Ristorante −ZOO−アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
徒野
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
1.1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
09/27〜10/03
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●本文
「秋茄子秋茄子‥‥良いっスねぇ‥‥」
「昔から“嫁に食わすな”って云う位だからな」
「揚げ浸し‥‥麻婆茄子‥‥天麩羅‥‥」
食材準備の為に産地から届いた、艶の有る紫を前にして青年がうっとりと別世界に飛んでいる。
「さぁて、今回はどんな料理に化けるかな」
「ぁ、化けると云えば、彼の破天荒な料理も結構人気ですよ」
――味云々は置いておいて。
「‥‥まぁ、フォトジェニックでは有るからな‥‥」
男性は、目の前の茄子の行く先を案じてしみじみと呟いた。
『Ristorante −ZOO−』(リストランテ・ゾー)。
少し小洒落た名前を冠された此の番組は、流行に乗った料理バラエティである。
各界で活動する色んな人々が毎回指定された旬の食材を使って、自ら其の腕を振るい、其の料理で競って貰おう‥‥と云う趣旨だ。
競う、と云うからには毎回優秀者が選ばれるのだが‥‥賞品は『ささやかな何か』が贈られる、としか知らされていない。‥‥前回の賞品も非常にささやかだったと聞く。
第三回と為る今回の御題食材は『秋茄子』。
旬の食材と知られる此の材料で、どんなレシピが揃うのか‥‥。
●募集告知
出演者として各界で活動されている方を幅広く募集します。料理経験の有無は問いません。
指定された食材を使った料理を最低一品考えておいて下さい。コースで考えて下さっても構いません。
亦、演出、調理指導等のスタッフも同時募集します。
●リプレイ本文
「良いなぁ‥‥秋茄子‥‥」
「おい、何時迄トリップしてるんだ」
男性がトリップした侭の青年に軽くチョップをして、襟首を掴んで引っ張っていく。
「さっさと出演者とコンタクト取って来い」
「わっ、‥‥‥‥!」
ぺいっとスタジオに放り込まれて、我に返った青年が駆け出す。
『Ristorante −ZOO−』収録日。三回目とも為るとスタッフ陣にも慣れが見えてきた。
「あ、御早う御座います。今回も頑張って下さいね」
女性スタッフに笑顔で手を振られているのは木之下霧子(fa0013)。勿論笑顔で手を振り返す。
「有難う御座いますっ」
フフフ、順調に覚えて貰ってるのです‥‥そろそろ偉いヒトにも私の事を‥‥! なんて腹黒い事を考えているのも何時もの事である。
「お、亦一緒やな☆」
「御早う御座います、宜しく御願いします」
見知った姿を見附けて、宝塚菊花(fa3510)と百鬼 レイ(fa4361)が寄って来る。二人共前回から連続しての出演である。
「此方こそ、宜しく御願いしますね♪」
霧子もぺこんと御辞儀を返す。
「前回と同じ流れならそろそろ‥‥」
菊花が辺りを見廻して呟くとタイミング良く青年の声が響いた。
「えーと、出演者の方御集まり下さーい!」
「――でしたね」
余りのタイミングの良さに三人で笑い合う。
「じゃ、行きましょうか」
「えー、聞き飽きた方もいらっしゃるかも知れませんが説明させて下さいねー。審査方法はスタジオ審査員五人と別会場に控えて居る百人の観覧者に投票をして頂いて優勝者を決める方法です」
ADの青年は主に初出演の人達の方を見乍説明を続ける。
「試食して頂くのはスタジオ審査員の方と、観覧者から性別年齢層で分けた中から無作為に選出した八名です。其の他の方は、調理の様子や料理の見た目での判断になりますから、気を抜かず頑張って下さいね!」
ぐっとガッツポーズを見せる青年に、氷桜(fa4254)が静かに問うた。
「‥‥少し特殊な材料を使うんだが大丈夫だよな?」
「はい、事前に申請して頂いてれば用意しますし、大丈夫ですよ。氷桜さんは牡丹肉でしたよね」
リストを捲り乍頷くADに、氷桜は肯定と了解の意で頷き返す。
「他に何か質問等御座いませんか? ‥‥っと、そうだ」
青年はリストを捲った侭、煌姫 龍華(fa4464)と三神 操(fa4655)の方へ向き直る。
「煌姫さんと三神さんはペアで御参加ですね?」
「はい。宜しく御願いします」
「まぁ、主に作るのは龍華さんで私は助手だけどね」
御辞儀を返す龍華と、笑い返す操。
「了解です。‥‥こんな処ですかね。其れでは皆さん準備に入って下さーい」
割烹着を美しく着こなした守山千種(fa2472)がスタジオ内の茄子を眺めていると、後ろから声が掛かった。
「秋茄子は嫁に食わすな、って、意地悪なのか嫁想いなのかハッキリして欲しいです」
少し驚いて千種が振り返ると、其処には笑った顔の美角あすか(fa0155)が居た。
「‥‥なんて。始めまして、宜しく御願いしますね」
「ええ、此方こそ‥‥」
あすかの挨拶に、千種も微笑み返す。
「御手柔らかに御願いしますね」
■ □ ■ □ ■
撮影開始を告げる無音のカウントダウンが零を示すと、御馴染みのジングルと司会者が。
「皆様、今日和。いらっしゃいませ! ようこそ、『Ristorante −ZOO−』へ!」
三回目とも為れば、手慣れた様子で挨拶や説明、今回の出演者紹介を進める。紹介の声に合わせて、カメラが其れ其れを映し出した。
濃紫のドレスにペンギンプリントが施された白エプロン姿の霧子、フリルが控えめに附いた愛らしいエプロンを着けたあすか、和服と割烹着が美しい千種、明るい色のエプロンと其れが似合う笑顔の菊花、コートの上に黒レザーのエプロンを合わせた氷桜、二回目でスタジオにも慣れたのかカメラに笑顔で手を振るレイ、衣装はインパクト勝負な黒のイブニングドレス姿の龍華と巫女姿の操。
ルール説明の後、各々は割り当てられたブースへと向かった。
「毎度旬の食材をピックアップしてますが、矢張り美味しそうですねぇ」
「初夢で見ると縁起が良いと云いますが、アレは彼の家康公が好んでいたからだと云う説もあるんですよ」
へーと云いたくなる、然し如何でも良いトリビアを解説が披露している内に開始のベルが鳴り、出演者達は料理へと取り掛かり始める。
「さぁ、どんな料理に変身するか愉しみですね」
「‥‥やはり道具は使い慣れた物がいいな」
氷桜はそう云うと自前の物であろうアウトドアナイフを取り出して茄子を切っていく。切った茄子は一旦灰汁抜きの為に水に浸けた。
「油と相性が良いですからね、下処理にしても揚げる方が多いんじゃないでしょうかね」
「氷桜さんと守山さん、煌姫さん達が素揚げですね。木之下さんは衣を附けているから‥‥天麩羅ですかね」
そう云って覗いたモニタの向こうには、撥ねる油に気を附け乍鍋に茄子を投入している霧子の姿があった。
隣のブースではあすかが茄子の皮を向いていた。縞々模様に為る様に少し間を空けている。
「縞々って一寸可愛いですよね」
そう云い乍輪切りにして塩を揉み込むと、味を染み込ませる為に少し置いておく事にした。
「さ、次の準備っと」
「素揚げと迷ったんやけど〜」
菊花は大量の茄子をリズミカルに薄切りにすると豚バラと共に熱した鉄板の上に広げた。
其の両面を適度に焼くと、烏賊と海老の入ったお好み焼きの生地を其の上に流し落とすと、コテに持ち替えて返し時を見計らう。
「粉モンなら任せとき。上手く焼けたら御喝采〜☆」
ぺいんっと綺麗に返ったお好み焼きに、会場では感嘆の声が漏れた。
「百鬼さんの用意した材料は何だかイタリアンですね」
作業台に並んだトマトソースやらチーズやらオリーブオイルやらを見て司会が呟く。
然し一方で、削り節に醤油、青紫蘇と云った和風なモノも使って作業を進めていくレイ。
「此は‥‥ピザ、ですか」
「ですね。茄子自体が生地の代わりの様ですね」
菊花の様に両面焼いてから、其の上にトマトソースやアイテムを乗せていく。
「面白いですね、完成が愉しみです」
「龍華さん、御皿此処に置いておくわよ」
「ぁ、有難う御座います」
番組初のペア参加の龍華と操は中々のコンビネーションで作業を進めていた。
其れにしても、イブニングドレスと巫女装束‥‥見た目に派手なブースである。
「複数作る方はそろそろ二品目に掛かってますね」
揚げ浸しを作り終えた千種は茄子を刳り抜いてグラタン制作に入っていたし、氷桜も牡丹肉を使った味噌煮込みの味を見ていた。
「木之下さんは‥‥成程、今回はそう来ましたか」
御飯を敷いた丼の上に茄子の浅漬け、天麩羅を置き、豆板醤でぴりっと仕上げた麻婆茄子を掛ける。
メイン材料にメイン材料を組み合わせる技。最早御馴染みになっている。
「ふふ、『三色茄子丼和洋中尽くしモドキ、おなかに入れば全部同じスペシャル』の完成です♪」
――何とも男らしいタイトルである。
唯一デザートを作るあすかは、なすしぎを作り終えるとゼリー制作に取り掛かった。
彼女自身がベジタリアンなのでゼラチンではなく寒天を使う。
「お、牛乳で色附けした白と透明で二層にするんですね」
「綺麗なデザートになりそうですね」
千種はタイマーの鳴ったオーブンから器を取り出した。
「良い焼け具合‥‥」
とろり、と溶けたチーズが食欲をそそる。茄子のラザニア風の完成だ。
綺麗に固まったゼリーを器に出すあすか、龍華の作った味噌和えの隣に茄子に箸を刺して作った茄子を並べる操。
レイの作った茄子のピザの隣には‥‥自棄に辛そうな匂いを発しているピザと溶かしたマシュマロと粒チョコの乗せられた茄子。明らかにナシだろうと云う代物だが本人は至って自信有りげに並べている。
其れ其れが思い思いにティブルの上を飾っていく。
「そろそろ終了ですが‥‥皆さん大体出揃った様‥‥」
――チリチリチリーンッ。
司会の言葉の途中で、開始の時と同じ涼やかな音が響く。
「今鳴りましたね? 調理終了でーす!」
■ □ ■ □ ■
「其れでは、御疲れ様でした! と、頂きまーす」
収録が終わって大試食会と為ったスタジオでは賑やかだった。
「どれも美味しそう‥‥」
あすかの言葉に皆が頷く、が。
「‥‥否、百鬼氏がオマケで作ったモノは、危険な匂いがするが‥‥」
そう呟いた氷桜のコート襟には、浜茄子をモティーフにしたコサージュが附いていた。其れが今回の賞品らしい。
が、浜茄子と云う名は『浜梨』が訛ったモノであって茄子とは関係が無い。――賞品を選んだのは誰だ。
「氷桜さん優勝御目出度う御座いますね。味噌煮込み、とっても美味しいです」
霧子が笑顔でそう云うと、氷桜は少し表情を和らげて有難う、と返した。
「菊花さんのお好み焼き、頂きますね‥‥」
「お、じゃんじゃん食べてや」
菊花は千種にお好み焼きを切り分ける。
「はい、操さん。あーんして下さい」
「ぇ、え? あーん?」
作った味噌和えを笑顔で操に差し出す龍華と突然の事に驚く操。
未だ未だスタジオから笑い声は絶えそうに無い。