【AbySS】AcrossTwinkleアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
玲梛夜
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
1.3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
07/02〜07/08
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●本文
ロック中心なライヴハウスAbySS。
開店前の座談会。鍵が開いている時はほぼ、誰かがいるのだけれどもそれを知っているの人間は少ない。
薄暗闇の中、カウンターで会話するのは二人。
「もうすぐ七夕ね」
「笹でも飾る?」
「んー、笹が店内にあるのはちょっと邪魔かも‥‥」
「あれ、飾るって言い出すかと」
「飾っても前日当日くらいかしら。でも、七夕ライヴはやるから」
ふん、と握りこぶしをして気合は十分のオーナー、平木メア。
いつもの如くメモ用紙にさらさらっと概要を書いてお知らせコルクボードへとぺたり。
「今回のテーマは?」
「笹の葉さらさら、星きらきら、天の川に願いをかけて、出会えると良いな運命の人」
「長いね」
平木カオルは、苦笑しつつ言う。
けれどもどんなライヴになるのかと楽しみでもあるよう。
「ところで」
「何?」
「カオルちゃんの運命の人は?」
「ぶっ」
飲もうとしていたアイスコーヒーを噴きそうになり、カオルは慌てる。即座に手元にあった仕事の資料が汚れていないか確認するあたりがカオルらしい。
そんな様子を見てメアはにやりと笑みを浮かべる。
「好きな人いるの? いるの? 誰にも言わないからこのメアに言ってみなさい!」
「メアちゃんに言ったら明日には皆知ってそうだから嫌です。いません、そんな人いません」
「‥‥つまんなーい。カオルちゃんもいい年なんだから恋人くらい‥‥」
「それはメアちゃんの方が‥‥」
「お黙り!」
ぴしゃりと、その後の言葉はメアの一喝に消される。
それぞれの恋愛模様はひとまずおいといて、七夕ライヴは楽しみの一言に尽きる。
お知らせ。
7月7日18時頃
『Across Twinkle』
笹の葉さらさら、星きらきら
天の川に願いをかけて
出会えると良いな運命の人
●リプレイ本文
●七夕の日に
「そうなの? 大丈夫よ」
「ありがとうメアちゃん!」
来店直後、こそっと千音鈴(fa3887)はオーナーのメアへとお願い事を。
「久しぶりだな」
と、螺旋階段を降りて美日郷 司(fa3461)は明石 丹(fa2837)へ声をかけた。
「そうだね、仕事で一緒になるのは久しぶり」
微笑を湛えて丹は言い、視線はメアの方へ。
「メアちゃん久しぶり」
「マコちゃん! マコちゃん!」
「なんで二回も‥‥まぁいいか。はい、お土産。雨が降らないようにてるてる坊主。ちょっと不細工なんだけど‥‥晴れないと天の川見えないから頑張って貰わないとね」
「ありがとう、笹に飾るわ‥‥あなたは?」
「美日郷司だ、よろしく‥‥」
「ううん、そうじゃなくてお土産」
差し出されたメアの手を司は無言で、見る。と、その後ろから星野・巽(fa1359)が苦笑しつつ。
「それなら俺が。七夕らしく金平糖です。千音鈴さんからお話を伺って楽しそうだなと。新しいライヴハウスと音楽事務所で‥‥何か親近感が沸きます」
「なるほど、噂のオーナーだな‥‥」
「司、ちょっとは笑えよ‥‥」
「ん」
司は巽に抱きつきつつ笑顔を浮かべる。と、同時に巽からは鋭い蹴りが一閃。
「ぐ‥‥相変わらず重い蹴りだ‥‥」
「‥‥夫婦漫才?」
その様子を見ていたメアは暢気に尋ねる。
「メアちゃんにはそう見えるのね‥‥」
と、螺旋階段から足音。誰かなと視線はそちらへ向く。
亜真音ひろみ(fa1339)、x‐cho(fa0952)、そして旺天(fa0336)が連れ立って。
「今回は世話になるね、よろしく。これは開店祝いには遅いからお中元ってとこかな。あと‥‥他にもあるけど後で」
「俺っちも差し入れ持って来たッスよ、泡盛! ‥‥持って来ておいてアレだけど、メアちゃんお酒大丈夫?」
「ありがとう。三人の音、楽しみにしてる」
「ライヴも上手く行くとイイネ」
x‐choの言葉に頷きつつ土産を受け取ると、メアはそれをカウンターへと置く。
と、また足音。階段を降りてきたのは紅 勇花(fa0034)とメアの甥っ子。
「カ、カオルちゃんが女の子と一緒‥‥!」
「‥‥ライヴの参加者さんです‥‥外でお会いしました」
カオルは自分よりも少し高いくらいの笹を持っており、それが店にあることで七夕ライヴの雰囲気も出る。
その笹を見上げ、勇花は言う。
「七夕かぁ‥‥結構雨振るコト多いらしいけど、晴れるかな?」
「晴れるわよー! だっててるてる坊主あるし‥‥あ、折角だから願い事書きましょう」
と、いうことで。
ライヴ前に、短冊にお願い事を。
●リベライト
x‐choのエレキギターの音は静かに。それに会わせるように旺天のドラムの音が合わさる。
そしてそこに声を乗せるのはひろみ。
「 空を走るミルキーウェイに想い重ね合わせる
いつか君を迎えに行くよ
あの頃はいつも港の公園で君と満天の星空を眺めていたね
周りには誰もいない二人だけの世界
忙し過ぎる中のわずかな時間、君の温もりを確かめることで僕は癒された
君が胸に抱いていた不安などに気付かずに
自分の夢ばかり追い掛け君の夢に気付きもしなかった
離れて途切れて初めて知った君の胸のうちに潜んでいた不満 」
段々と激しくなっていく音。
けれども勢いでなくて、旋律の美しさが感じられる音。
「 今、君を迎えに行くよ
この想いはもう押さえきれない
七夕の星のように年に一度なんて耐えきれない
君にふさわしい男になれてなくて構わない
ただ僕にとって大切なもの
それを取り戻しに会いに行くよ
胸に宿る想い全てを打ち明け
僕は君という大切な星を再びこの手に抱き締める
彦星のように
今度は離しはしない 」
響く声が、音が途切れると観客からは盛大に声が返ってくる。
舞台から手を振りつつ降りるとそこにはメアがいて。
「お疲れ様! あ、テンちゃんはまだあるのよね、頑張って!」
「頑張るッスー!」
「皆の音、とっても良かったわよ。息ぴったり」
「同じプロダクションだからネ」
ふふっと笑い、最初のステージにメアは満足のようだった。
●ブルーム
舞台に上がる前に、司にはやることがあった。
「そう、それが生で見たかったの‥‥!」
「愛用の『TATUMI』だからな‥‥」
司は愛用の銀のエレキギターを一撫でし、ネックにキスを一つ。
その様子は千音鈴はキラキラの眼差しで見つめる。
そして巽は、頭を抱えていた。
「‥‥それ、止めろ」
司の呪いに巽は抗議するけれども右から左のようで。
その様子を見ていたメアに笑われる。
「仲が良いわね。さぁ、舞台に上がってらっしゃい!」
とん、とまとめて背中押されて三人は舞台へ。
巽は千音鈴の手をとってエスコート。
司は黒地に麻の葉柄、そして灰色のストライプ柄の角帯を、巽は紺地に薄紺の笹の葉柄の浴衣に紫紺色の角帯をし腰には団扇。
紅一点の千音鈴は茜地の牡丹柄の浴衣に、へこ帯をふんわりと長めに垂らしてアレンジ結び。髪には浴衣と同系色の髪飾り、二人の下駄とは違ってミュールを。
巽と千音鈴は恋人同士、という雰囲気で。
照明が落ち、煌く星を模したライトが降り注ぐ。
ギターの一音目。その音をベースが追いかけるように混じる。
「 指折り数えて七月七日 君と手を繋ぎ歩く道
色とりどりの金平糖が夜空を彩って
君の髪にも ほら、散らばってるね 」
跳ねる様な軽快なリズムに先に声を乗せるは巽。
恋人に語りかける様に甘く優しく。
それに呼応するように千音鈴が後に続く。
「 涼しい風吹く堤防で二人 笑いあって寝ころんで
七夕祭りのざわめきも今は遠くに
満天の星だけが 静かに降り注ぐ 」
音は控え目に、活かされるのは千音鈴の声。
「 『一年に一度しか会えない恋人達は寂しいね』 」
「 空を見上げて君が言うから
僕の両手は君のためにある 抱きしめて耳元にそっと囁こう 」
だんだんと舞台上は明るく、柔らかく照らされ、音は伸びよく、そしてアクセントに低音が入る。
そして二人は声を重ねて、視線を重ねて。
「 いつだって、どこだって それは変わらないから 」
綺麗にハーモニーが響いた後千音鈴の声だけが。
「 さらさら流れる天の川が 織り姫の涙で曇らないように 」
「 僕は上弦の月に乗って 会いに行くよ 」
分かれた声は一つになって、そしてハーモニーを奏で‥‥
「 The seventh night of summer
君の瞳の中のAltair ずっと見つめていたいから 」
また一つに。
楽器の音は無く、それにあわせてさらさらと流れるようだった照明も、星の煌きを残しながら、二人の声と同じように消えて。
その余韻に、観客は浸った。
●紅 勇花
舞台に立って後ろに目配せ。そこでは旺天がドラムの前で準備万端。
音の雰囲気は、激しくは無いけれども疾走感を。
ゆっくり始まる音に旺天のドラムの音はアクセントにもなる。
「 闇蒼の天幕彩る白銀の光
数多の願い流れる天河の外れ
最早叶わぬ、叶えようもない願いと
逝き場失くした想い抱えたまま‥‥
愛した君は遠く空の果て、悲しいほどに届かない
涙堪えるように見上げた夜空‥‥駆け抜けた一筋の光 」
そして音は加速して、次に繋がっていくその時にはもうトップスピード。
ドラムの音はしっかりと力強く響く。
「 流れ堕ちる星に祈りを捧げ 朽ちた願いを託す
堕ち逝く果てのあの人へと、届くように‥‥
流れ堕ちる星の燃え尽きる前に 朽ちた願いよ届け
燃え尽きぬまま凍てついた心、果てるまでに‥‥ 」
走り抜けた後もクールダウンなど無く全開のまま。
すぅっと息を吸って、そして想いこめて勇花は言葉を紡ぐ。
「貴方と永遠に‥‥貴方と永遠に‥‥貴方と永遠に‥‥!」
収束されていた音はそこで途切れて残るのは残響のみ。
観客からは静かに、でもしっかりと反応が帰ってくる。
そんな中舞台から降りるとメアがいて。
「勇花ちゃん、曲名は?」
「ええと、『Deadwish−星降る夜に−』」
「そう、ありがとう、とっても好きよ。お疲れ様、テンちゃんもね」
それぞれの肩をぽむぽむと叩いて、メアは笑顔を向けた。
●明石 丹
舞台の上、グランドピアノの前に座るのは丹。
控えめにラメの入った暗色サテンのタイトスーツを着こなして。
「愛しい人への想いを込めた歌です、聴いてください。曲は『7』」
丹の指は白と黒のコントラストの上へ置かれる。
そして最初の一音、続く一音が曲を成す。
そこへ甘い声を、重ねる。
「 時を数えて永遠と同じ空を想うより
ただ一瞬でも君に触れていたい
いつまでも blue episode
連絡は忘れたり久しぶりだったり
灰色に霞む街を貫く鉄塔 僕らを繋ぐ call
七度数える前に受話器を置くことが増えた
重ならない影踏み繰り返しているよ
会えない日を慰め合うことは
君が隣にいないんだと確認するようで好きじゃない
だけど 声さえ聞こえないんじゃ
僕は簡単にダメになってしまう
どうか涙雨になりませんように
晴れた笑顔で手を繋げますように
光る星が今夜流れるなら 願うことは一つだけ 」
丹の声は静かに消え、そして観客からは拍手が返って来る。
観客に笑顔を向けて礼、そして舞台を降りようとしたのだけれども、他のメンバーが上がってきて。
「ちーちゃん‥‥千音鈴ちゃん発案で今日はこのマコちゃんのお誕生日なの、だから‥‥みんなで歌いましょうー!」
と、メアが言うと同時にそれぞれ楽器を持つものは得て楽器を持って、ポピュラーな誕生日を祝う曲を合唱。
観客もいつの間にか歌いだして。
丹はその中心でにこにこと笑顔を絶やさない。
と、そこへ蝋燭が丹の歳の数分ぶすっと立てられたケーキが登場。
「あれはね、ひろみちゃんが持ってきてくれたケーキなの。さぁマコちゃんは消すのよ」
「ふふ、蝋燭30本って壮観だね。皆どうも、ありがとう」
面々にも観客にも丹は礼を言い、ケーキ上の蝋燭の火を消す。
全て消し終わると同時に拍手が起こって、そしてそのケーキはその後、ライヴハウスにいた全ての者に振舞われた。
●夜空の下
「皆で打ち上げやりたいな、七夕パーティーとか。保護者にカオルさん、現場監督メアちゃんってことで、どう?」
「マコちゃんにおねだりされたら‥‥断れないわね。それなら屋上行きましょう」
「本当? ちゃんと片付けもするし勿論ケーキも作るから!」
「じゃあマコちゃんは厨房直行! 材料は好きに使って良いから。カオルちゃんは笹運んでー」
「はいはい‥‥」
ライヴ後の店内を軽く片付け、そして打ち上げ参加者はライヴハウスのあるビル屋上へと登る。
「あ、晴れてる‥‥」
空を見上げて勇花は呟く。
「晴れてるわねー、よかったわ。織姫彦星‥‥いいわね運命の出会い!」
「いや、僕は別に運命の人とかそーいうのには興味ないけど」
「勇花ちゃんないの!? 好きな人は!?」
勇花はぽろっと出た言葉からメアに問われその勢いに負けて、というか押されて照れる。
「え、‥‥その‥‥あ‥‥お兄ちゃんが好き、かなー」
「あらあら、勇花ちゃんまたそんな、あとで詮索しちゃおー」
「‥‥メアちゃん、迷惑にならないようにね?」
「うるさーい。あ、ケーキそろそろかしら」
勇花に楽しんでね、とメアは言い丹を迎えに屋上から厨房へ。
厨房の中では丹がひそり電話中。
「嬉しいな。会いたいね、うん。じゃあ‥‥また」
ぷつっと電話を丹は切る、と同時にメア登場。
「お電話の相手は誰!?」
「ふふ、僕の大切な人です。はい、ケーキもできたから皆の所に行こうね」
丹はさらりと交わして、笑う。聞いても教えないよ的雰囲気に詮索はストップ。
「あ、マコちゃんは先に行ってて」
と、メアはホールにひろみの姿を見つけてそちらへ。
「ひろみちゃんも屋上行きましょう。あ、その前に何か飲んでく?」
「そうだね‥‥軽く飲んで、あとは酔い潰れた人の面倒でもみるかな」
「ふふ、しっかりもののおねーさんね」
カウンターに座って差し出されたグラスに口をつける。
「うん、弟はいるね。今、別の仕事して‥‥迷惑掛けてなきゃいいけど‥‥」
苦笑交じりに言いながら雑談。
そしてグラスも空になって、夜空を見に屋上へ。
「あ、二人ともこっちこっち」
屋上ですでに騒いでいた面々に手招きされ二人もその中へ加わる。
「あら、マコちゃんいっぱい貰ったのね」
「うん、巽君からハンカチ‥‥司君からはコーヒー豆。コーヒーはあとで飲もうね」
「あ、俺っちも! サングラスコレクションの中でマコトに似合いそうなのがあったんで、プレゼント!」
と、旺天からもプレゼントを丹は受け取る。
「大切にするよ。そういえば‥‥ちおりにライヴ中に熱い視線だったね」
「ふふ、俺っちの出番の勉強にまじまじと見させて貰うって言われたのでそのお返しにまじまじとみてたのさー!」
「上手い奴の演奏を見たり聞いたりは‥‥練習法として間違ってはいないか‥‥」
「と、言いつつ抱きつくなぁ!」
巽に抱きつこうとしつつ手痛い反応を受ける司のその傍で。
千音鈴は両手で顔を隠し。
「えっち」
と、言うと旺天も負けず。
「もっとまじまじと見てやるッス!」
盛り上がる中、ふとメアが思い出したように問う。
「そういえば、短冊に皆は何書いたの?」
「僕はこれからが良い30代になりますようにって」
「私は一筆入魂、美形な恋人が出来ますように」
「それは千音鈴さんよりメアちゃんが書か‥‥」
千音鈴にカオルが返した言葉は最後まで聞こえる事は無く。
そして打ち上げ後翌日、参加者全員御片付けに借り出され今回のライヴも無事、終了。