外道

■ショートシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:4〜8lv

難易度:難しい

成功報酬:2 G 88 C

参加人数:12人

サポート参加人数:-人

冒険期間:06月14日〜06月19日

リプレイ公開日:2005年06月17日

●オープニング

「‥‥‥‥『無宿』‥‥‥‥『不動』‥‥‥‥両名の死亡を確認しました‥‥‥‥」
 ‥‥暗闇の中で声が響く。

 ‥‥‥‥漆黒の闇‥‥‥‥。

 突然、蝋燭の明かりがが灯る。

「‥‥‥‥死んだか」

「‥‥はい‥‥」

 重苦しい空気。
 しばらくの間、沈黙が辺りを支配する。

「‥‥‥‥冒険者達には感謝しなければならないな。奴らがいたせいであの辺りの縄張りを手に入れる事が出来なかったのだから‥‥」
 ‥‥‥‥運命。
 男の口元が怪しく歪む。
 すべてが男の思い通りになっていた。
 冒険者達が活躍する裏で‥‥。

 ‥‥外道と呼ばれる男がいる。
 無宿と不動の兄弟に弱みを握られ、思うように縄張りを拡大できなかった男の名‥‥。
 彼は千の顔を持つ男と呼ばれていた。
 理由は簡単、誰も外道の正体を知らないからだ。
 ふたりの男を除いては‥‥。
 
「まず手始めに東の村を襲う。冒険者達の実力とやらを見てみたい。本格的な縄張りの拡大はそれからだ‥‥」

 外道がゆっくりと立ち上がる。
 冒険者達の実力を確かめるため‥‥。
 手に入れた資金でゴロツキを雇い‥‥。

●今回の参加者

 ea3108 ティーゲル・スロウ(38歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea3318 阿阪 慎之介(36歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea4173 十六夜 桜花(28歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 ea7278 架神 ひじり(36歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea7767 虎魔 慶牙(30歳・♂・ナイト・人間・ジャパン)
 ea8545 ウィルマ・ハートマン(31歳・♀・ナイト・人間・ロシア王国)
 ea8616 百目鬼 女華姫(30歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea9276 綿津 零湖(31歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea9527 雨宮 零(27歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb0356 高町 恭也(33歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb1484 鷹見沢 桐(28歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb1822 黒畑 緑太郎(40歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●村の西
「‥‥ひとつ壊滅させたところですが、また盗賊団ですか‥‥。何故、こういう方々は後を立たないのでしょうね。どちらにしても無法者には容赦いたしません」
 村の入り口で監視をしている盗賊達に気づかれないようにするため、十六夜桜花(ea4173)が身を屈めながらボソリと呟いた。
 村の西側は開けた場所が多いため、少しでも頭を上げると見つかってしまうが、盗賊達を引きつけるのには最適な場所といえる。
「毒を食らわば皿までじゃのう。無宿と不動と戦った者としては外道も倒さねばなるまい。ところで外道の次は邪道という者が現れるのではなかろうな‥‥」
 苦笑いを浮かべながら、架神ひじり(ea7278)がダラリと汗を流す。
 しばらくの間は外道を相手にする事になると思うが、何か妙な予感がするため笑い話では済みそうにない。
「そう言えば邪道という名の男がいると聞いた事がある。詳しい事は分からないが、そのような男がいるのは確かだな」
 記憶の片隅にあった男の名前を思い出し、鷹見沢桐(eb1484)が素早く身を隠す。
 盗賊達はのんびりと酒を飲んでいるが、見晴らしがいいため油断は出来ない。
「‥‥やはりのう。嫌な予感はしていたのじゃ」
 疲れた様子で頭を抱え、ひじりが大きな溜息をつく。
 この辺りの地域は盗賊団の縄張り争いが激しいため、迂闊に退治してしまえば彼らの勢力図を塗り替える手伝いをしてしまう。
「だからと言って、このまま野放しには出来ません。こうしている間にも盗賊達によって酷い目に遭わされている人達がいるのですから‥‥」
 悲しげな表情を浮かべながら、桜花が拳をぎゅっと握り締める。
 盗賊達を放っておけば罪のない者達が命を落としてしまうため、この場で救出を放棄して村人達を見殺しには出来ない。
「それじゃ、頑張って行きましょうか〜」
 まわりが暗いムードになったため、百目鬼女華姫(ea8616)がわざと能天気な声を上げる。
 その声で盗賊達が女華姫の存在に気づいたが、インパクトの強さに事を抜かして血反吐を吐く。
「あら〜、あまりの美貌に腰を抜かしちゃったかしらぁん♪」
 ハートマークを浮かべながら、女華姫が盗賊達にむかってウインクする。
「あわ、あわわ‥‥」
 あまりの恐ろしさに盗賊達が声を震わせ、逃げるようにして這って行く。
「どうやら見つかってしまったようじゃな。まぁ‥‥、遅かれ早かれこうなる運命じゃったが‥‥」
 金属拳を嵌めながら、ひじりが盗賊達を睨みつける。
「あらん‥‥、ちょっと気が早いんじゃないの? まだ作戦は始まったばかりよ」
 含みのある笑みを浮かべながら、女華姫が人遁の術を使って美女に化けた。
「あ、あれ‥‥」
 それと同時に盗賊達が目を丸くさせ、キョトンとした表情を浮かべて汗を流す。
「ほら‥‥ね。酔っ払っていたから騙すのも簡単よ」
 大きな胸をぷるんと揺らし、女華姫がひじりにむかってウインクする。
 盗賊達は訳も分からず立ち上がり、美女に化けた女華姫を見つめて腕を組む。
「確かさっきは大女が‥‥」
 お互いの顔を見合わせ、盗賊達が首を傾げて呟いた。
「まるで妖怪でも見たような顔ね。‥‥驚いた? あたしって身体が大きいから、よく驚かれるのよ。それだけで男共が引いちゃって‥‥分かるでしょ?」
 ムチムチプリンなボディが思いっきり強調しながら、女華姫が盗賊達にズンズンと迫って行く。
 彼女の正体がムキムキピシャァァンなオカマ顔のマッチョである事は分かっていたはずだが、あまりの変貌振りに冷静な判断が出来なくなったのか、やけにだらしない笑みを浮かべている。
「旅の途中で目的地に辿り着く事も出来ぬまま、この村に迷い込んでしまいました。もし宜しければ一夜の宿をお借りしたいのですが‥‥」
 旅馴れぬ町娘といった風体で盗賊に近づき、桐が心細い様子で瞳をわずかに潤ませた。
「そりゃあ、災難だったな。俺達もそろそろ若い娘が‥‥いや、困っている人を放っておけない性格でな。‥‥喜んで宿を用意するよ」
 桐達を品定めしながら、盗賊達がニヤリと笑う。
 盗賊達は桐達が世間知らずの娘だと思い込んでいるため、うまく丸め込んで手篭めにしようとしているらしい。
「おっと‥‥その前に身体検査をしなくちゃなんねぇ。‥‥最近、この辺りも物騒でな。旅人に扮して怪しい奴が出入りしているらしいんだ。まぁ、お前達は大丈夫だと思うが‥‥」
 怪しく指を蠢かせ、盗賊達が桐に迫る。
「そんな事をしなくても大丈夫よぉん。この娘達だって子供じゃないんだから‥‥」
 盗賊達の前に立ち塞がり、女華姫が大きな胸をぷるんと揺らす。
「実は私達‥‥まったくお金を持っていないので‥‥。その‥‥別のお礼をするしか‥‥ありませんので‥‥」
 恥ずかしそうに頬を染め、桜花が顔を俯かせる。
「それなら話が早いな。さっ、こっちに来い」
 満面の笑みを浮かべながら、盗賊達が桜花達を連れて村の中に入っていく。
 これから自分達が酷い目に遭う事に気づかぬまま‥‥。

●村の東
「‥‥やれやれ、首都近辺だというのに不死者に無法者にと‥‥、なんとも治安の悪い事だ‥‥」
 警戒した様子で辺りを睨み、ウィルマ・ハートマン(ea8545)が険しい森の中を進んで行く。
 村の東に広がる森には何らかの罠が仕掛けられている可能性があるため、途中で引っかからないように足元を確かめ村を目指す。
「どうやら囲まれているようだな。‥‥やるか」
 ただならぬ殺気を感じ取り、黒畑緑太郎(eb1822)がジロリと辺りを睨む。
 それと同時に緑太郎達を狙って無数の弓矢が飛んで来る。
「神よ、罪深き者に慈悲を与えたまえ‥‥」
 草むらに隠れるようにして飛び込み、ティーゲル・スロウ(ea3108)が何処かに隠れた敵を探す。
 地理的には敵の方が詳しいため、なるべく独りにならないように心掛ける。
「すでにこちらの行動は予想済みというわけか。‥‥面白い。その実力‥‥確かめてやろう!」
 敵の居場所を探るため、ウィルマがわざと大声を上げて走り出す。
「右から左と‥‥、鬱陶しいな」
 弓矢に当たらないようにするため身を屈め、緑太郎が大きな溜息をつきムーンアローを撃ち込んだ。
「こんな所で足止めされたら、外道を仕留めるのが難しくなるな」
 すぐさま草むらに飛び込み、スロウが手裏剣を投げる。
 それと同時に鳴子がカラカラとなり、スロウの目の前でトラバサミの口が閉じた。
「‥‥どうやら罠に嵌められたようだな」
 足元の傍にあった落とし穴を飛び越え、ウィルマが険しい表情を浮かべて辺りを睨む。
 敵は何処に隠れているのか分からないが、攻撃の放たれた位置からある程度は特定出来る。
『左に3人‥‥右に2人‥‥正面に1人だ‥‥』
 相手に気づかれないようにするため、緑太郎がこっそりとテレパシーを使う。
「そこだ!! 安心しろ、やるつもりはない‥‥死ぬまで懺悔させるがな」
 すぐさま手裏剣を投げ飛ばし、スロウが敵にむかって警告する。
 しかし、敵は怯む事なく弓矢を放ち、スロウ達を始末しようと躍起になった。
「後悔するより、死ぬ方がマシって事か」
 弓矢の飛んできた方向に狙いを定め、ウィルマがクイックシューティングを放つ。
 敵は脳天にウィルマの攻撃を喰らい、カッと見開いたまま命を落とす。
『増援が現れたようだな。‥‥やはりハズレか』
 悔しそうに拳を握り、緑太郎が村を睨む。
 やけに村の方が騒がしくなっているが、その原因を確かめる事は難しい。
 今は目の前の敵を倒す方が先なのだから‥‥。

●村の南
「無宿・不動に続いて、外道ですか‥‥。悪の芽は尽きないのですね‥‥」
 南側の畑から村の中に入り込み、綿津零湖(ea9276)が溜息をつく。
 この辺りはまったく隠れる場所がないため、すぐに盗賊達に気づかれ呼子を鳴らされる。
「やれやれ‥‥、悪党は倒しても倒してもキリがない、か‥‥。まあ、他の皆が頑張ってくれているようだから、こっちもせいぜい派手に行くか‥‥」
 油の切れたランタンを地面に置き、高町恭也(eb0356)が霞小太刀を引き抜いた。
 盗賊達は奥からやってきた男に頭を下げ、ゾロゾロと道を明けていく。
「あんたが外道かっ!」
 外道らしき男を見つめてニヤリと笑い、虎魔慶牙(ea7767)が斬馬刀を握り締める。
「いかにもわしが外道じゃあ!」
 邪悪な笑みを浮かべながら、外道が慶牙の前に立って腕を組む。
「本当にこの男が‥‥外道なので‥‥ござろうか?」
 警戒した様子でオーラ魔法を発動させ、阿阪慎之介(ea3318)が首を傾げて呟いた。
「どう見ても‥‥素人にしか見えません。殺気がないというか‥‥、隙だらけですし‥‥」
 日本刀を握り締め、雨宮零(ea9527)が外道を睨む。
 外道の詳しい外見までは冒険者達に伝わっていないため、目の前にいる男が外道であると断言するのは難しい。
「な、何を言うか! わしが外道じゃあ!」
 あからさまに動揺しながら、外道がダラリと汗を流す。
 よほどアセッているのか、だんだん挙動不審になっていく。
「本当の事を話してもらおうか。拙者らも外道と幹部以外はそれほど興味がないのでござる。無駄な抵抗さえしなければ、厳罰が受けられるようにとりなすつもりでいるでござる」
 幹部と手下の間に溝を作るため、慎之介がひとつの提案をする。
「‥‥残念だったな。悪いがその手には乗らねぇよ。見逃してくれるのならまだしも、厳罰じゃワリがあわねえし‥‥」
 不満げに愚痴をこぼしながら、盗賊のひとりがニヤリと笑う。
 今まで随分と悪さをしてきた事もあり、いまさら牢暮らしをするつもりはないらしい。
「やはり戦うしかないようですね」
 盗賊達と間合いを取りながら、零湖がアイスチャクラで武器を作る。
「そうでなくっちゃ面白くない。‥‥楽しませてくれよ。俺達にとっても大切な日だからな」
 使い古した日本刀を握り締め、外道が雄たけびを上げて零湖を狙う。
「‥‥悪党に容赦は致しません」
 外道の一撃を二の腕に喰らい、零湖を険しい表情を浮かべてチャクラムを放つ。
「なかなかやるじゃないか。これなら外‥‥おっと、これは言わない約束だったな」
 下品な笑みを浮かべながら、外道が日本刀を横に凪ぐ。
「やはりこの男は‥‥偽者ですか‥‥」
 外道の攻撃を素早くかわし、零が日本刀を振り下ろす。
 それと同時に手下達が刀を抜き、外道を守るため一斉に襲い掛かってくる。
「‥‥来たな。死にたい奴からかかって来い‥‥。生憎と手加減をするつもりはないぞ‥‥」
 手下相手にダブルアタックを放ち、恭也が険しい表情を浮かべて辺りを睨む。
 仲間達の手によって村人達は避難していたらしく、外道の手下が村人達を人質に取る事はないようだ。
「‥‥本物の外道は腰抜けか。こんな雑魚を俺達に仕向けるとはな」
 スマッシュEXを振り落とし、慶牙が身体を捻って別の敵を横薙ぎに斬り捨てる。
「さぁ、どんどん掛かってきなぁ! ‥‥逃がさんぜ!」
 盗賊達を威嚇するようにしながら、慶牙が瞳をギラリと輝かす。
「お、覚えてろ!」
 いまにも泣きそうな表情を浮かべ、外道と名乗った男がスラコラと逃げる。
「‥‥外道とやらに伝えておけ。拙者達は逃げも隠れもしないとな」
 警告混じりに外道を斬りつけ、慎之介が黙って背を向けた。
「ほ、本当に復讐してやるからな」
 幸い急所は外してあるため、外道は這うようにして逃げて行く。
「このまま逃がしていいのですか?」
 すぐさま外道の逃げ道を塞ぎ、零湖が心配した様子で慎之介を睨む。
「た、助けてくれ。復讐なんてしないからっ!」
 大粒の涙を浮かべて両手を合わせ、外道が必死になって命乞いをする。
「本物ではないようですが、念のため役所に突き出した方がいいかも知れませんね。何か知っているかも知れませんし‥‥」
 外道の喉元に日本刀を突きつけ、零がボソリと呟いた。
「‥‥そうでござるな。わざわざ敵に情報を与える必要はないか‥‥」
 納得した様子で頷きながら、慎之介が丈夫な縄を用意する。
「覚悟しておけよ。洗い浚い吐いてもらうからな」
 こうして外道と名乗る男は恭也達に拘束され、江戸の町に送られる事となった。
 彼らの知っている情報を聞き出すために‥‥。