Ristorante −ZOO−アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 徒野
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 易しい
報酬 1.5万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/05〜07/14

●本文

「おい、食材のチェック終わったか?」
「はいっ、リスト上に漏れは有りません」
 キッチンが特設されたスタジオ内をスタッフが駆け回る。
「ガスと水道もちゃんと繋がってるんだろうな?」
「業者に確認させたので大丈夫ですっ」
「‥‥良し」
 今日から新しく始める番組の為、スタッフも設備のチェックに余念が無い。
「じゃぁ、リハ始めるぞ!」


 『Ristorante −ZOO−』(リストランテ・ゾー)。
 少し小洒落た名前を冠された此の番組は、流行に乗った料理バラエティである。
 各界で活動する色んな方々が毎回指定された旬の食材を使って、自ら其の腕を振るい、其の料理で競って貰おう‥‥と云う趣旨だ。
 競う、と云うからには毎回優秀者が選ばれるのだが‥‥賞品は『ささやかな何か』が贈られる、としか知らされていない。
 記念すべき第一回の指定食材は『トマト』。
 一体、どんなレシピが揃うのか‥‥。


●募集告知
 出演者として各界で活動されている方を幅広く募集します。料理経験の有無は問いません。
 指定された食材を使った料理を最低一品考えておいて下さい。コースで考えて下さっても構いません。
 亦、演出、調理指導等のスタッフも同時募集します。

●今回の参加者

 fa0013 木之下霧子(16歳・♀・猫)
 fa0476 月舘 茨(25歳・♀・虎)
 fa0917 郭蘭花(23歳・♀・アライグマ)
 fa1414 伊達 斎(30歳・♂・獅子)
 fa2683 織石 フルア(20歳・♀・狐)
 fa3376 桐原 芽衣(17歳・♀・蝙蝠)
 fa3822 小峯吉淑(18歳・♂・豚)
 fa3978 アミリア・クラドール(13歳・♀・犬)

●リプレイ本文

「御早う御座いまーっす!」
「宜しく御願いします」
 スタジオ内に次々と挨拶が響く。
 『Ristorante −ZOO−』記念すべき第一回の出演者とスタッフ達が集まって来たのだ。
 其れ其れが簡単な挨拶や、打ち合わせを行っている中でも特に、一人の少女がぴょこぴょこと駆け回って皆に礼儀正しく挨拶しているのが見えた。
「初めまして、此がテレビの初仕事になる木之下霧子(fa0013)です! 至らぬ点も有るかと思いますけど、どうぞ宜しく御願いしますね♪」
 霧子はそう云ってにっこりと天使の様な微笑みを見せる、が。
(「‥‥ククク。スタッフに好印象を持たれていれば、後々仕事がし易いのです」)
 其の裏でこんな、悪魔の黒い羽と尻尾が見えそうな程相当強かな企みを持っているなんて、屹度誰も気附かないのだろう。
 霧子は其の侭セットのチェックをしていた女性に声を掛ける。
「木之下霧子です、宜しく御願いします! ‥‥大道具、の方ですか?」
「ぇ、嗚呼。丁寧にどうも。あたしは月舘 茨(fa0476)だよ」
 そう云って振り返った茨は、笑って首を振った。
「後、今回は出る方だよ。‥‥普段は裏なんで、表に出るのは不思議な感じだねぇ」
 ――‥‥ついセットのチェックしたくなるよ。
 呟いて、ふふふと笑う茨に霧子はもう一度礼をした。
「じゃぁライバルですね、どうぞ御手柔らかに」
「此方こそ、だ」
 笑い合う二人の後ろからADの声が響く。
「出演者の方は御集まり下さいー。簡単な説明を致しますのでー」
「お。‥‥行くか」
「はい」
 二人は声の方へと歩き出した。



「と云う事で、スタジオの審査員五人の他に別会場に控えて居る百人の観覧者にも投票をして頂いて優勝者を決める方法で遣る予定です」
 ADが企画書の写しを眺め乍ルールの説明をする。一段落附いた処で、出演者の男性が小さく手を上げた。
「一寸良いかな?」
「ぁ、はい、何でしょう?」
 ADは其の男性――伊達 斎(fa1414)の方を向いて先を促した。
「百人の観覧者も審査員になるのなら、大量に作らなくちゃいけないのかい?」
 他の出演者も、其れが気に為っていたらしく、改めてADに視線を集める。
「いえ、全員に‥‥と云うのは難しいので、性別年齢層で分けた中から無作為に八名程度選出させて頂いて、試食となります。其の他の方は、調理の様子や料理の見た目での判断になりますから、気を抜かず頑張って下さいね」
 そう云ってガッツポーズを取るADに、出演者達は胸を撫で下ろした。
「百人分だなんて、其れじゃぁ炊き出しだものね〜」
 眼鏡の女性がそう笑い乍遣って来た。
「今回カメラマンを遣らせて貰う郭蘭花(fa0917)よ、ちゃんと美味しそうに撮るから安心してね」
 蘭花は親指を立てて、軽くウインクするとカメラテストの為に戻って行った。
「では皆さんもそろそろ準備に入って下さい」
 其の言葉に、各々がエプロン等を準備する。
「皆さん、どんな料理を作るんでしょう‥‥」
 アミリア・クラドール(fa3978)は長めの前髪を左右にヘアピンで留め乍、愉しそうに呟いた。
(「後でレシピを教えて貰えたら嬉しいな」)
 其の横で、織石 フルア(fa2683)が並べられたトマトを眺め乍割烹着に袖を通している。
「トマトは良いな。火を通しても冷やしても美味い。‥‥しかもリコピンたっぷりだ。」
 長い髪を押さえるのに三角巾を利用して、純和風な雰囲気を醸し出していた。

「お料理、好きです。美味しいと云って貰えると‥‥とても嬉しいです。ぇ、優勝の自信‥‥? あの、頑張ります」
 少し恥ずかしそうに桐原 芽衣(fa3376)がカメラに向かって答える。
 準備が整った者から、カメラテストも兼ねて決戦前の意気込み撮りを行っていた。
「小峯吉淑(fa3822)です。今日は韓国のお料理を作らせて頂こうと思ってます。宜しく御願いします」
 吉淑もカメラに向かって微笑み掛ける。
(「とは云っても‥‥韓国じゃトマトはクダモノなんですよね。アレンジしてみたけど‥‥‥‥うん、きっと大丈夫です」)
 インタビューの後、作ってきたレシピを眺めて一人頷いた。



 撮影開始のカウントダウンが始まって、辺りがしんと静かになる。
 効果音が流れ、司会の顔がアップになる。
「皆様、今日和。いらっしゃいませ! ようこそ、『Ristorante −ZOO−』へ!」
 司会の挨拶に始まり、番組の説明‥‥と進む中で、今回の出演者紹介に移る。
(「皆良い顔してるわね〜」)
 蘭花が司会の声に合わせてカメラを移動させていく。
 フリルが附いたイワトビペンギンの白いキャラクターエプロン姿の霧子、キリッとバンダナを締めて微笑んでいる茨、エプロン姿が自棄に様になっている斎、純和風な割烹着姿が美しいフルア、控えめな花柄エプロンにネコ柄ミトンを持った芽衣、シンプルなエプロンを身に着けて人懐こそうな笑顔を浮かべている吉淑、エプロン装備に左右に分けた前髪で遣る気が見えるアミリア。
 ルール説明の後に、各々が割り当てられたブースへと向かった。

 開始の合図と共に、一斉に動き始める。
「矢張り湯むきする方が多いですねー」
 司会と解説が、各ブースの様子を見乍実況する。
 モニタの向こうでは、大量のトマトを湯むきした茨が、其の一部を広口瓶に入れていた。
「お、此は何をするんでしょうか」
 ――せいやぁっ!!
「ご、豪快です! 拳で瓶の中のトマトを潰しています‥‥!」
「腕に附いた汁が返り血っぽいですね‥‥」
 圧倒される司会と解説を余処に茨は調理を続けた。
「ぁ、何か瓶にヒビ入った‥‥」

「織石さんが作っているのはソースですかね?」
「ええ、屹度煮込み時間を取る為に初めに手を附けてるんじゃないでしょうか」
 同時に炊飯器にスイッチを入れ、炊き込み御飯の準備をするフルア。
「格好と云い、和風な料理が期待出来そうですね」

「クラドールさんは‥‥トマトを絞ってます」
「潰さずに汁を集める事で青臭さを減らす事が出来るんですね」
 溶かしたゼラチンと混ぜて、型に流すアミリアの行動を見て、司会が納得した様に呟いた。
「成程、青臭さを無くす事で爽やかなゼリーにが出来そうです。見た目的にも涼しげで、今の季節向けではないでしょうか」

(「あら‥‥皆手際が良いのね。私の出番は無いかしら」)
 レンズにベストショットを修めつつ蘭花が笑う。
「ぁ、私のカレーも混ぜないと」
 密かに作ってきたトマトカレーを焦げ附かない様に煮込みつつ、蘭花は撮影に戻った。

 迚も愉しそうに調理を進める芽衣に、司会と解説も思わず和む。
「‥‥愉しそうですねぇ」
「ええ、矢張り自分が愉しむと云うのも大事ですからね。屹度良い作品が出来ますよ」
 芽衣はスープの為にトマトの輪切りに取り掛かった。

「小峯さんは‥‥あ、餡でトマトを包んでいます!」
「苺大福のトマト版‥‥と云う事でしょうかね」
 此方も二人の心配を余処に着々と調理を進める。
「韓国料理を作ると云ってましたからね‥‥、‥‥た、愉しみです‥‥」

「木之下さんは、トマトソースを作っているようですね。ぉ、今回は彼女が一番可愛らしいエプロンですね」
 可愛らしいエプロン‥‥其処に霧子の『料理が苦手な子供っぽさをアピールで失敗料理も笑って誤魔化せる=ドジっ子属性で視聴者のハートを鷲掴みですネ』なんて、亦々腹黒い思惑が有る事には誰も気附かない。
「ざく切りにしたトマトに‥‥其のソースを掛けましたね」
「きゅ、究極の作品ですね」

「変わって此方は伊達さんですね。ロシア風で統一されてる様子です」
「ボルシチも美味しそうに煮込んでありますね‥‥期待出来そうです」
 手際良くピロシキを揚げていく斎の後ろに、何故が芽衣の姿が写る。
「おや、桐原さんが‥‥」
 然し周りが声を掛けるより先に、芽衣は慌てて自分のブースへと戻って行った。
「気に為って覗き込んで仕舞ったんでしょうか」
 微笑まし気に二人が笑っていると、遠くから何かがひっくり返る音が響いた。
 慌ててモニタを確認すると、慌てる余り転んで仕舞ったのか、生クリームで白くなっているアミリアが泣きそうになっている。
「こ、此はハプニングです!」
「‥‥お。でも料理を続行するようですね。」
「負けずに頑張って欲しいですね! さて、そろそろ時間が迫っておりますが‥‥」



 蘭花が密かに用意していたモノを含めて、約三十品。ずらり、と並べられた料理に全員が思わず溜息を吐く。
「こりゃ壮観だねぇ」
 思わず呟いた茨の言葉に、全員が頷く。
「其れでは、冷める前に頂きましょうか」
 斎の言葉に全員が賛成した。
 ――収録終了後の大試食会。
 番組の結果は僅差で茨の優勝、主婦の面目を保ったと云う処だろうか。
 然し百人と云う大人数の御陰か其れ其れの票差は余り無かった。‥‥屹度其れ其れの個性的なキャラクタがファンを作ったのだろう。
「美味しい‥‥です。お料理、上手なんですね」
 芽衣が皆の料理を摘んで一言呟く。
「吉淑のマリネ、皆辛いって云っていたが‥‥」
 そう云ってフルアが箸を伸ばす。
「‥‥‥‥っ」
「ぇ、そんなに辛いですか?」
 慌てる吉淑の後ろで、皆にレシピを教えて貰った霧子とアミリアが嬉しそうに話し合っていた。
 不図思い出した様に、蘭花が茨に視線を向ける。
「そう云えば賞品って〜?」
 ささやかな賞品と云うのは王様トマトの栽培セットだった。‥‥本当にささやか過ぎる、が。
「ま、良いさ。子供が喜ぶだろ」
 そう云って茨は笑った。

●ピンナップ


木之下霧子(fa0013
PCシングルピンナップ
多岐川