それぞれの日常アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 玲梛夜
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/07〜06/11

●本文

「クライマックスにむけての、だな」
「その前の一休み」
 今度のへたれ星ドラマは、それぞれの日常にスポットをあてる。
 最終回前の一休みといったところだ。
「まぁ好きに日常ってことで」
「だな」
「‥‥長かったなぁ」
「こんな続くとはな」
「本当に行き当たりばったりでよくここまでがんばりましたね」
「お前もそろそろ新人卒業するか、な」
「そうしてください」
 こんなやり取りしつつ、いろいろと手配は進んでいくのだった。


 ドラマあらすじ
 それぞれの日常風景を披露していくのがメイン。
 そこに恋愛の発展を絡ませるのも子離れならぬ牛離れを絡ませていったりも自由。

 補足
 危険なことはしない、ハメをはずしすぎない、乱暴な行動はなし。常識からはずれないならば大体許されます。
 なおそれぞれ行動は相互了解でもって成り立ちます。
 またあまりにも場面がばらばらだとそれぞれの出番も薄くなることもあるかと思います。
 今回、七夕メンバーに加え、他にも広く募集中。

●今回の参加者

 fa0441 篠田裕貴(29歳・♂・竜)
 fa0642 楊・玲花(19歳・♀・猫)
 fa1463 姫乃 唯(15歳・♀・小鳥)
 fa3369 桜 美琴(30歳・♀・猫)
 fa3487 ラリー・タウンゼント(28歳・♂・一角獣)
 fa4002 西村 哲也(25歳・♂・ハムスター)
 fa5331 倉瀬 凛(14歳・♂・猫)
 fa5732 浦上藤乃(34歳・♀・竜)

●リプレイ本文

●突然の来訪者
 今日も今日とて、真面目に仕事。
 外はあいにくの雨。
 ふと外を眺めたあとに、織姫(楊・玲花(fa0642))の視線は雑誌に止まった。
 特集は『ジューンブライド』。
「‥‥私も早く‥‥仕事中に何考えてるのかしら、仕事よ仕事」
 雑誌を見て、そしてちょっと想う相手を思い出し、また現実にひき戻る思考。
 その間、織姫の表情はくるくるとめまぐるしく変わる。
 そうこうしている間に、見知った顔が訪れる。
 それは突然の来訪以外の何でもない。
「織姫様、お久しぶりです」
 部屋の扉を叩いて、一礼とともに入ってきたのはよく知る彩華(浦上藤乃(fa5732))だった。
 織姫にとっては半ば親代わり、頭の上がらない女官長。久しぶりの再会で嬉しいものの、何か用があってきたのはすぐに感じ取る。
「どうしましたの、わざわざ」
「天帝様のご様子をお伝えしようと思いまして」
「‥‥何かしら」
 なんとなくの、いやな予感。織姫は身構える。
 では、と口を開く彩華は天帝が織姫たちの中のことに不快感を持っている旨を伝える。そして近いうち顔を出すように、とのこと。
「天帝様も一人の親として、心配なさっておいでなのですわ。自分の可愛い娘が頼りない男の方に騙されているのでは無いかと」
「そんなこと‥‥」
 ないとは言えない。頼りない、という部分が完全に否定できない。
「わたくしなどからも再三姫さまに限ってそのような事は無いと申し上げているのですが‥‥男親というものは心配性ですからね。ともかく、一度宮殿の方に顔をお出しに成られて、お話し合いをされる事をお勧め致しますわ」
「‥‥彩華様がそこまで仰るのなら、行かぬ訳にもいかないでしょうね。父上と顔を合わせるのは、正直気が進まないのですけれど‥‥」
 ため息をつきつつ、織姫は立ちあがる。
「そうだわ‥‥彩華様は先に戻ってわたくしが参る旨をお伝えください」
「わかりましたわ」
 彩華は先に宮殿へ。織姫は身支度を整え、出発する。
 彼女が向かった先は。
「最近、彦星の様子が違う気がするわ‥‥何だか変ねぇ‥‥まさか、コベコ離れ?! いつの間に‥‥!」
 最近の弟の様子を思い浮かべて、月華(桜 美琴(fa3369))は唸ったり叫んだり。
 彼女の弟、彦星(西村 哲也(fa4002))はというと、現在牛の世話を完璧にこなし中。
「そろそろ梅雨だなあ、良い雨が降って草が育つと良いねコベコ」
 ぶもっと返事が返ってくる。コベコと麦藁帽子と首にタオルのペアルックで、独り言のように見えつつも、紙の束をのぞきこみながらコベコと会話していた。
 と、家の方へ向かってくるのは織姫の車。
「あ、織姫〜!!」
 みつけて嬉しそうに走ってくる彦星。
「どしたの織姫‥‥あ! 俺何か約束忘れてた!?」
 はっとしてあわあわとする彦星に、織姫はちょっと寄っただけです、と言う。
 月華も織姫がやってきたことに気がついて、外へと出てくる。
「あら? どうしたの?」
「所用がありまして、今から宮中に参るところですの。一人ですと何かと心細いですし、月華様にご一緒して頂けますと心強いのですけれど‥‥如何です?」
「いいわよ」
「俺も一緒に行くよ。二人を守らなくちゃね」
 にこり、と笑って彦星は言う。
 ちょっとは逞しくなったのか、と思う二人。
「じゃあコベコを牛舎に連れて行ってくるから、ちょっと待っててね」
 ととととっとコベコを連れて走りゆく彦星。
 てっきり一緒に行くものだと思っていた二人は驚く。
「本当にとうとうコベコ離れが‥‥でもまさか」
「いいことなんでしょうが不安な‥‥でもやっぱりありえない‥‥」
 二人は呟きながら、ぱぱーっと身支度を整えて走って帰ってくる彦星を迎える。
「彦星、その手にあるのは‥‥」
「あ、持ってきちゃった。これは‥‥うん、そろそろコベコのお婿さんを探そうと思って」
 この言葉に今までまさかまさかで本当に信じていなかった二人は、驚きつつもその兆候をひそりと喜ぶ。
「私もそろそろ彦星離れかしら‥‥」
 それぞれ色々な思いを抱えながら、向かうのは宮中。
 そして三人を見守る影も二つ。
 というか三人をじっと見つめる影を見守る影が一つ。
「もう、彦星様ったら。いつになったらわたくしの想いに気付いて下さるのかしら‥‥」
 恋する乙女、綾(姫乃 唯(fa1463))は物陰からひそりと彼らの姿を見送る。
「ご本人が駄目なら、周りから攻めるのも手ですわね。コベコ様と仲良くなれば、きっと彦星様も‥‥『コベコを可愛がる綾は素敵だよ』『まぁ、彦星様ったら!』‥‥なぁーんて! はっ、彦星様達が行ってしまう!」
「綾‥‥それって物凄く怪しいよ‥‥」
 はぁ、とため息をつきながら幼馴染である綾を見守るのは慶(倉瀬 凛(fa5331))。
 暴走が止まらない綾を生ぬるく見守る。
「もう彦星さんの事は諦めた方がいいんじゃない? 彦星さんには織姫様って言う、立派な恋人もいるんだから。何たって織姫様は大人だし美人だし‥‥あっ、いや、決して綾が可愛くないとか、そう言う訳じゃないんだけど!」
「あら、そんなにわたくしの事を気に掛けていらっしゃるなんて。慶ったら、実はわたくしの事が好きなんですのね? でも駄目ですわよ。わたくしには彦星様と言う想い人がいるんですもの」
「べ、別にそんなんじゃないよ!」
 真っ赤な顔をしてそっぽをむく。
 そんな様子、気にもせずに綾の視線は彦星だけに。
「あら、彦星様お待ちになって!!」
「‥‥とっても心配だ‥‥」
 そして二人も、宮中へと向かう。

●宮中は彦星の庭
「こっちこっち、煌を見によくきてるから‥‥近道はこっちだよ」
「そんなことしてたのね‥‥」
「私は父上の所に行って参りますわね」
 織姫はひとり、父の元へ。
「織姫、待ってるからね」
 その彼女に彦星は笑顔を向ける。
「ま。待たなくてよろしいですわよ!」
 二人は見送り、残される。
 くるり、と彦星は月華の方を向く。
「何?」
「煌のところに行きましょう! きっと今は‥‥あそこで仕事中だろうし」
 ぱらぱら、とノートをめくる。
 表紙には『煌日記』。
「そ、そんなのつけてたの? そういえば煌の仕事中は見たことないわね‥‥」
 では行きましょう。そう言って彦星はすたすた歩き出す。
 そして物陰でまだごそごそとしている綾。
「今日の彦星様、いつにも増して素敵ですわ。忘れずに書き留めておかなくては!」
「‥‥『彦星様☆観察日記』」
 慶はもう何も言わない、とつぶやくのだった。
 その頃、煌(ラリー・タウンゼント(fa3487))は兄である洸(篠田裕貴(fa0441))と仕事の真っ最中だった。
 何かを真剣に話しており、凛々しい。
「あんな顔して仕事してるのね‥‥」
 邪魔してはいけない、とこっそり見守ろうと思っているが、二人は視線に気がついて彦星たちの方をみる。
「‥‥月華? 彦星も。お前、コベコはどうした? 何処に行くにもコベコが一緒だったのに、別行動とは珍しいな」
「月華ちゃんも彦星もいらっしゃい」
「コベコは嫁入り前の大事な体だからね!」
「仕事中にごめんなさいね」
 煌と洸は笑顔を浮かべる。
 その瞬間に周りからの視線。
「な、何この視線‥‥」
 月華が視線を巡らすと美しく煌びやかな女官たちが二人をみつけていたのだ。
 世界が完全に違う。月華は、そう感じる。
「ここまで遠かっただろうに。ふたりとも煌と積もる話もあるだろうし、ゆっくりお茶でも飲んで行くかい?」
「ううん、織姫待ってるだけだから‥‥」
「姫様を?」
「兄上、何を言っているのですか。私は仕事中なのですよ! 茶を飲みながら話をするなど、いつでも出来るではありませんか?」
 洸の言葉に、煌はかみつくように言う。
 仕事と私事は分けなくては、そんな雰囲気で。
「そうね‥‥邪魔しちゃったわね」
「あ、姉様?」
 月華は何も言わずに帰っていく。
 彦星はどうしよう、と煌たちと月華の背中を交互にみた。
「‥‥煌、仕事が大事なのはわかるけど。幼馴染以上の存在なんだろ? 大事にしなくちゃ駄目だよ。離れて暮らしていて中々会えないんだから‥‥話せるときには話しておかないと‥‥大事な存在を横からとられるのは、厭だろう?」
「!!」
 洸の言葉に、煌はあわてて月華を追う。
 彦星と洸は彼ら二人を、見送った。
「姉様たち、うまくいくといいなぁ」
「本当に‥‥見ていてもどかしいったらないね、あの二人」
 そんなところが可愛いんだけどと呟きつつ、洸は笑顔を向けた。

●煌と月華、そして
「月華! 先程は‥‥済まなかった」
 宮中の門付近、月華を見つけて煌は走り寄る。
「どうしたの? 仕事中でしょう‥‥?」
 月華はいつもと少し違う雰囲気の煌に困ったように笑う。
 いつもと違って見える煌。
 少し沈黙を作ったあとに、月華は話し出す。
「一緒にいるのが当たり前で、今まで考えたこと無かったのよね‥‥生まれとか、環境とかって。ここにきてそれを感じちゃったわ。煌も、いつもと違うもの、なんだか不安になったわ」
「私のことで不安にさせているようだが、心配しなくて良い。今も昔も私は変わっているつもりはない‥‥のだが」
 すっと、月華の手を取る。
「私の仕事は天界で暮らす者たちの平安を護ることだが、私は常に‥‥一番にお前たちのことを考えている。特にお前のことを‥‥な。だから、安心していてくれ」
 ふわりと笑む。それは月華だけに向けられたものだ。
「煌‥‥今‥‥なんて言ったの‥‥?」
「何度でも言おう」
「や、やっぱり恥ずかしいわ! ‥‥お互いの一番はいつも彦星だったわね‥‥私も『誰を一番に考えるか』を変えないとね。あの小さかった彦星はもう居ないのだから‥‥」
 彦星はコベコ離れをしている。自分もそろそろ、離れなくては。
 そう、月華は思う。
「煌はあの子の代りにはならないけれど、あの子とは違う意味で‥‥ずっと側に居てくれるなら‥‥嬉しいかも‥‥そう思ったのよ」
「月華、それって‥‥」
 月華は微笑んで、頷く。
 急には変化できないけれども、確実に二人の間は進んでいたのだ。
 そしてその様子を見守る彦星。
「よかった‥‥! ‥‥織姫はまだかなぁ‥‥」
 二人の様子をみて、彦星は想い人が恋しくなる。
 その頃織姫は意気消沈していた。
 父との話は、うまくいかなかったのだ。
「‥‥父上は何でお判りに成らないのです。彦星は父上が仰るほど、駄目な殿方でもありませんのに‥‥確かに少々頼りのないところや甘えているところはあるかも知れませんけれど‥‥いっぱい良いところもありますのに‥‥」
 父のいる部屋からでて歩く。
 そんな様子を彩華はみて、慰めようと一歩足を踏み出す。
 だがそれよりも早く、綾が現れて織姫の前に立ちふさがる。
「あなたは‥‥」
「こんな元気のない織姫様なんて、わたくしのライバルの織姫様ではございませんわ!」
 きっと挑むような視線。言葉を放ち、さっさとその場から行ってしまう。
「す、すみません織姫様、綾が失礼な事を‥‥あっ、待ってよ綾!」
 織姫が何を言う間もなく綾は去る。そのフォローはやっぱり慶なのだ。
「‥‥そうね‥‥沈んでいても、何にもなりませんわ」
 織姫は顔を前へ向ける。
 彩華はその様子をみて薄く微笑んだ。
「‥‥どうやら、わたくしが出るまでもないようですわね。良い友に恵まれましたわね、姫さま。‥‥わたくしの役目はどうやらもう一方の融通の利かない頑固な方の気を静めることのようですわね。わたくしの話を聞いて下さると良いですけれど‥‥」
 織姫が歩いてきた方向へ、彩華は向かう。
 織姫は、彦星たちが待っている門の方へ。
 彦星たちの姿を見つけると微笑みが自然に漏れる。
「あ、織姫! 織姫の視線だったんだね。ずっと見られてる気がしてたんだ‥‥」
 走り寄ってくる彦星は本当にうれしそうだ。彦星がうけていた視線は綾のものだったが、それは今はない。
「待たせました。帰りましょうか」
「うん、姉様も幸せに近づいたし‥‥姉様ももっともっと自分の事考えないと。ね?」
「彦星ったら!」
「ぎゃあ! ちょ、何で蹴られてるの!?」
 照れ隠しのような蹴り。彦星はそれをうけて笑う。
「あら、もしかして‥‥」
 織姫は雰囲気で察して、笑顔を浮かべる。
 大事な人が幸せになるのはうれしいことだ。
「‥‥女の人は、やっぱり花嫁さんに憧れるのかなあ」
「ひ、彦星?」
 ふとでた言葉に織姫は驚く。
 だが続く言葉は。
「コベコもそうなのかな。コベコの母も、そのまた母も、良いお母さんになったから。きっとコベコも大丈夫だよね」
 きっと花嫁姿は綺麗なんだろうね。
 そう呟いてにへらと笑う。
「‥‥彦星‥‥まだもう少し、私がそばにいないとダメね」
「やはり、まだ私よりコベコなのですね‥‥」
 織姫は溜息をつく。
 でもこんなコベコのことが大事なところも好きなのだ。
「織姫」
「何ですの?」
「僕たちも幸せになろうね」
 するりと出た言葉の意味をわかっているのかいないのか。
 彦星は、満面の笑みでそう言った。