ドゥッカーの戦い 〜宇宙に掲げろ海賊旗〜

■ショートシナリオ


担当:シーダ

対応レベル:フリー

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

リプレイ公開日:2005年04月15日

●オープニング

 無限に広がる暗黒の宇宙‥‥
 広大な宇宙の海原には多種多様な恒星系が存在し、知的生命体が存在している。
 しかし、その全てを手中にする知的生命体など存在せず、小さな銀河において小競り合いをしているといったところである。

 さて‥‥
 この銀河でテラと呼ばれる惑星を発祥とする知的生命体たちが精霊魔法の秘術によって育んだ文明が、外宇宙航行船や空間跳躍技術を発達させ、彼らが宇宙に進出してから数十世紀。多くの国家が勃興し、興廃した。その間にいくつかの恒星系を加えて、奇跡的に同時期に存在した様々な知的生命体との連合によって星間国家マーズを形成するに至っていた。生物の本能としての欲求を克服できぬまま文明を築いてきた彼らに地域紛争こそ絶えなかったが、空間戦力同士の対決が扮装の雌雄を決する事が多かったために民衆的には概ね平和であった。
 その平和に波紋を起こしたのは、1つの遊星の接近だった。その遊星は、皇帝によって統治された遊星船団国家アトランを標榜(ひょうぼう)し、小惑星を縊(くび)り潰し、惑星を破壊して、星間国家マーズへと侵攻を開始したのである。
 遊星船団国家アトランの超破壊ミサイルによる恒星破壊に端を発し、両陣営は全面対決以外に選択肢はないかのごとく、事態は推移していった。
 そして‥‥

 恒星ドゥッカーを中心とする星域でも、暗黒の空間に展開する艦隊の姿が確認され、今まさに戦いの火蓋は切られようとしていた。
「錨を上げろ。発進する」
 今は宇宙海賊としか認識されていない彼らが、歴史の中にどのように名を残すのか‥‥ それはまだわからない。

 戦いの到来‥‥
 英雄の出現‥‥
 伝説の予感‥‥

 ドゥッカー星域で戦いが始まる‥‥

●今回の参加者

 ea0029 沖田 光(27歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea0204 鷹見 仁(31歳・♂・パラディン・人間・ジャパン)
 ea0664 ゼファー・ハノーヴァー(35歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea1569 大宗院 鳴(24歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea3546 風御 凪(31歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea4137 アクテ・シュラウヴェル(26歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea7528 セオフィラス・ディラック(34歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea8991 レミィ・エル(32歳・♀・レンジャー・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)

●リプレイ本文

●起動
 部屋の中央には液体に満たされた脳が安置されており、そこからは複数の配線が壁の基盤に接続されている。
 突然、風の精霊力を動力に超微細基盤を電荷が駆け巡った。
「僕を起こしたのは誰?」
 大艦隊に包囲され危地にある遺失船『建御雷』の中央制御室で、ある意識が目覚めようとしていた‥‥

 ビィーッ、ビィーッ‥‥
 船内に響く警報音に船員たちは慌しく走り回っている。
「敵艦から一斉砲火! 避け切れません」
 風御凪(ea3546)の叫びが船内に響き渡った。
 ゴゥ‥‥ ドバゥム‥‥ パリィン‥‥
「第3艦橋大破!! こちら凪! 重傷2名の状況を送る! 医療班は手元の端末で確認してくれ!」
 激しい振動と共に建御雷の船体下部が爆発する。
「レミィ! 左舷弾幕薄いぞ!」
「キャプテン、そんなこと言っても利き腕じゃないんですから!」
 左右のアームレイカーでエネルギーターレットを操作するものの、圧倒的な攻撃機を撃墜し切れていない。
 ズズン‥‥
「エーテルリアクターに過負荷! シールド、長くはもちません」
 風御がパネルを操作して船に応急処置を施していく。
 レミィ・エル(ea8991)の瞳が赤く染まり、髪が逆立ち始めた。
「フフ‥‥ いつまでの好きにはさせません。わたくしに敵うと思っておりますの! 目にかかったのが運のつきですわ!!」
 尋常でない指捌きで攻撃機を墜としていく。
 ガガン‥‥
 マーズ艦隊からの砲撃は容赦なく続く。
「きゃあ‥‥」
「博士のところにいてほしいと言っておいたはずですが」
 鷹見仁(ea0204)は、大宗院鳴(ea1569)を一瞥しながら舵輪を握る。
「沖田さんと一緒に冒険をしていた頃にも同じくらい危険だったことは幾らでもあるさ。でも、何とか切り抜けてきた」
「キャプテン‥‥」
 各員は自分たちの作業をしつつ、鷹見の声に耳を傾けている。
「わたくしのせいで‥‥」
「クワァ」
 鷹見の肩にとまっていたトリが、長い首を伸ばして鳴の頬に顔を寄せた。
「どうすれば、皆さん、仲良くできるのでしょうか」
「鳴姫様‥‥」
 衝撃によろめく鳴をアクテ・シュラウヴェル(ea4137)が支える。
「キャプテン、この方は銀河先住民族の古代アトラン人!
 滅びゆく我らエルフ族に語り継がれてきた伝説の姫なのです。
 この方なら、この建御雷の‥‥、いえ、発掘戦艦・倭建命の機能を復活することができるはず」
「わたくし、みなさんのことが好きです。戦いは嫌いですけど、あなた方が殺されなければならないとは思いません」
 アクテに誘われ、鳴は宇宙羅針盤の前に立つ。
 その時、マントと黒髪を靡かせた沖田光(ea0029)のホログラフが映し出された。
「沖田船長!」
「話は後。鳴さん、お嫌でなければ、貴方の力を僕達に貸しては貰えませんか?
 生きる為に、そして、この星の海に住む、全ての人々の笑顔を守る為に」
 沖田の声と共にブリッジの羅針盤が輝き、祈りを捧げる鳴の体が浮かび上がる。
「宇宙(そら)に遍(あまね)く精霊よ‥‥ 力を貸してください」
 その声に応えるようにブリッジ内のエネルギーゲージが跳ね上がっていく。
「火・風・地のゲージを中心にエネルギー上昇中。
 主砲・3連衝撃砲バイパス連結、連射体勢に入りました。
 マシンアーム展開可能、三刀流抜刀術『銀河一刀両断』の封印解除。
 船首六精霊砲『黄泉平坂』起動中です」
 風御が驚いたようにパネルを読み上げていく。
「刻が来たんだな。光」
「すいません、同調と機能の把握に時間がかかり過ぎました。と言っても、船の能力を全て引き出せている訳ではありませんが」
「お前に船を返す時が来たんだな」
「いえ‥‥ 今、この船の船長は仁です。僕は一応死んだ身ですから」
 爽やかな笑顔で沖田は鷹見を見つめた。

●黄泉平坂
 マーズ艦隊旗艦のメインパネルには形を変えていく建御雷の姿が映し出されていた。
 船首前面4つ、船首舷側に2つ、光点が輝きを増している。
「何をする気かは知らんが、多少破損しても古代アトラン人だけ手に入れば問題はない。痛めつけろ」
「各艦、斉射」
 司令の声に副官が指示を出す。
 光条は海賊船に吸い込まれ、いくらか弾かれつつも確実にダメージを与えている。
「海賊船周辺に異常! 地・水・火・風・月・陽、全てのエレメントが集結中。凄まじいエネルギー量です!!」
「ついに起動しましたか」
 慌てるオペレータを気にもせず、副官が笑みを浮かべた。
「お前が笑うなど珍しい」
「いえ、あの娘が古代アトラン人であるという確証が得られたのが嬉しいのです」
「成る程、お前らしい」
 司令は腕を組み、鼻で笑うと、オペレータに海賊船との回線を開くように命じた。

「船長〜、奴さんから通信が来ていますが回線繋ぎますか?」
「繋いでくれ」
 メインパネルにマーズ艦隊司令官の姿が映し出される。
「久しぶりだね、建御雷の諸君‥‥ 沖田くんも一緒とは‥‥ ハハ、いつぞやの傷は癒えたのかね?」
「心配してもらうほど親密な関係ではなかったはずですが」
「成る程、確かにその通り。用件だけを伝えよう。大宗院鳴を渡し、武装解除すれば、命だけは助けてやる。
 何を悪あがきしようとしているのか知らないが、無駄な抵抗は止めることだ」
 マーズ艦隊司令が不敵に笑う。
「大丈夫、敵の狙いは彼女、そしてこの船です。うかつに沈めはしません」
「甘いな。お前たちを野放しにしておくほど、我らは寛容ではない。手に入らなければ、殲滅するまで」
 ハッタリだと沖田は確信を持てなかった‥‥
 この男ならやりかねない‥‥
「はっ‥‥ 鳴、いけない!」
 沖田が叫ぶとサブパネルに発進する戦闘機が映し出された。
「皆さんが助かるのなら、私はどうなっても構いません」
 鳴からの通信がブリッジに響いた。

●深き森
「銀河に名だたる『深き森』の情報を以ってしても、この状況を打開するのはまず無理だと計算に出ているぞ。
 ただし、鳴が戻れば、発掘戦艦の機能は取り戻せる。5分とまではいかなくてもかなり勝ち目は出てくるだろうが‥‥」
 ブリッジの入り口に背もたれるゼファー・ハノーヴァー(ea0664)に、鷹見は仕方ないといった風に苦笑いを浮かべた。
「またクラッキングをしたのか」
「私もまだまだだね。侵入できてない記憶エリアが、まだ沢山残ってるんだ。だからこそ沈んでもらっては困るんだが」
 ゼファーは上目がちにニヤリと笑う。
「お前さんのことだ。何か情報を売りに来たんじゃないのか?」
「今度の情報は高いぞ。何せ嬢ちゃんが囚われている場所だからな」
 キャプテンを除くブリッジ要員がガバッと体を動かした。
「良かろう。情報料は何だ?」
「この戦いの戦闘データ一切」
 ブリッジに沈黙が走った。
「調子に乗らないでください。そもそも、あなたはクルーではないんですから」
 風御がバイザーを上げて振り向いた。
「わかった」
「キャプテン!」
 風御は信じられないといった風に鷹見を見た。
 鷹見はメインパネルのマーズ艦隊を見つめたまま微動だにしない。
「交渉成立だな。ほら、風御!」
 ゼファーの投げたキューブを間一髪受け止め、風御は情報連結ボードにキューブを挿入した。
「それじゃあな」
 ブリッジを背にゼファーは一度だけ手を振ると通路に消えていった。
 サブパネルにレコードが展開され、それを操作して開いていくとマーズ艦隊の全容が映し出されていく。
「こんな事もあろうかと彼女に発信機をつけておきましたの」
 アクテの眼鏡がキランと光った。
「よし、敵艦隊に特攻をかける」
 鳴を傷つけるわけにはいかない以上、斬艦刀を用いた突貫。それ以外に鷹見たちに取る手はなかった。
「マシンアームとクリスタルソードの展開確認。バーニングソードの船首衝角への付与を確認。
 三刀流抜刀術『銀河一刀両断』発動可能です」
「頼みますよ。仁」
「総員白兵戦用意、対衝撃体勢を取れ! 全砲門、前に立ち塞がる全ての敵をなぎ払え!」
 舵輪が展開し、横倒しになったそれに乗ると、鷹見はアームトレーサーの保支を受けた。
 対艦抜刀術の使い手である鷹見を以ってしても、これほど巨大な船での格闘戦は始めてである。
「ライトニングアーマー、エントリー。荷電粒子バリア展開完了」
 風御が武装を次々に展開していく。
「システムオールグリーンですわ!」
 主砲を連射しながら敵を牽制するレミィが、侵入経路のシミュレートをメインパネルに投影した。
「目標、敵巨大戦艦‥‥ 行くぞおぉぉぉぉ!」
 主機関が唸りを上げ、建御雷は加速を続け、両翼の斬艦刀が巡航艦を真っ二つにしながらマーズ艦隊の陣を引き裂いていく。
 目前に戦艦が割り込んでくる。
「仁、そのまま突っ込んでください! この船を託した、貴方の腕を信じています‥‥」
「三刀流抜刀術『銀河一刀両断』!!」
 シャキィィン!!
 6つに分断された戦艦が、建御雷の後方で爆沈した。

●接舷揚陸
「白兵戦用意! アンカーチューブ発射準備!!」
 アンカーチューブ内には与圧装甲服を着けた海賊たちが集結していた。
「アクテ博士、必ず鳴を確保する。任せろ」
 メタリックカラーの騎士風与圧装甲服はマーズ軍陸戦隊精鋭の証、そのなかでも隊長格にのみ与えられるのが十字剣と十字盾‥‥
 ただ違うのは、それが全て黒塗りだということだ。
 今のセオフィラス・ディラック(ea7528)にマーズ軍のカラーである青は似合わないと、自ら望んだ黒だ。
「キャプテン‥‥ あなたの腕は知っているが、ここは私たちだけで十分だ」
「そう言うなよ」
 現れた鷹見は黒騎士に笑みを送った。
「さぁ、行くぞ」
「アンカー射出!!」
 ズムッ‥‥
 アンカーが敵の外壁に食い込んだ衝撃が海賊たちに伝わる。
「き、来ました」
 マーズ旗艦の通路の壁が溶け、回転するビットが壁をこじ開けた。
「ゼッフリャ粒子、濃度上昇中」
「銃は使えんぞ」
 マーズ兵の叫びは途絶え、床で弾んで士官の足元に転がった。
 視界を埋めていた部下たちが下がり、マーズ士官の視界に黒衣の騎士の姿が映った‥‥
「くそっ! 裏切り者のディラック! 黒のセオフィラスか!!」
 銃剣を構えて突撃してくるマーズ士官の切っ先を漆黒の十字剣で受け流すと斬り伏せた。
「邪魔をすれば斬る」
 マーズ兵は逃げ出した。

 マーズ旗艦のあちこちで爆発が続く。
 司令官席の傍らには気を失った鳴が座らされている。
「大事なウチのクルーなんだ。返して貰うぞ」
 両手に愛用のスライサーベルを構えた鷹見の表情は、穏やかだが怒りに満ちている。
 司令は立ち上がって剣を抜いて、同時に振るわれたスライサーベルを受け流す。
「娘のデータは頂いた。ここで死ぬわけにはいかないのでな。さらばだ」
 数合討ち合って司令は退いた。
 そこへ、黒騎士が鷹見の許へと飛び込む。
 グラリと傾く黒騎士の胸には槍の穂先が覗いていた。
「仕留めそこなったか‥‥ まあよい」
 副官は身を翻して消えた。
「何故こんなことを」
「キャプテン、あなたを失うわけにはいきません‥‥
 軍の陰謀に巻き込まれ、命を落とそうとしていた自分を救ってくれたのはあなただ‥‥ これくらいは‥‥」
 黒騎士の胸の傷からは機械が覗き、スパークしている。
「大丈夫、私はサイボーグ‥‥ アクテ博士に直してもらえば‥‥」
 鷹見はセオフィラスに肩を貸すと部下に鳴をつれて撤退するように命じた。

●アトラン艦隊
 旗艦と艦艇の3割を失い、マーズ艦隊は撤退を開始した。
 しかし、ホッと一息つこうとしていた建御雷は、後方からどつかれるように衝撃を受けた。
「右舷後方35度、熱源多数。アトラン帝国艦隊ですわ。
 それに! 超破壊ミサイルが恒星ドゥッカーへ接近中!!
 全く! そんなの使われたら、お宝がなくなってしまいますわ」
 レミィが遊星ミサイルを撃墜しながら怒りを露わにした。
「残念だが黄泉平坂は使えません。再使用には少し時間が必要です。
 余波に巻き込まれず超破壊ミサイルを撃墜できるとすれば‥‥
 黄泉平坂にライトニングサンダーボルトをエントリーして荷電粒子レーザー砲にするくらいですが」
「わたくし、ライトニングサンダーボルトを使えます。今度こそ、お役に立ちたいです」
 沖田が考え込んでいると、鳴が席について操作を始めた。
「敵艦隊から通信。降伏勧告です。どうしますか」
「馬鹿めと伝えてやれ」
「は?」
 風御が沖田に聞き返した。
「馬鹿めだ」
「ふふ‥‥ 怒ってる怒ってる。
 船首・黄泉平坂、荷電粒子レーザーとして発射可能ですわ! 照準セット!!」
 馬鹿めの返信に激怒する敵からの再度の返信に笑うレミィの操作で射撃盤の数値が揃った。
「よし、超破壊ミサイルを破壊後に敵中央に突っ込む!」
 鷹見の声と共に建御雷が回頭する。
「超破壊ミサイルを正面に捉えましたわ。鳴さん、いつでもやって」
「はい‥‥ 照準器、クロスゲージ明度20。対衝撃、対閃光防御」
 各員席につき、ゴーグルを装着してシートに体を固定した。
「エーテルリアクター出力120%」
 アクテの声が響く。
「目標、超破壊ミサイル。黄泉平坂、発射します!」
 鳴がトリガーを引くと建御雷が鳴動した。
 ビシャァアア!!
 チャンバー内のショックボルトが後退し、膨大な電荷が宇宙の闇を切り裂く。
 超破壊ミサイルの誘爆と共にアトラン艦隊に穴が穿たれた。
「何ぃ!! まだ、こんな余力を残していたのと言うのか‥‥」
 アトラン艦隊の提督が手で顔を覆い、顔をそむけた。
「損害確認中! 超破壊ミサイル消滅。概算で約1割の艦艇が消滅‥‥ 他にも次々と爆散していく艦が絶えません!!」
 報告を聞く提督の唇に血が滲む。
 一瞬で超破壊ミサイルを撃破され、艦艇の2割に損失を受けたアトラン艦隊は撤退を始めた。

「本当の戦いはこれからですわね‥‥」
 レミィの戦闘モードが解けていく。
「すべての兵器を破壊するまで‥‥戦いは終わらないの‥‥かしら‥‥」
「鳴姫様‥‥」
 アクテは再び眠りについた鳴を支えた。
「厳しい戦いだが、俺たちは信じる旗の下に戦う。それでいいよな、光」
 目前の宇宙を見つめ、鷹見は友に視線を送る。
「この船の船長は仁です。私は仁を信じています」
 そう言うと沖田のホログラフは薄れ、消えた。
 彼らの戦いは、これから始まるのだ‥‥