闘い抜け!熱き武道の果てに
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■ショートシナリオ
担当:相楽蒼華
対応レベル:フリー
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
リプレイ公開日:2005年04月15日
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●オープニング
この世界にはバトルドールという人型ロボットが存在する。そして、そのバトルドールを扱えるのは「武人」のみ‥‥。
武人は己の拳をバトルドールに乗り、武人にぶつける。己の武を、この世界に轟かせる為に‥‥。
「さて、そろそろバトルマスター大会の時期ですかな?」
「今年は何ヶ国集まるのでしょうねぇ?」
「それは予想出来ませんが。今回は結構集まりそうですなぁ」
「自称武人が何人来るやら」
女性は苦笑を浮かべ、男は溜息をつきながらも笑って立ち上がる。
「バトルドールのマスター戦。いい戦いになりそうなんですがなぁ‥‥」
「全ては成り行きにしかなりませんよ、こればかりは‥‥」
そして、バトルマスター受付会場にはある程度の人数が押し寄せて来ていた。皆武人を名乗る者達ばかりだ。
「さて、今回のルールを説明します。リングは各国に用意された土地。皆さんにはそこをリングとして闘って頂きます。バトルドールが大破した時点で負け。もしくは、降参という形でも負け。無論、リングから外に出されても負けとなります」
司会者らしき男が笑顔で説明を始めていた。
「トーナメント形式となっていまして、最終的にはバトルマスターを決定したいと思います。各国代表は抽選で決めさせて貰います。バトルドールは各国代表がセッティングして貰っても構わないでしょう。さぁ、此方の書類へ血判とサインを!そうすれば登録受理となりますっ! 皆々様の熱き戦いを我々は心から望んでおります!」
●リプレイ本文
闘い抜け! 熱き武道の果てに
●前回までのあらすじ
地球には、大暗黒期という失われた時代がある。
かの聖書にある終末『アルマゲドン』、別名『ぶちこわしの一週間』の末に生き残った人類は、地球環境の回復と保全を図るために宇宙へと移住した。
そのころ作られたのは、ボールマン型と呼ばれる密閉型の筒状スペースコロニーだった。
人類は、考えた。戦争は大きなリスクを伴う。特に『板子一枚底は地獄』というスペースコロニー環境での戦争は、互いの殲滅戦を意味した。地球を破壊し、どこまでも続く不毛な争いを続ける――それは、本意ではない。
しかし、このような状況になっても国家の軋轢というものは絶えない。
そこで、人類は戦争にルールを定めた。闘技場を設定し、コロニー国家から代表者を出して、レギュレーションに則った機動兵器に乗せて戦わせる、法ある戦争――ガンダ‥‥ゲフンゲフン、失礼。『バトルドール・ファイト』である。
以来200年、全ての紛争は、4年に1度行われるバトルドール・ファイトで解決されることになった。
■最終話:愛ある限り戦うべし
●ネオ日本コロニー・メインポート
「どうなっているんだこりゃあっ!」
ネオ中国代表の一人、風月皇鬼(ea0023)が、愛機『龍帝虎皇』のコックピットで咆えていた。マシンに異状をきたした――というより、マシンのOSに不正な侵入が行われているのである。
周囲を見ると、他の者たちも同様のようであった。がくりと膝をつき、あるいは倒れるバトルドールたち。宇宙船ポートに取り付いたわずかな者たちも、徐々に無力化されつつあった。
今回のバトルドール・ファイトは、ネオ日本の勝利だった。祝勝パレードも行われ、そしてこれより4年間、世界の主導権はネオ日本が手にすることになった。
だが、突然異常事態が発生したのである。ネオ日本のコロニーは外部との連絡を断たれ、そして何者かがその内部を侵食し、そして増殖していた。
ネオ日本が開発した禁断のドール、カオス細胞で作られたカオスドールが、暴走したのだ。
宇宙に撒かれたカオスドールの子機たちは、全てのコロニーに対して攻撃を仕掛けた。そして有史以来初めて、人類は一丸となって一つの敵に立ち向かうことになったのである。今も宇宙では、世界各国のバトルドールがカオスドールの子機と激しい戦いを繰り広げている。
しかし、敵は強かった。
「これでは七面鳥撃ちにされます! マスク! なんとかしてください!」
バトルドール『白兵鬼』の中から、黒畑丈治(eb0160)が相棒のマスク・ド・フンドーシ(eb1259)に向かって叫んだ。
「フゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜! 任せてちょうだいな!!」
通信用のインカムからどこぞのハードゲイのような奇声を発しながら、(すいません、テラ倫上書けません)な格好をした変態、もとい、マスク・ド・フンドーシが言う。巡航艦『イングウェイ』のコンソールにマスクは張り付き、ものすごい速度でキーボードをたたき始めた。
「DK回路切断。アクチュエーターパワー補正。MAAP駆動スケール修正。カッツ回路リンク。敵ホスト侵入キー検索。端末ガレリウスに二次接続。クルトリークバランス補正。メルビンワクチン投与。MLL起動。これでどうよっ!」
ずぁっ!
各国のマシン脳を侵食していたプログラムが、停止した。そして、緩やかに駆除されてゆく。
「ネオ日本のホストコンピューターを黙らせたわ! 今のうちにドールのOSを再起動してアップデートしてちょうだい! そしたら組織閉鎖! 長くはもたないわよ!!」
マスク・ド・フンドーシが言う。格好がアレなわりには、というかそれ以上の活躍であった。
各国のメンテたちがいっせいに端末にとびつく。そしてドールのOSを書き換えて、そして回路を閉鎖した。物理的には、通信用電波しか接続していない。この状態ならば、それはそれほどの脅威ではない。リュオン・リグナート(ea2203)は風守嵐(ea0541)のサポートとしてドールの再起動と各種設定を行うと、すべてのメンテナンス用回線を遮断した。機体をモニターできなくなるが、ハッキングを避けるにはこれしかない。
「俺は自分の腕と、あんたを信じる!」
リュオンが言った。
空魔玲璽(ea0187)も、例外なく全てのことをやり通した。そして余裕なのか、ワインを一口すする。
「さて皇鬼。機体の調整とサポートシステムの準備は完了した。後は分かってるな?‥‥お前の好きにやれ」
「もちろんだ!」
『龍帝虎皇』が起動する。そして右手の龍型のクローでカオスドールの子機を噛み砕き、左手の虎牙型の高周波ブレードで寸断する。
「ここは俺に任せろ! お前らは行け!」
皇鬼が言った。
「わかったのである! 血路は俺が開く! くらえ! 『鋼鉄の嵐』!」
ネオ独逸代表の、風守嵐のバトルドール『ステイルストーム』が、両手に持ったバトルドール用忍者刀を構え独楽のように回転し始めた。その姿はコンマ3秒で音速を超える。そしてまさに、嵐のように進撃を始めた。進路上の全てのものをなで斬りにし、宇宙船ポートからバルクヘッド(圧力隔壁)まで進む。そこには内部へと続くエレベーターがあるはずである。
●ネオ日本コロニー・メインシャフト
「むっ!」
嵐が回転を止めた。エレベータの前に、巨大なエクソスケルトン(外骨格作業マシン)が居座っていたのだ。それはカオス細胞に侵され、まがまがしく変貌を遂げていた。
迷わず、嵐は突っ込んだ。エクソスケルトンに一撃を与え、そして入り口からどかせる。
「こいつは俺がやるのである! お前たちは行くのである!」
レッドアラート(警告表示)が束になって表示されたコックピットで、嵐は言った。
「頼む!」
ケイン・クロード(eb0062)がエレベーターに乗り込む。扉を閉める瞬間、『ステイルストーム』が短く敬礼をした。
●ネオ日本コロニー・内殻
エレベーターの先は、居住区画になっている。おおかたの居住区画はシェルターに閉鎖、非常排出されており、今はただのがらんどうと化していた。
そして、そこに『それ』は居た。巨大で醜悪な化け物。周囲のあらゆる物を侵食し食い尽くして増殖する、カオス細胞の塊。
禍々しく成長した、カオスドールがそこに居た。
「エスナ!!」
ケインが叫んだ。カオスドールの核には、もっとも貪欲な生物、人間が組み込まれているのだ。それはかつて、このバトルドール・ファイトの勝者から選ばれるはずであった。しかしその計画は失敗し、霧散したはずであった。
しかし、一つのアイデアが再び、このカオスドールに命を吹き込んだ。それはこのカオスドールの核に、生物をはぐくむ存在――女を組み込むことであった。そしてそれに、紆余曲折を経て選ばれてしまったのが、ケインのパートナー、エスナ・ウォルター(eb0752)なのだった。
「エスナ! 返事をしろエスナ!!」
ケインが呼びかける。しかしそれに返答したのは、数十に及ぶカオスドールの兵器たちであった。打撃を受け、戦闘能力を失ってゆくケインのバトルドール。
――信じろ。
ケインが思う。
――エスナを信じるんだ。
ケインは最後のバーニア噴射をすると、全ての武装を除装し、カオスドールに突っ込んだ。
『ケイン!』
はっきりと、知覚できた。カオスドールの邪悪な意思を打破したエスナの意識が、ケインのなかに飛び込んでくる。うけとめたものは、愛。
その時、カオスの攻撃はすべて、ケインのドールを避けるように、あらぬ方向へ捻じ曲がった。
「エスナ!」
がつっ!!
ケインのバトルドールの右腕が、カオスの中核を貫く。つかみ出したその手には、女性の姿が。
カオスドールが、停止した。
ケインたちは、勝利したのだった。
●その後
この事件の後、人類は一致団結し、世界政府の樹立を達成することになる。だがそれは、またの話である。
【おわり】
(代筆:三浦“SAN”昌弥)