Ristorante −ZOO−アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
徒野
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
1.1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
12/20〜12/26
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●本文
「牡蠣はっ、新鮮なのを七輪で焼いてっ、其の侭が一番っスよ!」
サンプルで届いた牡蠣を目の前に、ADの青年が力強く訴えた。が、其の後頭部を丸めた台本で叩かれる。
「った!?」
「遠回しに番組を否定するな」
銜え煙草のディレクタが笑い乍背後に立っていた。
「ひ、否定なんかしてませんよ!」
慌ててフォローに入る青年を見て男性は更に笑みを深くした。
「まぁ、俺も焼牡蠣を否定せんけどな。生も美味い」
「嗚呼‥‥生も良いっスね‥‥」
毎度の事乍別世界にトリップしている青年を見てカメラマンが呟く。
「‥‥倖せそうだな彼奴‥‥」
「っと、おらっ。飛んでないでキッチンブースのチェック行って来い!」
もう一度頭を叩かれて、漸く青年は走り出した。
『Ristorante −ZOO−』(リストランテ・ゾー)。
少し小洒落た名前を冠された此の番組は、流行に乗った料理バラエティである。
各界で活動する色んな人々が毎回指定された旬の食材を使って、自ら其の腕を振るい、其の料理で競って貰おう‥‥と云う趣旨だ。
競う、と云うからには毎回優秀者が選ばれるのだが‥‥賞品は『ささやかな何か』が贈られる、としか知らされていない。‥‥前回の賞品も非常にささやかだったと聞く。
第四回と為る今回の御題食材は『牡蠣』。
旬の食材と知られる此の材料で、どんなレシピが揃うのか‥‥。
●募集告知
出演者として各界で活動されている方を幅広く募集します。料理経験の有無は問いません。
指定された食材を使った料理を最低一品考えておいて下さい。コースで考えて下さっても構いません。
亦、演出、調理指導等のスタッフも同時募集します。
●リプレイ本文
「食材到着しましたー!」
朝一で収穫された新鮮な牡蠣がスタジオに搬入され、スタッフが急いで梱包を解き始める。
生物は鮮度が命であるだけに、手早く調理用とディスプレイ用に分けられ、冷蔵庫の中で出番を待つ事となった。
「時間ギリギリでしたけど間に合って良かったですね」
「嗚呼、矢張り新鮮な方が良いからな」
ADの青年とディレクタの男性が、スタジオの隅に置かれた業務用の冷蔵庫に視線を遣りつつ言葉を交わしていると出演者達もスタジオ入りして来始める。
「御早う御座いまーす!」
元気な声と共に遣って来たのは木之下霧子(fa0013)、顔馴染みと為り始めているスタッフににこにこと挨拶して廻る。
「御早う御座います、今日は宜しく御願いします」
前から出たいと思ってたので嬉しいです、と葉月 珪(fa4909)も笑顔で御辞儀する。
其の後も次々と出演者が現れて、スタジオが賑やかになった。
「撮影等の手順に就いて説明しますので出演者の方は御集まり下さーいっ!」
全員が揃ったのを見計らってADが声を掛ける。
「毎度御馴染みに為りつつありますが説明させて下さいね。審査方法はスタジオ審査員五人と別会場に控えて居る百人の観覧者に投票をして頂いて優勝者を決める方法です」
ADの青年は主に初出演の人達の方を見乍説明を続ける。
「試食して頂くのはスタジオ審査員の方と、観覧者から性別年齢層で分けた中から無作為に選出した八名です。其の他の方は調理の様子や料理の見た目での判断になりますから、盛り附けなんかも気を遣って見て下さいね?」
そう云ってファイルを捲りつつ青年は首を傾けた後、伊達 斎(fa1414)に向いた。
「何か‥‥ぁ、伊達さんは味噌を御自分で用意されたんですよね。ブースの方に置いてありますので確認を御願いします」
「嗚呼、了解。有難う」
斎は穏やかに微笑むと、其れじゃ一寸失礼してとセットの方へ向かう。
「然し‥‥こりゃ、宣伝としての選択か?」
ヘヴィ・ヴァレン(fa0431)が食材サンプルとして置かれている牡蠣を手に取って呟く。
「ま、Rがつく月は牡蠣のシーズン、て云うし」
「旬の物を美味しく頂くのは良い事だと思います」
Zebra(fa3503)と柊棗(fa4808)が頷き合う。
「栄養満点だしね〜☆」
「嗚呼、でも牡蠣なんてブルジョワな代物を扱うのは初めてです」
豊田せりか(fa5113)がぱくぱくと殻を突いてる横で八嶋かりん(fa4978)がまじまじと牡蠣を眺めていた。
■ □ ■ □ ■
撮影開始を告げる無音のカウントダウンが零を示すと、御馴染みのジングルと司会者がアップで映し出される。
「皆様、今日和。いらっしゃいませ! ようこそ、『Ristorante −ZOO−』へ!」
時節の挨拶や番組の説明、今回の出演者紹介。司会の声に合わせて、カメラが其れ其れを映し出した。
今回はオーバーオールにジェンツー柄エプロンとイワトビペンギン柄コック帽、と前回よりぺんぎん色を濃くした霧子、袖を捲った黒のワイシャツに前掛型のエプロン着用のヘヴィ、相変わらずエプロン姿がきっちり嵌る斎、丈の長いサロンを腰に巻いたZebra、純白レースが附いた可愛らしいエプロンを身に着けたのは棗、薄桃色の控えめなフリルで飾られたエプロン姿の珪、エプロンドレスに身を包んだのはかりん、体操のおねえさんらしく子供受けしそうなアップリケの附いたエプロンを着て手を振るせりか。
ルール説明の後、各々は割り当てられたブースへと向かった。
調理開始の鐘が鳴り、其れ其れが一斉に牡蠣を手に取る。
「今回も今朝揚がったばかりの新鮮なモノを用意しましたからね!」
「美味いんでしょうねぇ」
司会と解説がモニタを眺め乍しみじみと呟き、続々と殻から外されて洗われていく牡蠣達。
「おや、伊達さんは殻を茹でていますね。盛り附けに使うんでしょうか」
臭みを取る為に殻を茹でる横で、身も白ワインと水、レモン汁を合わせたもので一つずつ丁寧に洗い上げていく。
「伊達さんは牡蠣の産地として有名な宮城の出身ですからね、期待も高まります」
「懐かしいな‥‥毎年NYのオイスター・バーでガツガツ食ってたなぁ。磯で小さいやつを獲って食べた頃もあった‥‥若気の至りってやつか‥‥」
ふ、と何処か遠い目をしてZebraが呟いた。
「と、いかんいかん」
直ぐに我に返るとナイフでかぱかぱと片側の殻を開いていく。
傍らには氷の敷き詰められた硝子の器と、小さめの七輪。
「‥‥素材の味を活かせるのなら其れが一番よいじゃない! 俺の料理の腕を見せられなくてもよいじゃない!」
謎の主張をし乍着々と準備を進めていく。
「ボクは牡蠣大好きだよ〜☆ みんなは大好きかな〜? そうか〜嫌いな子も多いよね〜でも、栄養満点で海のミルクって言われるくらいなんだから、みんなも食べなきゃ駄目だよ〜」
丸で教育番組の様なノリでせりかがカメラに向かって話し掛ける。
「んじゃ、ボクの今日作る料理は‥‥牡蠣のガスパチョソース〜☆ 先ずはソースを作るよ〜」
そう云ってトマトにパプリカ、胡瓜の下処理をしてからざく切りを始めた。
映像が棗の手元を映し出す。フライパンの中でローストされているのは数種のスパイス。
「おや、柊さんは自ら調合したスパイスで料理に挑む様ですね」
「今日の為に調合の勉強をしてきたらしいですからね、此方も楽しみです」
棗はローストし終えたスパイスを密閉容器に移すと他の材料の下準備をし始めた。
「さてと、炊ける迄に全部済ませちまうか」
出汁や調味料を一緒に入れた炊飯器のスイッチを入れてからヘヴィが呟いた。
下処理した牡蠣と酒を火に掛ける横で、味噌と調味料を合わせて混ぜる。
てきぱきと進められる作業に会場から感嘆の声が漏れた。
霧子の作業台では、牡蠣が赤く染まりつつあった。
「チリソースに唐辛子でピリ辛、あっつあつを食べれば病み附きですよ〜☆」
るんるんとピラフを作る霧子。刻まれてソースと絡められた牡蠣。唐辛子を塗されフライされた牡蠣。
霧子御馴染み、メイン材料の合わせ技が今日も光る。
「変わって八嶋さんはオーソドックスな牡蠣フライの様ですね」
モニタの向こうには、一つ一つ丁寧に衣を着けていくかりんの姿が。
「唯のフライじゃないですよ、愛情が一年分入ってますからねー」
かりんはにこりとカメラに向かって微笑み掛けると、温度を確認した油に牡蠣を沈めていった。
「お、葉月さんも色々作ってらっしゃる様ですが」
料理好きと云うのが頷ける手際の良さで、持参のMy包丁を振るう珪。
牡蠣の他にも浅蜊や海老と云った魚介を使ったパエリアに里芋と合わせたムニエル、天麩羅にした牡蠣を入れた煮おろし‥‥とヘヴィと同じく三品を作り上げる。
「中々趣向が凝らしてあって、彩りも綺麗ですね」
「そろそろ終了の時刻が近付いて参りましたが、皆さん大丈夫ですかー?」
司会がそう声を掛けずとも、各々の前には既に料理が出来つつあった。
霧子の『ピリ辛牡蠣フライ乗せ牡蠣ピラフの牡蠣チリソース掛け、刺激的な牡蠣スペシャル』にヘヴィの『牡蠣飯・吸物・焼味噌』セットに、斎の『牡蠣の味噌風味グラタン』、Zebraの『生牡蠣と焼き牡蠣のオイスター・バー気取り』に棗の『シーフードカレー』、珪の『牡蠣の味噌パエリア・煮おろし・牡蠣と里芋のムニエル』セット、かりんの『愛情カキフライ』にせりかの『牡蠣のガスパチョソース』、と多彩に並ぶ。
――チリチリチリーンッ。
時間一杯を告げる涼やかな音が響く。
「お、今鳴りました! 調理終了でーす!」
■ □ ■ □ ■
「御疲れ様でした! と、頂きまーす!」
収録後のスタジオで皆声を合わせて乾杯する。
「ふふ、斯う遣って皆さんの料理を味見するのが毎度の楽しみなんですよね」
霧子がほくほくと皆の料理に手を伸ばす。
「霧子さんの御料理だってアイディアが面白くて美味しいですよー」
「嗚呼、本当に病み附きになる辛さだな」
かりんとヘヴィが霧子の料理を抓み乍感想を云い合う。
「ぁ‥‥斎さんのグラタンも美味しいです‥‥。優勝なのも、頷けます」
「有難う、棗さんのカレーも矢張り香りが違うね」
棗と斎が互いの料理に就いて意見を交換し合っていると、珪が控えめに話し掛けてきた。
「あの、私もコツとか‥‥聞いて良いでしょうか?」
「ええ、勿論」
「寧ろ‥‥珪さんの御料理の御話も聞きたいです」
わいわいと料理談義が始まる後ろで、Zebraとせりかもわいわいと牡蠣を愉しんでいた。
「あー、こんなに腹一杯牡蠣食ったの久し振りだ‥‥幸せだ‥‥」
「そ〜だね〜☆ こんなに色んな牡蠣料理滅多に食べられないよね」
「其れにしても今回の賞品、一寸羨ましかったですよー」
霧子が不図思い出した様に、斎に顔を向けた。
「え、嗚呼、何なら御裾分けするよ。屹度周りに配る事に為るだろうし」
そう云って斎は苦笑した。
海のミルク、と掛けたのか今回の賞品は『みるくぷりん一年分』である。‥‥掛かってる、のか。
「毎度の食材と云い、優勝賞品と云い‥‥誰が選んでるんだろうね」
癖の有る選択が気に為るよ、と斎は小さく笑った。