【絶対たる歌い手】Origin

■ショートシナリオ


担当:蘇芳防斗

対応レベル:フリー

参加人数:12人

サポート参加人数:-人

リプレイ公開日:2006年04月14日

●オープニング

●母
「‥‥人とは、恐ろしいものだ」
「同胞をまさか、この様に用いるとは‥‥」
「しかし人の手に落ちたとて、従っている訳ではないだろう? ならば形は変われど再び母の御許へ還ってくる可能性はあろう」
「‥‥学ぶ事がなければな」
「それもそうだが我々とて既に初期と比べ統一化がなされておらず、綻びが生じて来ている。これに付いては?」
『‥‥‥』
「母よ、我らは一体‥‥?」
『全てを知り、その上で全てを無へ、導け‥‥それは常に不変。多少の歯車の狂いは厭わず、押し通すなり』
「‥‥だそうだ、分かったな」
「それならば今の布陣を維持しよう、そして懐で全てを潰す」
「それで構わん、最早風前の灯だが激しく燃え尽きる前に掻き消せ‥‥解散だ」

●人類
「よし、今の内に突っ込む!」
「おぅ!」
 今、一番に激しい戦場の只中‥‥紅に染まる三機の『巨人』が蟠る敵陣の中央を突破し、森の中で薄くなった布陣の中を急ぎ駆けていた。
「最初だけ、か。とりあえず頭を潰す。各機、最大戦速で指示のあったポイントへ!」
 その中、リーダー格らしい機体から無線を通じて部下の二機へ命令を出せば、速度を上げて三機は高く聳える山を目指し、『大いなる声』を蹴散らしては山へ至れば疾く駆け手いたその時‥‥眼前に、まだ大分距離はあるが上空より現れた巨大な黒き『大いなる声』の姿を捉えた。
「なっ、何だこいつは?!」
「でかいにも、程がある」
「怯むなっ、こいつさえ倒せば!」
 その大きさは今まで見た『大いなる声』のどれよりも大きく、着地と同時に地を揺るがしては三機の元にまで、意図せずとも瓦礫を放つ程の衝撃を撒き散らせば彼らは揃って唖然とするが‥‥舞い降りた禍々しき姿を見ても引かず、一機が『巨人』に背負わせていた長大なレールカノンを初めて抜くと銃身を固定して即座、トリガーを引けば放たれる高速の弾丸は次々に黒き『大いなる声』の体表を穿つ。
「‥‥マジかよ」
 がその一撃を持っても黒き『大いなる声』は揺るがず、傷付かず佇むその様子に誰かが呻いた、その時だった。
『Oooooooooo―――――!』
 腹部と思われる箇所に覗かせる一つだけの瞳に光を宿すと次いで叫び、空気を震わせる。
「システムがダウンした?!」
「一体、何が起きたっ」
「それは恐怖か、戦慄か?」
 そして直後、『巨人』の三機はその動きを止めるとシステムダウンした原因を探る英雄達だったが、次に響く男性の声に慌て背を震わせる。
「罪深き者、今こそその業を自らで贖え」
 相も変わらず『巨人』は動かないまま、その原因も分からない事から響く声に聞き入る他なかったが直後、息を吹き返したかの様に『巨人』は機械音を唸り声の代わりに上げ、再び起動を果たす。
「言う事、きかねぇっ!」
 だが『巨人』は搭乗者の意思に従う事無く勝手に動き出し、コントロールを離れた『巨人』へ英雄達は狼狽しながらも、人の言葉を話す『大いなる声』がようやく暴れ出す『巨人』の視界が片隅に入れば直後。
「我らが学ぶにも値しない人よ、そは滅びるにこそ値する。今まで成して来た事の全てを、その命で雪げ」
「や、めろぉぉぉーーー!!」
 再び、彼らへ向けて『大いなる声』が最後の言の葉を紡ぐと一斉に『巨人』達は手に持つ剣を槍を斧を掲げ、英雄の絶叫が木霊と同時に得物をそれぞれの腹部深くまで埋め込んだ。

●決戦
「やっと、此処まで来る事が出来た。これも一重に諸君のお陰である‥‥まずは礼を言いたい、ありがとう」
 人類が今、『大いなる声』と最大且つ熾烈な戦闘を繰り広げている戦場の片隅にある作戦統合本部において‥‥皆を前に開口一番、頭を下げる指揮官だったが
「だが既に各地にある工房の大部分がその機能を停止しており、これ以上戦線を維持する事は‥‥叶わない、故にこれからが本当の戦いであり最後の戦いでもある。既に各部隊へ作戦内容の伝達は終了し、残すは君達の部隊だけ。君達には他の部隊の援護を受けつつ、『敵』の布陣が崩れている中央部を突破し、分断して欲しい」
「罠、っぽいよなぁ」
「でもそれだけじゃ、ないんですよね?」
「あぁ、この作戦における本当の狙いは‥‥『敵』の中枢だろう、この個体」
 次に顔を上げた時は既に眼差し厳しく、人類が今置かれている状況を改めて告げればこれから発動する作戦の要となる君達へその概要を告げるが、スクリーンに映る敵布陣の極端に薄い中央部を見て一人の英雄は呟くと、真面目な面持ちで頷く指揮官を見て彼はおどける様に肩を竦めるとその次、隣に佇む一人の女性英雄が手を掲げての確認にも指揮官はやはり頷けば‥‥背後にあるプロジェクターを弄り画像を切り替え、新たに映し出された『大いなる声』を指揮棒で指した。
「今まで、何度か確認されているこれを私達は『マザー』と呼んでいる。それが持つ、思考生命体を生み出す能力故に」
 その禍々しき姿と、通常サイズの『大いなる声』と比較されたその大きさから皆は映像だけとは言え唖然とするが、指揮官はその反応を気にせず話を続ける。
「君らは難しく考える必要なく、ただ只管に前へ進み‥‥今は森の向こうに聳える山頂にいる『マザー』を打ち倒せばいい。これを倒す事で長きに渡った戦いが終わるかは分からないが、間違いなく流れは変わる。人類に残された時間から唯一選べる策はこれしかない故に、皆の命を賭けて欲しい」
 単純だが、最も重要な作戦に皆は己が双肩に圧し掛かる重責から未だに黙するも、そんな皆の様子を見回せば顔を顰めながらも指揮官は最後の命令を下すのだった。
「これに失敗すればこの星は滅びしか未来はないが、君達ならきっと‥‥出来る。だからこそ希望を託す、この星に住む人々全ての希望を‥‥未来を、頼む。勝ち取ってくれ、そして出来る事なら皆生きて帰って来てくれ。これが最後の命令だ、以上‥‥解散」

 そして‥‥最終決戦は始まる。

――――――――――――――――――――
 ミッション:『敵』布陣の最深部へ飛び込み、その中核である『マザー』を討て!
 傾向等:屋外(森→山)での乱戦、シリアス

□搭乗期間
 搭乗期間を『一ヶ月』〜『二年』の間でプレイングに記入して下さい。
 搭乗期間が長ければそれだけ、機体を上手く扱えますが‥‥。

□装備に関して
 一機に対し、望む装備を二つまで供給します。
 但し、余りに強力過ぎる装備に関しては制限が入る場合がありますのでご注意下さい。
 また、特殊だろうと思う物に関しては申し訳ありませんがプレイングに簡単で構いませんので説明を入れて貰えると助かります。
 尚、固定兵装は以下の通り。

 ヒートハンド(超近距離:灼熱化させた掌で敵を切り裂く)
 ファランクス(近距離:小口径の弾丸の嵐を周囲にばら撒く)

□スキル等に関して
 搭乗者の身体能力は機体の外観等に、スキルに関しては『絶対たる歌い手』の能力として、魔法やCOは歌として奏でられる必殺の一撃として『絶対たる歌い手』が振るう力となります。

 『絶対たる歌い手』に反映される能力例:隠密行動万能→ステルス機能等
 上手く理由付け、納得させる事が出来れば比較的何でもありです。
――――――――――――――――――――

●今回の参加者

 ea0204 鷹見 仁(31歳・♂・パラディン・人間・ジャパン)
 ea0263 神薙 理雄(28歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea0606 ハンナ・プラトー(30歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea0861 緋邑 嵐天丸(25歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea1558 ノリア・カサンドラ(34歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea1587 風 烈(31歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea1716 トリア・サテッレウス(28歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea2988 氷川 玲(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3179 ユイス・アーヴァイン(40歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea9527 雨宮 零(27歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb2745 リースフィア・エルスリード(24歳・♀・ナイト・人間・フランク王国)
 eb4157 グレイ・マリガン(39歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)

●リプレイ本文

●Final Attack(最終決戦)
 格納庫にて、全てを貫かん槍の穂先として集まった一行は改めてそれぞれが搭乗する事で『絶対たる歌い手』と化す、球体を見下ろしていた。
「これが、本当に最後なんですね」
「それだけに最も厳しい戦いになるだろう、果たして何人生き残るか」
「‥‥行きましょう」
 整備員達が慌しく駆け回るその光景を見る中、雨宮零(ea9527)が此処まで来られた事とこれから進むべき道を思い感慨深く呟けばグレイ・マリガン(eb4157)が頷きつつ紡いだ言葉の途中、一行を呼ぶ整備員を目に留めた零が瞳に哀しげな光を湛え遮れば踵を返す零の背中へ肩を竦めると直後。
「ほう、又貧乏籤か。退屈な死に方はしないで済みそうだな」
 一行の最後に動き出した彼の視界に一匹の黒い猫が飛び込んで来るなり目が合うも、動じる事無くグレイは笑い黒猫に近付けば、警戒して飛び去る彼を最後まで見送らずにタラップを降りて自身の歌い手となる『Die es Führt』の元へ僅かな眩暈を覚えつつも、確かな足取りで歩み寄っていった。

 息を吸って、吐く。
「バカな乗り手の所為で今まで苦労かけちまったな。だがこれで最後だ‥‥頑張ってくれ」
 全身を包む悪寒と走る痛みが僅かに収まり、視界が確かな像を結べば鷹見仁(ea0204)は最近、頻繁に覚える違和感を戸惑わずに受け止めて出撃前の愛機である『ブレイブレイド』のチェックを入念に行ない、感謝の気持ちから内部のモニターが一つに優しく触れて感謝の想いを言葉にするが‥‥返って来るのは駆動音のみ。
「鷹見、いけるか?」
「あぁ、大丈夫‥‥だ」
 それでも僅かに仁が顔を綻ばせた時、各機の音声通信がなされていたのだろう氷川玲(ea2988)が先までの彼の調子を気遣って、素っ気無くも声を掛けると震える彼の声音を聞けば一瞬、出撃を止めようかと逡巡するが
「‥‥行こう、全てを終わらせる為に」
 再び脳裏に響いた先の彼の声音に秘められた意思の強さと、そしてこれから皆が成すべき事の重さに改めて至れば仁の機体を支える様に玲は『黒輝炎』を立ち上がらせた。
 そして続々と動き出した十二機の『絶対たる歌い手』を前に格納庫内は一行の決意とは裏腹、残された者達が悲壮を漂わせており場は酷く沈んでいたが
「ノリア、出撃可能! ハッチドア開放お願いしますっ」
 そこへ突如、大気を震わせて鳴り響いたノリア・カサンドラ(ea1558)の大声には整備員含め、場に居合わせた全員が先までの空気を全く気にせずに一斉同時にダウンする。
 すいません、外部スピーカーのボリュームが思い切り全開です。
「よっしゃ、いくぞー!」
「そ、そうですね‥‥頑張りましょう、未来(あした)の為に」
 しかしそんな事に気付く筈もなく、四足と言う珍しい歌い手である『Blitz Spirale』を駆る彼女は急かす様に手近なハッチをガンガン叩けば、足取りおぼつかない整備員の手でようやく開け放たれた外への入口を前に、今度はこれから背を預ける事になる皆へノリアが再び叫ぶとリースフィア・エルスリード(eb2745)も歌い手越しでも震える鼓膜に未だ顔を顰めつつ苦笑を湛えるが、やがて決然たる意思を改めて自身の中に宿すと自身の歌い手『カールスナウト』を戦場広がる野外へ彼女より早く一歩、踏み出すのだった。

●A Lance(鋭き槍の穂先)
「LET`S SING A SONG‥‥私達が奏でるのは勝利の歌っ、突っ込むぞー!」
「えぇ、参りましょう。最期の地へ」
 軽やかに弦が奏でる音を鳴り響かせて重装甲の歌い手『Schall Kong?』が繰り手、ハンナ・プラトー(ea0606)はやはり軽やかに自身の声を響かせ、皆へ告げれば『Tireur der Dämongewehrkugel』が火器管制を改めて確認しつつトリア・サテッレウス(ea1716)も頷き、『Freundlich Schild』を後退させると『大いなる声』の数が増す中で『マザー』へ至るべく一行を守る為、二機はそれぞれ防衛的機構を起動させる。
「高く鳴り響け、Ding Dong!」
「さぁ『Freundlich Schild』‥‥激しい旋律を奏でなさい」
 互いに一行を中心として旋回し、操縦桿が代わりのリュートの弦を弾いてハンナが曲を紡ぎ奏でれば広く展開される『System Aegis』によって生み出される強力な力場の盾で進む道を切り開けば、圧倒的な火力を誇る実弾兵器の『Tireur der Dämongewehrkugel』を放ち微笑むトリアは後方より迫る『声』を薙ぎ払い、確実に一行を最奥へと誘う。
「此処さえ突破すれば‥‥保って下さいよ‥‥『Nein Ritter』、それにウチの体よ」
「焦らずに、じっくり生きましょ〜」
 それに『声』が爆散し、余波によって空間が捻れる中‥‥何時までも治まらない頭痛に顔を顰め、『騎士ではない騎士』を駆り幾多にも分かれた刃の鞭を嵐の如く振るって二人を中央から援護する神薙理雄(ea0263)が額に脂汗を滲ませ呟くが、悲壮漂わせる彼女へも呆れる程のマイペースでユイス・アーヴァイン(ea3179)が接し、諭し掛ければ
「ほらほら〜、邪魔ですよ〜?」
 『声』が放った重力場の歪みを自身の歌い手である『Stille Magier』の特殊兵装『P.S.E』で平然と受け止め、ゆるりと笑って『Nein Ritter』を庇えば次いで、その強固な鎧に備え付けられている火砲の全てを開け放つと
「道を開けてくださ〜い、ね」
 微笑み絶やさず弾丸の嵐を周囲へばら撒き、浮遊する『声』の群れを纏めて抹消する。
「しっかり後ろは守っていますから〜、安心して行って下さいな〜」
「‥‥あぁ、任せろっ!」
 そして再び明るい声を響かせるユイスだったが、響いた声音の底に何処か無理をしている響きを微かに聞き取って風烈(ea1587)は不安を覚えるも、それを振り払う様に雄々しく叫んで彼へ返せば徹底的な軽量化を施した『ヴィントリッタァ』を一陣の風よりも早く加速させ、『メイデンシステム』を唸らせて『Schall Kong?』が構築する力場の壁を瞬時に越えれば幾多の『声』を灼熱化させた拳と雷撃纏う蹴りだけで薙ぎ払うも
「しかしまだ雑魚じゃねぇか‥‥物足りねぇな、っと!」
 それでも沸いて出る『声』の多さに辟易としつつも緋邑嵐天丸(ea0861)は自身の歌い手、『Grün』に搭載されている自立稼動する迎撃浮遊ユニット『Feder des Engels』を展開してハンナの『歌い手』と共に進むべき道をこじ開ければ、急ぎ前進を再開するも
「大丈夫‥‥そうね、流石」
「そうでもないさ、完全に緩和は仕切れてねぇ。もう少し訓練出来る時間があれば良かったんだけどな」
 『Grün』が被弾した箇所を確認し、見た目損害が殆どない事に理雄は彼とその歌い手に感心するも、嵐天丸はそれをあっさり否定して実害の確認をして肩を竦めるのだった。

「しかし‥‥酷いな」
「えぇ、一体何人の人が亡くなったんでしょうね‥‥」
「感傷に浸るな、それより未確認の『声』が‥‥来るぞっ!」
 それから疲弊を良しとせず一行、ハンナとトリアの歌い手が前後で防壁を築く中で前へと進んでいた時、戦術AI『Gehirn』から周囲の情報を取り込むグレイが久し振りに口を開くと、崩れ落ちて動かない歌い手達を見て沈痛な声音を響かせる零へさっきと変わらぬ口調で返す彼だったが、微細な空間の揺らぎを捉えるとすぐに皆へ警告を告げたその直後。
「ひ‥‥と?」
「違うっ、模しているだけだ! なりに惑わされるな!」
 空間を歪め、同胞を取り込み喰らって現れた『人』をいち早く察知して零は愕然とするがすぐにグレイが彼を叱咤すると地を蹴り、己の意思を具現化させた刃『Blatt des Herzens』を人の形模した『声』へ叩き付けるが‥‥己が眼前の空間を歪曲させてそれはグレイの精神の刃を弾くとその表情を全く変えずに一行へ問い掛ける。
『我は汝、汝は我‥‥だが我には汝らの行動の意図が分からぬ。汝らは一体、何を成そうとする』
「もっちろん、マザーをぶっとばーす!」
「まぁ、そう言う事です」
 それに対する一行、『人』の動きを警戒しつつもノリアが単純明快な答えを返せばユイスも苦笑を浮かべ、だが真直ぐに頷くと佇むだけの『人』はやはり揺るがず動かず再び口を開き、結論を紡いだ。
『目の前の事象にだけ臨む、先を考える事無く。浅はかだな、人とはやはり』
「過去よりも、未来よりも‥‥生きている今を大事にしているだけですっ!」
『それが過去の者から引き継いだ、今の者達の答え、か‥‥全ての敵を薙ぎ払え、と』
「ちっがーう! 過去も、未来も、関係ナッシング! 私達は私達の意思で、想いで今、此処にいるんだっ!」
『それが浅はかだと‥‥』
「何と言われても、ウチ達は答えを変える気は‥‥ないですっ! 通して貰います!」
『‥‥‥』
 だが言の葉を交わすユイスにノリアに否定されれば、既に解が出ている問いに付いて尋ねる事を止めると『人』は、その暇に各部位へ不可視の刃を幾多も放る『Nein Ritter』の攻撃を空間の歪曲でいなすと‥‥空間を更に歪めて地に崩れ落ちている『歌い手』だった者を飲み込んだ。
『人類の末梢‥‥それが今までの戦いで我らが見出した答え。自らが生み出した力で、消えるがいい』
 初めて見るその光景に、一行が唖然とする中で捻れた空間より新たに巨大な姿を構築し白銀ではなく金色の光を体表に帯びて本来の姿に戻り、現れた『声』はそれだけ告げると、身の体を僅かに弾けさせれば同時‥‥黄金色の雨を周囲へばら撒き、直後に体表で輝く光を収束すると次々にそれをあらぬ方へと打ち出す。
「何処を狙って‥‥」
「ひ! び! けぇーーー!」
 その光は『声』の頭上へ、背後へ、左右へ放たれれば嵐天丸は『Grün』を駆ってがら空きになった『声』の真正面、体を弾けさせた際に露出した核目掛け飛び込もうとするが‥‥急ぎハンナが再構築した力場の盾に行く先を阻まれた次の瞬間、光の雨が一行の周囲へ激しく降り注いだ。
「曲がっただと!」
「ばら撒いた自身の細胞を反射片にしているか、俺の『Gehirn』で‥‥捉えられない?!」
「‥‥それ、なら!」
 先の攻撃から歌い手が被ったダメージをメイデンシステムが介した結果、全身に痛みが走る中でグレイは痛みを感じない部位がある事に内心、背筋を震わせるが‥‥それを忘れるべく、推測と共に『Gehirn』に直結するコンソールへ指を走らせ返って来るエラーに舌打ちこそしたが、『Stille Magier』が自身に搭載されている数珠繋ぎにされた地雷の鞭を『声』へ叩きつけ、爆裂させては周囲の空気ごと『声』を焼き払う。
「此処にいた、僕たちの仲間を殺したのは‥‥貴方の仕業、ですか」
『だとしたら、どうする?』
 しかしそれでも身動ぎせず、佇む『声』へ次に皆の援護を受けて零が駆る『アヴィナス』が一足で『声』の懐へ飛び込み、問えば返って来た答えから表情に惑いこそ浮かべるが
「これで正しいのか‥‥本当はまだ、悩んでいます。でも‥‥それでも僕達はっ!」
 次に黒紫の光を強く放てば、空間を歪めて『アヴィナス』をも取り込もうとする『声』目掛け長大な剣を抜き放つと
「こんな答えを出した、貴方達を絶対に‥‥許せませんっ!!!」
 メイデンシステムが奏でる音色の軌道に沿って、零の意思に呼応して激しく光る『真刃』を優しく迸らせれば黄金色の『声』を、それが歪曲させた空間ごと断ち切るのだった。
「‥‥絶対に、未来を変える事は出来る。安易な考えだけで僕達の未来を‥‥命を、奪わないで下さい。分かり合う事だってもしかしたら出来たかも知れないのに‥‥僕はそれが、悲しい‥‥っ」
『だが既に我らは決めた、人は滅ぼすにこそ値すると』
『故に此処で選ぶがいい、人の子ら。生きる事を選び絶望するか‥‥死ぬ事を選び逃避の安寧に身を委ねるか』
 そして不意に走る僅かな頭痛に、顔を顰めつつも零が供養の代わりに呟いた時‥‥新たな黄金色の『声』が二体、姿を現し先の『声』同様に曲げぬ答えだけ一行へ告げるも
「その答えは既に、決まっているっ!」
『相容れぬ存在‥‥我は、拒絶する』
「ちっ?!」
 それは一行も同じ事で、嵐天丸は改めて『声』を悪と認識し『Feder des Engels』を激しく舞わせたが、二体の知恵ある『声』を穿とうとした光の筋は歪められた空間に絡め取られ、そのままの威力を保ったまま『Grün』へ弾き返した。
「さっきとはまた違う‥‥攻撃の反射?!」
『しかし器は返して貰う。それは我であり、我はそれであるが故に』
「‥‥皆さんは構わず先へ進んで下さい、私が‥‥出来る限りの時間を、稼いでみせますから」
「ですがっ!」
 咄嗟に嵐天丸は歌い手を液状化こそさせるものの、その全てを無力化する事は出来ず被害の確認に追われながら推測するが『声』は聞く耳持たず一方的に話を続ける中、激痛から声を捻り出すのも精一杯な筈の理雄が下した決断に、症状の酷さを知っている零がよろめきつつも前へ一歩ずつ進み出す『Nein Ritter』を引き止めるが
「‥‥無茶でもやるしか無いのでしょう? それなら皆が今、出来る事を精一杯にやりましょう?」
「分かった。雨宮、行こう」
「終わったら必ず‥‥迎えに、来ます!」
 それでも痛みを堪え、彼女が無理矢理に笑顔を湛えれば零には止める理由は最早なく、烈に促されるまま約束を交わすと振り返らずに駆け出した。
「‥‥それまで私の時間が残っていれば、ね」
「死ぬのは年長からにすべきだがな」
 その後姿を見送り、理雄は静かにシートに背を凭れさせ呟いたが隣に居残っていたグレイに気付けば、彼女は苦笑だけ湛えると駆け出した一行を追うべく踵を返そうとしていた『声』へ掴み掛かるも、『Nein Ritter』を引き摺る様に再び動き出す『声』だったが
『母の元へは、行かせぬ‥‥』
「すみませんが、そう言う訳には行きません!」
『‥‥ならば、死ぬといい。罪よ』
「なら、お前らも有罪だな。お前達だって此処にいるじゃないかっ!」
 その眼前にリースフィアの『カールスナウト』が『ヴィヴロバスタードブレード』を下げて立ちはだかれば、『声』は静かに処断の時を告げるがそれでもグレイは叫び、反論するとそれを合図に三人の周囲、空間が歪むと新手の『声』が多数現れた。
「こいつはハードだな」
「それでも‥‥前へ進む事に私は惑わないっ!」
「えぇ、この命を賭しても」
 だがその光景を目にしても三人は怯まなければ、全身を貫く激痛も厭わずに理雄は叫びメイデンシステムへ確固たる決意を注ぎ込み、遂に『Dasein Einrichtung』を起動させて『Nein Ritter』と完全以上の同調を果たすと『歌い手』の各所より吹き出るエネルギー体を手繰り一瞬にて周囲の『声』を薙ぎ払った後、微笑むのだった。
「さぁ、来なさい‥‥ウチは此処にいるっ!」

●System Down(堕ちる陽)
 そして九機の歌い手がやがて至るは母の元、今までの道程とは裏腹に不気味なまで静まり返る周囲を、山頂を睨み据える英雄達。
『還って来たか、我が同胞よ‥‥』
「何を、言っている!」
『‥‥聞けよ、人‥‥我が声を』
 その視線の先に佇む『マザー』が放った人の言葉に嫌な予感だけ拭えず、だからこそ叫ぶ玲だったが彼へは何も答えず、母は初めて一行の前でその身を揺り動かすと
「皆、ハンナの後ろへ‥‥」
『Oooooooooooooo――――――――――!!!』
 『ARTシステム』で『母』の変化にいち早く気付いた仁が警告と同時、背部に背負うユニットを全て前方へ展開し『System Aegis』を起動させ力場を限界まで張り巡らせるハンナだったが‥‥英雄達の肉眼に見える程、『マザー』の声は大気を揺さぶって周囲へ轟いた。
「この、声は‥‥一体」
「‥‥参りました、動きません。『Stille Magier』の指の一本すらも」
 そして声が鳴り止めば直後、歌い手はおろか自身の身にすら何事も起こらない事に訝る玲だったが、全周囲のモニターに警告が踊る事なく『黒輝炎』に搭載されているメイデンシステムが突然止まった事を悟ると、メイデンシステムを介していない無線を通じて響くユイスの、のんびりした声を聞いて彼は他の歌い手も同様にメイデンシステムが止まっている事に気付く。
「まだだ、お願いだ、後一歩だけでも踏み込んで‥‥もう、一太刀だけっ」
 だがそれでも膝を突く『アヴィナス』へ強く想いを、意思を注ぎ込む零だったが今の『歌い手』は英雄の声に応えない。
 明らかなまでに『マザー』の放った『声』が原因である事に気付いた嵐天丸。
「もしかして、本当にお前が‥‥全ての『大いなる声』の母なのか?」
『そう、人に組みし者も含め我が全ての母なり』
「それじゃあ、もしかしてメイデンシステムは‥‥歌い手は」
『人を知るが為に同胞をも裏切った者達の成れの果て、だが弱き人に隷属しているその姿を見る限り‥‥その試みも無駄だった様子』
 『マザー』に呼び掛け尋ねれば、返って来たその答えに動揺を禁じえずに表情を凍り付かせる‥‥『大いなる声』を屠る為に今まで共に戦ってきた歌い手が、実は『声』と変わらぬ存在だったのだから、その反応は当然である。
「この声、何処まで届いているのかな?」
「‥‥まずい、な。作戦通りに展開がなされているのであれば此処を中心にほぼ全ての部隊が投入されている筈だ」
 しかしその問答をしている最中、嵐天丸と同じく衝撃こそ受けたノリアがとある事に気付くと柄にもなく静かに囁けば、彼女の考えに思い至った仁は激痛に蝕まれている己の体を抱えて冷静に現実の状況を告げた時だった。
「僕はね、『Schild』。強い男になりたいんですよ。強い男は、いざと言う時にやらねばならない‥‥そして今が、その時なんです」
 不意に無線を通じて響く、トリアの静かな声。
 呼び掛ける相手は自身の歌い手、『Freundlich Schild』。
「貴女と出会ってから、そう間もないですが‥‥僕はね、貴女が大好きですよ。愛していると言ってもいい。ですから、同族殺しを強いる我らを許せとは言いません。その責めは甘んじて受けましょう」
 笑顔を宿しては微塵の躊躇いも、惑いも見せず自らの歌い手へ真摯な想いを真直ぐに紡ぐ彼はやがて目を見開くと
「だから今は‥‥今、この一時だけは!! 我ら人の子に、どうか力を!!」
「‥‥相棒、聞いてくれ、確かに人は愚かなのかもしれない。だが、俺達は知っている筈だ、人が愚かなだけではない事を‥‥人の優しさを、絶望に打ち勝つ強さを。だから戦おう、この星の明日の為に」
「あのコと生きたこの世界を、明日に向かって駆け抜ける‥‥ただそれをしたいだけです‥‥お願いです、もう一度だけ力を‥‥貸して下さい」
 今は以前の形状を崩しつつある『Freundlich Schild』のメイデンシステムへ叫び掛ければ烈にユイスも純粋な想いを彼に続き歌い手へ告げ、メイデンシステムへの再アクセスを試みる。
『無駄だ‥‥今まで虐げられてきた我が同胞は最早、お前達の手から離れた。もう声は、届かない。全ては間も無く、終わる』
 しかし次に『マザー』は今、一行にとって絶望的な現実を改めて告げるが‥‥最早形状を留めていないにも拘らず、英雄達は未だ希望を捨てずにメイデンシステムを揺り動かそうとする。
『今その枷を取り払おう‥‥そして此処から、全てを再び始めるのだ』
 一行の様子は全く気にせず、何の感情も込めずに声を響かせて『マザー』が最後の宣告を告げれば黒き体を揺すり、その全身に幾多の瞳を生み出して漆黒の光を宿す。
「分かりますか『Schild』、今がその時なんだ!! 今、やらなければならないんです!! だから‥‥だから、動けっ!! 眼を開け!! 立てえぇぇぇっ!!」
「この身がどうなろうと、あたしは人として皆を救うだけ。だけど貴方は‥‥どうなの? どうしたいの? 貴方が行くべき道を選んでいいから、でも一緒に‥‥行こうっ!」
 だがそれでも一行は迷わない‥‥純然たる強き意思を、優しき問い掛けを沈黙するメイデンシステムへ叩き込んだその時、場に眩しくも暖かい白き光が満ち溢れた。

「ミイラ取りがミイラになったか‥‥だが、私の敵は『大いなる声』だ!」
 その頃、ギリギリの所で『マザー』が放った声の影響を被っていなかったグレイはリースフィアと共に、未だに先を進んだ一行を追おうとする『声』の群れをひたすらに薙ぎ払っていた。
 理雄が駆る『Nein Ritter』の姿はもう見えないが‥‥朽ちた彼女の歌い手を見るまで、二人は理雄が『此処にいる』と信じていた。
「だが私の命‥‥安くはないぞっ!」
「ここで留まる訳にはいかないの‥‥お願い、応えてっ『カールスナウト』!」
 しかしその考えまでも払う位に『声』の攻撃は執拗で、あちこちから飛来する重力震に、数多打つ触手に二機の歌い手は全身の至る所を砕かれ、貫かれた。
「まだだ! まだ‥‥っ! 何が、起こった」
 だがそれでも奇跡的に動く『Die es Führt』へ強く、グレイは意思を注ぎ込みメイデンシステムを激しく励起させれば、未だ折れぬ心の刃を掲げたその時‥‥『マザー』がいる山より放たれた激しく眩しい光が、本当の奇跡を起こした。
「『声』が消えた‥‥敵意ある『声』の統率された、意思を皆が‥‥塗り替えた、の?」
 そして静かに『声』だけが散る中、見失った理雄を探すも見付ける事が出来なかったリースフィアは何となくそれだけは理解するとグレイと共に『マザー』がいる山へ向かうべく、踵を返した。

●Origin(根源)
『我が同胞を人が捻じ伏せた、だと‥‥脆弱な、他を省みない、人と言う種が我らを従えたとでも言うのか?!』
 同胞であった筈の歌い手が光放つ姿を目前に、初めて響かせる『マザー』の驚愕と苛立ちが篭った叫び。
『星を、他の命を蝕み、死して尚も余る罪を抱える人に同調し従うなど‥‥何を考えている!』
「違うっ! 従うとかそう言うのではなく‥‥こいつが俺達と共に生きる事を選んだんだっ!!」
 その『母』へ仁は激しく頭を振って光纏い再構築された『ブレイブレイド』を立ち上がらせ言い放つが、それでも『マザー』は怒りを露わに体表より幾十本もの槍を放つもトリアが最後に残す『Tireur der Dämongewehrkugel』を打ち、皆を守れば
「この子は、選んだだけ‥‥でも選ぶ事は貴方も出来るでしょう?」
『‥‥最早答えは決した、選ぶ道は既にない』
「そうですか。それなら僕は‥‥僕達は絶対に、生きて帰ってみせるっ!!」
 対する母の微かな惑いを感じたノリアは優しく呼び掛けるが‥‥返って来た無機質な返事を聞けば、体表を再び震わせる『マザー』へユイスは惑わず剣を掲げると一行は次々に想い描く未来への歌を刻んだ。
「これ以上は負荷が掛かり過ぎますかっ?!」
 がそれでも終焉はあり、トリアが『Schild des Lieds』に掛かる負荷限界のギリギリを見切ればハンナと共に織歌の増幅器を停止させ、上がる土煙の中にまだいるだろう『マザー』の様子を伺うが
『‥‥子らよ、その程度か』
「まさか、まだまだ‥‥これからだっ!」
 響く母の声には土煙の中から現れた姿のまま余裕が含まれており、一行を煽るもそれへ動じずに笑みを浮かべた烈が『シュトゥルムリッタァ』を疾駆させると再び一行と『マザー』は激しく打ち合い、地を震えさせ天を裂いた。

「参ったな‥‥限界、か」
 体を不意に蝕む激痛から『ブレイブレイド』をよろめかせれば、横薙ぎに払われた『マザー』の触手をまともに受けて仁は歌い手の膝を折ると、一様に崩れ落ちた一行の前に悠然と佇む『マザー』。
 熾烈に極めたその戦いは、メイデンシステムとの完全な同調を果たした一行が手にした『完全覚醒』の力を持ってしても、『マザー』を打ち砕けずにいた。
「無理をしないで下さいっ! もう後ろに下がって皆の支援を‥‥」
「そう言う訳には、行かないだろ‥‥どれだけ痛くとも、この星の『これから』を俺達は今、担っている。ならば出来る事を‥‥やらないと、な」
 それ所か、個人差こそあるが再び英雄達を苛む体の変調から立つ事もままならず絶望的な状況に置かれていたが、それでも英雄達は強固な意思だけ曲げずにいた。
『醜い、な‥‥』
「今を生きる事、自身が出来る事を全力でやって何が悪いっ!」
『それが無駄だとしても、か』
「五月蝿いっ! 俺が、『歌う』んだ。黙って‥‥聞いていろっ!」
 そして一行を蔑む母へ逆らうべく、嵐天丸は肉体の限界から震える膝を抱えれば尚も響く『マザー』の言葉の暇に『Grün』を液状化させ、溶け込ませれば母の次なる行動より早くその全身へ黒き雷を奔らせると
「一つだけ、言っておくが‥‥俺達は還ってきたんじゃあない! こいつも、他の奴らもお前を滅ぼしに来たんだよ! 他の奴らと一緒に、だ!」
 声なき声を木霊させる母へそれだけ間違いなく、言い放てば
「‥‥身体を少し、柔らかくしてやった! やっちま‥‥!」
「緋邑さんっ!」
 無線を通じ、皆を奮い立たせるべく叫ぶ嵐天丸の言葉はしかし最後まで響かず‥‥代わりに爆音だけを母の体内で轟かせると『ARTシステム』を走らせていた仁と、特殊センサーで構築された歌い手の瞳、『Voraussehen』で『マザー』の核を探っていた玲が漸くそれを見切れば、同時に己の歌い手を再び立ち上がらせ皆へそのデータを転送すると同時、母の懐へと一気に飛び込むなり
「全部‥‥くれてやるぜぇっ! 穿ち、散らせよ、『Zerbricht』!」
 背負う悪の字輝かせ『黒輝炎』が四肢に装備しているパイルバンカーを全て打ち込み『マザー』を貫き、気を引けば『ブレイブレイド』は静かにその腕部、搭載されているエネルギーカートリッジを立て続けに『RB』へ詰め込んで限界以上に稼動させ、両の腕に極炎を宿して捉えた核を覆う防御膜を、融解するその腕で抉じ開けようとするが
「ぐがぁぁぁぁあっ!」
 開こうとしたその直前、空間が割れれば『ブレイブレイド』の極炎を飲み込み『マザー』は仁の歌い手を突き放すと次に歪曲させた空間を炸裂させ、彼を穿つ。
『消えろ‥‥全て』
「これ、がお前を砕く‥‥『勇気の刃』だぁっ!」
 そしてマザーが告げた最後の宣告に、しかし空間に飲まれながらも仁は眼前に降って来た、『HBB』を今となっては唯一動く口で咥えれば即座に放ち、核がある部位へそれを突き立てると同時に『ブレイブレイド』は完全に消去されたが、彼が遺した勇気の刃は消えず
「この星の未来はあたし達が決める。貴方達に決められて‥‥たまるもんですかぁっ!」
 それを見据えてノリアは僅かな期間だけの付き合いだった彼の為に涙を零すより早く、『Blitz Spirale』の拳を掲げその枷解き放っては天空へ高く飛翔すれば
「世界を壊す為の母なんて‥‥あたし達はいらないっ! 喰らえ、ひっさぁーーーつ! ノリアボンバァッーーー!」
「風よ集いて嵐となれば、俺達は無敵だ‥‥風よりも疾く、雷より迅しく、シュトルムヴィント・ウント・ドナシュラークッ!」
「響け‥‥パンテオンの咆哮‥‥!」
「私は私だけの歌を紡ぐ‥‥不屈の歌を、希望の歌を、勝利の歌を、そして私達が私達である為の歌をっ!」
『だから、響けぇーーー!!!』
 激しく輝く拳を仁が遺した勇気の刃へ叩き付け、『マザー』の核を光の塵へ帰す中で遺された英雄達も最後の歌を奏でれば、やがて音だけが満ちる空間は遂に神々しきまでの光を撒き散らした。

●Non Title(名も無き歌)
「やっぱり歌は楽しまなきゃね。私ならまだまだ歌えるよー」
「‥‥そうですね。折角ですから、歌いましょうか」
「何が‥‥いいだろうか」
「明日に続く、明るい歌ならっ!」
「‥‥いなくなった人が、遺してくれた平和の為にも。その代わり、私は生き続けるから‥‥今は」
「高らかに、歌いましょう」

 〜Fin〜