人魔大戦ファインザード『対決、五将軍!』

■ショートシナリオ


担当:西川一純

対応レベル:フリー

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

リプレイ公開日:2007年04月16日

●オープニング

 幻想世界ファインザード。
 魔の炎と呼ばれた試作アーマードウェポン(以下AW)、フランベルジュの完成に端を発し、その後世界中を巻き込む戦乱を展開した世界である。
 数々の戦いの末、フランベルジュの正体‥‥異世界の悪魔、マルコキアスを撃破した英雄たち。
 世界は平穏を取り戻し、戦艦『ヴァリガルマンダ』を母艦とするカスタムAWは封印され、そのパイロットたちは各々違う道を歩み始めた。
 各国は軍備を縮小し、戦乱で受けた傷を癒すため、復興作業に力を入れ、人々は穏やかな時間の中に居た。
 しかし、その僅か十ヵ月後‥‥世界の情勢はまたも激変した。
 不意に赤く染まった空に空間の裂け目が生じ、そこから『悪魔』と呼ばれる異世界の怪物たちが襲来したのである。
 その数は多く、また個々が強いこともあり、軍備を縮小していたこの世界の軍隊では大苦戦を強いられる。
 そんな状況を打開すべく、封印を解かれ、再び結成されたカスタムAW隊。
 人類初の悪魔城攻略を成し遂げるなどその戦果は華々しく、遊撃隊として世界を駆け回っていた。
 そして、悪魔出現から、3ヶ月が経とうとしていた時―――

「来たか。今日お前等を呼んだのは他でもない。ついさっき、世界悪魔対策機構AW開発局から、新たな試作AWが完成したという報告があってな。お前たちの中からテストパイロットを選出しようってわけだ」
 戦艦ヴァリガルマンダの艦長は、ブリッジに上がってきた二十名近いパイロットたちを見回して言った。
 その誰もが歴戦の勇士で、新型AWの完成に色めき立っていた。
「だがお前たちも知ってのとおり、試作兵器はあくまで試作。実用には耐えるはずだが、カタログスペックをしっかり発揮するか、予期しない不具合が発生したりしないかは実際動かしてみないとわからんもんだ。また、自分がその機体に合っているかどうか‥‥それもまた問題ではあるが、今は悠長に実験を重ねている暇がない」
 テストパイロット候補の一人が、手を上げて何故かと問う。
 それに対し、艦長はしばし頭を掻いてから呟いた。
「実はな‥‥悪魔どもから挑戦状が届きやがったのさ。このヴァリガルマンダを名指しでな」
 72匹いるという魔王‥‥つまり上級悪魔たちの中でも、特に秀でた力を持つ5匹を『五将軍』と呼ぶという。
 その五将軍から直接、世界最強の部隊への挑戦状。
 それは、どちらが最強かを決める頂上決戦に他ならない。
「その五将軍の名は、ベールゼブブ、サルガタナス、アスモデウス、アスタロト‥‥そして、マルコキアスだそうだ。完成型のAWを渡してやれないのは心苦しいが、試作AWも開発局が寝る間も惜しんで作り上げた逸品ぞろいらしい。あとはお前たちの腕次第だ!」
 激突する最強対最強。
 マルコキアスはすでに一年以上前に撃破済み‥‥残るは4匹。
 そして、その4匹に挑む8機の新型試作AWとは―――

 ハイズストーム:可動式のウイング・バインダーを装備しており、空戦能力と運動性に優れる。武装は腰部のパルスブレード2本とパルスユニオンライフル。光学式になったライフルは、高威力のシングルモードと威力は低いが2丁に分割できて取り回しのいいツインモードが切り替えられる。特殊システム『テュルフィング』の完成型を搭載しており、30秒に1回、5秒先までの未来を予測することが出来る。

 バルガエンペラス:格闘能力と装甲に優れる。パルスサーベル機能もある複合魔光学盾、クラッシャーウォールを両腕に装備し、腰部に超振動原子分解ナイフを2本所持。遠距離兵器は光学式のパルスライフルのみだが、機体表面全体に実弾・パルス兵器及び魔法攻撃を軽減するトリニティコーティングが施されている。

 グランドレーン:装甲と砲撃能力に優れる。背中にギガンティックカノン(パルス式)を装備し、バックパックに展開型のレールキャノンを所持。機動力はないが高火力を有している。手持ち武装としては、腰部パルスブレードが一本とパルスバズーカが一門。バズーカはエネルギーパック式に変更。

 ムーンバルト:特殊戦闘型。秀でた能力は無いが、背部に無線コントロール式パルス機動砲台『アルテミス』を5機装備、オールレンジ攻撃が可能。アルテミスは搭乗者の危険に対し、自動的に防衛行動をとる機能がある。ただし、その他の武器は腰部パルスブレード一本とパルスライフルのみ。パイロットの技量と直感が問われる機体となっている。

 ギガノマウンティア:防御特化型で、格闘性能にも秀でる。機体全体に対魔光コーティングが施され、一定以下の威力のパルス兵器及び魔法攻撃を遮断、無効化する。光学・実体・魔法攻撃を同時に防げる合成盾、ロイヤルシールドを二つ装備。これは常に機体の周辺を漂っており、攻撃に対しオートで防御することが可能。武器は全長30メートルまで伸びる巨大パルスブレード『ムラクモ』とパルスライフルのみ。

 ヴェルスアクエリア:中距離格闘型。トレース式パルスワイヤーや無線コントロール式シェイバー・スラッシャー等、特殊な格闘兵器を装備するため、ミドルレンジ戦闘が得意。その代わり近接兵器は右腕ドリルステークのみ、遠距離兵器は一切持たずというピーキーな機体になってしまっている。特殊装備としてジャミング・チャフを持ち、レーダー・肉眼共に視認し辛くなることが可能。

 ガルフプラズニカ:機動力重視型で、スピードに優れる。8機の中で最も早く、最も脆いという極端な機体だが、そのスピードは驚異的。武器は腕部内蔵型パルスブレードが2本(手首に搭載)と、バックパックから展開するパルスキャノンが二門。また、反衝撃魔光フィールドを発生させれば体当たりで敵を攻撃するすることも可能だが、2分稼動するとその後1分起動できなくなる。

 ロードフレアニス:爆撃型。秀でた能力は無いが、全身に火薬武器を搭載した、通称飛行するミサイル倉庫。バックユニットミサイル、脚部、肩部からのスプレッドミサイル、腰部にロケットランチャー。手持ち武器に光子ミサイルランチャー二丁を装備。バックユニットの推力で重量のわりに素早く、手首搭載のパルスブレード×2でも戦える。

●今回の参加者

 ea0439 アリオス・エルスリード(35歳・♂・レンジャー・人間・ノルマン王国)
 ea0828 ヘルヴォール・ルディア(31歳・♀・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea3329 陸奥 勇人(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3811 サーガイン・サウンドブレード(30歳・♂・クレリック・人間・フランク王国)
 ea4202 イグニス・ヴァリアント(21歳・♂・ファイター・エルフ・イギリス王国)
 ea6381 久方 歳三(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb0826 ヴァイナ・レヴミール(35歳・♂・クレリック・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb4803 シェリル・オレアリス(53歳・♀・僧侶・エルフ・インドゥーラ国)

●リプレイ本文

●それぞれの想い
「‥‥前回は、このハイズストームの開発に関わってたから戦えなかったけど‥‥そのお陰でフィンの能力アップは巧く行ったよ。‥‥尤も、予測時間が長くなった分、作動できる回数が減ったデメリットがどれだけ影響するか、だね」
「カナンのバアルか‥‥性根まで腐り落ちたか? まぁいい、今は疾駆するのみだ。出撃するぞ」
 ツーマンセルを4組作り、ヴァリガルマンダのカタパルトから順次発進するAW。
 紅蓮の闘士、ヘルヴォール・ルディア(ea0828)の駆る紅い翼を持つ機体‥‥ハイズストーム。
 アリオス・エルスリード(ea0439)が駆る黒と黄色で彩られた機体‥‥ガルフプラズニカ。
 まずはA班と呼称されるこの二機が、先陣を切って出撃した。
「頼むぜ相棒、最後まできっちり付き合ってくれよ。あのマルコキアスと同格の4匹相手だ。最初からクライマックスと行こうか!」
「この戦いに私達が敗れるような事があれば、人類に生き残る道は残されていないでしょうね。全人類の為にも負けるわけには行きません。出撃致します。(フン、自分の運命を他人に委ねてたまりますか、生き残るために最善の策を尽くすのです‥‥)」
 マリンブルーの機体、ヴェルスアクエリアには陸奥勇人(ea3329)が、白を基調とした機体のバルガエンペラスにはサーガイン・サウンドブレード(ea3811)が搭乗し、B班として行動する。
 ちなみに、陸奥の機体にはミストルテインという特殊システムが組み込まれていたりする。
「ふん、魔王と果し合いとはな。連中の頭がわざわざやって来てくれるんだ。盛大に歓迎してやろうじゃないか。そして終わらせる。悪魔共の狂った宴を」
「なんとか一つだけでも改造が間に合ってよかったでござる。未来のための盾として、防御は拙者にお任せを」
 蒼と黒系の色で纏められたグランドレーンに乗るのは、特殊戦闘型、爆撃型にも搭乗経験のあるオールラウンダー、イグニス・ヴァリアント(ea4202)。薄い茶系統で彩られたギガノマウンティアのパイロットは、常にこのタイプのAWを愛用する久方歳三(ea6381)。
 C班の二人は操縦技術に定評のある人物だが、久方は突貫作業での改造を嘆願し、装備の改造をする徹底振りであった。
「‥‥最後は俺たちか。‥‥ロード、往くぞ」
「あらあら、口数が少ないわね。別にいいけれど。それじゃD班、出ましょうか」
 かつてマルコキアスによって苦い思いをしたヴァイナ・レヴミール(eb0826)は、赤いロードフレアニスに。
 白と黄色のムーンバルトにはシェリル・オレアリス(eb4803)という聖職者の女性が乗っており、D班である二人が発進することで、全ての機体が発進を終えることになる。
 向かうは、果し合いという名目で戦うために指定された場所。
 8人と8機の人類最強チームVS4匹の魔界最強チーム‥‥果たして、勝利はどちらの手に?
 今、人と魔の戦いは、大きな転機を迎えようとしていた―――

●魔王五将軍
『ククク‥‥よう、人間の皆様方。よく逃げずに来やがったなァ? 俺たちが魔王五将軍‥‥そして俺様がサルガタナスよ! 短い付き合いだろうが、覚えておきな!』
『私の名はアスタロト。フッ‥‥光栄に思いたまえ。そんな物に乗らなければ対抗も出来ないクズが、魔界の大公爵である私に遊んでもらえるのだからね。せいぜい楽しませてくれ』
『キャハハハ! アタシはベールゼブブ。ごちゃごちゃ言わずに、アタシたちのおやつになっちゃえー! ‥‥って、あんたも自己紹介しなさいよ! 一応魔界の剣聖なんて呼ばれてるんでしょ!?』
『‥‥‥‥アスモデウスだ』
 魔王五将軍はすでにその場に来ており、8人を待ち構えていた。
 しかし、その姿は一行が考えたり、今まで見てきたような禍々しい悪魔のそれではなく、巨大ながらも人間とほぼ変わりない容姿だったのである。
 そういえば、過去に撃破したマルコキアスも巨大な人の姿はしていたが‥‥?
 メガネをかけた、線の細い青年風味のアスタロト。
 チンピラ風味な外見と口調のサルガタナス。
 無邪気な小さい女の子風味のベールゼブブ。
 寡黙なオジサマ風味のアスモデウス。
 とはいえ、相手は魔王五将軍。外見で油断していたら即刻死に繋がるだろう。
 そしてそれは、すぐに杞憂ではないと実感させられることとなった―――

●激戦
『フッ‥‥クズにしてはいい盾を持っているようだね。まさか私の雷を弾くとは』
「すまない、久方。助かった」
「無線コントロールが出来るように改造しておいてよかったでござるよ‥‥(汗)」
 アスタロトがイグニスに向って放った雷魔法を、久方が飛ばした盾が遮断する。
 とはいえ、ロイヤルシールドもまた弾き飛ばされたので、防ぎきったとまでは言えないが。
 どうやらアスタロトは魔法を得意とするタイプらしく、積極的に接近戦を仕掛けてこようとはしない。
「遠距離戦ならばこちらも望むところだ。グランドレーンの火力、思い知るがいい!」
 パルスパズーカで攻撃を仕掛けるイグニスであったが、アスタロトは魔法障壁を展開してそれを弾く。
 どうやら間合いが遠すぎて、お互い得意なレンジで戦っていては決着が付きそうにない。
 ギガンティックカノンならば魔法障壁打ち破れたので、突破口になるとすればこれだろう。
『クズがここまでやるとはね。流石にマルコキアスを倒しただけのことはあるようだ』
「マルコキアス殿はもっと手強かったでござるよ。それに、拙者たちの機体も進化しているのでござる!」
 今度は火炎魔法が飛んできたので、久方はギガノマウンティアでグランドレーンの前に立ちはだかり、援護に回る。
 かなりの衝撃が機体を揺らすが、世界最高の防御力を誇るギガノマウンティアを砕くには至らない。
「‥‥このままでは埒が明かない。久方、接近戦を仕掛けるぞ」
「危険度は鰻上りでござるが‥‥それしかないでござるな」
 二人はアスタロトの魔法攻撃が晴れた瞬間を狙い、機体を突撃させた。


 一方その頃、ヘルヴォールとアリオスは、ベールゼブブと際どい空中戦を展開していた。
 こちらのAWも五将軍も全員空を飛べるのだが、この二人と一匹の場合はレベルが違う。
『アハハハ! いいじゃんいいじゃん、速いよキミ! アタシに付いて来られるなんてビックリ仰天だよ!』
「なんだこいつは‥‥詐欺だ! 俺のベルたんを返せ!」
「‥‥何寝惚けてるんだい、アリオス」
「‥‥いや、すまない。何かが混線したようだ」
『よくわかんないけど、イメージと違ったかなぁ? それとも、本来の姿の蝿の方がいい!?』
「いや、是非今のままで」
 少女の姿をしたベールゼブブは、アリオスの狩るガルフプラズニカとほぼ同等の速度で飛行する。
 そこからかなりの精度で魔法攻撃を撃ち込んで来るので、非常に厄介なのだ。
 巨大とはいえ、少女の姿をした者との戦いに、いくらかの躊躇が生まれているのもまた事実だが。
『ちぇっ、速度はそっちが上かぁ! けど、旋回はアタシの方が速い!』
「‥‥アリオス、右から魔法が来るよ。5個に分裂する魔法だ」
「了解‥‥!」
 ハイズストームのシステムで未来を先読みしたヘルヴォール。その指示でアリオスがグン、と一気に機体を上昇させると、先ほどまで居た場所を五条の光が奔っていた。
『あっちの紅いの、アタシと同じような予知が使えるんだ!? アハハ、いいよいいよ、面白い! どっちがより先の未来を見通せるか勝負っていうのもいいね!』
 無邪気に笑うベールゼブブを前に、A班の二人はどう立ち向かう‥‥?


「‥‥こいつ‥‥!」
「危ない!」
 バチン、という音が響き、ヴァイナに振り下ろされていた剣が弾かれる。
 シェリルがアルテミスの一機をコントロールし、アスモデウスの剣を狙い撃ちしたのである。
『‥‥‥‥』
 寡黙なアスモデウスは、別段驚いた風もなく、空を疾駆して次の攻撃態勢に入る。
 その剣線は鋭く、魔界の剣聖と呼ばれているというのも、決して虚言ではないと実感できる。
 一旦距離が開けば、ロードフレアニスの弾幕やムーンバルトのアルテミスで近づくことを阻止できるのだが、相手は一瞬の隙があるとすぐに間合いを詰めて来るのだ。
「‥‥ならば‥‥」
 わざと弾幕の薄いところを作ってやると、アスモデウスは当然とばかりに猛スピードで斬りかかって来る。
「ムーンバルトは伊達じゃないわ!」
 どの角度から突っ込んでくるかが分かっているのであれば、狙うのは容易。
 シェリルはアルテミスでの一斉砲撃を行うが‥‥!
『‥‥‥‥!』
「は、弾いた!? 全部!?」
 突如出現させた2本目の剣を用い、二刀流で光線を全て切り払うアスモデウス。
 そのまま一気にヴァイナに肉薄する!
「‥‥零距離‥‥耐えてみろ」
 しかし、自らが爆発に巻き込まれる危険を冒してまで零距離ミサイル攻撃を敢行したヴァイナの前に、アスモデウスは一瞬の判断で防御姿勢に移行、ダメージを最小限に抑えた。
 相性が悪そうな相手を前に、二人はどうにも攻めあぐねていた。


『ハッハッハッ! おらおらどうしたぁ、こんなもんか!? これで人類最強たぁ笑わせてくれるぜェッ!』
「つっ、強い‥‥!」
「野っ郎! 攻撃が速い上に重い! 気ぃ抜くとバラバラにされちまいそうだ!」
 サルガタナスと戦っているサーガインと陸奥は、目下大苦戦を強いられていた。
 攻防一体のクラッシャーウォールで攻撃に行きたいサーガインではあったが、相手の手数の多さに防御一辺倒にならざるを得なくなっており、中距離から行われる陸奥の援護でなんとか距離を取ることに成功。
 しかし、今度は陸奥の方が接近戦を挑まれ、苦戦することになる。
 なんとかして距離を取ると、それはそれでサルガタナスが精神攻撃に切り替えてしまい、手を焼いてしまうのだ。
「がっ‥‥ぐっ、またかよ!」
「くっ‥‥た、盾で防げない技は困りますね‥‥!」
『この手でバラバラにするのとはまた違った趣があっていいんだよなァこれが! そっちの盾のヤツの本音はなかなか興味深いぜェ!? 何だお前、どっちかってーと俺様たちに近い性格してるじゃねェか!』
 いかにバルガエンペラスの盾でも、パイロットに直接作用する魔法は防げない。
 そして、秘めた本心などを無粋に読み取られてしまうのは、かなり屈辱的だ。
「馬っ鹿野郎! 人間を、俺たちを舐・め・る・なっ!!」
 ヴェルスアクエリアの特殊システム、ミストルテインの起動レベルを上げ、精神攻撃を弾いた陸奥は、シェイバースラッシャーを発射し、サーガインに向けられた攻撃をカットする。
「‥‥助かります。私が接近して防衛線を張りますので、やつの背後に回ってください。私たちは、ここでしぬわけにはいかないのです」
「おうよ! とりあえず、あいつが言ってた本音云々ってのは聞かなかったことにしといてやらぁ!」
「‥‥それはどうも」
 どの組を見ても、こちらが優勢と言える戦闘はない。
 人類最先端の技術の結晶を持ってしても、五将軍との力の差は大きいのであろうか?
 このままでは、ジリ貧で不利かと誰もが思った時‥‥思いもしなかった事態が―――

●結集
『‥‥つまらん。やめだ』
 そう言って、手に持っていた剣を消すアスモデウス。
 ヴァイナとシェリルだけではなく、AW隊全員を見渡して更に言う。
『‥‥マルコキアスを倒したというから、もう少し期待していたのだがな。我が相手にするまでもない。後は勝手にしろ』
 高速でさっさとどこかへ行ってしまうアスモデウス。他の五将軍の面々は、またかという表情をする。
『勝てる相手ならさっさと潰してしまえばいいと思うんだがね‥‥相変わらず分からないやつだよ』
『ケッ、ほっとけほっとけ! どうせあいつもマルコキアスと同じで、悪魔ン中では変わりモンなんだからよ!』
『変に騎士道精神みたいなの持っちゃってさー。いいもん、アタシはまだまだやるよ! そろそろお腹も空いてきたから、一人くらい食べちゃおうかなー!?』
 五将軍が一人減ったことで、戦闘の状況は大きく変化する。
 2対1という図式は崩れ、8対3というような状況に自然と移行したのだ。
 そして、再び口火を開いたのは、やはりベールゼブブであった。
 爪を光らせ、超スピードで一番近いシェリルへと向う!
「ふむ‥‥マルコキアスの言ったとおりだな。‥‥堪え性も、ついでに品もない」
 反衝撃魔光フィールドを発生させたアリオスは、体当たりで突っ込んでベールゼブブを弾き飛ばそうとするが、すでに予知していたのか回避される。続いてパルスキャノンを連射するが、それも読まれた!
「どこまでぶっ続けで読めるかな!? ミストルテイン、オーバーブーストだぜ! 行くぞ魔王、夢幻と舞い踊れっ!」
 金色に輝きだしたヴェルスアクエリアがジャミングチャフを巻いて全周囲から攻撃するが、ベールゼブブが本気でスピードを出したのか振り切られてしまう!
「アルテミス、追わなくてもいいわ。味方に当たらない様、適当に乱射して!」
「‥‥ガキが‥‥。フザケルナ、全火気開放‥‥灰燼と化せ! ターゲットインサイト! 撃ちつくす!」
『ちょっ、ちょっとぉ!?』
 流石にここまで無数の光線やミサイルが飛んできては困るのか、焦り気味で空中を機動するベールゼブブ。
 そこに、盾を有効活用して斬りかかるのが‥‥!
「本来は後の先を取る方が得意なのでござるが‥‥!」
「クラッシャーシールドは、もとよりこういう用途のために開発されたものでしてね‥‥」
『ばぁーか、それは予知してたもん! 死んじゃえーっ!』
「‥‥『それは』ね。こっちはどうだい?」
『なっ‥‥!?』
 予知においてはベールゼブブのほうが一枚上手だが、彼女もそう連続で予知できるわけではない。
 そう気付いたヘルヴォールは、相手の予知ができないタイミングを予知し、パルスユニオンライフルをシングルモードで発射する! 避けられない‥‥と思われたのだが‥‥!
『ふむ‥‥大人数で協力すると全然戦闘力が違うようだね。ここは一旦退いたほうがよさそうだ』
 割って入ったアスタロトの魔法障壁で、ベールゼブブは間一髪難を逃れていた。
『チッ、本来の姿ならこんな連中なんざ一捻りなのによォ!』
『くっそー、次は絶対殺しちゃうんだから! 特にそこの紅い予知するやつ、お前はアタシが倒して食べちゃうんだから!』
 アスタロトが広域爆発の魔法を使い、こちらが怯んだ隙に離脱していく五将軍たち。
 追おうと思えば追えたが、深追いはしない方が無難だろう。
 かくして、果し合いは人類側の勝利で終った。
 しかしこれが、五将軍たちとの長い激闘の幕開けに過ぎないことは、全員が確信していたのだった―――