●リプレイ本文
●もみあげ村
「いまのところ異常はないようじゃな」
村のまわりを飛び回った後、レダ・シリウス(ea5930)が酒場に戻ってくる。
モミアゲダルマが無くなった事で村人達は魂の抜けた表情を浮かべており、うわ言のように何やらブツブツと呟いているようだ。
「‥‥暇だ」
暇そうな表情を浮かべ、ユエ・シェザナ(eb2248)が大きな溜息をつく。
村は平和どころか何の面白みもないため、ジッとしているとキノコでも生えてきそうな雰囲気だ。
「ここまで平和だと逆に眠くなってくるのじゃ。まったく‥‥この村の奴らと来たら、モミアゲダルマばかりの事で、みんな無気力なヤツばかりじゃな」
あまりにも暇すぎたため盗賊のアジトを調べ上げ、レダが目の前の布に簡単な地図を描いていく。
レダの描いた地図には盗賊達の人数と配置が記されており、サンワードで得た情報が補足として書き込まれている。
「‥‥これって何が描いてあるんだ?」
キョトンとした表情を浮かべ、ユエがレダの描いた地図を指差した。
「そう言う場合は‥‥心の目で読むのじゃ」
気まずい様子で視線を逸らし、レダがボソリと答えを返す。
「まぁ‥‥、何となくなら分かるが‥‥」
レダの描いた地図をマジマジと見つめ、ユエが自分なりに内容を解釈した。
「それにしても‥‥暇じゃのう‥‥。村人達でも集めてモミアゲダルマさまを無事に回収出来るように祈願舞でも舞ってくるのじゃ」
このままでは眠ってしまうと思ったため、レダがフラフラとしながら村人達を呼び集める。
「モ、モミアゲダルマ様!」
すると村人達はモミアゲダルマという言葉にだけ反応し、物凄し形相を浮かべてレダのまわりを取り囲む。
「な、なんじゃ!?」
驚いた様子で飛び上がり、レダがダラダラと汗を流す。
村人達はカッと目を見開き、期待に満ちた表情を浮かべている。
「きっと俺達がモミアゲダルマを取り返してきたんだと勘違いしているんじゃないのか?」
モジャモシャと焼き鳥を頬張りながら、ユエが酒場からヒョッコリと顔を出す。
それと同時に村人達が今度はユエのまわりに集まった。
やはりモミアゲダルマという言葉に反応するらしい。
「一瞬、食われるかと思ったのじゃ」
大粒の汗を浮かべながら、レダがホッとした様子で地面に着地する。
「とにかく祈願舞とやらを行おう。このままじゃ、暇すぎて死にそうだ」
焼き鳥を平らげ満足した表情を浮かべ、ユエが村人達を引き連れ広場まで歩いていく。
「そ、そうじゃな。精一杯頑張らせてもらうのじゃ」
村人達からモミアゲ衣装を受け取り、レダが苦笑いを浮かべて広場にむかう。
モミアゲダルマのお言葉を伝えるモミアゲ巫女として‥‥。
●盗賊達
「皆さぁ〜ん、お酒を盛って‥‥、持ってまいりましたよ♪」
レダの地図を頼りに盗賊達のアジトにむかい、赤霧連(ea3619)が満面の笑みを浮かべて酒を渡す。
一瞬、盗賊達に物凄い形相で睨まれたが、酒の中に薬が入っている事までは気づいていない。
「‥‥ようやく来たか。金は‥‥持ってきたんだろうな」
盗賊達はアジトの入り口でのんびりと酒盛りをしており、正和達の姿に気づくといやらしい笑みを浮かべて立ち上がる。
「もちろんさ。約束のものを持ってきたぞ。さあ、返してもらおうか。‥‥モミアゲダルマをね」
荷車で荷物を運ぶフリをして盗賊達に近づき、南天輝(ea2557)がサイズを構えてソニックブームを撃ち込んだ。
「ば、馬鹿な! 敵なのか!?」
輝達が村人に扮していたため大袈裟に驚き、盗賊達がフラつく頭で刀を握る。
「まったく、いいかげんな依頼だが派手に暴れてやるぜ」
丘の上から盗賊達へむけて油を流し、伊達正和(ea0489)が火打石を使って火をつけた。
火は一瞬にして油に燃え移り、そのままアジトのまわりにある草を焼く。
「何しやがんだ、この野郎っ!」
不機嫌そうな表情を浮かべ、盗賊達が一斉にマサカズを狙って斬りかかる。
「‥‥雑魚が。自分の実力を見誤ったな」
すぐさまソニックブームを放ち、正和が呆れた様子で溜息をつく。
「ひ、怯むんじゃねえ! ぶっ殺しちまえ!」
ガタガタと身体を震わせながら、盗賊達がジリジリと後ろに下がる。
「さあ、楽しく踊ろうか♪」
盗賊達の逃げ道を塞ぎ、輝がサイズを構えてニヤリと笑う。
「くそぉ‥‥、こうなったら‥‥、女だっ! 女を狙え!」
見た感じ連が最も非力に見えたため、盗賊達が一斉に彼女にむかって斬りかかる。
「あらあら、お戯れが過ぎますわ‥‥。ほら、お尻に火がついてます」
爽やかな笑みを浮かべてヒラリとかわし、連が舞うようにして霞小太刀を振り下ろす。
「ぬおおおお‥‥。み、見るな!」
驚いた様子で火のついた服を脱ぎ、盗賊達が恥ずかしそうに悲鳴を上げる。
「あらあら、こんな場所でエッチですね。そんな事をする人はお仕置きです♪」
目の前で振り子時計のように揺れる無数の何かに気づいたため、連が持ってきた酒をわざと落として火の勢いを強めていく。
「うわ、あちちっ!」
連の持ってきた酒はアルコール度数が高かったため、一瞬にして盗賊達の服に燃え移り辺りを真っ赤な炎に包む。
「踊れ、踊れ!」
目の前の炎に恐れる事なく、正和が盗賊達をアジトから遠ざけていく。
「やめっ、やめろ!」
盗賊達はぷらんぷらんと何かを揺らし、パニックに陥り悲鳴を上げる。
「ほらほら、逃げて。でないと容赦なく斬りますよ?」
霞小太刀を振り回し、連がニコリと微笑んだ。
「お、覚えてろ!」
盗賊達はモミアゲダルマの事などすっかり忘れ、捨て台詞を残してその場から去ろうとする。
「逃がすかっ! 後で復讐されても困るからな!」
正和達と連携をとって逃げ道を塞ぎ、輝が盗賊達の前に立ってニヤリと笑う。
村人達の受けた苦しみを少しでも晴らすため、ここで盗賊達を逃がすわけには行かないようだ。
●モミアゲダルマ
『どうやらこの奥にモミアゲダルマがあるようだね」
何度も迷いながら洞窟の中を進んでいき、レオルド・ロワイアー(ea0666)が身振り手振りを使って洞窟の奥を指差した。
洞窟の奥には頑丈な鍵のかかっている扉があり、モミアゲダルマが隠されている可能性が高い。
『‥‥何て言っているんだ?』
いまいちレオルドの言っている意味が分からず、楼焔(eb1276)が困った様子で腕を組む。
『言葉が通じないと不便ですね」
道案内役の盗賊を連れて来れば良かったと後悔しつつ、ロッカ・リオル(ea0698)が苦笑いを浮かべて汗を流す。
一応、身振り手振りを使っているが、なかなか意味が伝わらない。
「とりあえずモミアゲダルマは、この中にあるって事でござるかね?」
何とか錠前を外そうと針金を突っ込み、甲斐さくや(ea2482)がカチャカチャと音を鳴らす。
仲間達の活躍によって盗賊達が一網打尽にされたため、途中で邪魔される事はないのだがなかなか鍵が外れない。
『こういう時って七つ道具一式とかあると便利なんだけどね』
扉にむかって体当たりを浴びせ、レオルドが大きな溜息をつく。
『この扉を壊せばいいんだな? だったら俺に任せておけ』
レオルドの行動から目的を読み取り、焔が扉に体当たりを浴びせて破壊した。
部屋の中にはモミアゲダルマが安置されており、何となく神々しい雰囲気を漂っている。
『これが‥‥モミアゲダルマ‥‥!?』
興奮した様子でモミアゲを触り、ロッカがモミアゲダルマに両手を合わす。
本当にご利益があるかどうかは不明だが、何となく拝んでおくといい事がありそうである。
「とにかくこれを村まで運ぶでござる」
仲間達にむかって声をかけ、さくやがモミアゲダルマを持ち上げた。
洞窟の中には盗賊の姿がまったくないため、全員でモミアゲダルマを持って外まで楽に運ぶ事が出来そうだ。
『‥‥これを運べばいいんだね』
何となく理解した様子でモミアゲダルマを持ち上げ、レオルドが途中で落とさないようにして運んでいく。
『洞窟の中に盗賊達がいなくて助かったな。言葉が通じず戦闘になったら‥‥考えるだけでも恐ろしい‥‥』
壁に掛けられていた松明を掲げ、焔がゆっくりと辺りを見回した。
ここに車で何度も迷ってしまったため、どうやって帰ればいいのか分からない。
『‥‥確かこっちだったと思いますよ』
自分の記憶を頼りに帰り道を探し、ロッカが先頭を進んでいく。
「何だか先行き不安でござる」
嫌な予感が脳裏を過ぎり、さくやがダラリと汗を流す。
洞窟の中をしばらくフラフラと彷徨いながら‥‥。