●リプレイ本文
●仕掛けられた罠
「こんな所にまで罠が仕掛けているなんて‥‥」
猟師の知恵や技能を生かして草むらに仕掛けられていた罠を発見し、陸潤信(ea1170)が悪徳商人達に対して激しい怒りを感じて辺りを睨む。
悪徳商人の仕掛けた罠にはウサギが引っかかっており、潤信を見つめて円らな瞳をウルウルさせる。
「まったくヒデェ事しやがるな! ‥‥っしゃ、片っ端から解除してくぜ! うーん、こうなりゃ生業『仕掛屋』に変えるかなー」
苦笑いを浮かべながら、伊珪小弥太(ea0452)が罠を外していく。
解除された罠は二次被害を防ぐため、小弥太が責任を持って回収し街まで持ち帰るつもりらしい。
「まだ息はあります。‥‥助けましょう」
傷ついたウサギを抱き上げ、島津影虎(ea3210)が簡単な治療を施した。
ウサギが人間に化けてお礼をしに来る事はなさそうだが、野に放たれたウサギは何度も後ろを振り向きながら影虎との別れを惜しんでいる。
「もう罠に引っかからないようにしてくださいね」
オーラテレパスを使って話しかけ、潤信がウサギに大きく手を振った。
「それにしても敵も分かりやすく罠を仕掛けるわね。こんな風に罠を仕掛けたら、鬼蜜のある場所を教えているようなものじゃない」
罠の仕掛けられた場所を辿っていき、渡部不知火(ea6130)がクスリと笑う。
悪徳商人達にとっては警告のつもりで置いた罠も、こうやって解除してしまえば鬼蜜までの道標だ。
「だからと言って油断していると危険ですよ。おっと‥‥こんな風に」
トラバサミを解除している途中で仕掛けに気づき、潤信が横から飛んできた丸太の木を避ける。
「つーか、こんなに罠を仕掛けて、よく山奥の中を歩けるな。手下のひとりやふたり、引っかかっていそうな雰囲気だが‥‥って、いた!?」
罠を解除している途中で悪徳商人の手下を踏み、小弥太(ea0452)が大袈裟に驚き汗を流す。
悪徳商人の手下は丸太を食らった後にトラバサミに挟まれたらしく、ズタボロになりながら口からブクブクと泡を吹いている。
「君子危うきに近寄らず‥‥って事ですかね」
念のため手下を縄で縛っておき、影虎が疲れた様子で溜息をつく。
手下は目を覚ましそうにないが、このまま放置しておけば獣達の餌になってしまうだろう。
「一緒に連れて行った方がいいかしらね? 物凄く足手纏いになりそうだけど‥‥」
へっぽこそうな手下を見つめ、不知火が苦笑いを浮かべて汗を流す。
途中で暴れても困るため、すぐに判断する事は出来ない。
「とにかく尋問だけでもしてみましょう。敵のアジトが分かるかも知れないし‥‥」
気絶している手下を背負い、潤信がゆっくりと辺りを見回した。
尋問の途中で悪徳商人の関係者と遭遇する可能性が高いため、ここから少し移動した場所で手下から話を聞く必要があるだろう。
「本気か、潤信!? こんなヘッポコ野郎から話を聞くのか?」
驚いた様子で目を丸くさせ、小弥太が手下をビシィッと指差した。
「もちろん♪」
仏のような笑みを浮かべ、潤信が手下を背負って歩き出す。
「‥‥どうやら本気のようですね」
ただならぬ気配に気づき、影虎が潤信の後をついていく。
潤信は本気でアジトを潰すつもりでいるらしく、手下相手でも容赦をする気はないようだ。
「だったらコレは不要よね。途中で面倒な事になっても困るから」
そう言って不知火が手下のポケットから呼子を取り出し微笑んだ。
●用心棒
「ここにいない奴らは手下の尋問に行ったのか。俺も行きゃあ良かったかぁ」
つまらなそうな表情を浮かべ、緋邑嵐天丸(ea0861)が険しい山道を登っていく。
たくさん罠が仕掛けられていた時はそれほど険しくなかった山道も、次第に鬼蜜のある場所に近づいてきたためか、だんだん険しくなってきた。
「しかし、鬼蜜を取りの商人さん達も困ったものですね」
苦笑いを浮かべながら、雨宮零(ea9527)が手拭いを使って汗を拭う。
「商売が競争になるのは当然だろうけど、無関係な人や動物を巻き込むようなやり方はいかんよな。まぁ、俺なんかはそのおかげで江戸に帰る船代を稼げたりするわけだが‥‥」
途中で転がり落ちないようにするため、菊川響(ea0639)が足元を確かめ岩場を登っていく。
「しかし‥‥、鬼蜜取りに行くのは危険だという事は分かるが‥‥、なんで冒険者雇わないんだろ? 信用無いのかなあ‥‥俺ら」
少し納得がいかないのか、マナウス・ドラッケン(ea0021)が溜息をつく。
「そりゃ、分け前が減るからだろ。俺達を雇っただけで50G以上は取られるからな」
仲間達に手を貸しながら、氷川玲(ea2988)がニヤリと笑う。
儲けだけを考えた場合、例え下働きの者が危険な状況に陥ったとしても、冒険者を雇うよりは安く済む。
「ともかく己の利の為に手段を選ばないような者は取り締まらないといけないよな。‥‥ん?」
ようやく山頂付近に辿り着き、響が険しい表情を浮かべて短弓を構える。
「命が惜しくば‥‥ここを去れ‥‥」
冒険者達を追い返すため、用心棒達が山鬼闘士に扮して響達の前に立つ。
「うまく変装しているようだが、あれは山鬼なんかじゃない。‥‥間違っても殺すなよ」
響の耳元で囁きながら、風間悠姫(ea0437)が太刀「造天国」を握り締める。
「ああっ‥‥、分かっている」
決して用心棒から視線を逸らさず、響が悠姫にむかって答えを返す。
用心棒はそれなりに強そうだが、響達が本気を出せば決して負ける事はない。
「あー‥‥、ナマモノ相手の仕事は久々だな。‥‥腐臭が無いだけありがたい、マジに」
冗談まじりに微笑みながら、マナウスがナイフを構えて走り出す。
「‥‥死に急ぐつもりか」
勢いよく金棒を振り上げ、用心棒が雄たけびを上げてマナウスを狙う。
マナウスはすぐさま身を屈め、用心棒の懐に潜り込んで攻撃を放つ。
「人の迷惑を顧みない人たちは‥‥、神皇様に代わって、お仕置きよ!」
それと同時に楠木麻(ea8087)が用心棒を睨みつけ、一緒に連れてきていた犬をすぐさま嗾ける。
「‥‥正体を現した方が身の為ですよ」
攻撃が当たる寸前で刀を止め、零がジロリと相手を睨む。
「それは‥‥出来ぬ相談だな‥‥」
ダラリと汗を流しながら、用心棒が金棒を振り上げて刀を弾く。
用心棒もそれなりに報酬をもらっているため、このまま逃げ出すつもりはないらしい。
「戦いは避けられないみたいだね」
すぐさまグラビティーキャノンを放ち、麻が一気に用心棒達をふっ飛ばす。
「なるべく怪我をさせたくなかったんだが‥‥」
気絶した用心棒達を見つめ、響が大きな溜息をつく。
既に用心棒はひとりしか残っておらず、険しい表情を浮かべながら金棒を構えている。
「かかって来いよ。英国仕込みの戦い方って言うのを見せてやる」
わざと挑発的な態度を取り、マナウスが釣り糸のついたナイフを投げた。
「効かぬっ!」
金棒を振り回してナイフを弾き、用心棒が雄たけびを上げてマナウスを睨む。
マナウスは釣り糸を手繰り寄せてナイフを拾い、用心棒の攻撃を避けるようにして後ろに下がる。
「お前‥‥山鬼に化けるなら、もう戦い方を学ぶんだな。‥‥本物の山鬼はこんなもんじゃない‥‥」
フェイントアタックを使って用心棒を攻撃し、悠姫が徐々に間合いを詰めながら敵にスマッシュを放っていく。
「‥‥降伏してもらおうか」
用心棒を狙って短弓を構え、響が最後の警告をする。
「素直に縛につくなら命までは奪わん‥‥が‥‥どうしてもやると言うなら‥‥ここも容赦はしない‥‥」
クールな表情を浮かべながら、悠姫が用心棒の目の前で太刀「造天国」を振り下ろす。
「これで降伏しなければ‥‥死ぬわけか」
不敵な笑みを浮かべながら、用心棒が金棒を捨てて両手を上げた。
「ちょっ、ちょっと待て! もう降伏しちまうのか。これから俺の出番なのにっ!」
自分の腕前を試すため、新しい技を試そうと思っていたため、嵐天丸が驚いた様子で用心棒を睨みつける。
「ああ‥‥、その通りだ」
疲れた様子で溜息をつきながら、用心棒が小さくコクンと頷いた。
「たくっ‥‥、根性ねえな」
残念そうな表情を浮かべ、嵐天丸が縄を使って用心棒の身体を縛る。
「まぁ、これだけの人数を相手にしたら、降伏するのも当然だけどな」
冒険者ギルドに届けるため、玲が用心棒の金棒を拾う。
「降伏した以上、妙な真似はするんじゃないぞ」
冷たい視線を送りながら、悠姫が用心棒に対して警告する。
他の用心棒達も拘束され、呼子はすべて没収された。
「もしもの場合は僕がこの手で‥‥」
日本刀を握り締め、零が用心棒を睨みつける。
「すべて話してもらうよ。アジトも‥‥、キミ達を雇った黒幕も‥‥」
他の用心棒も拘束し、麻が警告まじりに呟いた。
「もし吐かないようなら、指を一本ずつ折っていく。覚悟しておけよ」
そう言って玲が用心棒達を連れて山を降りる。
この事件を仕組んだ黒幕を吐かせるため‥‥。
●鬼蜜
(「‥‥ひょっとして、この状況は‥‥」)
鬼蜜の入った壷を抱きしめ、ルーラス・エルミナス(ea0282)がダラリと汗を流す。
目の前には熊鬼闘士が立っており、ルーラスを威嚇するようにして唸り声を上げている。
(「‥‥逃げなければ‥‥」)
本能的に判断し、ルーラスが辺りを睨む。
‥‥勝負は一瞬。
逃げ遅れてしまえば、死‥‥あるのみ。
(「‥‥逃げなければ‥‥」)
自分自身に言い聞かせる。
自らの身を守るため‥‥。
鬼蜜を持っていなければ、熊鬼闘士と戦う事も出来るが、既に回収した後である。
何としてでも鬼蜜を持ち帰り、多額の報酬を得なければならない。
そのためルーラスは熊鬼闘士を睨みつけ、油断する隙を待っている。
「いまだっ!」
一瞬の隙をつき、ルーラスが迷う事なく走り出す。
鬼蜜を大切そうに抱えながら‥‥。
依頼主の待つ京都を目指し‥‥。