緊那羅幻想〜Tower Of BABYLON〜
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■ショートシナリオ
担当:やなぎきいち
対応レベル:フリー
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
リプレイ公開日:2006年04月19日
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●オープニング
●MMORPG『緊那羅幻想』
緊那羅幻想(きんならふぁんたじー)と呼ばれるそれは、最近人気赤丸急上昇中のオンラインゲームである。脳波を利用し電脳空間に用意された仮想のファンタジー世界を体感するのだ。
少々初期投資が必要になるが、遊び方は至極簡単。USBポートへ専用のコードを挿す。コードの先にはプラスティック製の指サックが付いていて、これを右手の中指に嵌める。そして左右のこめかみに1センチ四方のチップを貼る──これはバンドエイドでもセロテープでも何で貼り付けてもOKだ。このチップに組み込まれた回線が微弱な脳波を拾い、中指のサックに送信する。サックはログインや各種課金用の指紋認識を兼ねている。脳波を送信するのなら脳波で認識すればよいのにと、キャラクターが1体しか登録できないシステムと共に現在ユーザーからの不満の的となっている。
この機械を経由して思考を直に送信するため、コントローラーもキーボードも不要。チップは消耗品なので定期的に買い換えなければならない。
ログインをするためには、まず専用のサイトにアクセスする。ログインのボタンをクリックして30秒後に指紋認識が行われる。ログイン後の意識はゲーム世界に飛んでしまうため、安全確保のためにも、ユーザーはそれまでに床やベッドに身体を横たえなければならない。ログイン後は登録画面、もしくは最終セーブ地点からのスタートとなる。反対に、ログアウトはセーブ後に自動的に行われる。MMOタイプのゲームのため、ゲームクリアは存在しない。
外見はファンタジー世界のヒューマン、デミヒューマンであれば自由に設定が可能である。服装は構造的に可能なものであればOK。ビキニタイプのレザーアーマーというのも可能であるが、耐寒性は悪く、防具としてもほぼ役に立たない。金属製の全身鎧であれば、防御力はすさまじいが、とてつもなく重い。そんな所はとてもリアルに作られていて、脳波を利用した新しいタイプのコンピューターゲームという看板の外にもコアなユーザー層を獲得し維持する要因となっている。
この緊那羅幻想に、3日前、新たなダンジョンが誕生した。Tower Of BABYLON──バビロンの塔というダンジョンである。
そして今日、雲を突く‥‥地上60階までは確認されているこのダンジョンは閉鎖された。重大なバグが発見されたからである。
お気付きであろう──そう、Tower Of BABYLONに挑んだ者たちの意識が電脳空間の仮想現実から戻らないのだ。塔の中ではセーブも出来ず、全滅すればセーブポイントまで自動的に戻されるはず。けれど、それも行われない。
キャラクターも、精神も、ダンジョンから戻らない。この恐るべきバグを駆除するべく、Tower Of BABYLONのデザイナー兼チーフプログラマーのルシアン・ドゥーベルグが有志のユーザーを募った。
「ダンジョンそのもののプログラムはハッカーの攻撃を予防するためのプロテクトが掛かっているの。これが恐らくバグの影響で暴走して、外部からのプログラムを受け付けない状態になっているわ」
つまり──ダンジョンに潜入し、内部からバグを駆除しなければならない。もちろん、バグを駆除できなければゲームオーバーになろうとも電脳空間の仮想世界から戻ることはできない。
「私たちから支援できることはあなた方のデータにアクセスしてキャラクターのプログラムを書き換えること。まず、バグを『モンスター』として目に見える形にするわ。それから、プログラマーとの通信回線を確保・維持し、魔法や武器を送り込みます」
プレイヤーが望む武器をプログラムし、数秒間で緊那羅幻想の世界に送り込む。
そのためにTower Of BABYLONに関わったプログラマーは全員待機している。
「バグを駆除すればエスケープ・キーが復活するわ。そうすればデータをセーブしてログオフすることができるはずよ。‥‥こんな形で私の傑作を踏破してもらわないといけないのは本当に不本意なのだけれど、バグを放った責任は私たちにあるものね。一分でも早くクリアして頂戴、よろしくお願いするわ」
緊那羅幻想のダンジョンマスターとしてプレイヤーの、そしてキャラクターの挑戦を受け続ける赤毛のルシアンは、そう言って頭を下げた。
●リプレイ本文
●〜Floor 6〜
松明やランタンを使わなくともほんのり明るい塔。その壁面は触れると冷たく感じられ、まるで石そのものの感触を伝えている。このキャラクターとプレイヤーの感覚の共有が緊那羅幻想の一番の売りである。当然、斬られれば痛い。
「白き母の御手が傷を癒さんことを──」
「すまない、ウィル殿。こんなところでまた手を借りるとは思わなかったな」
「お気になさらずに。それよりも‥‥来ます!」
ウィル・ウィム(ea1924)のリカバーが積極的に前線で壁になっているルシフェル・クライム(ea0673)の傷を癒す。どうやら二人はこの電脳空間では面識があるようである。ウィルは一部では有名なのだろう、サラサ・フローライト(ea3026)も彼のことを知っているようである。
「月の雫、銀の輝き。鋭き矢となり彼の者を射抜け!」
『ムーンアロー、実行!』
呪文の詠唱に合わせて、プログラマーがキーボードに指を滑らせる。サラサの手元に収束した月光が骸骨兵を貫く!
「のんびりとあんたらの相手をしてる暇はないんだ」
ロックハート・トキワ(ea2389)のダガーが骸骨兵の握る剣の刃を滑り間合いを縮めて切りかかる! その一撃が致命傷だったのだろう、骸骨兵はガラガラと音を立てて崩れ落ちた。
「アイテム確認は常識よねっ♪」
倒された者は、モンスターもキャラクターも関係なく、一定の時間を経て消滅する。仲間を労った逢莉笛鈴那(ea6065)は消耗品やアイテムをゲットするためにも、モンスターの所持品をがさごそとあさり始めた。
そんな忍者エルフの様子を見て思い出したように剣を鞘に収め、ノース・ウィル(ea2269)は辻リカバー師へ声をかけた。
「MPを温存するためにも、このカプセルを使ってもらえないだろうか。皆も必要なら持っていってくれ」
「回復用のアイテムですか?」
「ああ。塔に入る前に作れるだけ作っておいたのだ」
手渡そうと取り出したのはリカバーを封じたカプセル。それを覗き込むクレア・エルスハイマー(ea2884)は、誰の目から見ても初心者のようだ。元々面倒見が良いのだろう、ノースは嫌な顔一つせずに丁寧に説明した。
「まだ6階か‥‥確かバビロンは最低でも60階だというのが売りだったな」
取得しているのが仲間を巻き込みかねない魔法ばかりだったゲレイ・メージ(ea6177)はMPの温存の意味も込めて戦闘を静観していた。その手にはノースから預かっていたバビロンの塔のマップがある。彼女が地道にマッピングし、ゲレイが地道にデータ採取したものだ。
全てに共通していることといえば、どこかに上り階段があること。階段を上ると次の階のマップが生成されること。一度通過した階のマップは変化しないこと。
「ルシアン殿の言っていた『休憩ポイント』が出るまで、頑張って進んでみよう」
稀に、敵の出現がない休憩ポイントがマップの中心付近に出現する──それはルシアンから聞き出した情報である。ルシフの言葉に頷き、骸骨兵の所持品を確認した一行は休むことなく未踏破地点へと歩み始めた。
●〜Floor 39〜
広めの空間に吹き上げる噴水を見て、クレアが頬を緩めた。
「休憩ポイントもこれで4度目ですね‥‥休んでいかれるのですよね?」
その言葉に頷くウィルは誰よりもMPの消費が激しい。そして広いフロアと階段の連続は地道に皆の体力を奪っていた。MPと疲労の回復を図るべく身を休めることとなり、保存食やワインを口にする。アイテムを消費しているだけなのだが満腹感があるのが不思議だ。
「ルシアン殿、またお願いできるだろうか?」
『お安い御用よ♪』
きっかけはノースの小さなお願いだった──保存食をチーズをたっぷり使ったものに変更してほしい、と。
豪華なものには出来ないが、保存食の味の変化は単調な塔での小さな楽しみとなっていた。
腹も膨れ、駆使していた盗賊七つ道具の手入れを始めた鈴那は沈黙を嫌うように口を開く。
「ところで、ノースさん。ずっと気になってたんだけど、そのウサ耳は何か意味があるの?」
「幸運値アップアイテムだ。少しでも運をアップしようと思ってな‥‥似合わないのは解っている」
「そんなことはない。良く似合っていると思う」
今更尋ねなくても‥‥と僅かに頬を染めるノースへ恋人の姿を重ね、ルシフは微笑みを浮かべた。
「やはり、幸運のウサ耳か。ここを出たら俺に譲らないか?」
「いや、これは‥‥」
目を輝かせるロックハートから少し身を引いて、逡巡の色を覗かせたノース。に様々な条件を提示するロックハートだが、釣り合いの取れていない取引だと解らないのはこの場ではクレアだけのようである。
「気にすることはありませんよ、彼に渡してもリアルマネートレードに出されてしまうだけですから」
左腕の袖口に紐でくくった『天使の羽のひとひら』──その羽についていた砂埃を取り除きながらにっこり微笑んだウィルはロックハートを一刀両断にした。ばつが悪そうに肩を竦め、ロックハートは身体を横にした。
「ウィルさんは、その羽をとても大切になさっているんですのね」
「‥‥ええ。辻リカバーを始めたきっかけになった方に頂いた物なんです。私の『意志』の証のようなものですね」
「あなたに助けられた方の中にも同じように羽を持ち辻リカバーという職業に就かれる方がきっと現れていると思いますわ」
「辻リカバーは職業ではないよ、クレア」
珍しく小さく笑ったサラサの言葉に、クレアは長い耳まで真っ赤に染まった。
●〜Floor 52〜
目の前に広がるのは──一言で簡潔に表せば『宮殿』だった。
自分たちは謁見の間へと繋がるのであろう廊下に佇み、足元には赤い絨毯が敷かれている。絨毯の左右には甲冑や大理石の像が並び、幾分悪趣味な感も漂うが‥‥それでも一言で言えばやはり宮殿の印象のあるフロアだった。
「‥‥イベントフロアのようですね」
「こういう場所にはレアアイテムが眠っているものだよな」
自称ライトユーザーのウィルとバイト代わりにレアアイテムハンターをしているロックハートは興味津々で辺りを見回す。イベントフロア──他のフロアとは明らかに違う、イベントを抱えたフロアである。その出現も当然ランダムだ。
いつまでもその場にいるわけにもいかず。そろそろいい加減に止めようかと思うのだが、ここまで来て止められないという思いもあるが、データ関係の纏めもしているコミュニティサイトの管理人としてのプレイヤーの意地もある。そんなジレンマを抱えたノースが新しい羊皮紙を取り出すのを待ち、52階を歩き始めた。
やがて謁見の間に辿り着くと衛兵が声を上げた。
「ウィリアム陛下のおなーりー!」
「貴公らは何故この城へ踏み込んだのだ」
「何故といわれても、バグ退治の為だろう?」
ゲレイの言葉にウィリアム陛下は渋面を作る。そして傍らに控えた宰相が錫杖を振るった。
「危ない! ‥‥うわあああ!」
ゲレイを突き飛ばすロックハート! そして代わりに、錫杖から伸びた虹色の光線に身を晒す!
「ロックハート!」
「‥‥きゅう」
光線に晒されたロックハートはミニマムサイズになって目を回した。
「きゃー、可愛いっ! じゃなくて、ルシアンさん、どうすれば戻るの?」
鈴那は頬を薔薇色に染める。状態異常攻撃『ちまっと』は一部に熱狂的なファンがいるようだ。しかしミニマムサイズになれば戦力は当然、格段に落ちる。この状況のままでは困るとルシアンに助けを求める鈴那。
『王様へ無礼な振る舞いをしなければ『ちまっと』を受けることも無いわよ。その状態も、次のフロアに進めば戻るわ』
「そういう事ならば私に任せてもらおうかな」
ルシフが微笑んだ。ルシフ、ウィル、ノース、クレア‥‥普通にしていれば礼を失うことのない者が半数を占めている。ゲレイがぽろっと口を滑らせたのも運が悪かったとしか言えまい。
『でも、気をつけてね。無礼の度が過ぎると問答無用で極刑に処されるわよ』
「そういうことは早く言ってもらいたい」
ゲレイの一言に皆はもっともだと頷いた。
光線を受けたためレアアイテムゲットとはならなかったが、からくりが解れば難しいイベントトラップではない。52階自体は難なく突破と相成った。
●〜Floor 77〜
モンスターというのには法則性がある。緊那羅幻想に現れるモンスターは当然、ファンタジーなモンスターだ。だから‥‥大理石の神殿に鎮座するソレは誰も見たことがなかった。
「っ!? コイツは‥」
3mほどのどす黒いスライム状のドラゴン‥‥というべきだろうか。断ち斬られた首の頭にはぞろりと牙の生え揃った口だけがある。腹部と背中、尾の付け根に複眼のように無数の瞳が並んでいる。像のようにどっしりとした足は7本。混沌、異形──そんな言葉でしか表せない異質なソレはルシアンに尋ねるまでもなく、8人の誰から見てもバグそのものだった。
「これは流石にアイテム持ってなさそうね‥‥」
「大掛かりなバグのようだな。私は、困難なバグほど燃えるのさ」
思い知らせてあげよう、と腕を掲げる。詠唱もなく氷の礫を含んだ暴風がバグに襲い掛かった! 疾走の術を用いた鈴那と念のためにレジストデビルを唱えガディスアーマーを構築させたルシフが前衛に立つ。
「影よ、縫い止めろ!」
シャドウバインディングを詠唱するサラサ、しかしバグは非常識な力で床から影ごと自分の身を引き離した。
「これならどうです、コアギュレイト!」
ウィルの魔法がバグを拘束する。非常識な力が自由を求め荒れ狂い、ウィルの精神力との戦いに移行した。
「やれやれ、こういう状況でなかったら楽しむのだけどな。ある意味、命がかかっているので、冷や汗しかでないな」
ウィル、サラサの魔法がバグを拘束し、振り解かれ──その応酬が繰り返される間に傷だらけになりながらもバグへの攻撃は休むことなく繰り出されていく。
「これですわね‥‥マグナブロー!」
気配を殺して近付いたロックハート、そして鈴那。クレアのマグナブローに加えてそれぞれの攻撃の傷みに身を捩るバグ。その勢いがウィルに負担を与え、拘束を吹き飛ばした!!
「‥‥怪我ですか!? すぐ治しますから!」
「その前に自分の怪我を、ウィルさん!」
鈴那に駆け寄ろうとしたウィルの姿がかき消された。
「すみません、後はお願いします‥‥私の『意志』、あなたに託‥‥」
「ウィルさん!」
ランダムワープでバグの後部に出てしまったウィルは尾で薙ぎ払われ、HPゲージが黒く染まる。『意志』を受け取った鈴那が悲痛な叫びを上げる間にもクレアは鉄の意志でスクロールを読み続け、ローリンググラビティが、ライトニングサンダーボルトが、バグのHPを削いでいく。
「ルシアン、聖剣をっ! ‥‥えぇい、遅い!」
構築に手間取っている間に、バグが鈴那に狙いを定めた事を察し、ノースが槍を構え走り出す! 疾走の勢いを込めて全身で体当たりの如く行ったチャージングはバグに甚大なダメージを与え、のた打ち回るバグはヘドロのような体液を噴出しながらノースを体内に取り込んだ!
最早、一時退いて体勢を立て直すなどという余裕は何処にも無い。ルーンソードを構えたルシフが攻撃に転じる!
「バグの腹の下、体液も水だろう! ルシアン!」
「どこでもいいわ、バグの近くなら!」
ウィルが踏んだトラップをダンッ! と踏みつけた鈴那の姿が消え、バグの上空に現れた! 同時にロックハートの手に聖剣アルマスが姿を現す。落下の勢いで忍者刀を突き立てる鈴那、狙い済ました一撃を放つロックハートとルシフェル! そしてムーンアロー、マグナブロー、ウォーターボムが一斉に火を噴いた!
──ドォォォン!!
盛大な破裂音の後に、切り裂かれた数々の深い傷跡からドクドクと体液を噴出していたバグは、やがて光の粒子となり空気に溶けて消えた。
「‥‥売らないで正解だったな‥‥」
疲労にへたり込み、ルシフがノースの呼吸を確認するのを見ながら安堵の息を吐いたロックハート。その疲労を吹き飛ばす一言がルシアンから飛び出した!
『おかしいわ、エスケープキーが現れない!!』
●〜Escape〜
ルシアンの引きつった声はプレイヤー達へも伝播していく。
「他にも『バグ』がいるのか!?」
『いえ、そんなはずはない──』
実際に、ルシアンたちの元にあるコンピューターではまったく同じプログラムで問題なく動くいているのだから。打開策を探すが、外へ出られるよう何か手段を講じてみてくれと言うルシアンの言葉に動揺が奔る。
「少し落ち着いてはどうだ。慌てた所で状況を変えることは出来まい──」
仲間たちへ窓から遥か遠い地上を眺めていたサラサはリュートを取り出すと、ロココ調の窓枠に腰掛けて音を紡ぎ始めた。
「銀の兎は手を引きて 新たなる地へと導かん 淡く輝く銀の月 扉は丸き銀の月──‥‥」
月の魔力の込められし銀のリュートを爪弾いて、サラサは朗々と歌う‥‥幻の魔法を紡ぐ歌を。
そして兎は──ノースは舞う、羽のように軽やかに。気分転換は確かに必要だろう──そう考え、皆がノースのダンスに加わった。
サラサの紡ぐ曲に乗り、歌詞に乗って踊られた軌跡が‥‥やがて淡く輝き始め、重厚な、けれど柔らかい銀色の扉が出現した。
「ムーンロードか‥‥ふむ、確かに論理的には可能だな」
窓の外にいつしか輝くフルムーンは曲に合わせて作られたルシアンからのささやかなプレゼントにすぎなかった。けれど、それが発動条件を満たしたのだ。
「エスケープキーが現れたわ!」
鈴那の弾んだ声に意識を凝らすと、確かに手の平にエスケープキーが現れていた。
徐々に開く扉から溢れた銀光に包まれ──そして収束した銀光の向こう側から現れた風景は、バビロンの塔から一番近く、消耗品を買い求めた村だった。
「恐らく、ムーンロードがバグの生んだ歪みを修正したのだろうな」
ゲレイの言葉を裏付けるように、次々に様々なキャラクターが具現化する。
その中に大切な女性の姿を認めたルシフは力の限り抱きしめた。
「あ、皆! 無事だったのね!」
「レアアイテムは手に入らなかったか、残ね‥‥痛、殴るなって、悪かった、この通り!」
「このパーティーも楽しかったが、やはり私には貴殿らと居るのが合っているようだ」
「ここにいたのね‥‥もう私を一人きりにはしないで、こんな想いは一度で充分だわ」
「クリアならず、か。まあ、一度でクリアできるとは思わなかったが‥‥」
「ここは──怪我人だらけではありませんか。順に回復させますので」
恋人を見つけ、友人をみつけ、そしてバビロンの塔を見上げ、失っていた者を取り戻したプレイヤーたちは‥‥忘れていた大切な一言を口にした。
「「「セーブ!!」」」