ジューンブライドライヴアジア・オセアニア
| 種類 | ショート |
|---|---|
| 担当 | 玲梛夜 |
| 芸能 | 3Lv以上 |
| 獣人 | 1Lv以上 |
| 難度 | 普通 |
| 報酬 | 7.9万円 |
| 参加人数 | 8人 |
| サポート | 0人 |
| 期間 | 06/27〜07/01 |
●本文
●６月のヴァニシングプロヴァニシングプロは日本のロック系音楽プロダクションの最大手だ。ビジュアル系ロックグループ『デザイア』が所属している事から、その名を知るアーティストは多いだろう。
また、二代目社長緒方・彩音（fz1033）自らが陣頭指揮を執る神出鬼没なスカウトマンでも有名で、まだ芽が出ていないうちから厳選した若手をスカウトして育成し、デビューさせている。
「社長、ジューンブライドライヴですが、フォルトゥナ・ヒルが自分の所を使って欲しいと返答がありました」
ヴァニシングプロの社長室。各地のライヴハウスや路上ライヴを練り歩き、日夜、新人発掘に精を出している彩音が社長のイスに座っている時間は１年の１／３もない。
その彼女が社長のイスに座って電話を掛けているところへ、副社長のエレクトロンボルトが入ってくると、机の上に書類を置いた。報告を聞いた彩音は手短に電話を切ると、書類に目を通す。『フォルトゥナ・ヒル』のパンフレットだった。
フォルトゥナ・ヒルは緑に囲まれた閑静な郊外にある結婚式場だ。都心より車で３０分と交通の便もいい。
結婚式費用は高く付きがちだが、フォルトゥナ・ヒルでは新郎新婦２人だけの挙式プランや、内々だけの少人数のプランなど、従来のそれよりかなり価格を抑え、それでも質の高いプランが数多くあり、予約が途絶える事はないという。
数個の式場を構えているが、その中でも一番の売りは、敷地内の小高い丘の上に立つ小さなチャペルだ。この丘は『幸運の丘』と呼ばれ、チャペルの入口には『フォルトゥナ・ヒル』の名前にもなっている、古代ローマの運命を司る女神フォルトゥナの象徴である車輪がオブジェとして飾られている。
「去年の６月にグランドオープンしたそうで、１周年の節目にアーティスト達に披露宴を盛り上げて欲しいそうです」
「そうか。こちらとしても助かる。所属アーティストが提案してくれたライヴだからな。出来る限り形にしていきたい」
彩音が先程掛けていた電話も、ジューンブライドライヴを行う会場確保のものだった。ライヴが結婚式場で出来、それが新郎新婦達を祝福するのなら、まさにジューンブライドライヴにぴったりだろう。
●中世を模して
ヴァニシングプロより、各所へと依頼が舞い込む。
中世を模した雰囲気の会場に、大きすぎず小さすぎずの舞台を設置。
舞台下にはピアノとオルガンも用意されている。
その舞台を使ってのライブ。なお、この舞台も装飾は凝っており古めかしい雰囲気を醸し出しています。
また衣装は無理ない範囲で中世の時代を模した服を会場側で用意することとなっている。
今回のテーマは花嫁花婿を祝う内容の歌。
持ち運びできない楽器は会場にあり。ただしドラムは雰囲気を壊すとのことで設置は認められない。
また臨機応変に出演者の登場などは変更もありうる。
お祝にきているのは新郎新婦の友人たちが多い。
なお、今回、お祝の内容にふさわしくあるかどうか、事前にチェックがあります。
ふさわしくないと判断された場合は、演奏することもありませんしお祝の席に入ることももちろん許されません。
なお、会場側から新郎新婦、およびお祝にきた人にはちょっとしたイベントのプレゼントを用意してあるといってあるのみで、ライヴがあることは知られていません。
●リプレイ本文
●お祝しましょう「私もお嫁に行きたいわー‥‥お金持ちのとこに」
茉莉枝（fa5703）はフォルトゥナ・ヒルの様子をみながら呟く。
周りはお祝ムード。今日は各所で結婚式が行われており、華やかだ。
「俺の姉もいつか嫁ぎゆくんだろうなぁ」
「巽君の圭藍する姉君に重ねた曲ですから、心情こもった歌と演奏を期待しておりますよ。もちろん司君にとっても姉に等しき方ですからね」
アレクサンドル（fa4557）は笑顔で星野・巽（fa1359）と美日郷 司（fa3461）に言う。
そして克稀（fa5812）の方を向いて。
「克稀殿、此度はよろしくお願いいたします」
「歩き出す二人の門出を祝い、一音一音に心を込め演奏したいと思う。こういう場だと幸せが満ちてて音も自然と優しくなるな」
克稀はあたりを見回して、さらに続ける。
「花嫁へ送る歌‥‥俺にも双子の姉がいるので感情移入出来る‥‥かは謎だな。どちらかと言えば『とっとと嫁に行け』な気分だが、いざ現実となると違うのだろうか‥‥」
「あ、そうだ！ 皆さんに一つ提案なのですが」
「何何ー？」
朱里 臣（fa5307）が皆に声をかける。あずさ＆お兄さん（fa2132）はそれに興味ありとやってくる。
「皆で声を揃えてシンプルに『おめでとう』を贈りませんか？」
有名な人も多いし、こういうのもうれしいかなと思うので、と続ける。
おめでたい席、お祝いはちょっとでも多い方が良い。
「一番大切なのは、何よりお祝いする気持ちだからスマイルで！」
臣は満面の笑みで、みんなに言う。
もちろん反対する理由はない。
「やや！ 声大きかった！ 登場までバレないように静かにね。喜んでもらえるように頑張ろうっ。えいえいおー！」
気がついてから、臣の声は小さくなる。
小さく小さく、えいえいおー！
気合は十分だ。
●プレゼント
お祝いのムードで華やぐ会場に、アナウンスが流れる。
『会場から皆様へ、プレゼントを用意しております。どうぞ、お楽しみ下さい』
アナウンスが終わると、小さな舞台に明かりがともる。
お祝いに来ていた賓客たちのざわめきと視線は、そこに向かう。
ぽっと、そこに立つものの姿を彼らが認識すると、嬉しい小さな悲鳴が起こった。
●rainbow tomorrow Celeste
柔らかな金色の照明が舞台を包み込む。
ピアノの前にはブルーの中世の騎士風の衣装をまとった臣。
演奏前に、新郎新婦に向けて誓いの姿勢をとり、永遠の愛を誓った二人にお祝を。
あずさは中世のお嬢様風のドレス。黒と白基調に小物でアクセント。
茉莉枝は若草色のゴシックドレス。髪はサイドに軽く流して緑色のリボンを。
流れ出す音は、やわらかいロックバラード。
軽やかなピアノの旋律、和音をしっかり響かせてゆく。
「 優しく昇る 赤い太陽
静かに照らす教会の鐘
鳴る音色は 祝辞の響
まるで未来を祝うように 」
伸びやかに声が響く。
その中でピアノがはずみをつけて転調。
「 幸せになってねと 言うつもりはないよ
だってもう広がってる これからも続くね
薬指で繋がる sweet happy days 」
音は一つずつ、かわいらしく揃えて響く。
そして華やかに駆け上がるように音が奏でられていく。
「 それぞれの道 歩く途中で 導かれたように出会って 」
茉莉枝の声がメロディに重なり次の言葉に続いて行く。
ふわと天使の梯子のような白いライトが上から差し込む。
歌声も音も伸びやかに。
「 一目見てわかった
そうお似合いの 素敵な二人
互いを想い合う笑顔 なによりの幸せを彩っていく 」
言葉はかみしめるように、しっかりと。
「 ここから先は 二人並んで 同じ道を歩いていく」
重なる音と声とは響き合って、伸びやかに前向きに、空の向こうへと届くように。
ゆっくりと、音は静かになっていく。
「 青いあの空には
涙の雨も いつか降るだろう
だけど寄り添う心なら 虹色に『これから』を輝かせる 」
フェードアウトする音。それと同じように照明も消えていく。
ピアノの音だけが、きらきらと輝くようなフレーズを送る。
●花〜嫁ぎゆく貴女へ〜 BLUE‐M ＋
ふんわりと優しげな、セピアがかった白のライティング。
舞台下のオルガンの前には克稀が座る。
深い蒼のサーコート風の騎士服、透明クリスタルのアクセサリが光を返す。
アレクサンドルはサックス担当。
漆黒のサーコート風の騎士服とマントを着用。マントの留め具にはシルバーの宝飾が光る。
美日郷司はバイオリンを手に。
ブルーグレーの長いサーコート。アクセサリーはシルバーの宝飾がついた飾り帯。足は黒のロングブーツで、髪は後ろで一つに、リボンで縛っていた。
そして歌うのは星野巽。
深緑色のロング丈のサーコート風騎士服。同色の刺繍はシックに。細身のパンツをあわせ、ガーネット風の宝飾付ブローチと剣帯でアクセントを。黒のロングブーツでかちっとしめていた。
聞いたことのあるクラシック曲のアレンジ、バイオリンで細く、そしてオルガンが入って曲に深みをだしていく。
柔らかなゆったりした雰囲気でありながらもロックを感じさせる。
そこにサックスの音が入り、華やかながらも、かすかに切なさを醸し出す。
「 粉雪色のドレスを纏い 霞のヴェールに包まれて
極彩色が晴天に舞い踊る
真白な花が蒼を彩り 虹の絨毯を貴女が歩む
あわせた手からそっと旅立つ花よ
今しばらく、ここに 」
ふわりと途中から花吹雪が舞う。
ひらひらはらはら。
バイオリン、サックスの音は変則的に。オルガンは他の音を支えるように流れる。
歌声を押し出すように、音は抑えられ、ゆったりとなっていく。
そのゆったりとした雰囲気のまま、一句ずつ想いをこめて、歌が響く。
「 嫁ぎゆく貴女の その手を 声を
優しさを忘れない 」
ライトの色が変わる。
ゆったりとしたテンポをあげ盛り上げながらも繊細に。
そして調子をあげていく。
「 最大級の感謝を込めて
世界で一番の愛を貴女へ
幸せに My beloved daughter，my sister 」
テンポはかわらず、前奏と同じようにアレンジ。
今度はアドリブをいれて自由に音が踊る。
バイオリンとサックスの音がだんだんと弱まり、かぶせてオルガンの音が入っていく。
少し、テンポを落としてまた歌が入る。
「 歩みゆく貴女の その姿 強さ
微笑みを忘れない 」
真っ白なライトの中、伸びと歯切れをよく、バイオリンの音が強く響く。
リズムに緩急をつけ華やかに華やかに。
お祝の気持ちをこめて、盛り上げていく。
「 最大級の祝福をのせて
世界で一番の幸を貴女へ
永遠に My beloved daughter，my sister 」
ふっとテンポダウンを始めて、伴奏は弱く弱くなっていく。
最後は声のみ、語りかけるように。
その声の余韻にのせてサビのメロディをシンプルに。
フーガ調に繰り返しながら、最後に鐘の音が響く。
それと合わせてアレクサンドルの手品。
ふわりと空中に蕾が待って、観客の手に。
蕾は、手のひらに落ちる時には大輪の薔薇となっていた。
●お祝い
二組の演奏が終わって、全員が舞台にたつ。
あずさは歌うときは離れていたお兄さんもあずさと同じ衣装で一緒に。
全員、笑顔を浮かべて、新郎新婦へ言葉をおくる。
『おめでとう！！』
今日の出来事は、新郎新婦、そして祝にきた賓客たちの心にも残るだろう。
●素朴な疑問
「‥‥」
克稀はアレクサンドルのマントを見つめていた。
「これのどこにあの手品のタネが‥‥」
「おや、気になりますか？ ですがそれは内緒です」
