【リアルロボット】Orbital Marine Corps
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■ショートシナリオ
担当:恋思川幹
対応レベル:フリー
参加人数:10人
サポート参加人数:-人
リプレイ公開日:2007年04月18日
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●オープニング
尖った耳は異世界ティマイオスから来たエルフという種族の証である。
尖った耳の美しい少女は国連軍の軌道海兵隊(Orbital Marine Corps)、通称OMCの軍服を着ており、その長い金髪がオーストラリアの風に吹かれていた。
少女は手に持ったハープを爪弾こうとする。
――しかし、その指は動いてくれない。
なら、歌を歌いたい。
――けれど、口を開いても咽喉は息が漏れすばかりで、旋律を響かせない。
少女は唇を強く強く噛み締め、拳で大地を叩いた。
「音楽」という喜びを奪われた彼女の慟哭は、オーストラリアの風に吹かれて消える。
少女はOMCの軍服を着ている。
それは戦うことの意思表示。奪われた音楽の楽しさを取り戻す為に‥‥。
●CCDの侵略、ティマイオス人の追撃、そしてKnight Walker
西暦1960年。
地球人類は歴史上初めて、異世界からの訪問者を迎えた。
侵略者としてやってきたのが「Cultural invasion Creature of the Different world」(文化侵略的異世界生物)、通称・CCDである。
理屈は一切不明であるが、CCDは人間から文化を奪う能力を持っていた。
歌手の咽喉は歌を響かせず、楽器から音色は消えうせ、料理人の包丁は食材を分断するだけ、詩人の筆は韻律を失う。
CCDは“醜怪な動物”というべき姿をしており、軍艦の分類に準えて、戦獣(象)、重巡洋獣(熊)、軽巡洋獣(虎)、駆逐獣(狼)、航空母獣(ワニ。射撃武器を持つ唯一のCCD)などによって構成される。
地球の軍隊は兵器性能や戦術で勝っていたが、CCDの圧倒的物量により劣勢が続く。開戦より40年あまり、人類はその文化圏を縮小し、ユーラシアは完全にCCDの手に落ちていた。
だが、異世界からやってきたのはCCDだけではなかった。
中世ファンタジー風の世界ティマイオスからやってきた冒険者達である。ティマイオスは地球よりも先にCCDの侵略にさらされ、文化を奪われ滅亡寸前であった。ティマイオス人はCCDから奪われた文化を取り戻そうと、魔法の力で地球まで追撃してきたのである。
彼らの持ち込んだ14m級の人型兵器「Knight Walker」。
兵器としては原始的でお粗末なものであったが、魔法で生み出された巨人は戦車よりも積載能力に優れ、基本構造の頑強さを誇っていた。地球人類は搭載火器、センサー、アビオニクスの強化、跳躍ジェットの搭載など総合的な近代化改修を施し、初の地球製ナイトウォーカー「KW−4ファントム2」(ドネルソン社)を完成させる。この機体を嚆矢として、対CCD兵器は発展していくことになる。
特にCCDが侵攻拠点として作るレアー(巣穴)内部での戦闘で活躍している。
レアーは核爆撃にも耐える強固な内壁を持ち、複雑な立体構造である為、戦闘車輌は機動力を削がれ、歩兵では脆弱に過ぎ、戦闘ヘリが飛行するには広さが足りない。
ナイトウォーカーはレアー内部で有効な機動力を発揮出来る機甲兵器であった。
●Orbital Marine Corps
軌道海兵隊、通称OMC。
レアー攻略の為に考案された最新の戦術である軌道降下強襲の為に組織された国連軍の精鋭実験部隊である。
軌道降下強襲の概要は、地上部隊による大規模な陽動作戦と、その間隙を突いたOMCによるレアー入り口への軌道上からの直接降下である。強力な突入艇を使い、CCD防空網を突破、空中で分離した突入艇で質量攻撃を仕掛け、着地地点を確保する。
これまでの地上からレアーへ向けて進撃する戦術に替わる画期的新戦術として期待されている。
オーストラリアの砂漠地帯にある国連軍オーストラリア方面ウメラ基地のテストサイトで実証試験を繰り返してきたOMCは、軌道降下強襲戦術の実戦投入に向けた最終調整を進めていた。
新戦術の最初の標的となるのは朝鮮半島のソウルCCDレアーの予定で、この作戦が成功すれば、国連軍においてOMCの本格的な組織拡充も計画されていた。
人類反撃の第一歩となる‥‥はずであった。
2007年8月14日。
ウメラ基地に警報が鳴り響いた。敵襲ではないが、緊急招集を報せるその音に基地の将兵達はざわめきたった。
「諸君、悪い報せだ。ソウルのレアーから進発したCCDが日本の対馬を目指して大規模な侵攻作戦を開始した。日本国は自衛隊に防衛出動を発令し、これを阻止せんとするとともに、国連に対して、我々OMCの出撃を要請した」
OMC司令官の告げた内容に、ブリーフィングルームの中がざわめく。
「司令! 実戦投入は時期尚早ですっ! 最終準備はまだ済んでいませんっ」
士官の一人がそう訴え出る。
「大尉の言いたいことはわかる。私とて万全の状態で、軌道降下強襲の初陣に臨みたいと願っていた。‥‥しかし、だ。これはチャンスでもあるのだ。対馬侵攻の為にレアーに残っているCCDの戦力は“比較的”少ないはずだ」
司令官は「比較的」の部分にアクセントをつけた。CCDの物量は絶対的に少ない状態など、過去に確認されていない。
「また、対馬を奪われ、レアーを築かれた場合、地上軍による陽動が難しい対馬の面積、地形を考えると軌道降下強襲の成功率はソウルレアーよりも小さくなるだろう。現時点でのソウルレアーに対するOMCの投入は最良とは言えずとも、妥当な選択なのだ」
司令官はブリーフィングルームの面々を説得する。
「では、作戦の詳細を説明する」
作戦の概要は以下の通り。
自衛隊が対馬方面でCCDの侵攻を阻止する。同時に国連極東方面軍が仁川より上陸し、ソウルレアーに大規模陽動作戦を展開する。この二つの戦闘により、多くのCCDをレアー内部より引きずり出す。
十分に陽動が効果を発揮したところで、OMCによる軌道降下強襲を実施する。OMCはレアー内部に突入し、これを制圧、もしくは破壊する。
「変則的な状況ではあるが、軌道降下強襲の基本的な作戦展開に変更はない。我々は人類最精鋭の軌道海兵隊だっ! 準備が整っていないと泣き言を言う前に、軌道海兵隊としての誇りを見せろっ!」
司令官は部下達を叱咤するのであった。
「奪い取られた文化を取り戻せっ!」
一斉に敬礼するOMCの将兵達。
その中にあのエルフの少女の姿もあった。
●OMC主力ナイトウォーカー
基地内が慌しくなる。出撃に間に合うよう、整備班がぶっ通しで機体整備に取り掛かった。
OMCが擁する機体はKW−2(単座A型、複座B型)である。
軽量小型で高い運動性を誇る米国のKW−16をベースに日米で共同開発された。KW−16よりもやや大振りになっているが、高い格闘性能を受け継ぎつつ、オールラウンドな作戦に対応できる能力を付与された多目的ナイトウォーカーである。
武装は突撃銃、短機関銃、分隊支援火器、大口径滑口砲、ミサイルランチャー、シールド、刀などからの選択式。いずれも実弾兵器である。両腕と背中の二つウェポンラックで最大4つまで装備可能。
ただ、ウメル基地は兵器の見本市と呼ばれ、様々な実験部隊が集まっている。
ここでは世界各国の多種多様なナイトウォーカーや、最新型の超兵器(粒子砲、電磁投射砲、レーザー砲)などの運用試験を繰り返していた。
ティマイオスから送りこまれた最強のゴッドウォーカーも。
●リプレイ本文
●突入準備
衛星軌道を周回するOMCの宇宙母艦。
パイロット達は出撃前の緊張に包まれていた。
「‥‥」
トーネードKW.3のコクピットの中、緊張を解きほぐそうと歌おうとする。だが、エスナ・ウォルター(eb0752)の咽喉が旋律を響かせることはない。
「‥‥ぅ‥‥」
エスナの瞳に涙が滲む。内気な彼女にとって、歌は自分の気持ちを表現する為の手段であった。それだけに喪失感は一方ならぬものがある。
「‥‥エスナ」
前席のケイン・クロード(eb0062)が通信ウィンドを開いて、声をかける。
「この作戦が終わったらさ‥‥日本に朝顔の花を観に行こうよ。この時期はとっても綺麗らしいから、ね?」
ケインもまた文化を奪われたティマイオス人であるから、エスナの代わりに歌うことも出来ない。だから、今はこれが精一杯の慰めであった。
「うん‥‥約束。絶対‥‥二人、一緒に帰ってこようね‥‥」
だが、ケインの優しさはエスナには百万の味方にも等しい。その顔に微笑が浮かんだ。
『GHQよりOMC各部隊に通達。地上での陽動作戦は順調に推移している。降下作戦は予定通りに実施する。各員、最終チェックを実施せよ』
作戦全体を指揮している総司令部からの通達が行われる。
「マスター、機体各部の最中チェックに入ります。主機に火を入れます」
「了解、機体管制はカスミさんに任せるよ」
KW−15ストリーク・イーグルのコクピットでカスミ・シュネーヴァルト(ec0317)と結城夕貴(ea9916)は機体のチェックを行っていた。
ストリーク・イーグルの愛称は公式には「電光石火の鷲」という意味であるが、ストリーキングにかけて「素っ裸の鷲」とも言われる機体である。
「僕のKW−2の桜花プランは却下されたけど、このストリーク・イーグルもよほど無茶な機体だからね」
アメリカの傑作ナイトウォーカー・KW−15Aイーグルの記録更新用の特殊仕様機である。CCDという共通の敵を持って尚、継続していた冷戦構造によりナイトウォーカーの性能競争が米ソ間で盛り上がっていた時代の仇花である。
ナイトウォーカーの性能の指標の一つである加速性、機動性、運動性の記録を更新する為に、装甲はおろか、塗装まで剥ぎ落とされた文字通り「裸の鷲」であった。
夕貴が提案した『桜花』プランはあまりにバランスを欠いた設計思想や改修費用に見合う戦果を期待できないことから却下された。代わりに夕貴の専用機としてストリーク・イーグルがウメラ基地に運び込まれた。
「システム、コネクテッド。ルクス、コントロール行くわよ」
ルクス・ウィンディード(ea0393)の意識がナビゲータの魔力を媒介にして、KW−2Bの管制コンピュータに接続される。これこそが地球製ナイトウォーカーの戦闘能力を飛躍的に向上させた要素のひとつである。
同じ人型とはいえど、体格や間接構造の違いなど、人体構造とナイトウォーカーの機体構造はまったく別物である。その為、パイロットの動作イメージを直接機体に伝達しても、ナイトウォーカーはチグハグにしか動けない。
ゴッドウォーカーを含む、ティマイオス製ナイトウォーカーが特別な操縦者を必要とするのは、この為である。いわゆる「ナイトウォーカー操縦」の技術は、自己の肉体と機体構造のズレを適確に把握し、機体に適した動作イメージを伝達する為の技術なのである。
「あんた、嫌な眼をしてる。いつ死んでもいいって眼だ」
「覚悟くらいしてるわよ」
「覚悟? 俺は今すぐベッドに入ってガタガタ震えたいよ」
地球製ナイトウォーカーは、その「ナイトウォーカー操縦」の技術を管制コンピュータが代替している。コンピュータが感知したパイロットの動作イメージは、人体と機体構造の差異による誤差を瞬時に補正して機体に伝達される。これによって、ルクスやケイン、夕貴達のような「ナイトウォーカー操縦」技術のない者達の操縦が可能になっているのである。
その補正効率は人間が行うよりも高く、パイロットの細やかな動作イメージまでも余すところなく適確に機体に反映される。例えばケインのソニックブームのような達人の技も再現可能にするのである。
●突入
流星がソウルの上空に煌き、そして降り注いだ。
「OMCが来たぞ!」
「頼むぞぉ! 俺達の未来を切り開くために!」
ソウル周辺で陽動作戦を行っている国連軍地上部隊は降り注ぐ流星に、喚声を上げた。
『敵対空迎撃でOMC部隊の3パーセントが撃墜されました!』
『OMC部隊第一波、着地成功しました。後続部隊の着地地点を確保を継続します!』
通信が飛び交い、データリンクによって常に更新される戦域情報がめまぐるしくコクピットに踊る。
「作戦の初期段階は計画通りに推移していますね。準備不足ではありましたけれど、どんな状況であろうと作戦を遂行するのが我々軍人の使命です」
着地に成功したクレア・サーディル(ec0865)はKW−2Aを自分の手足として前進していく。
「部隊前進! 空軍の航空支援に乗じて入り口付近に橋頭堡を築きます!」
「了解! 突撃します!」
ファング・ダイモス(ea7482)が命令を下し、クレアはそれに答える。剣と盾を構えての突撃するスタイルはティマイオスの騎士としての戦い方でもある。
前方のCCD集団が爆発に包まれる。空軍の航空支援であるが、その爆炎を乗り越えてCCDが押し寄せる。
「くそ! こう数が多いと一匹ずつ切り殺していくのは面倒そうだな!」
「銃で掃射すればいいんです! クレアさんの道を開きます!」
ルクスとファングの銃撃がCCDを牽制する中、クレアは目標に定めた重巡洋獣に突撃する。
横合いから軽巡洋獣が割って入ってくる。だが、クレアはそのまま速度を落とさずに駆け続ける。
「邪魔です!」
軽巡洋獣の爪を盾で弾き飛ばすと、脇をすり抜けていく。軽巡洋獣はクレア機の追撃にかかろうとするが、
「こっちに背中向けてんじゃねーよ!」
「やあああっ!」
ルクスの銃撃が軽巡を撃ち倒し、クレアは重巡の斬り捨てる。重巡洋獣の巨体が大地に倒れる。
「つぎ、いきます!」
「クレアさんを錐にして、戦線を押し上げて下さい!」
ファングは搭乗機であるKW−2・スーパー改で、クレアの後に続く。より重武装化しつつ、運動性を確保したKW−2の改良試作型である。より強いKW−2を望むファングの為に取り寄せられた機体であった。
「馬鹿野郎! 味方を撃ち殺すつもりか?」
「すまない、やっぱりはっちゃけすぎだったようだ」
危うく味方の爆撃に巻き込まれそうになったシン・ウィンドフェザー(ea1819)は、誤射をおこなったイディア・スカイライト(ec0204)に文句を言う。
イディアは魔法使いとしては一流だが、ナイトウォーカーパイロットとしては未熟であった。本来なら複座機のナビゲータに適正がある人間である。彼女が単座型のKW−2Aに搭乗して出撃した一事をとっても、今回の出撃に際する混乱は見て取れた。
「後退しろ! 未熟な爆撃手なんてCCDよりも性質が悪い!」
「すまないが、そうもいかないようだ。包囲されつつある」
「ちっ! しばらく大人しくしていろ! 俺が突破口を開く!」
「音紋索敵では十時方向の敵が薄く、味方部隊にも合流しやすい」
シンが突撃の構えを見せると、イディアは的確な攻撃ポイントを指摘してみせる。
「ちっ、言ってることは正しいのか。いくぞ!」
「うん、サポートは任せて、シンさん」
シンはナビのエルフの少女に呼びかけると、搭乗機であるKW−16Dで十時方向の敵中に飛び込んでいく。
KW−16はKW−2の開発母体となった機体で、ファイターマフィアと呼ばれる格闘戦信奉者が開発を推進させた機体である。多目的化されたKW−2よりも格闘戦能力に特化されている機体と呼べるだろう。実際、格闘戦能力においては後発のKW-2に勝るものがある。シンがKW−2の格闘特化カスタマイズを整備班に要求したら、この機体が届いたのである。D型は後期生産型の複座である。
突撃したシンはサブマシンガンで牽制しつつ、単分子高振動ブレードを振るって突破口を切り開いていく。
「ついて来い!」
●地の底へ
『カークラン、発進準備はいいか?』
「う‥‥緊張するなぁ。僕、実は今日が初陣なんです」
「ほらほら、ボクのパイロットともあろうものが弱気はダメさー」
緊張を隠さない様子の龍堂光太(eb4257)を小さな妖精が激励する。カークランの意思体である妖精ルシエラである。
『現在、作戦は順調に推移している。先行した突入部隊は第九階層を制圧中。レアー内部に突入したら、ビーコンに従って最前線へと突入せよ』
「損耗率は? どうなってますか?」
『部隊損耗率は40パーセント。作戦続行に支障はない』
「‥‥作戦が終わった後、部隊の仲間とどれくらい再会できるんだろうな‥‥」
「私を壊したりすんなー!」
「わかってるよ、ルシエラ」
光太はルシエラを撫でてやった。
レアー内部。第九階層。
「敵軽巡洋獣の集団突撃がくるぞ」
ファング機の後席に座ったイディアが持ち前のナビゲーション能力で津波のように押し寄せる敵の動きは味方に報告する。
「ここを突破できれば、第十階層はすぐそこだと言うのに」
イディアの言葉にファングは歯噛みする。
レアーの奥に進むにつれて兵士達にかかる精神的重圧は重くなっていく。その結果、ファング機の本来のナビゲーターが恐慌を起こして戦闘続行が不可能になったのである。
そこで臨時措置としてファングのKW−2・スーパー改の後席にイディアが乗り込むことになった。
「ここは私の出番でしょう。マスター、電磁投射砲のスタンバイ、入ります!」
「わかったよ、敵集団に穴を開けてやろう!」
カスミの提案を受けて、夕貴がストリーク・イーグルの背中に装備していた電磁投射砲を構える。
「エネルギーライン接続、弾丸装填、エネルギー充填入ります! ‥‥大気に宿りし精霊達よ‥‥ライトニング・サンダーボルト!」
カスミの体が緑色の光に包まれ、その掌から電撃がほどばしる。コクピット内にあるクリスタルに注ぎ込まれたそれはストリーク・イーグル内部のエネルギーラインを通って、電磁投射砲のエネルギー源となる。
「撃てます!」
「夕貴機の射撃にあわせて、突破口を切り開くぞ!」
シンの呼びかけに一同が臨戦態勢をとる。
夕貴が引き金を引くと、磁界によって亜光速まで加速した弾丸が軽巡洋獣の群れに次々と叩き込まれ、CCDの先鋒を蹂躙する。
「すごい、こんな武器が量産されたら戦争なんてきっとすぐに終わります」
「敵の一角が崩れたよ! 突撃!」
その威力に見とれていたクレアは、ケインの声にはっと我にかえる。
「クレア・サーディル、いきます!」
もともと格闘嗜好の多い部隊であるから、自然と突撃攻撃が多くなる傾向にあった。夕貴が敵を蹂躙した部分へ突撃し、傷口を広げるように戦う。
「よし、僕らも行くよ、カスミさん」
「はい、サポートは任せて下さい」
夕貴は極限まで軽量化された機体を疾走させ、敵陣に切り込んでいく。軽い機体と出力の高い跳躍推進器によって一気に敵陣に肉薄する。
「疾風迅雷、電光石火! 命知らずの鷲を舐めるなっ!」
「電源供給! ヒートソード加熱開始」
再びカスミがライトニングサンダーボルトを放つ。ストリーク・イーグルはジェネレーターさえも必要最低限の小型なものに換装している為、強力な武装を使用するための電源供給はカスミの魔法に頼る部分が多かった。
「ケイン、敵左翼の後続に重巡洋獣、戦獣も来てます!」
「わかった。夕貴、聞こえる?」
エスナの報告に聞いて、ケインは夕貴に呼びかける。
「なに? ケイン兄さん」
「敵の後続におっきいのが来てる。小さいのは僕が露払いする。大きいのはそっちの武器のほうが有効だ」
「わかったよ、大きいのは任せて!」
ケインのトーネードが宙を舞い、剣をふるって軽巡洋獣を切り捨てていく。ウィングの展開による滑空時間の増加は駆逐獣のような小さな敵に煩わされない利点がある。
「でかけりゃいいってもんじゃないよ!」
ケイン機に続いて敵中に飛び込む夕貴。標的はCCDの中で最大の大きさを誇る戦獣である。
象を思わせる長い鼻がストリーク・イーグルに襲い掛かる。夕貴は機体を捻りこんで、その鼻の内側に潜り込む。
「この僕のイーグルに当てられると思わないで!」
「マスターっ、敵の脚に注意っ!」
「っ! 風のように駆け一撃必殺! スマッシュアタック!」
カスミの警告を受けて戦獣の足元を旋回すると、戦獣の横腹に向けて渾身の一撃を叩き込んだ。
戦獣の巨体が沈む。
「カスミさん、夕貴さんに次の標的のデータ送ります。今、ケインが道を開いてます」
カスミが見ると、ケインのトーネードが敵中に道を作っている。
「マスター! 座標出します!」
「わかった。ところで、さっきから腕の振りに違和感があるんだけど‥‥」
夕貴が戦獣に止めを刺す一瞬にも感じていた違和感をカスミに報告する。
「わかりました、手動補正をかけます」
(「軽いストリーク・イーグルの弱みですね。間接のダメージが動作補正に影響を出し始めましたか」)
機体にダメージが蓄積されていくと、管制コンピュータによる補正と実際の機体の間にズレが生じてくる。
ケインは夕貴の為に道を切り開いていく。
軽巡洋獣の鋭い爪を受け流し、逆に反撃の一撃を加える。装備を切り詰めてきた分、トーネードは文字通り竜巻の如く、あるいは飛燕の如く身軽に飛び回っている。
「ケイン、軽巡洋獣の死骸の陰から駆逐獣が!」
「くっ! 何時の間に忍び寄ってたんだ?」
エスナの警告を受けて、ケインは宙に舞い上がる。ケイン達が立っていた場所に駆逐獣の群れが押し寄せた。小型で攻撃力も低いが、数が揃えば駆逐獣も恐ろしい敵である。
「乱れ飛べ、飛燕!」
ケインが真空の刃を立て続けに放ち、駆逐獣を肉塊にかえる。
「ケイン、倒した敵の分だけ視界が悪くなり始めてます。音紋、呼吸音センサーのデータにも気を配って下さい」
「左翼の二機が孤立し始めている。援護は出来る機はいないか?」
イディアはレーダーから戦況を読み続けている。
「ルクスだ! 俺が回れるが、右翼を支えるのは任せていいのか?」
「左翼が崩れれば、どちらにしろ右翼も包囲される。頼む」
「了解!」
イディアの呼びかけに応えたルクスが、左翼にいる夕貴とケインのフォローへ向かう。
「獣が‥‥一体、何匹いやがんだ? まあ、いいさ、全滅させりゃ細かい数は気にならないし」
ルクスは突撃銃と剣をバランスよく使いながら、左翼側の支援へと向かう。
「ルクス! 結城機がトラブルを起こしているわ!」
「なんだと?!」
後席オペレータがルクスに報告する。
『調子に乗りすぎた? 転ぶだなんて‥‥』
『機体のフレームが歪んで、動作補正が‥‥!』
通信機から夕貴とカスミの声が聞こえてくる。
『せめてカスミさんだけでも‥‥うわぁ‥‥』
『マスター! よくも! ライトニングサン‥‥』
通信が途絶えた直後、ストリーク・イーグルのコクピットから電光がほどばしった。しかし、それきり駆逐獣の群れに飲み込まれて姿を消してしまった。
装甲を極限まで減らした機体は脱出装置を使う間もなく、引き裂かれてしまったのだ。
『夕貴! 夕貴っ!』
夕貴と親しかったケインの声は冷静さを欠いているように思われた。
「ケイン・クロード! 落ち着け! でないと、死人に引き込まれるぞ!」
ルクスの呼びかけも空しく、今度はトーネードがCCDの群れに飲み込まれしまう。
「脱出しろ! その機体はもう駄目だ!」
両腕に突撃銃を装備して、ケイン機の周囲を掃射するルクス。脱出の為の隙を作り出す。
『お願い‥‥します。‥‥ベイルアウト!』
エスナはコクピットの中にレバーを思い切り引いた。
脱出装置に火が入ろうとした瞬間――
弾幕を突き抜けた軽巡洋獣がトーネードのコクピット前席に牙を突きたてた。
『ケイーーーンっ!!』
ルクスの耳にエスナの絶叫が響いた。
「何があっても諦めない‥‥そう、絶対に二人で帰るって約束したんだから」
電気系統を破壊された薄暗いコクピットの中、ケインはティマイオスから持ってきた自分の剣を手にとり、引き抜いた。CCDを相手にするには心許ないが、ないよりはマシである。
振り向けば後席のシートは無くなっている。エスナは無事に脱出したのだ。
「さあ、僕も行か‥‥ない‥‥と‥‥」
破壊されたコクピットの一部がケインの腹部を刺し貫いていた。
「こちら、ルクス! 左翼の戦線が崩壊した! 後退して後続部隊との合流を進言する!」
ルクスはエスナの泣き声を通信機越しに聞きながら、イディアに具申する。
「待って、高速で接近する機影が1! ルクス、さっさと退避しなさい! これ、きっと‥‥」
ルクスの後席のナビゲータが言った時、大剣を一本手にした甲冑の騎士が飛び込んできた。
「味方は‥‥どこですか?」
巨大な甲冑騎士の姿をしたゴッド・ウォーカー『カークラン』のコクピットで、光太は視線をせわしなく動かす。
IFFやレーダーを搭載できないゴッド・ウォーカーは、現在の地球の軍隊の中で運用するのは難しい機種である。通信機も歩兵が使うものを無理矢理コクピットに押し込んでいるだけだけである。
「その辺り、味方がいないようなら!」
目視で見当をつけた光太はカークランの特性であるE・フィールドを大剣に纏わせて、左翼のCCD集団に横凪の一撃を見舞う。
ただ一振りで、血煙が噴き上がり、周囲のCCDが一掃される。
「うっそ‥‥何、この威力‥‥」
「あたしの体だぞー、これっくらい当然だー!」
自分の攻撃の威力の大きさに光太は驚愕し、ルシエラははしゃいでみせた。
CCDの集団を薄絹を引き裂くように、カークランは蹴散らしていく。
「あれが‥‥神代の時代の巨人兵器‥‥」
「すげえ、俺達の機体なんか話になんねえ」
クレアもシンもその威力に呆然とする他なかった。
「E・フィールド・ショット!!」
力場を収束して撃ち出したカークランの攻撃は、モーセの如くCCDの海を割って、人類に道を切り開いてみせた。
●開放
第十階層へと続く、緩いスロープになっている通路を降りていく。
戦闘は圧倒的な戦闘力を見せ付けている光太のカークラン。それにナイトウォーカー部隊が続く。
「聞こえる‥‥」
「えっ?」
KW-16の後席でエルフの少女がぽそりと呟いたのを、シンは聞いた。
「聞こえる‥‥故郷の音色が‥‥ティマイオスの歌が‥‥」
エルフの少女の顔に歓喜の色が浮かんでいる。それは共にナイトウォーカーに乗るようになってから今まで、シンが一度も見たことがない表情であった。
『前方に発光体を確認! 各種センサーに反応はありますか?』
クレアの問いかけに、シンは前方を眺める。確かに通路の出口と思われる先に光が見えてきた。淡い光である。
『発光体にエネルギー反応はない。各機、周辺警戒を怠らずに前進だ』
イディアが呼びかける。
「こちらシンだ。こっちの相棒が、歌が聞こえる、と言っている。各機の音響センサーに反応はあるか?」
『いや‥‥反応は‥‥聞こえる‥‥?』
『こちら、カークランの光太。歌だ! 歌が溢れている』
先頭を進んでいた光太が報告する。
『歌だけじゃありません。楽器の奏でる音色が、紡がれた物語が、詩が、絵画が‥‥この区画に満ち溢れています!』
通路を抜け出た先は大きなホール状の区画であった。そこには今まで奪われてきた文化が満ち溢れていた。クレアはその様子に圧倒されてしまう。
壁一面、床一面、天井一面に無数の小さな窪みがあり、不思議な発光体がはまっている。奪われた文化がそこから繰り返し、繰り返し再生されているようであった。
「他人から奪うだけで、手前ェ自ら生み出すことのできねぇ能無しどもが‥‥奪ったものでご満悦ってかぁ!」
シンはその光景に怒りを感じていた。後席に座るエルフの少女がどんなに苦しんできたかを知っていたからであろう。
『ファング・ダイモスよりCP。第十階層の到達区画にて、CCDに奪われた文化と思われる不思議な発光体を発見しました。指示を請います』
『CPよりファング・ダイモス。しばし、待て。最重要案件としてHQに報告する。別命あるまで当該区画を確保せよ。それと現在、別ルートからも第十階層に向けて部隊が進攻中だ』
『ファング・ダイモスよりCP、了解しました。‥‥しかし、文化を奪ったCCDは、これを一体何に使おうというのでしょう?』
ファングは状況を後方の指揮所に報告してから、自分の疑問を呟いた。
『でも、これを取り戻せば、作戦も終りです。OMCの軌道降下強襲戦術の有効性も証明されて、CCDからすべての文化を取り戻すのも夢物語じゃなくなりました』
光太は嬉しそうに語っている。
「‥‥お前の歌はここにあるのか?」
シンはKW−16を前進させながら、後席のエルフの少女に聞いた。
「えっ?」
「あのオーストラリアの大地で、歌いたくても歌えなかった、あの歌はあるのか?」
虚をつかれた少女に、シンはもう一度聞いた。
「‥‥うん‥‥座標、出すね」
シンは視界に表示された座標の位置へと進んでいく。
『部署は違うけど、恋人が居るんです。作戦が終わったらプロポーズするつもりなんですよ。花束と指輪も用意してあります』
『ナイトウォーカーは玩具じゃないと啖呵を切った、あの方ですね』
シンは聞こえてくるそんな会話も、後席の少女と同じだと思った。奪われた文化を取り戻すのに、後一歩のところまで来た喜びであろう。
「‥‥ん? ‥‥揺れ、てる?」
示されていた座標位置まで、あと少しというところで、シンは床が揺れていることに気付いた。
『各機、警戒を厳にしろ。音紋センサーに巨大な反応がある』
すぐにイディアも異常をセンサー上に発見する。
『来るぞ。戦獣でさえ話にならないほど‥‥巨大なCCDだ』
イディアが報告する間にも床の揺れは激しくなる一方である。
やがて、ホール状の区画いっぱいに詰めたような、名状し難い醜怪さを持つ巨大CCDが奥から這い出てきた。
「正真正銘のバケモノめ!」
シンが吼えるのと、巨大CCDの表面に蠢いていた触手がミサイルのような勢いで伸びてくるのは同時であった。
反射的に触手を切り払うシン。
「今から俺は死に旋(めぐ)る風、『殲嵐』になる! その醜怪な体、切り刻んでやるぜ!」
両手に単分子高振動剣を装備したKW−16はたちまち切り刻まれた触手の山を作り上げる。
触手を斬り払うのは容易いことであったが、その数の多さが問題であった。どんなに切り刻んでも、たちどころに新しい触手が生えてくる。
『触手は再生可能なようです、何とか接近して本体を叩かなくては』
触手のミサイルのような突きを盾で受け流し、鞭のように叩きつけてくる攻撃を斬り払いながら、クレアは敵の特性を見ている。
『E・フィールド・ショット!』
光太がカークランの一撃を放つが、無数の触手が威力を相殺して本体まで十分な威力が届かない。
「俺が行くっ!」
シンは機体の跳躍推進器を噴かして巨大CCDに向けて突撃する。運動性を限界まで引き出して、アクロバティックな機動で、触手の間をすり抜けて本体へと向かっていく。
だが、近づく程に触手の攻撃は数を増して行く手を遮る。
一本の触手がKW−16の左腕を切り落とす。
「なんとおぉっ!」
残った右腕で必死に防戦するが、脚が、肩が、頭部が触手に刺し貫かれ、機体が床に叩き付けられる。
その衝撃で床の窪みの中の発光体に砕けて、光の粒子が舞い上がった。
「まだだ! 命を預かっているヤツがいるからには‥‥」
機体を立て直そうとシンが試みた時、歌声がコクピットの中に響いた。
機体の座標がマークされた座標と重なっていた。
「‥‥心残りが一つ無くなっちまったじゃないか‥‥」
シンは美しい歌声を聴きながら、苦笑いした。
その歌声と機体は巨大CCDの猛攻の中に沈んでいった。
「コラー! もう引き上げないと、あんたの体力がもたないぞー!」
カークランの妖精ルシエラがけたたましい。
搭乗者の体力や精神力に左右される部分もあるが、光太のような一般的なパイロットがゴッドウォーカーに連続搭乗できる時間はおよそ二時間前後である。ゴッドウォーカー投入のタイミングが遅かったことも、その事と無関係ではない。
「ここで逃げたら、逢わせる顔がない‥‥それに、僕たちだけの戦いじゃないんだ!」
だが、光太に退くつもりはない。
「ゴッドウォーカーを預かった身なんだ! 僕が突破口を開けなくて、どうするんだ!」
体力と精神力を消耗し、朦朧とし始めた意識を必死に奮い起こして、光太はカークランを駆る。
「降りろ、女は死なせられない」
「はぁっ!?」
覚悟を決めたルクスが後席のナビゲータに重々しい口調で告げると、彼女は素っ頓狂な声をあげた。
「機体を自爆させて、この膠着状態を打破する。少しでもヤツを道連れに‥‥」
「あんた、バッカじゃないの!? あたしが降りたら、あんたはこの機体を指先一つ動かせやしないじゃない!」
「推進器を噴かすくらいのことは、マニュアル操作で‥‥」
「はいはい、そんなの無駄死に無駄死に! あんたには二つの選択肢しかないわ。あたし諸共自爆するか、あたしと一緒に最後まで戦い抜くかよ!」
キッパリと断言されてしまって、ルクスは可笑しくて堪らず軽口が飛び出す。
「ははは、そんなに俺と一緒にいたいのか。いやぁ、愛されてるなぁ」
「ば、バカっ! そ、そんなんじゃないわよ!」
(「自爆は‥‥できねぇな」)
ルクスはKW−2に二刀を構えさせた。
「悪いですね、あなたは最初からパートナーだったわけでもないのに」
「単座に乗り続けてた方が危険だったろう。キミのような凄腕と組めたのは楽しい体験だった」
ファングはイディアが臨時搭乗であることを、改めて思い出していた。
「少し無茶な戦い方をします。覚悟してもらっていいですか?」
「それは死ぬつもりの戦い方か?」
「いえ、生きて帰るつもりです」
「ならば覚悟しよう。死力を尽くした結果であれば、華々しく散るのも、生きて凱旋するのも、どちらも悪いことではない」
『突撃を敢行する志願者を募る。敵戦力が強大であることから、望まぬ者は一時撤退し、後続部隊に合流してよし』
イディアが生き残りのパイロット達に呼びかける。
すぐさま、ルクス、光太が返事をする。
「私も志願します」
最後にクレアも答えた。
『これで全員か。ポジションはカークランを先鋒にする。行くぞ』
「クレア・サーディル、行きます!」
カークランが巨大CCDに向けてE・フィールドを全開に広げて飛翔する。
クレアは剣と盾を構えて、それに続く。
カークランの放つ力場の輝きが群がる触手を蹴散らし、ナイトウォーカーがそれに続く。
「よく機体が動いてくれる!」
ルクスは二刀を振るって縦横に触手を切り裂いていく。
突撃銃と剣をバランスよく使い分けてきたルクスのKW−2は整備が十分であったことも含めて、これまでの激戦を潜り抜けて尚、良好な状態を保っていた。ギリギリの状況で生死を分けるのは兵器の威力ではなく、そういったことである。
『唸れぇ! カークランの刃っ!』
E・フィールドを纏わせたカークランの大剣が巨大CCDの醜怪な体の一部を抉り取る。
傷の深さ故か、その部分から触手が再生する様子はない。
『ごめ‥‥タ‥‥シャ‥‥』
だが、カークランも糸が切れたマリオネットのように、その場に各坐した。
「活動限界まで‥‥。あの傷口に取り付きます! そこまで肉薄すれば、触手の攻撃も出来ないはずです!」
クレアは機体を跳躍させると、光太が命懸けで残した巨大CCDの傷口へ取り付こうとする。
触手が迎撃する。が、傷口の部分の触手が失われていることで、その熾烈さは幾分和らいでいる。
『その傷口に! 渾身の一撃を!』
それを見たファングはまっすぐに傷口に向かっていく。
触手が装甲を叩くが、怯む様子を見せない。
『この装甲は! そう簡単に貫けん!』
絶妙な見切りによって、攻撃を装甲の厚い部分で受け止めきったファングは、巨大CCDの傷口に機体の自重さえも加えた衝撃波攻撃を直接叩き込んだ。
巨大CCDが断末魔の咆哮をあげた。
「やりました! ファングさん、イディアさん、早く離脱を!」
巨大CCDは力尽き、その肉塊が崩壊していく。
『すまない。最後に一撃だけ‥‥致命傷を受けてしまったよ』
イディアのそう返答してくる。ファングの声は既に聞こえない。
『だが、最初にレアーを潰した人間として名を残すのも悪くない。文化を取り戻したら、私達の物語を‥‥』
そこで通信が途絶えた。
「イディアさん! ファングさん!」
巨大CCDが崩壊し、それに巻き込まれた発光体が次々に砕け言って、光の粒子が舞い上がっていく。
「‥‥必ず‥‥必ず語り継ぎます」
クレアはこの作戦に貢献した、すべての戦死者の為に敬礼した。
「ケイン‥‥私、また歌えるように‥‥なったよ‥‥だから、空の上から聞いていてね」
この日。ソウルレアー攻略作戦の成功によって、東アジアとエスナの故郷を含めるティマイオスの一部地域の文化が人類の手に取り戻された。