●リプレイ本文
●アークデモン
「ガァアッハハハ! 貧弱、貧弱ぅうう!!」
巨大な剣を振り回し、2本角の鬼が車を吹き飛ばす。
「待てっ!!」
2台の大型バイクが鬼の前にタイヤを滑らせながら横付けに止まった。
「ぶっちゃけありえねぇな。この俺、アークデモンに盾突こうなんて」
鬼は巨大な剣を軽々と肩に担いだ。
「この星の生物は、ひ弱だからなぁ。お前たちは楽しませてくれるのか?」
「ふ‥‥ 正義を騙る気など無い。だが、悪の敵はここにおる‥‥ この私がな」
銀色のグローブとブーツに蒼みがかった漆黒のスーツに身を包んだライダーがメットを外すと纏めていた髪がハラリと解けた。
「やりやすいぜ。まるっきり悪って感じでよ。行くぜアマツ、俺とお前でダブルセイヴァーだ!」
真紅のグローブとブーツに翠がかった漆黒のスーツに身を包んだもう1人のライダーが、勢い良くメットをハンドルに引っ掛けると力強く右手を体の横で力強く曲げて、左の拳を右腕の肘に当たるように力を入れた。
「任せよ渓。お前の力、そして我が技。二つが揃えば怖れる事など何もない!」
アマツ・オオトリ(ea1842)が右手を斜め上に体の前に伸ばし、左手を腰だめに構えた。
「「セイヴァーァァァ‥‥ 変身!!」」
取り外したバックルをバイクのミラーにかざして再びベルトに戻すと真紅のマフラーを靡かせて大きくジャンプした。
空中に現れた鏡を割って現れたのは2頭の魔獣。
炎の魔竜ドラグカイザーを巴渓(ea0167)が、漆黒の翼・魔蝙蝠ナイトウィングをアマツが身に纏って着地する。
オーラの力で魔を討つ13本の剣に選ばれしワルプルギスの剣士、オーラセイヴァー!
剣に刻印された守護獣を虚空から召還し、身に纏うことができるのだ!!
「行け! ブラックホールズ」
アークデモンが剣を地面に突き立てると1本角の戦闘員が数十体現れた。
巴渓の龍牙の剣が猛々しく戦闘員を両断すれば、アマツのウィードの剣は軽やかに舞うように切り裂いていく。
「こんなやつら何匹出てきても同じさ!」
剣を逆手に握り、龍の篭手を戦闘員に叩き込んだ。
「その通り。この星には我らがいる。人類の自由、そして世界の平和を護る我々がいる限り、テラを好きにはさせない!!」
バサッとマントをはためかせて戦闘員を怯ませるとバッサリ切り捨てた。
2人の技量に戦闘員たちでは歯が立たない。次々と斬り捨てられていく。
「いくぞアマツ! 一気に決めるぞ!!」
巴渓は龍牙の炎を足に纏って空中で体を捻ってキックの体勢に入り、アマツはマントを纏わりつかせると錐揉みで急降下を始めた。
「「セイヴァー! ダブルキィィィック!!」」
「効くかぁ!!」
アークデモンは、巨剣を振り払ってダブルセイヴァーを撃墜した。
「なんて‥‥奴だ‥‥」
「く‥‥」
倒れる2人の剣士にアークデモンの巨剣が迫る‥‥
だが、あわやという所でトーカ光が剣を弾いた。
「奴らの出現ポイントをキャッチして来てみれば、先客がいるとはね」
ビルのエントランスの張り出しに逆光の人影が映る。
「誰だぁ!!」
「宇宙刑事エアロイダー!!」
「宇宙刑事デバンッ!!」
体に密着するようなスペーススーツで現れた2人はライセンスを見せ、ベルトにセットした。
胸にはSPTの文字がキラリと光る。
「スペース・ポリス・テラ分署の奴らか。こいつらみたいに返り討ちにしてやる」
アークデモンの放った剣撃が衝撃波となってエアロイダーとデバンを襲う。
「ははぁ! 消し飛んだか」
笑うアークデモンに2条のトーカ光が突き刺さり、爆発が起きる。
光と共にダブルセイヴァーの姿が消え、メタリックブルーとメタリックシルバーのコンバットスーツの2人の戦士が姿を現した。
説明せねばなるまい‥‥
セイロム・デイバック(ea5564)と伊達正和(ea0489)は、それぞれの母艦を地球上に隠している。
2人は、それぞれ『鋼結』、『到着』の掛け声と共にそれぞれの母艦から粒子分解されたコンバットスーツをテラ上のどこにでも転送できるのだ。転送されたコンバットスーツは時間にして1テラ秒、もとい1ミリ秒で2人の体表面に再構成され、宇宙刑事エアロイダーとデバンに鋼結、到着するのである。
「ええぃ、2人が4人になろうと俺が勝ぁつ」
アークデモンが腰のカプセルを放り投げると新たなブラックホールズが現れた。
「私を忘れてもらっては困りますね。秘密結社グランドクロスを倒したと思ったら新たな悪の登場ですか」
声の方へ向くと、夕陽を背に風呂敷マントをはためかせて立つ人影が‥‥
「えぇい、またか!!」
アークデモンが苛立たしげに床を踏み砕いた。
「誰が呼んだか、ひょっとこ仮面!
たった一つの体を捨てず、世のため人のため悪の野望を叩いて潰す!
ひょっとこ仮面がやらねば誰がやる?
この仮面を恐れぬのならかかって来いや、あほんだらぁぁぁ!!」
ひょっとこ仮面こと、とれすいくす虎真(ea1322)は秘密結社グランドクロスの改造人間であった。
かの秘密結社を壊滅させてからは、小悪魔兎美少女団長が率いるサーカス団『MOONRISE』の隣でお好み焼の屋台を商っていたのだが、悪の臭いを嗅ぎつけた以上放ってはおけない。
段差を飛び降りると戦闘員たちに突っ込んだ。
「必殺、ひょっとこパンチ!」
燃える拳を戦闘員に叩き込む。
「目的は同じ。共同戦線といきましょう」
「あぁ、いいねぇ」
拳を打ち合わせたエアロイダーと龍牙が戦闘員に突っ込む。
「こちらもいきますか」
「承知」
デバンは手刀からソニックブームを放ち、ウィードは蝙蝠型バイクに跨って敵陣へ斬り込んでいった。
「アークデモンだけで大丈夫とは思えませんわ。お母様」
「いいわ。行きなさい」
ブラッディソード最高幹部ブラッディクイーンが、優雅に手を伸ばすように振った。
「移動要塞ブラッディローズ、発進準備」
ボンテージ姿のグラマラスな悪魔のような姿の女、幹部のクリムゾン・コスタクルス(ea3075)は戦闘員に指示を出すと部屋を出た。
(「宇宙の秘宝‥‥ 手掛かりだけでも手に入ればいいのですが‥‥」)
フードから鬼面を覗かせた幹部がユラリと影の中に消えていった。
●ブラッディジョーカー
背後に巨大な要塞を従えて、クリムゾンが5人の戦士たちを見下ろしている。
新たに何十体もの戦闘員が現れ、戦闘機や戦車も現れて街を破壊している。
世界の行く末を暗示するのか陽は落ち、闇の帳が降り始めている。
「あたいは宇宙海賊『ブラッディソード』のクリムゾンだ。この星はあたいらがいただくぜ!」
「何しに来た、クリムゾン。俺だけで十分だ!!」
アークデモンが侮蔑の視線を投げた。
「そうはいかないね。苦しそうじゃないか」
クリムゾンは不敵な笑みを浮かべた。
「ドラグファイアー!!」
クリムゾンを襲った龍牙の炎は、彼女に届かない。何者かが割って入ったようだ。
「女性に手を上げるとはなっていませんね」
「誰です!!」
エアロイダーが戦闘員を斬り捨てながら見上げた。
「タキシード鬼面とでも名乗っておきましょうか」
焦げた漆黒のローブを脱ぎ捨てると、いずれも白のタキシード上下にマント‥‥ 顔の上半分を鬼面で覆っている。
嘶(いなな)く白馬を操り、盛大に薔薇の花びらが舞う。
間合いを詰めようとするひょっとこ仮面の足元にクリスの放った矢が突き刺さった。
「クリス、余計な真似を‥‥」
「これは失礼、レディ」
クリス・ウェルロッド(ea5708)は、馬から降りるとクリムゾンの手の甲に口付けをした。
「ここは、あたいとアークデモンだけで十分。お前は帰りなさい」
「あなたがそういうのであれば‥‥」
高圧的な態度に屈することなく、笑みを残してクリスは白馬に跨った。
「アデュー」
舞い散る薔薇の花吹雪に包まれて、タキシード鬼面は掻き消えるように去っていった。
「「レーザーブレード!」」
エアロイダーが左右に柄を振り、デバンが刃があるかのごとく左手で柄の先を撫でると、レーザーの刃が現れた。
「そんなもので俺は倒せんわ!!」
左右から切り込んでくる2人の宇宙刑事にアークデモンの巨剣が叩き込まれる。
それでも構わずに手数で圧す。
「デバンスラッシュ!」
余裕を見せてデバンの剣を筋肉で受けたアークデモンが動きを止めた。
「マテリア・クラァッシュ!!」
眼前に剣を構え、エアロイダーが上段に振りかぶって全てを断ち切る様に一気に叩き下ろした。
「「セイヴァー! ダブルキィィィック!!」」
機を見てダブルセイヴァーが飛んだ。
「ひょっとこブレェェド!」
悪の組織のアジトで手に入れといた刀が突き刺さり、龍牙とウィードのキックが決まって、アークデモンの体から火花が散った。
5人の戦士がアークデモンを背にクリムゾンに向かって歩いてくる。
ズドォオゥウム‥‥
その背後で大爆発が起きた。
「やられたか。テラにこれほどの戦力があるなんて‥‥」
クリムゾンは、悔しそうにヒールを鳴らした。
「ま、力任せの能無しだからしょうがねぇか。ここは切り札ね‥‥ ブラッディ・ジョーカー!!」
胸の谷間からカードを取り出すと指に挟んでアークデモンへ投げた。
魔方陣が展開されアークデモンを飲み込むと、急激に膨張を始め巨大化した。
「出でよ! ブラッディ・デモン!!」
巨大なアークデモンがコンクリートジャングルに出現する。
超高層をなぎ倒し、ビルを蹴飛ばして街を薙ぎ払っている。
「大丈夫。ひょっとこ仮面に任せなさい。法螺貝を拭けば‥‥」
ガンッガンッと法螺貝が、ひょっとこの仮面に当たった。
「仮面が邪魔やな」
お面を少しずらして力強く吹き鳴らした。
ぶぅうおぉおおお‥‥
流したような雲を割って現れたのは、天下無敵のゴージャスごっついメカ、ひょっとこインパクト!
「悪の組織より奪って改造したメカですが、強さは折り紙付きですよ」
とてもそうは見えないが‥‥
「とぅ」
ひょっとこ仮面が足の扉を開いて梯子を登っていく。
●正義は勝つ
「あらら‥‥ これはまずいかな?」
戦闘員に変装して移動要塞の中に潜んでいた結城夕貴(ea9916)はモニターの様子を見て、変装用マスクを剥がした。
「女装!」
掛け声に戦闘員たちが振り向く。
『バージョンアップ』
機械音声と共にバックルに『♀』のマークが浮かび上がり、ベルトのバックルが回転し始めた。
光に包まれて体の表面に物質が構成されていく。
「世の為、人の為、女装が好きなオトコノコ為、身も心も大変身の夕貴ちゃん、ふりふりわんぴでただいま参上♪」
どこか女性的ながらも男だった体が少女のラインになっている。
ふりふりわんぴの裾がフワリと揺らしてポーズを取ると戦闘員にウインクした。
またまた説明せねばならない‥‥
結城は女の子らしいラインの生体スーツを身に纏い、自らの意思で女装して、マスクファイター夕貴へと変身するのだ。
「いつの間に! やってしまえ!!」
「女装の道も1歩から! 世界に女装を望む人がいる限り、ボクは絶対に負けないよ!」
マスクファイター夕貴は超振動ブレードを構えた。
「押してるみたい。ごめんね〜♪ 超・夕貴斬り☆」
「いきなりかぁ!!」
要塞司令官他、戦闘員たちも踏鞴(たたら)を踏んだ。
「うぉぉお、リフレッ〜シュ‥‥ 早く女の子になりた〜〜い」
戦闘員たちが倒れていく‥‥
「らっきぃ♪」
マスクファイター夕貴は指揮ルームを破壊していった。
街に甚大な被害を残しながら、ひょっとこインパクトとブラッディ・デモンが戦っている。
すでにどちらもボロボロである。
「ナニワハリセン、一文字叩きィ!」
巨大ハリセンがブラッディ・デモンを叩くと仰け反るように倒れた。
「一撃必殺ぅ、ひょっとこパァァンチ!」
起き上がり様に究極のサウスポーが悪を砕いた。
要塞の動きが鈍く、火線も散発的になっている‥‥
「「オーラの盟約に従い、汝の力を借りん!!」」
「ドラグカイザー」
「ナイトウィング」
「「メタルフォーム!!」
龍牙とウィードのバックルから放たれた光が鏡となり、突き破って現れたのは10m程の魔獣たち。
ただ、変身時に現れた魔獣とは違い、メカニカルな感じだ。
龍牙とウィードが、その頭に立った。
「ドラグファイアー!!」
龍の口が戦闘機を食い破り、炎で焼き払う。
「フラップトルネード!!」
蝙蝠の起こした羽ばたきに戦闘機がバランスを崩し、ぶつかって爆発した。
ダブルセイヴァーがガッツポーズを見せる。
「「ブラストコンバージョン、ファイアートルネード!!」」
炎の渦が移動要塞の壁面を吹き飛ばし、内部からの誘爆に畳み込むような外部からの攻撃が加えられていく。
「「ツヴァイユニオン!!」」
エアロイダーの戦艦バルディアンとデバンの超重戦闘機バビロンが変形し、連結されると巨大な砲台型のロボットに変形した。
バビロンのコクピットにエアロイダーのシートが転送された。
「エネルギー・フルリンク!!」
「照準セット! セイフティロック解除」
エアロイダーがエネルギー制御の操作を完了させ、デバンがトリガーボルトを握り締める。
「いくぞ!」
「おう!」
「「ツヴァイ・ストーム!!」」
ミサイルの嵐を見舞わせた後に膨大なエネルギーが移動要塞を襲った。
「お前たち、さすがだな。しかしこれで勝ったと思うなよ!」
爆発を繰り返し、高度を落とす移動要塞ブラッディローズを背に、高笑いを残してクリムゾンは消え去った。
●宇宙の秘宝
「クィーン、反応は間違いなくこのテラを指し示しています。必ずや秘宝を手に入れてご覧に入れましょう」
「頼りにしていますよ。クリス‥‥」
タキシード鬼面は、ブラッディクイーンに跪いて深く礼をした。
「しかし、あの戦士たちは何とかしなければいけませんね。意外に手ごわい‥‥」
「ふふふ‥‥ これしきの戦士で我が軍団を阻止しようとは笑止千万! 次は、こうはいかないわ!!」
ブラッディソードの次なる作戦は、既に発動しているのだった。
美女を求めて東へ西へ、タキシード鬼面はどこへ行くのか‥‥
体1つでテラを守れ! 法螺貝の音が響くとき、ひょっとこ仮面が現れる!!
到着! 宇宙刑事デバン!!
鋼結! 宇宙刑事エアロイダー!!
ユニオン刑事のある限り、この世に悪は栄えない!!
テラを守れ! ワルプルギスの剣士、紅蓮のオーラセイヴァー龍牙、青き疾風のオーラセイヴァーウィード!!
世界の女装を守るため、戦えマスクファイター夕貴!
テラに平和が来る日まで‥‥
テラの未来は君たちの手にかかっているのだ‥‥