取材旅行に行こう!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
藍乃字
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
0.2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
10/26〜10/30
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●本文
●急募! 取材旅行同行者!
ただいま、我が事務所ではホラー映画をとる為の取材旅行の人手を募集しています。
我こそは、と言う方は○○○―□□□―△△△△までご連絡ください!
・募集:各種スタッフ(撮影・照明・音声‥‥etc)・俳優・女優
・目的地:都内にある青谷墓地
・旅行行程:一泊二日となります。宿泊地は、その近くにある遠くからの遺族の為に作られたホテル。宿泊費及び飲食費は当方にて負担致します。夜中には、墓地で肝試しをやります(雨天決行)。
・注意事項:目的地及び宿泊地では、真実味を帯びた怪談が流れていますので、その手の話が苦手な人は、ご注意ください。また、肝試しの最中の出来事は全て録画をおこないます。
連絡先は‥‥
●募集事務所
「金はあまり出せんがなっ!」
ホラー映画を撮るための取材。その人手を応募している、と言う事務所に顔を出すと、監督を名乗る男はいきなりそう言い切った。
「すみません、根もおかしい人なんで――」
「キミ! それは失れ」
「黙っていてくださいっ! えーと、それで、ですね。私たちはホラー映画を撮ろうとしているのですが‥‥」
豪快に男を蹴倒しながら現れた女性は、さわやかな笑みを浮べながら口を開く。
「どんな俳優を使うかどころか、どんな映画にするかと言うところから殆ど決まってないんですよ。それで――」
「最近は俳優や女優を先に選び、そこから映画を作る者もいるがそれは邪道であると私は考えている! 人気に頼った映画では往年の名作には遠くおよばな――」
「メガホンしか握れない人は黙ってろおおおおおおおおおおおおっ!」
いらればっ、と言う妙な言葉を残しながら飛ぶ男を後に、女性は汗を拭く様な仕草を見せながら、瞬間に浮べた般若の相を消して微笑みを浮べなおす。
一瞬見えた様な馬の足は――気にしないほうがいいのだろう。
「失礼しました。それで、ですね。お伝えしたとおり、取材をまずしようではないか、と言う事になったんです。しかし‥‥」
監督の男と、ADの自分だけでは取材も満足には出来ない。少なくともカメラマンを始めとした裏方――出来れば、その被写体となる人もだが――は欲しいところ。
「ちなみに、ですが‥‥脚本もまだ確定していません」
女性は、ちらり、と後ろで目を回している男を見やる。
「なにせ‥‥監督が書くと言っているもので。」
ため息をついて、女性は自らの事務所を訪れた者達に向けて頭を下げる。
「本当に、何も決まっていない話ではありますが……どうか手をかしてくださいませんか? 十分では無いかと思いますが、お金は出しますので、よろしくお願いいたします!」
●リプレイ本文
●肝試し前
「こんばんは、突撃リポーターの猫美(fa0587)です。本日は怪談で有名な青谷墓地へと来ています」
看護士姿に猫耳と猫尻尾を生やした――付け耳や付け尻尾にはないリアルさがある――猫美が、一二三四(fa0085)の構えるカメラの前で緊張した顔で言う。
「ゲストは、舞台女優の深月沙奈(fa1155)さん、モデルの水月夜(fa0814)さん、歌手の森川琴羽(fa1208)さん、噺家のつぶらや左琴(fa1302)さんの四人です。みなさんよろしくお願いいたします」
「って、なんで看護婦‥‥とゆーかなんやそのでっかい注射器は!」
びしっ、という効果音と共に放たれたつぶらや左琴のツッコミを受けて、猫美が驚きの表情を浮べる。
「あ‥‥なんで持ってるんでしょう? 不思議です」
「んなわけあるかいっ!」
二人のやり取りを受けて、カメラの前の出演者達の顔が緩む。
「ところで、夜水さん。肝試しとかには強い方でしたっけ?」
「え? も、もちろん。私は幽霊なんて怖くありません!」
辺りへと視線を散らしながら答える水月夜。その本心は‥‥震える足を見れば、一目瞭然と言うところだろう。
「それにしては足が――」
「こ、これはお芝居ですよお芝居! 嫌ですね、ネコミさんたら」
「でも本当に何か出てきたらどうする〜?」
強がる水月夜に、期待を隠せないといった様子で森川琴羽がそんな声をかける。
「ま、まっさか〜、出てくるわけないじゃないですか〜」
「大丈夫やで。そないなことになったら僕がまもってあげるさかいに。遠慮なくだきついてきたってや〜」
「サナさん。もし出てきたらサナさんに助けてもらっていいですか」
「えぇ、喜んで」
「無視せぇへんといてー‥‥」
ひとしきりの笑いが起こった後に、仕切りなおすように猫美が真剣な表情をつくってカメラの前に向き直った。
「さて、これから墓地へと行くわけですが、その前にここでどんな事が起こっているのか、噺家のつぶらや左琴さんにお伺いします。左琴さん、ここでは一体どんな話が噂されているんですか?」
「それはやね‥‥」
●そのころの裏方
「ふむ、なかなかいいんじゃねぇか?」
順調に進められていく撮影の様子を見ながら、依頼主の監督が満足げに言った。
「メイクもカメラ写りに悪くありませんしね‥‥もっとも、私やふみさんまでする理由は分からないんですけど」
「なに、それは趣味だよ。女の子は綺麗じゃないとね」
ADの眼差しにひょうひょうと答えるコーディネイターのZERO(fa1546)。まるでナンパ師のような言動をしているが、新人としてはそれに見合った腕を持っているというところだろう‥‥もっとも、女性に力を入れるあまり男性の分はやや手抜きと見られかねないところがあるのだが。
「そうですか‥‥ところで、左琴さんの怪談。落語調ですけど、あまり聴いたことが無いような‥‥?」
カメラからの映像と音声をモニターしながら、ADは首をかしげる。
つぶらや左琴が今語っているのは、戦後まもなくに東京大空襲で逃げ惑った人達の死に様をバイオリンの演奏と共に語っていた、目の不自由な老人の話。どこかで聞いた事があるような気はするが、オリジナルにも聞こえる話である。
「なんでも、トシハキク(fa0629)君が知っていた話らしいよ。創作なのか、聞いた話なのかは知らないけれど」
「へぇ‥‥」
本職でもないのに、というように感嘆の声が漏れた。
「彼は墓地のほうで撮影の準備を行っているんでしたか?」
「確かね。もう準備は整っているんじゃないかな?」
●肝試し本番
「え、えっと‥‥さっきの話‥‥実話じゃないですよね?」
肝試しが行われる中、あたりを恐る恐る眺めながら水月夜が不安そうに声をあげる。
「どやろね。僕がこの辺で聞いた怪談だって事は間違いないけど」
嘘ではない。トシハキクが持ってきた会談をつぶらや左琴が肝試しを行う前に聞いておき、先ほど披露をしたのだから。
「ですが、この辺で流れているのは本当ですよ」
「え‥‥」
事前にこの辺りを調べに来ていたという猫美の言葉に、水月夜の表情がこわばる。
「夜な夜な墓地で音楽が聞こえるとか‥‥」
「あぁっ、そこに‥‥!」
つぶらや左琴があらぬ方を指しながら突然声を上げる。
「「ひっ!?」」
少し離れていた場所から役者たちをとらえていたトシハキクのカメラが、指の方向へと向けられる。
そこでカメラのレンズがとらえたものは、
「‥‥なんもおらんかったりして」
てへ、と舌を出して言う彼に、泣き出しそうな水月夜の表情が怒りへと変わる。
「ちょっと! 左琴さん!」
「あはは、ちょっとしたおちゃめな冗談やないか。堪忍してーな」
「ほんとに出たらどうしようかと思ったじゃないですか!」
「あれ? 夜水ちゃん大丈夫じゃなんやなかったっけ?」
「で、でも驚くじゃないですか!」
「‥‥あれ? 琴羽さんは?」
横から騒ぎを見ていた深月沙奈が唐突に気がついたように言う。
「あれ? 琴羽さーん」
「さっきまで横におったよな? どこいったんやろ?」
「おかしいですねぇ‥‥カメラマンさん知りません?」
トシハキクや一二三四にまで確認するが、森川琴羽がどこに行ったかを言うものはいない。
「どこいったんでしょう‥‥?」
「琴羽さーん返事してー」
奥へと進みながら水月夜が声を上げたそのとき
「うらめしやああああああああああああああああああああああっ!」
「○×△□×!?!??!」
夜の墓場に悲鳴が響き渡った。
●収録終了
「さ、最後のZEROさんの尻尾だったんですかっ!?」
「驚いた? うまくいって良かったよ」
「うまくいって良かったじゃないです! 突然変な生き物が出たかと思ったじゃないですかっ!」
「そうそう。夜水ちゃん泣きかけてたもんねー」
「っ、こ、琴羽さんなんて知りません!」
「ごめんごめん。つい脅かしてみたくなってさ」
撮影終了後、喧騒が続く中一二三四とトシハキクが依頼主達の前に立った。
「お疲れ様。カメラ大変だったでしょう?」
「ありがとうございます。それで、ちょっとこんなものを撮ってみたんですけど‥‥」
「これは?」
「ちょっとした心霊写真です。なんでも暗いところなら、点が三つあれば人の目には顔に見えるらしいですから、ちょこちょこと撮ってみました」
しっかり撮れているかは分からないですけど。そう言う一二三四に、ADが笑顔をみせる。
「ありがとう、資料に使わせてもらいます」
「監督、映している間に考えたことなのですが‥‥」
「ふむ。確かに出てくるところでは、出演者と出てくるものを別に撮った方がいいな‥‥」
かくして今回の取材は成功のうちに幕を収めることとなった。
実際にこの二人がホラー映画を実際に撮ることになるかは‥‥神のみぞ知る、というところであろう。
――了