綺麗だ。こんな天気がいい日に温泉とは贅沢だな。これで桜の季節なら、のんびりと花見が出来たのだが‥‥」
持参した桶にお湯を入れて物思いに耽け、七海が花の散った桜の木を眺める。
「自然に囲まれて、ゆっくりポカポカと‥‥至福の時やね‥‥」
マッタリとした表情を浮かべ、コユキ・クロサワ(ea0196)がニコリと笑う。
温泉が適温に保たれているため、幸せそうな表情を浮かべている。
「ん〜、でもこの温泉って確か前に河童さんが覗きに来てた温泉のような‥‥? 男の人もいるし一応、用心だけはしておこうかな? 『覗きが浪漫』とか言って覗きにきそうだし‥‥」
嫌な予感が脳裏を過ぎり、小鳥がダラリと汗を流す。
微妙に男性不信に陥っているため、少し物音がしただけでもビクンと身体が動いてしまう。
「えっ‥‥。それじゃ、えっちなカッパさんがいきなり‥‥その‥‥」
恥ずかしそうに頬を染め、コユキが慌てた様子で身体を隠す。
「コユキさんの肌はスベスベだから、真っ先に狙われてしまうかも‥‥。胸も大きくて、可愛いし‥‥」
コユキの身体を撫で回し、小鳥がウットリとした表情を浮かべる。
「あっ‥‥、そんな所を触ったら駄目やよ。ほら‥‥、前に大曽根さんが言っていた様に、中身が重要やから‥‥、うちなんかより、ずっと野村さんの方が可愛いから‥‥ね? やぁ‥‥、あかんて‥‥そんなにしたら、またヘンな気分になっちゃうから‥‥」
あまり抵抗する事も出来ず、コユキの肌がだんだん桜色に染まっていく。
「男の子がいないから、ちょっと残念に思っていたけど、こう言うのも悪くはないわねぇ」
冗談交じりに微笑みながら、東雲魅憑(eb2011)がコユキの身体に指を這わす。
「か、身体に力が‥‥入らない‥‥。えっちな事は禁止やからね」
ヘナヘナと腰を落とし、コユキが魅憑の腕にしがみつく。
「あら? 少し緊張しているんじゃないの? そんなに身体を強張らせなくても大丈夫だから‥‥」
コユキの耳元で甘い言葉を囁きながら、魅憑が小鳥にむかって合図を送る。
「だ、誰じゃ!」
次の瞬間、楓が悲鳴を上げて身体を隠す。
手当たり次第に物を草むらめがけて放り投げ‥‥。
●逃亡
「‥‥やはり気づかれてしまったか」
風呂桶を使って楓の攻撃を受け止め、蒼牙がクールな表情を浮かべて女湯を覗く。
隠密行動をしていた時のような緊張感はなくなってしまったが、楓達に見つかった事で堂々と女湯を覗く事が出来る。
「隊長殿! 自分は我慢出来ないでありますっ!」
興奮した様子で鼻息を荒くさせ、河童の三吉が楓達にむかってダイブした。
「龍のアギトから逃げる術は無いネ♪ 大人しく捕まり反省するネ」
いきなり飛び掛ってきた河童を狙い、鈴が龍飛翔を放って撃退する。
「みゃ〜! やっぱり男の人達覗いてた! 変態さんにはお仕置きだよ」
慌てて肩までお湯に浸かり、小鳥が悲鳴を上げて鬼神ノ小柄を投げ飛ばす。
鬼神ノ小柄は河童の頭にゴツンと当たり、そのまま後ろにあった木に深々と突き刺さる。
「湯屋でも男の人の視線を感じる事があるネ。屋外だと余計に刺激的ネ」
堂々とした様子で河童達の前に立ち、鈴が目潰しを食らわせクスクスと笑う。
「このド変態がっ!」
すぐさま竹で作った水鉄砲で三吉を狙い撃ち、美夏が呆れた様子で溜息をつく。
「また河童? 懲りないわねぇ‥‥」
ソードボンバーを河童に浴びせて頭を掴み、瑞紀が勢いをつけて蒼牙にむかって放り投げる。
「まさか同業者が敵にいるとはね」
次の瞬間、瑞紀が蒼牙の懐に潜り込み、正拳突きからソニックブームを叩き込む。
「‥‥残念だったな。それは俺の仏像だ」
仏像を身代わりにして瑞紀の攻撃をかわし、蒼牙が草むらに飛び込み身を隠す。
「クッ‥‥、しまった!?」
砕け散った仏像で視界を奪われ、瑞紀が悔しそうな表情を浮かべる。
「‥‥此処に乗り込んでくるという事は、それなりに覚悟をされているという事ですよね。‥‥ではこちらも、それ相応の対応をさせていただきます」
自慢の髭を洗っている途中で河童達の妨害に遭ったため、夕紀が手桶を手裏剣のようにして投げていく。
河童達は夕紀の投げた手裏剣がモロに当たり、幸せそうな表情を浮かべて吹っ飛ばされる。
それでも河童達は頬を染め、夕紀達の腰布を奪うべく行動を開始した。
「‥‥後悔するよっ!」
トリッピングとスープレックスを駆使し、七海が河童達を倒していく。
「その腰布って私のじゃない!? ば、ば、ばか〜〜〜〜〜〜!!!! 記憶から消してやる〜〜〜!!!!」
腰布を加えて姿を表した河童と目が合い、飛沫が青ざめた表情を浮かべて拳を放つ。
そのため温泉は一瞬にして血の海と化し、無数の河童が空しくプカプカと浮かぶ。
「‥‥げっちゅ‥‥。ひゃあ!?」
プラントコントロールを使って河童達を捕まえ、コユキが彼らの視線を感じて身体を隠す。
「ありがたや、ありがたや」
感動のあまり涙を流し、河童達がコユキを拝む。
「ゆ、許さないんだからっ!」
河童の頭を踏みつけながら、飛沫が不満げな表情を浮かべて愚痴をこぼす。
「そういや河童の皿には水があるんだってね。私が触って凍ったらどうなるんだろうね? ‥‥楽しみだよ」
捕まえた河童の皿にお湯をかけ、七海が右手を置いてニヤリと笑う。
「ゆ、許してくれ」
ガタガタと身体を震わせながら、河童達が必死になって両手を合わす。
「そんなに女の子の裸が見たいなら、あなた達が女の子になっちゃえばいいんじゃない? わたくしは別にそのままでも構わないけど」
倒れた河童を抱き起こし、魅憑が怪しくクスリと笑う。
「それって、まさか。うわあああ!」
慌てて自分の股間を隠し、河童達が蟹股になって逃げていく。
「そう言うつもりじゃなかったんだけど‥‥、よっぽど怖かったみたいね」
苦笑いを浮かべながら、魅憑が河童達を見送った。
「まさか私達から逃げられるとは思っていませんよね」
脱衣所から持ってきた浴衣を纏い、夕紀が疾走の術を使って河童達の前に先回りする。
「折角人が忙しい合間を縫って休息取りに来てるのに邪魔するんじゃないわよ!」
河童達の頭をポカンと殴り、瑞紀が呆れた様子で溜息をつく。
「残念じゃったな。そう簡単に腰布を奪えると思っている時点で甘いのじゃ!」
「あ、あの‥‥、見えてますよ」
楓が素っ裸で立っていたため、美夏が気まずい表情を浮かべて身体を隠す。
河童達は逆さ吊りになった状態で、ポタポタと地面に鼻血を落としていく。
「あらあら、まだ血を流すのは早いわよ。これからもっと凄い事に‥‥いえ、何でもないわ」
妙に勿体振った素振りを見せ、魅憑がクスクスと笑う。
右手に鞭を隠し持ち‥‥。