【黄泉の兵】黄泉人撃退
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■ショートシナリオ
担当:ゆうきつかさ
対応レベル:4〜8lv
難易度:やや難
成功報酬:2 G 88 C
参加人数:10人
サポート参加人数:-人
冒険期間:05月26日〜05月31日
リプレイ公開日:2005年06月02日
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●オープニング
●死の足音
「だ、誰だ!」
霧深い夜‥‥。
見回りをしていた松井周五郎は、怪しい人影を気づき提灯をむける。
そこにいたのは深紅の鎧を纏った奇妙な集団。
松井の言葉にも耳を傾けず、フラフラとしながら前へ、前へと進んでいく。
「聞こえなかったのか!」
警戒した様子で刀に手を掛け、松井がもう一度だけ叫ぶ。
今度は相手を威圧するようにして‥‥。
しかし、鎧の集団が歩みを止める気配はない。
まるで松井の声が聞こえていないかのように‥‥。
「お、おい! 聞こえているのか!」
ダラリと汗を流しながら、松井が両手を開いて集団の行く手を阻む。
「そ、そんな馬鹿な!?」
信じられないといった表情を浮かべ、松井が腰を抜かして提灯を落とす。
月明かりに照らされ、浮かび上がってきた顔は、紛れもなく木乃伊(ミイラ)。
瞳の奥は、がらんどう。
次の瞬間、木乃伊達が松井の喉元に喰らいつく。
「ぐあ‥‥やめ‥‥ろ‥‥」
どす黒い血を口から吐き出し、松井が必死になって抵抗する。
ドクドクと流れ出た血が地面を朱色に染めていき、だんだん松井の表情が土気色に変わっていく。
「‥‥」
口元からポタポタと血を流し、木乃伊がふらりと歩き出す。
新たな獲物を求めて‥‥。
大量の死人憑きを引き連れて‥‥。
●大和へ
突如として南より沸き起こり、京都の平穏を破った亡者の群れ。
先月、冒険者ギルドの調査隊は壊滅した村にて黄泉人と呼ばれる魔物達を目撃した。
そして5月、大和の藩主松永久秀が自ら京都へ救援要請にやって来た。ここに亡者に侵された大和国の窮状が明らかとなる。
「一刻の猶予も無し」
摂政源徳家康と京都守護職平織虎長は亡者討伐に手を合わせ、大和遠征を行うことを内外に示した。
京都を守り、大和を救う為に、平織旗下の武士団を中心に新撰組、諸国諸藩の武士、そして冒険者達にも参戦が呼びかけられた。
●リプレイ本文
●村の様子
「‥‥随分と酷い事になってますね」
正規部隊として平織旗下の侍と共に大和に入り、神有鳥春歌(ea1257)が黄泉人に占拠された村を訪れた。
村の状況は酷いもので、風に乗って血の臭いが春歌達の鼻をくすぐり、吐き気と共に激しい怒りが込み上げてくる。
「死人憑きに、怪骨‥‥餓鬼の群れか。こりゃあ、倒すのに苦労しそうじゃのう‥‥」
インフラビジョンを使った後、小坂部太吾(ea6354)が肉眼で妖怪の群れを確認した。
村人達は妖怪の群れに襲われてしまったのか、何処を探しても全く気配がしていない。
「本当に生き残りはいないのですか‥‥?」
信じられない様子で辺りを見回し、海上飛沫(ea6356)が生き残った村人がいないか探して歩く。
「あ、あれは‥‥!? まだ息があるべ!」
壊れた家の下敷きになっている村人に気づき、郷地馬子(ea6357)が慌てた様子で走り出す。
村人はショックで気絶しているのか、馬子が声をかけても動かない。
「だ、大丈夫!? いま助けるからねっ!」
死人達を牽制しながら、凪風風小生(ea6358)が辺りを睨む。
村人の命に関わる事でもあるため、ここでのんびりしている暇はない。
「あんでっどはわしらが食い止めておくのじゃ!」
死人憑きを斬りかかり、架神ひじり(ea7278)が仲間にむかって声をかける。
平織旗下の侍達は村人には興味がないのか、ひじり達とは離れて死人達の相手をし始めた。
「ううっ‥‥」
腹の底から声を出し、村人が意識を取り戻す。
いまいち状況が掴めていないのか、辺りを見回し唸り声を上げている。
「‥‥待ってろ。もう少しの辛抱だっ!」
村人達の事を励ましながら、デュランダル・アウローラ(ea8820)が邪魔なものを退けていく。
「‥‥おかしいな。先程この辺りを調べた時は人の気配などしていなかったのじゃが‥‥」
険しい表情を浮かべながら、太吾が納得のいかない様子で腕を組む。
他とか、この辺りにあった気配は‥‥。
「は、離れてっ!」
大吾の言葉でハッとなり、エリアル・ホワイト(ea9867)が大声を上げた。
それと同時に村人がムックリと立ち上がり、みるみるうちに身体が干からび、エリアル達にむかって襲い掛かる。
「なんだ、コイツは‥‥」
驚いた様子で霞小太刀を振り下ろし、高町恭也(eb0356)が汗を流す。
村人だったモノはダラダラと涎を流し、フラフラとしながら恭也の腕に噛みついた。
「ひょっとして、コイツが‥‥‥‥黄泉人なのか!?」
大槌を振り回して黄泉人をふっ飛ばし、風雲寺雷音丸(eb0921)がダラリと汗を流す。
ハッキリとした確信はないが、これだけは断言する事が出来る。
目の前にいる敵が、ただの死人ではない事を‥‥。
●
「まさか黄泉人が村人に化けていたなんて‥‥」
黄泉人からの不意打ちを喰らい、春歌が険しい表情を浮かべて膝をつく。
死人達の群れはフラフラとしながら両手を上げ、平織旗下の侍達にむかって襲い掛かる。
「くっ‥‥、汚い真似をっ!」
すぐさま侍達を襲っていた死人を狙い、太吾が雄たけびを上げて日本刀を振り下ろす。
それでも死人達はヨロヨロと立ち上がり、太吾達にむかって噛みついてくる。
「‥‥何故か嫌な予感がします。これだけの猛者のいる戦力だというのに」
次々と倒れていく侍を見つめ、飛沫が警戒した様子で汗を拭う。
死人達の中には黄泉人も混ざっているため、侍達では太刀打ち出来る者がほとんどいない。
「考えるのは後にしろっ! ‥‥小太刀二刀流・高町恭也‥‥参る! ここはお前達のいるべき場所ではない‥‥。自らのいるべき場所に帰れ‥‥」
名乗りを上げて霞小太刀を握り締め、恭也が死人の群れに攻撃を仕掛ける。
「迷わず成仏してくんろぉ‥‥、ナンマンダブぅ〜」
祈るような表情を浮かべ、馬子がストーンアーマーを発動させた。
死人達は何度倒されても起き上がってくるため、次第に馬子達の戦う範囲が狭められていく。
「にゅう〜、死体とかの腐った臭い、嗅ぎたくないぃぃ‥‥」
険しい表情を浮かべて鼻をつまみ、風小生が死人の群れめがけてライトニングサンダーボルトを撃ち込んだ。
死人達の中にはそれでも起き上がってくる者もいたが、平織旗下の侍達が素早く刀を振り下ろし餓鬼や死人憑きにトドメをさしていく。
「この臭い‥‥確かに我慢出来ぬな‥‥」
むせかえるような臭いの中、ひじりが自分の刀と仲間達の武器にバーニグソードを付与していく。
「深紅の鎧武者の姿はないな。何処か別の場所に現れたか、それとも‥‥」
嫌な予感が脳裏を過ぎり、デュランダルが辺りを睨む。
見た限り黄泉人を中心にして死人達が辺りにいるが、深紅の鎧武者と思われる影は見当たらない。
その代わり妙な胸騒ぎだけがデュランダルの中で膨らんでいく。
「確か黄泉人と言えば祟り神‥‥。何か不吉な事の前触れでなければ良いんですが‥‥」
リカバーを使って仲間達の傷を癒し、エリアルがレジストデビルを発動させる。
「黄泉人‥‥か。話には聞いていたが関わるのは初めてだな‥‥。ま‥‥、やれるだけやってみるさ‥‥」
目の前の死人憑きにトドメをさし、恭也がニヤリと笑って黄泉人にダブルアタックを叩き込む。
黄泉人に襲われた者は死人憑きになるという噂があるため、辺りに倒れている侍達の死体にも警戒を怠らない。
「ガァアアアア! 久しぶりに国に帰ってみれば、なんて事だ。英国の武闘大会で鍛えたこの腕で、不埒なアンデッドどもを叩きつぶしてくれる!」
次々と集まってくる死人達を蹴散らし、雷音丸が雄たけびを上げてスマッシュEXを叩き込む。
出来るだけ多くの死人を倒すため‥‥。
●黄泉人
「‥‥マズイな。このままだと‥‥」
荒く息を吐きながら、デュランダルが自分の中で湧き上がってきた感情を抑えた。
平織旗下の侍達がたくさん命を落としたため、感情を抑えるタガが外れかかっている。
「お、落ち着いてください。もう少しの辛抱ですからっ!」
慌てた様子で汗を流し、エリアルがデュランダルに抱きついた。
「ギリギリ‥‥大丈夫だ。まだ‥‥な‥‥」
何とか冷静さを取り戻し、デュランダルがクスリと笑う。
平織旗下の侍達が退却を始めた事もあり、これ以上デュランダルの心が掻き乱される事はない。
「‥‥にしても数が多いな‥‥。一体どれだけいるのだ‥‥」
疲れた様子で汗を拭い、恭也が辺りを見回した。
何度倒しても死人達の数は減る事なく、まるで何処かから湧き出ているような雰囲気だ。
「ゴォガァアアアァァアアアア!! 次から次へと腹が立つっ!」
大槌で死人憑きの頭を叩き潰し、雷音丸が不機嫌そうに雄たけびを上げる。
「‥‥何処かに巣でもあるのかのう」
死人の群れにファイアーボムを叩き込み、ひじりが疲れた様子で溜息をつく。
当然の事だが死人達は疲れる事がないため、時間が経てば経つほどひじり達が不利になってくる。
「‥‥あり得ますね。巣という形ではないかも知れませんが‥‥」
死人達めがけて火矢を放ち、春歌がボソリと呟いた。
「だとしたら、このまま戦っていても勝ち目がありませんね」
アイスチャクラでチャクラムを作り、飛沫が目の前にいた怪骨を倒す。
「いったん、退却した方がいいのかな? 深紅の鎧武者が出る前に‥‥」
ウインドスラッシュを黄泉人に放ち、風小生が仲間達にむかって声をかける。
黄泉人は千切れた腕を再生させ、いきなり風小生に噛みついた。
「撤退じゃ! このままだと誰かが命を落とすっ!」
ただならぬ気配を感じ取り、太吾がファイヤーバードで黄泉人を攻撃する。
「何処かに誘導されているような気もしますしね。もちろん、そこまで黄泉人の知能が高ければの話ですが‥‥」
立てた戸板にアイスコフィンを付与し、飛沫がバリケードを作って逃げ出した。
うまく例える事は出来ないが、何だか嫌な予感がする。
「ひょっとして罠の可能性もあるという事だべか? だったら早く逃げなきゃ危ないべ」
仲間達が退却する時間を稼ぐため、馬子がグラビティキャノンを撃ち込んだ。
「くっ‥‥、ここまでか‥‥。ここで奴らの仲間入りするわけにもいかん‥‥。撤退する‥‥」 納得のいかない様子で拳を握り、恭也が死人達から背をむける。
「‥‥我が弟を京に呼び戻すべきか!?」
不本意な撤退を余儀なくされ、太吾は悔しそうな表情を浮かべて呟いた。
このままでは同じ事の繰り返す事になってしまう。
その前に手を打たなければ、すべてが手遅れになってしまうだろう。