【AoS】耐久鬼事−夏−アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 徒野
芸能 フリー
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 1.3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/30〜08/05

●本文

「夏だな‥‥」
「夏っスね‥‥」
「夏と云えば‥‥?」
「海っスね‥‥」
 茹だる暑さの中、某処会議室の中で幾人かの男女が話し合いを行って‥‥いた?
「海辺で何か遣るの?」
「海辺とか生っちょろい事云ってないでさ。ほら、岸からそう離れてない処とかに有る無人島とか有るだろ、其処とかさ」
「で、何するんスか?」
 如何やら企画の発案会の様だ。
「鬼ごっこだよ」
 チーフらしき男性が至極真顔で告げる。
 然し回りのスタッフの反応は今一だった。
「鬼ごっこですかぁ‥‥」
「他の処はウォーターガンでサバゲーとか、もっとハイテクに遣ってますよ?」
 水鉄砲がハイテクか如何かは解らないが。
「何だと? 己の身一つで闘うのが良いんだろが!」
 ――賞金だって出しちゃうぜ!
 熱く語るチーフの横で、眼鏡の女性が手を打った。
「そう云えばー、同時期に大きなイヴェントが有りましたよね。‥‥あ、ぁ、『Athletic of Summer』でしたっけ? 其れに便乗出来れば、まぁ、盛り上がるんじゃ無いですかー?」
 そう云ってにっこりと微笑む女性。
 部屋の中の全員が彼女を見ていた。
「‥‥‥‥」
 暫くの沈黙。
「‥‥って、何ぼーっとしてるんだ! アポ取って来いアポ! 序でに場処もだ!」
 其の一言で、皆慌ただしく動き始めた。

――――――――――
概要
三時間有れば海岸沿いを一周出来る様な小さな無人島。
(島の中には砂浜、砂利浜、入り江、森、川、崖、小さな洞窟、漁師小屋が存在)
其の中で、三人の鬼から午前10時よりきっかり24時間逃げ切る事。
鬼に因って拘束(逃げられない)状態にさせられた者は脱落。
見事逃げ切れた挑戦者には賞金が。(複数人の場合は山分け)
基本は己の肉体のみでの活動だが、足止めの罠を仕掛けるのは可。
因って持ち込む物に制限は無いが、対人での武器の使用は不可。
(ex.木を削る、草を刈るのにナイフ等を使うのは可)
獣化は半・完全何方も不可。

鬼役
狼獣人 男 27歳 スタントマン 鬼リーダ
「‥‥全力を尽くす迄だ」
猫獣人 女 21歳 体操の御姉さん
「えっへへ、頑張っちゃおうかなぁ」
鴉獣人 男 23歳 アクション俳優
「飛べたら、直ぐ見附けられるんですけどね‥‥」

鬼役も挑戦者と同様のルールが課せられる。
(武器不可、獣化不可、罠の制作設置可)

●今回の参加者

 fa0431 ヘヴィ・ヴァレン(29歳・♂・竜)
 fa0911 鷹見 仁(17歳・♂・鷹)
 fa2748 醍醐・千太郎(30歳・♂・熊)
 fa2830 七枷・伏姫(18歳・♀・狼)
 fa3251 ティタネス(20歳・♀・熊)
 fa3871 上野公八(23歳・♂・犬)
 fa3963 ガルフォード・ハワード(18歳・♂・犬)
 fa4044 犬神 一子(39歳・♂・犬)

●リプレイ本文

「えー、島内の至る処に定点カメラを設置してます。目印と共に置いてあるので破壊しない様に御願いします」
 会場である無人島のスタート地点である港で、スタッフが参加者に説明を行っていた。
「クルーも二組歩き回ります。邪魔をしない様心掛けますが、折角仕掛けた罠等に掛かったら済みませーん」
 茶目っ気の有る発言に小さく笑いが漏れる。
 スタート迄、一時間を切っていた。
「では改めてルールの説明をさせて頂きますね。‥‥‥‥」
 つらつらと語られるルールに参加者はもう一度耳を傾ける。
「子側は十時に此処より散開し、其の十分後に鬼が移動を開始します」
 そう云ってスタッフが視線を寄越した先には鬼役の三人。
「‥‥鬼リーダの天都だ」
「マオって云うよ、宜しくねっ」
「鞍馬です」
 男性二人に女性一人が其れ其れ一礼して名乗っていく。
 参加者とは初顔合わせだ。
 どんな相手なのだろうと凝視している処でスタッフの声が掛かった。
「では、そろそろ準備を整えて、ラインに並んで下さい」

 午前十時。
 サイレンの音と同時にダッシュで消えていく子を、鬼は三者三様の面持ちで見送った。
 十分間の待機。
「‥‥長丁場だ、殆どの子は隠れて過ごすだろう。先ずは各人の位置の把握に掛かる」
「Yes」
「了解」
 リーダの指示に二人が答え‥‥二度目のサイレンと共に散開した。



 上野公八(fa3871)は森の中で枝に布を括り附けていた。
「こんな感じ? うーん‥‥もう一寸奥か」
 木々の合間から見える服の様に偽装させる。
 取り敢えず納得すると、ヒップバッグから亦次の布を取り出した。
「本当は粘着シートでも仕掛けたいけど、無人島の虫がひっかかったらかわいそうだからな!」
 時折通り過ぎていく虫に視線を寄越し乍作業を進めた。

 森の中央部、葉の生い茂る木の上でティタネス(fa3251)が辺りを見廻す。
「案外、暇だな‥‥」
 鬼ごっことは云え、二十四時間と云う長時間の中では、下手に動かない方が良いと考えたのだが。
「切れ目増やしとくかな」
 小さく呟いて、自身が足場にしてきた枝にナイフを入れる。
「二十四時間、早く過ぎて呉れると良いねぇ」

「‥‥さて、こんな処でござろうか」
 森の中で七枷・伏姫(fa2830)が最後のPHSを隠し終えて小さく呟く。
 さて次‥‥と糸を取り出した処で鬼出陣のサイレンを聞いて眉を顰めた。
「急ぐでござる」
 ピンと糸を張り、伏姫は駆け出した。

 スコップで穴を掘っていた鷹見 仁(fa0911)は鬼のサイレンを聞いて手を早めた。
「矢っ張り十分じゃな‥‥」
 現在の穴の深さを見て呟く。
 出来れば三メートルは欲しい。
「兎に角、遣るしかないか」
 人の気配を感じた時は一旦隠れざるを得ないな、と思いつつ仁は穴掘り作業に徹した。

「‥‥鬼が動き出したか」
 醍醐・千太郎(fa2748)は、自身の巨躯が隠れられる程に生い茂った低木の中に身を隠していた。
 体臭が残らない様に、服や肌に珈琲や植物の液を擦り込む等偽装もしっかりしている。
 後は、気配を殺してじっと耐えるだけだ。
 千太郎は此からの二十四時間を思って静かに眼を閉じた。

 草を結んだり、木々の間にロープを張ったりと小さな罠を多数用意していたガルフォード・ハワード(fa3963)は移動し乍呟く。
「やばいNa〜、鬼が来ちゃうかもNa〜」
 今から落とし穴を掘っている時間は無い。
「でも、ま、見付かる迄は罠を作っとくZe〜」

 犬神 一子(fa4044)はサイレン自体は気に留めず、黙々と罠を作っては移動していた。
「む、‥‥立て付けが、悪い、な」
 何年も使われていないのだろう漁師小屋の扉を開いて、一子は蝶番に細工を施す。効果を確かめてから設置し直すと、亦別の場へと移動を開始した。
 褌一丁に素肌に迷彩塗装。改めて見ると凄い格好ではあるが、見付かり難いのも事実だろう。

 港からぐるりとほぼ半周した砂浜にヘヴィ・ヴァレン(fa0431)は居た。
「此処で良い、か」
 周囲を見廻して、視界が開けている事を確認する。
 ヘヴィはバッグの中からビニルシートを取り出すと、波打ち際から少し距離を取って引いた。
「ふー‥‥。さて、待ちますか」
 どっかり坐って、周囲の気配に気を尖らせた。



 開始からほぼ三時間が経過して、散開していた鬼達が再び港に集合していた。
 地面に簡易な地図を描き乍、子を発見した地点に印を入れていく。
「アタシは三人みっけたよ。此処と此処。‥‥一人は転々としてるみたいで場処は特定出来なかったけど」
 マオががりがりと描き込む様子を二人はじっと見、天都は暫く考えてから口を開いた。
「御苦労。行動開始は日が傾いてからだ。日中、特に此からの時間は体力を消耗するからな」
「Yes」
「了解」
「各人、三時間程休め。‥‥十六時から狩りの時間だ」



 子側は其れ其れ個人行動を選択した為か、三人一組と為って捕獲に臨んだ鬼達に苦戦を強いられた。

「気附かれません様に‥‥って矢っ張、無理ですよね!」
 と、三人から迂回する様に全速力で森へと向かう公八。
「‥‥っ、追え! 逃がすな!」
 浜辺の岩陰に隠れていた公八は発見され逃走を試みたが、哀しいかな、清掃員と肉体派タレント勢と云う筋力差に泣き。
「‥‥っ、終わりだ」
「ぎゃあぁぁぁぁああ!!」
 ‥‥力一杯の断末魔と共に散っていった。

「‥‥此でも、くらいNa!」
「ぇ、お‥‥ホームラン!」
 ガルフォードが咄嗟に投げたモノをマオが枝で打ち返すが、森の中でホームラン等出る筈も無く、其れはガルフォードの後ろの木にぶつかって落ちた。
「‥‥‥‥あ」
「な、何やってんDa、あんた!」
「えへへ、ごめーん」
 ガルフォードは見附かりこそすれ、罠のエリアに誘い込んだり、蜂の巣を投げたり、野球宜しく打ち返されたり、結果共に蜂に追われたり‥‥と善戦したものの、蜂から逃げる間に他の二人に挟み打ち状態にされて、惜しくも敗れていった。

 木の上で待機していたティタネスも、此の侭本格的に夜を迎えられれば‥‥と云う処で所在を発見された。
「んしょ‥‥っわわ!? って、逃げるなー!」
「あたしだって捕まりたくないんだよっ!」
 切れ目を入れられた枝に苦戦し乍も木を昇るマオにティタネスも叫び返す。
 木々の間を器用に渡ってマオを巻いた迄は良かったのだが、地上に居た筈の二名を見失い、其れが仇となった。
「‥‥きゃぁっ!?」
 先回りされていたのか、別の参加者が附けたモノか、気附かず切れ目を入れられていた枝に移動した事でティタネスの躯が宙に放り出され‥‥地上で窺っていた天都にプリンセスホールドされる形で捕縛された。
 其の後男二人は力加減に困惑しつつ、マオが追いつく迄、逃げようと必死に藻掻くティタネスを二人掛かりで押さえていた。

(「‥‥っ来た?」)
 落とし穴に見せ掛けた隠れ家――其の横穴の中で息を潜めていた仁は、草を踏みしめる音と共に人の気配が現れたのを感じ、背中をしっかり壁にくっ附けタイミングを見計らった。
『ったた‥‥、結構深いんだね』
 暗闇の中、判断材料が音しか無かったのが不運か、女性と思って繰り出した蹴りは無意識に威力が押さえられていて。
 実際横穴の外に居て、両腕でガードしていた天都を昏倒させる事は出来なかった。
「‥‥っ、‥‥‥‥参ったね、此は」
 仁は、天都の傍らに落ちていたICレコーダーに気附いて溜息を吐く。
 アイディアは秀逸だったのだが、如何せん、鬼側の方が一枚上手だった様だ。

 プロレスラーと云う職業柄、力的には有利かと思われた千太郎は逆に相手を慮る事で実力を出せなかった。
 茂みに潜んでいたのを天都とマオに発見されて其の侭捕獲劇が開始されたが、怪我させないようにと配慮する余り、決め手の出ない攻防が続いた。
「‥‥御免!」
「っ!?」
 然し新しい声と共に、突然上から布の様なモノで視界を塞がれて千太郎は怯む。
 三人は其の一瞬を観逃さない。各人が手足を押さえ附け、拘束する事で何とか勝負が附いた。

「来ちゃったか‥‥」
 波打ち際に陣を置いていたヘヴィの作戦は誰とも違い、逃げる訳でも無く隠れる訳でも無く、唯其処で鬼を迎え撃つというモノだった。
 丑三つ時の攻防が始まり、砂浜に四つの影が揺れる。
(「三対一じゃ分が悪いかな‥‥」)
 浜に突き刺した小枝を蹴散らして来る天都の攻撃を受け流し乍舌打ちをした。
 力と速さと技と、三者三様で手を伸ばしてくる鬼の攻撃にヘヴィは十分対応してはいたが、長引かせても結果は変わらない、寧ろ悪化するだろうと見えて仕舞った。
「あーあ、こりゃ降参だ。‥‥こうなったらゆっくり寝たい」
 ヘヴィは攻撃を受け流して諸手を上げる。呆気に取られる鬼を余処に、何処迄もマイペースであった。



 午前四時、開始から十八時間‥‥残り六時間を切った処で脱落者は六名。
 残るは二人、と云う時に天都はマオに休む様指示した。渋るマオに、回復してから追って来いと半ば強引に云い附けて二人は森の中に消えた。
 伏姫と一子を探す為だ。
「‥‥大丈夫か」
「ええ、‥‥っ」
 突如響き渡る乾いた音に鞍馬が驚いて咄嗟に身を引いた。
「済みません‥‥っ」
 低い位置に仕掛けられた鳴子に気附かず脚を引っ掛けて仕舞った様だ。
「‥‥構わん。斯う為ったら虱潰しに探す。‥‥拘束される罠には気を附けろ」
「了解」
 そう云って二人は別方向へ駆け出した。



 空が白み出して、日がどんどんと高度を上げて行く。
 マオが加わって再び三人で捜索を始めては居たが、移動しているのか余程上手く隠れているのか、気配を辿る事さえ難しかった。
 其れこそ、草の根を分けてでも探し出す勢いで三人は駆け回ったが、無情にも時間だけが過ぎて行った。

(「此の侭隠れ切るでござる」)
(「後少しか‥‥」)

 ――そして、敗北と勝利を告げる三度目のサイレンが鳴る。

 勝者は伏姫と一子の二人と為り、森から帰ってきた二人を参加者・スタッフ全員の拍手が迎えた。
 其の侭、港で表彰式を行って。



「次は冬の雪山だなー」
 皆がぐったりと眠る帰りの船でチーフが呟く声を聞いた者は居無かった。