Fauvisme―RHY＋thmアジア・オセアニア
| 種類 | ショート |
|---|---|
| 担当 | 玲梛夜 |
| 芸能 | 3Lv以上 |
| 獣人 | 1Lv以上 |
| 難度 | 難しい |
| 報酬 | 8.6万円 |
| 参加人数 | 8人 |
| サポート | 0人 |
| 期間 | 07/14〜07/18 |
●本文
感覚を研ぎ澄ませ。捕らわれず、自由に使われるべきだ。
流れる音に決まりはない。
理性なんていらない。
共に歌う、共に奏でる。それだけでいい。
それだけで、幸せで楽しい。
自分の半身をみつけたら、世界の色が変わっていく。
遠い遠い未来の世界。
世界は音で支配されていた。
その世界の中心は『アブソリュト』というユニゾン。
そしてその下の四天王、親衛隊。
治安を守り、支配する彼らは、人々にとって善でもあり悪でもある。
世界を覆すには、きっかけが必要だった。
●ストーリー
アブソリュトの一人がアブソリュトをやめた。
じゃあ一人のアブソリュトは何ができる。
ただ待つことだけ。
何を待ってるのかは誰にも、わからない。
「葎、今から行くよ」
願を知ってるのは君だけだよ。
音が響けばいいね。
「上を崩すなら崩せばいい」
誰に、というのはなくつぶやく。
「上が崩れれば下もその余波を喰らうのにね」
視線は遠くに向けて。
「例えるなら、空が落ちてくるんだ」
一呼吸。
「相手が君だから私はするの」
すうっと視線の先に何がある。
「歌うよ」
崩れるのは上か、下か。
最後の、始まり。
●出演者募集
『Fauvisme』では出演者を募集しています。
今回募集中は『四天王』『親衛隊階級』、『一般階層の面々』です。
『一般階層の面々』→『親衛隊階級』へのチェンジは可能。『親衛隊階級』→『四天王』へのチェンジは役者同士の相互了解を持って可能。欠員での補充、下克上などのような形で可能。
なお、実は『親衛隊階級』でした、というのも可能。
『一般階層の面々』→『四天王』へのクラスアップは現在ありません。
『四天王』補足
四天王は必ずしも『ユニゾン』であるということはありません。その一人だけで普通レベルの『ユニゾン』とはれるくらいの力があります。
四天王ABCDがいるとしてAとBはユニゾン同士、Cは一人身、Dはユニゾン持ちだが相手は親衛隊、一般階層という状況は有です。身分違い、敵同士などもOK。
なお、四天王には通称のようなものがあります。ユニゾンとしてもつ通称と、個人として持つ通称です。
現在四天王状況
『シルフィード、嵐』『イノセント、静』『アイス、蛍』
不在四天王『アニカ、黎』
※『一般階層の面々』中に四天王クラスの力量持ちが一人いても良い。
●補足
『アブソリュト』
・世界を支配する二人組通称。
『ユニゾン』
・対となる二人。考えなどは違っていても、体の奥底に流れる音は同じ。
・出会えば自らの持つ力を飛躍させることができる。
・力の飛躍は個人、能力の方向性が違っていても、互いに認識できる範囲内（可視範囲）にいれば極限まで引き上げ。どちらか一方が歌っているという状況などでも引き上げ。
・歌×歌、歌×楽器、楽器×楽器と表現方法は三つに分かれる。
『音の力』
・自分の奥底に流れる音を理解し、奏でる事によって破壊、創造という力を持つことができる。ただし持てるのは一つの能力のみ。
・音の力同士をぶつけ合う場合、この能力は互いにかき消され合い使用できない。
・この音の理解の切欠は人それぞれ。ふいに気がつくこともあれば、いつの間にか、と様々。
『侵食』
・ユニゾンである者が組み第三者に力をぶつけること。音同士をぶつけ合い起こる現象。物理的な衝撃は無しだが精神的衝撃はありうる。破壊ではなく飲み込み、相手を丸め込み傘下におさめるイメージ。ただし、勝負は一度負けたからと言って次も負けるとは限らない。
『この世界観での暗黙の了解』
・『ユニゾン』は『個人』に仕掛けはしない。
・『ユニゾン』か『フリー』かは、勘のいい人はわかるもの。
・『ユニゾン』は二人目まで存在する。
長くなるため必要最低限と思われるものしか記載していません。
他、何かあれば答えます。
●リプレイ本文
●始まる時「さぁ、行こうか」
立ち上がってぐぐっと伸びを一つ。
共にいた黎（明石 丹（fa2837））は空へと白鳩を舞いあがらせる、
場所は城壁近くの裏路地からのスタート、視線の先には城と、架（千架（fa4263））だ。
架ではなく、影だが、架。
「なぁに？」
「このまえの返事、折角のお誘いだったけど、僕『上』って要らないから戦ってるの。代理は嫌だな」
にこ、と笑って、言葉は続く。
「親衛隊に四天王‥‥間に沢山壁、距離があって‥‥キミ達は遠過ぎた。何考えて、何見てたのか分からない‥空って高過ぎて手が届かないよね。隠れて見下ろしてた人に余裕のない僕達の気持ちは分からない。逆も同じ――今更降りて何したいの？」
「降りたのは知りたかった、まだ出来る事があると思ったけど、出来る事は上でしなきゃだめだとわかった。だから戻る」
少し悲しそうに微笑んで、音は黎に行くよ、と促す。
影の隣をさっと通り過ぎて。
そして城の見える場所にたどり着く。
今から向かう場所を二人で、並んで見る。
ふと、黎は音の手をとって繋いだ。
「ピリピリしてるよ」
「うん、してるね。私たち、終われるかな」
「音、歌えば死んでしまう」
「そうだね」
「死ぬ！？」
と、黎たちを見つけて追ってきた満（南央（fa4181））は、隠れていた場所から飛び出す。
一緒にいた閃（天道ミラー（fa4657））も一緒に出ていく。
二人がいることを黎はわかっていた。
この満のまっすぐさが、もしかしたら音を止めてくれるかもしれないと思って。
満の優しさを利用するとわかっていった言葉。
「死ぬってどういうこと！？」
「言葉の通り」
走ってきて、問う満の一生懸命さ、音は苦笑する。
「‥‥何で二人だけで行っちゃうんだ！」
溜めていたものを吐き出すように、満は言う。
「まだ、正解なんてわかんないけど、でも色んなものが動いて‥‥」
言葉にできないけれども、言いたいことは伝わる。
「諦めない、だから音さん‥‥音も頑張って」
「諦め‥‥頑張る、ね」
「なんか、アブソリュト辞めるのが、各所へドゴーン！ ってなるなら吹っ飛ぶ欠片から出来るだけ皆を助けたい！ だから手伝う！ もし辞め方とか皆に話す暇無いなら、俺走り回って代わりに伝える」
まだよくわからないけれども、まだ『足りない』だろうけれども何もしないでいるよりはマシと、閃は思う。
一人でやることはないんだと、言っている。
「‥‥なら、下は任せるよ。私は上へ行って、会わなくちゃ」
片割れに。
●騒乱の中で
『やりたいようにやっておいで』
そう言って、微笑んで、自分の意志を受け入れてくれたくれたユニゾン。
その存在は、大きい。
上と下の溝、どうしたら無くなるのかともやもやをずっと抱いていた。
だから、そのもやもやを消すためにもここにいる。
城下の騒ぎの中に。
そして偶然聞いた、言葉。
「何故そう思うの？」
思わず、鳴（紗綾（fa1851））は影の前に出る。
何が、と思った影はすぐに意味を、理解した。
下は上の気持ちが分からない、逆も然り。
「キミは僕達の気持ちが分かるの？」
「それは‥‥私にも分からないから‥‥分かるように、なりたい」
言葉尻をすぼめながら、鳴は呟く。
「なら邪魔しないで。この戦いが終われば済む事だから」
影はすっと通りすぎて、戦線へと向かう。
鳴は、そんな背中を見ながら思う。
今からでも、遅くないはずだと。
そして、そのチャンスはすぐにめぐってくる。
城壁付近に戻れば、どうしようといった感じで周囲をうかがう悠（悠奈（fa2726））の姿。
親衛隊ではない。
「何、してるの？」
恐る恐る聞くと、悠は振り返る。
「中に‥‥入りたくて」
そう答えが返ってくる。
鳴は、精一杯の笑顔を向けた。
「こっち」
「え？」
そして戸惑うままの悠を、連れて城壁内へと入っていく。
自分のしていることを思う、これは自分の気持ちとしてはただ反逆しているわけではない。
なんとなく、悠の気持ちを感じとって手引きしているのだ。
でも、それははたからみればどんな理由があっても反逆でしかない。
「また彗を困らせちゃうかな‥‥」
「出来ることをやるしかないの」
と、走りながら悠は呟く。
思いだすのは、亡くなった姉の、最後の言葉。
その言葉が自分の中に、ずっと響いている。
だから、伝えたい言葉を胸に、戦線へ。
「嫌な所もあるけど、この世界で生きて幸せだった人もいるってことを、伝えたいんだ！」
それは、姉の最後の言葉。
●伝えたいもの
エル（倉瀬 凛（fa5331））はヴァイオリンの音を響かせる。
反乱軍として向かったものの、皆を落ちつけようと音を奏でる。
だがそれは、まだ弱い音。
枝蓮（氷咲 華唯（fa0142））はエルを通り過ぎ、城へと向かう。
城には大切な思い出があるから壊されたくないという想いを抱いて。
「戦うことだけが解決じゃない」
大事な場所を、守りたいと思い音を奏でる。
その音に、認めないユニゾンの音が重なった。
それでも、音を奏で続ける。
音は届いても、想いは届かない。
「このあたりも、酷い」
影は、音を奏でる。
音に乗せて周りのものの体力を削っていく。
それは味方にもかかってしまうが多少の犠牲。
そんな音に、気がつく者もいる。
四天王のユニゾンである流だ。瞳を細めて、影の姿をとらえて、近づく。
「珍しい力の使い方ですね。でも‥‥それは『本来の使い方』では無いでしょうに‥‥」
オカリナの音を、止めて見上げる。
「だから何？」
影は影だ。
これが終われば架と一つになって、なくなる。
架が平和に暮らせる世界のためなら、なんでもする。
「あ、架！」
と、架を、鳴に手引きされた悠が見つける。
鳴とは、この中で一緒にいるのはまずいねと先ほど離れたばかりだ。
でも、認め合ったのだからまたきっと会えるはずという気持ちを互いに持っているのは、わかった。
そのすぐ後に、みつけた架。なんでこんなところにという感情が、走る。
そして、他にも。
「！ ボーっとしてたら危ないだろー！ お前もあっちいけー！」
危険と音に音ぶつけて、閃が二人を守る。
そして、肩越しに笑顔を送る。
「悠も来たんだ？ 俺も！」
流は危害を加えると思われたのか、まっすぐな視線をぶつけられて、苦笑しつつその場を去る。
出会ってしまった、もう隠すのは無理かなと影は思う。
それに騙し続けていれば行動に制約ができる。
話さなければ。
「あの‥‥」
「あれ、架が話して‥‥」
架は、話す。
すべて話し終わって、悠にふわりと抱きこまれた。
「貴方も架だから‥‥死んじゃ駄目だよ？」
「うん、悠の言う通り。俺もわかった」
ぽん、と閃が悠の肩に手を置くと、悠はびくっと震える。
どきどきと、鼓動が早くなるがどうしたんだと閃は、その意味には気がつかない。
それには気がつかないけれども、気がついていることはちゃんとある。
「で、悠も無理するなよ、わかってるんだからな」
姉が亡くなって、空元気なんてバレてるんだぞと閃は言う。
「じゃあ、僕やることがあるから」
悠の手を離れて、影は架は戦場へと消えていく。
「あ、悠さん！ こっちこっち！ 閃さんも勝手に消えないでー！」
呼ばれる声。
そこでは満が頑張っていた。
まだやれることは、ある。
●響かない言葉
ふっと、騒乱が一部でほんの少しだけ、おさまる。
その中に、響く声。
「無益な争いはもうやめにしよう」
身一つで前へ。
その言葉に耳を傾ける者は、いた。
「壊したその後はどうする？ 壊すことで何が生まれ何が失われる」
皆で考えていこうと訴えかけられる。
「壊したあとは‥‥上と下の存在感じ過ぎて互いの言葉が届き辛かったんじゃと思う。だから、上とか下を外して、言葉届け合う繋がりと場所を作ろ！」
閃の言葉は響く。
「全部壊す必要があるの？ 私は‥‥良いものがあると思うの」
伝えなくちゃ、と悠も前へ出る。
「生まれも立場も違う人とは本当に分かり合える事はないかも、でも何も知ろうとしないのでは今までと変わらないよね。話す事は重要！ きっとそれが第一歩」
「私も、この前まで悪者を倒せばめでたしめでたしだと思ってた」
でも、そうじゃない。
反乱軍は家族といっても過言ではない満は、苦しんでいた。
でも涙は、こらえる。
頑張っている人が、他にもいるのを知っているから。
斎の言葉には、それが分からないから皆こうなっているんだと思いながらも、皆で考えていこうという言葉は嬉しかった。
共感できるものが、あった。
だからなんとかなりそうだと思う。
けれども、落ち着いているのも束の間で、また騒乱は盛り返す。
心が落ち着いても、それは一部で、また周囲の勢いにのみこまれてしまう。
いつのまにか、斎の姿は見えない。
人の波に飲まれて、満と悠と閃は、また自分たちを互いに守りながら訴えかけていくのが精一杯だった。
「‥‥ただ一緒に歌うだけなのに、奏でるだけなのに」
上も下もなく、そうしたいだけなのに。
満は、防御の姿勢をとく。
「満？」
どうしたの、という声色。
どこか悪いのかと心配する悠に、ふっと笑む。
そして、満は歌を、歌い出す。
「あ、俺もその歌知ってる！ 届け、届け！」
「私も」
満の歌に合わせて、閃のギターの音と、悠の歌声。
小さく、流れだす。
騒乱の中で。
この歌が一つのきっかけになればと。
毎日聞いた歌、皆にも歌ってほしいと、どうかこの音が誰にも届くようにと。
気持ちをいっぱい、こめて。
その歌は、音は最初は小さく小さく、響き始める。
●音が響けば
突然、崩れる城の一部。
誰の視線もそこへ向かう。
たとえ一部であったとしても、象徴たる城の崩壊は何を意味するのか。
響く轟音。
その音に、城下にいた残りの四天王たちは上へと向かう。
本当はこの場にいなければいけないのはわかっている。
でも、それでも何かが起こったのだと、上に行かなくてはと思う。
その向かう背に、響いてくるもの。
その音の後の静けさに、歌が聞こえる。
最初は小さく、小さく。
騒ぎの中、轟音の中で響いていた歌が、やっと伝わり始める。
誰もがこの歌は聞きおぼえがあると、耳を澄ました。
『 輪に足りぬなら繋ぐように 』
足りない。
だから繋いで。
『 満たされぬなら塞ぐように 』
満たされていない。
だから塞いで。
『 知るは最善の日と‥‥ 』
繋ぎ塞いで、それを知る日は最善の日となる。
最善の日と。
届け届け、この想い。
上に響け、この想い。
上も下もないんだと。
上と下だけれども、上も下もないんだと。
「ちゃんと、ちゃんと響いた」
響く歌の中、最初に歌い始めた満は、歌を止める。
あたりの音に耳を澄まし、そして笑う。
「満、涙涙！」
「こ、これは嬉し涙だからいいんです！」
「う、私もなんだか泣けてきた〜」
音に乗せて、気持はきっと届いているはずだ。
誰もがその音を聞いている。
「ちゃんと、みんなで歌えるんだ、だからきっと大丈夫」
世界は変われるはずだ。
こうして、反乱軍も親衛隊も関係なく、一緒に歌も音も響いている。
「毎日聞いていたからこそ、かなぁ」
ありがとう、と満は誰にともなく、心の中でつぶやいた。
そして、城の上。
崩壊に巻き込まれるようなことはないとは思うが、どうなったのか、心配でもある。
●後始末
城が崩れて、戦いは止まる。
響くのは歌だけで、音だけで、違いはあれど、それぞれ抱えている思いは似たようなものだと知る。
だからきっと歩み寄れる。
後始末の、始まり。
