Ristorante −ZOO−アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
徒野
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
易しい
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報酬 |
1.1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
08/24〜08/30
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●本文
「前回‥‥第一回が好評だった様で良かったスね」
「嗚呼、御陰で第二回が作れる。ま、狙うはレギュラー化だけどな」
組み直されたキッチンセットを前にスタッフがしみじみと呟いた。
「其れにしても今回急にハードル高くないスか? 蛸って‥‥メイン以外に如何使いますよ?」
蛸のデザートとかやだなぁ等と呟く青年に、男性が笑って答えた。
「其の辺りの手腕を見るのが醍醐味なんじゃないか」
「タコ焼きとか定番メニュウも出ますかね?」
「其れは改良具合がポイントだろうなぁ」
其れ其れが思い思いに発言する中、プロデューサの男性が亦視線をセットに移して云った。
「‥‥さ、御喋りは其の辺にして各自仕事に戻りなさい。メニュウは御愉しみだ」
『Ristorante −ZOO−』(リストランテ・ゾー)。
少し小洒落た名前を冠された此の番組は、流行に乗った料理バラエティである。
各界で活動する色んな人々が毎回指定された旬の食材を使って、自ら其の腕を振るい、其の料理で競って貰おう‥‥と云う趣旨だ。
競う、と云うからには毎回優秀者が選ばれるのだが‥‥賞品は『ささやかな何か』が贈られる、としか知らされていない。‥‥前回の賞品も非常にささやかだったと聞く。
第二回と為る今回の御題食材は『蛸』。
料理の幅が限られるだろう今回は一体、どんなレシピが揃うのか‥‥。
●募集告知
出演者として各界で活動されている方を幅広く募集します。料理経験の有無は問いません。
指定された食材を使った料理を最低一品考えておいて下さい。コースで考えて下さっても構いません。
亦、演出、調理指導等のスタッフも同時募集します。
●リプレイ本文
「おい、此処の調味料足りないぞ!」
「ぅえ!? い、今持って行きます!」
今日は『Ristorante −ZOO−』第二回の収録日。
本番前のスタジオでスタッフが駆け回る中、控え室から出演者が次々に現れる。
「おはようございます、木之下霧子(fa0013)です! よろしくお願いしますね♪」
前回に続いて出演する霧子が元気良く挨拶して廻る。
「今回もよろしくお願いしますネ♪ ぁ、クッキー作って来たんです、仕事の合間につまんで下さいな☆」
ナンバーワンアイドルになる為の土台は確りこつこつと‥‥腹黒発想な努力は今回も忘れない。
其の奥では、同じく二度目の出演になる伊達 斎(fa1414)が御題である蛸の盛られたワゴンを見てしみじみと呟いていた。
「然し‥‥前回のトマトと云い、今回と云い、癖のある食材が題材になるものだね‥‥」
博識故に其の食材の背景を読んで居るが、スタッフにそんな気は微塵も無い。屹度。
そして暫くの後、出演者全員にADから声が掛かった。
「其れでは、改めて説明を致しますので御集まり下さい!」
「今回もスタジオ審査員五人の他、別会場に控えて居る百人の観覧者に投票をして頂いて優勝者を決める方法です」
ADの青年が八名の出演者の前で企画書の文字を追う。
「試食して頂くのはスタジオ審査員の方と、観覧者から性別年齢層で分けた中から無作為に選出した八名です。其の他の方は、調理の様子や料理の見た目での判断になりますから、気を抜かず頑張って下さいね!」
笑顔で締めた其の言葉に、アヤカ(fa0075)がぐっと拳を突き上げた可愛らしい格好で返す。
「うん、新鮮なタコさんでうねうね動いているのは気持ち悪いニャが、がんばるニャ〜☆」
其の様子に思わず笑みが零れる中、宝塚菊花(fa3510)もガッツポーズで宣言した。
「タコゆーたら、たこ焼きや! あたいが究極に美味いのこしらえたる☆」
「わ、本場の人が作るんなら期待大だね♪」
「成程、王道で攻めますか‥‥」
甲斐・大地(fa3635)と岡野圭祐(fa4281)が其の自信に頷き合う。
「では皆さん、そろそろ準備に入って下さい」
「うわー‥‥何だか緊張してきました」
此が初めての仕事となる百鬼 レイ(fa4361)がエプロンやピンマイクのチェックをされ乍零す。
同じく、衣装やメイクチェックを受けていた駒沢ロビン(fa2172)が笑って声を掛ける。
「練習した通りに遣れば大丈夫ですよ」
其の笑顔に幾らか緊張が解れたのか、レイも微笑み返す。
「じゃぁ、行きましょう」
■ □ ■ □ ■
撮影開始のカウントダウンが始まって、スタジオ内が一気に静かになる。第一回の時よりプロデューサの表情は穏やかだ。
耳慣れた効果音が流れ、司会の顔が映された。
「皆様、今日和。いらっしゃいませ! ようこそ、『Ristorante −ZOO−』へ!」
司会挨拶、番組説明と進み、今回の出演者紹介に移る。紹介の声に合わせて、カメラが其れ其れを映し出す。
ラフな姿で相変わらずのペンギン(今回は皇帝ペンギンだが)エプロンを着けた霧子、髪に結ったリボンと御揃い色のエプロンで微笑むアヤカ、エプロン姿に大人の色気さえ滲み出ている斎、シンプルなエプロンを見目良く着こなしてカメラに手を振るロビン、タコ焼き用のピック片手に自信有り気な菊花、正にアイドルと云った真白なフリルエプロンの大地、少し長めの髪を一つに括ってキリッと笑みを浮かべた圭祐、カメラの前に立った事で亦緊張がぶり返したのか少し表情のぎこちないレイ。
ルール説明の後、各々は割り当てられたブースへと向かった。
開始のベルが鳴らされ、皆一斉に活き蛸と向き合い‥‥、
――ぅ、うわぁぁぁぁあ!
何処からともなく悲鳴に似た声が聞こえる。
「今回の食材は活きが良いですね!」
「ええ、何せ今朝上がった物を其の侭取り寄せましたからね!」
司会と解説が嬉しそうに楽しそうに実況する。
「序盤、蛸との戦いは必至ですよ!」
出演者には良い迷惑である。
其れでも何とか蛸を押さえ込む事に成功した者達が下準備として滑りを取る作業に入る。
「ぇー、木之下さんに百鬼さん、伊達さんが塩揉みをしてますね」
「お、アヤカさんだけは大根下ろしですね」
滑り取りをする間も水洗いをする間も、藻掻く蛸との戦いは続く。
「此処からは其れ其れ作業が別れますね」
「ええ、色々調理法が有りますからね」
其の中でも、先ず茹でる行程を行う者が多いだろうか。
霧子は茹でると云うよりもさっと湯通し。菊花と大地、圭祐は下準備としての加熱処理を施し、アヤカは可愛くくるんと足を丸めて茹でた。そして真赤に茹で上がった蛸を皿に盛って、清潔にした鋏を添え‥‥其れで一品完成して仕舞った。
其れとは逆に、斎は足の付け根に切れ目を入れ、丸まるのを防ぐと云う技を見せる。番茶で茹で上げると云う拘りや、使っている柳葉包丁は自前で有る等、中々侮れない。
「此で良しっと‥‥」
圭祐は下準備を終えた材料を炊飯器に入れ込み、スイッチを押す。‥‥途中蛸に吸い附かれると云うハプニングに見舞われつつも無難に作業を進めていた。
隣のブースではロビンが藻掻く活き蛸を何とかブツ切りにしてフライパンへと放り込んでいる。
「うっすらですがちゃんとピンクになりますよー」
他の材料と共に炒め乍、上機嫌に作業を進める。
レイも滑りを取った蛸をブツ切りにしていた。作業を進めるに連れ、緊張は解けたらしい。
「ぁ、しゃぶしゃぶの方も切っとかないと」
ブツ切りにした身は浸け汁の入ったボゥルに移し、残りの蛸を薄くそぎ切りにして行く。
タネを作り終えた菊花は手慣れた様子で熱した鉄板へ油を塗っていく。
「此は‥‥見事な手捌きですねぇ」
「たこ焼きを勝負に持って来たのも頷けます」
二人が見惚れている間に、菊花は鉄板の温度を見切る。
「‥‥今やっ!」
華麗にタネを流し込むと、空かさず大きめに切った蛸を載せていく。
「出来上がりが非常に楽しみです!」
大地はと云うと、グラビアアイドルは料理下手‥‥と云う少々失礼なイメェジを余処にそつなく調理をこなしていた。
「或る意味芸術的な下手さも素敵だけど、お嫁さんになれなくなるからねー♪」
蛸墨スパゲッティのペペロンチーノ風‥‥とまともに作って置いて、更に作業を進める。其の笑顔は何処か怪しい。
「でもポイントは押さえなきゃね」
其の手にはとろろに納豆、オクラ‥‥嗚呼、一体何が出来るのか。
霧子は揚げた蛸の上に、ピーマンや玉葱と共にマリネにした蛸を掛ける。
「木之下さんは、相変わらず凄いですね‥‥!」
「蛸に蛸を掛けますか‥‥」
そう云えば前回もトマトの上にトマトを掛けていた気がする。
「仕上げにオリーブオイルを掛けて‥‥『ギリシア風タコのから揚げ、タコマリネ添え』完成です♪」
そして、スマイル零円とばかりに可愛らしく両手で皿を示して見せた。
「同じく蛸を揚げていた百鬼さんは‥‥竹串に刺して並べてますね」
「チーズフォンデュですね、他にもタルタルソースにケチャップ‥‥と?」
コメントが止まる。――其れも其の筈、チーズ鍋の隣に然も当たり前の様にチョコフォンデュの鍋が置いて有ったからだ。
「ミスマッチなものほど、うまかったりするもんじゃないすか★ ご飯にチーズや、納豆にマヨネーズ然り」
自信満々に云い切る姿に、若しかしたら‥‥と云う予感がするが、其れは屹度気の所為だ。
「そろそろ皆さん仕上げに掛かってる様ですね」
素人とは思えない手際で寿司を握って見せた斎はもう一品のすり身団子汁に三つ葉を添えていたし、可愛らしい薄桃色のシチューを拵えたロビンも‥‥隣に何だかおどろおどろしい黒いシチューを添えていた。菊花は綺麗な真ん丸のたこ焼きと遊び心で作ったデザートの苺焼きを盛り附けている。圭祐も焼き蛸を飾った蛸飯に、バジルソースで和えたサラダを添えた。アヤカは立派な茹で蛸の隣に圭祐とは亦違った蛸飯とサラダを並べ、レイもたこしゃぶの用意を調える。
――チリチリチリーンッ。
開始の時と同じ涼やかな音が響く。
「お、ベルが鳴りましたね? 調理終了でーす!」
■ □ ■ □ ■
「あたいとしては鉄板の方が良かってんけどなぁ」
優勝者へのささやかな賞品としてたこ焼き器を贈られた菊花がぼやく。
「まぁま、其れで亦美味しいたこ焼き焼いて下さいよ」
圭祐が試食のたこ焼きを突き乍笑う。
収録終了後の試食大会に並んだ全員の力作を改めて眺める。
「ロビン君のピンクのは可愛いけどニャ‥‥く、黒いの、何なのニャ?」
「蛸墨ですよ。うちのジョナさん‥‥ぁ、ペットのかもめですけどね、コレが大好きなんですよ〜。ブラックの方はピンクの後で食べるので、お腹一杯な所為か残しますけど」
たじろぐアヤカに、にこにこと応えるロビン。――残すのは屹度満腹の所為だけではないだろうが。
「甲斐さんの二品目‥‥凄いですね‥‥!」
「えっへへ、でしょう? 君のチョコフォンデュも凄いけどね♪」
「本当ですか!? ですよね!」
何処かずれている大地とレイの会話。――レイに向けられた其の言葉は喜ぶ処では無い。
「伊達さんは矢っ張り御料理上手ですね。御寿司が美味しい〜」
「そうかい、其れは良かった」
美味しそうに寿司を頬張る霧子を、微笑まし気に見守る斎。
然し心中では前回に比べて増えたゲテモノ料理に思わず、嗚呼、矢張り悪魔の魚だな‥‥と考えていた。