七夕ドラマSPアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
玲梛夜
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
07/07〜07/11
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●本文
会議室に男三人。
話の内容は七夕。
「IFって感じでドラマ作りたいんだよな‥‥」
「おうおう、どんなのだ」
「七夕で‥‥彦星が意気地なしで川渡れないとか」
「‥‥あの、仕事の話を‥‥」
「してるじゃねーか」
「はい‥‥」
上がそういえばその通り。上下関係には逆らえず新米は黙り込む。
「意気地なし彦星‥‥織姫の尻にしかれてそうだな」
「それはお前だろうが!」
「はっはっはっ! その通りだ!」
話が進んでいるようなそうでないような。
会議はぐだぐだに進み、ドラマのストーリーは決まっていく。
ドラマあらすじ
一般的な織姫と彦星伝説のストーリー、なのだがこの話の彦星は非常に意気地なし。
意気地なし彦星は織姫の下に無事たどり着けるのだろうか。
役者募集
彦星、織姫、その他
それぞれのもつ性格、個性は役者それぞれに一任。ただし彦星は『意気地なし』がつく。
その他、は付け足したい登場人物(従者など)を役者で提示すればやって良し。
補足
ドラマのあらすじについても、登場人物の立ち位置などを踏まえて無理のない範囲での変更は可能。
ただし、ラストで二人が出会うという方向性は変えない。
衣装についてはそれぞれの希望を最大限叶えるよう努力するが、一般的範疇からは外れないように。
撮影クルーはこちらでほぼ用意だが、関わりたいと思う方がいるなら、役者以外の方、たとえば小道具、メイク、演出等の協力者も歓迎。
●リプレイ本文
●打合せ
ある会議室、そこにスモーキー巻(fa3211)はいた。
「BGMは、こんな感じです。あと衣装も希望を聞いて纏めておきました。全体的に中国風の着物です」
「いやぁ、スモーキー君、ありがとう」
「働き者がいると我々はサボ‥‥安心していられるよ」
衣装についてを纏めた書類とBGMの入ったCDを受け取りながら、スタッフ古参二人組は言う。
「そうだ、中国琵琶を使いたいので用意できませんか?」
「おー、中国琵琶ならどこかにあったな‥‥あ、これ台本だから皆によろしくっ!」
ばさっと人数分の台本をどこからともなく出して彼らはスモーキーに渡すというか、押し付けた。
「皆キャラがたってて楽しみだ。うん、どんな性格設定か皆に決めて貰ってよかった! しっかり子牛も探してきたしな!」
「おう! じゃあ当日はよろしくっ!」
ノリの軽い二人はスモーキーに満面の笑みで、そう言うのだった。
●彦星、川へ
一年に一度、出会える彦星と織姫。
今日は丁度その日だった。
なのだが。
「織姫に会いたいなあ‥‥でも怖くて天の川なんて渡れないよ」
はぁ、と溜息をつきながら彦星(西村 哲也(fa4002))は天の川を目の前に座り込み愛牛を愛でていた。
「でも‥‥コベコどうしよう、どうしたらいいかなぁ‥‥」
ちょっと情けなくもあるコミカルなバックミュージックに乗せて彦星がコベコに悩みを延々と打ち明ける。
凛々しい風貌とはウラハラに、性格はとても、意気地なし。
「そうだ、困った時は‥‥」
頼るのは一人しかいない、と彦星は親友の所へと向かった。
「煌〜!!」
心地よく琵琶の演奏をしていた時に響いた声。
煌(ラリー・タウンゼント(fa3487))はその手を止めて顔を上げた。
そこには襟はずれ、帯の外れかかる濃紺の着物姿の親友。
煌は彦星が傍に来るとまずそれを直した。
「煌、ありがとう」
「いつもの事だ‥‥で、今日は何だ?」
半ば呆れながらも煌は彦星に尋ねると、彦星は期待を込めた視線を送る。
「か、川が渡れないから一緒に‥‥」
「‥‥」
煌はそのお願いに一瞬固まった。今まで頼られっぱなし、ずっとフォローをしてきたがこれではいけない、時には突き放す事も大事だという考えが頭をよぎる。
「彦星」
「何?」
「愛する者の気持ちを掴みたいのならば、私に頼らずに行動する事も大事ではないか?」
「一緒に行ってくれない、の?」
「いい加減しっかりしろ、じゃあな」
彦星に背を向け、煌はまた琵琶を手に演奏を始める。
彦星は何度も名前を呼ぶのだけれどもやがて振り向かないと悟ったのか、とぼとぼと去って行った。
その背を、心配そうに煌はちらりと瞳の端へ移す。
「これで彦星も多少はしっかり‥‥」
また弾き始めた琵琶の音色は煌の想いを表すかのごとく、乱れるのだった。
そんな煌の想いなど全く知らず、彦星はまだ悩んでいた。
「どうしよう‥‥コベコ、どうしたらいいのかなぁ‥‥」
「ここにいたのね彦星!」
と、ちょっと哀愁漂う彦星の後姿を見つけやって来たのは蘇芳色の着物を纏った彦星の姉である月華(桜 美琴(fa3369))。
「姉様‥‥どうかされたのですか?」
「どうもこうも、今日は向こう側に行く日よ?」
「でも‥‥」
「でもじゃないでしょう。ほら、愛する人がいるのよ?」
「そうだけど怖いし‥‥」
ヘタレ全開の弟を見て月華は小さい時に甘やかしたせいかしら、と呟く。けれども彦星の背中を押して、とりあえず川を渡らそうとする。
「行きなさい、ほら」
「嫌です! 姉様そんな性格だから年増になって嫁き遅れるんですっ!」
その言葉に、月華の理性がぷつーんと。
「な・ん・で・すっ・てぇー!!」
「痛っ! 姉様、うわ、うわあああ!!」
月華の、弟への愛情が炸裂。
げしっと彦星の背中に豪快に蹴りを。
そして蹴りを食らった彦星はというと、天の川へばっしゃーんと派手な音と共に落ちたのだった。
「丁度いいわ、そのまま行きなさい!」
「無理、無理です姉様!」
「行きなさい!」
戻ってきたら蹴るわよ、という勢いで言われ、彦星は心を決めて天の川を渡り始めるのだった。
●織姫、待機中。
「へぇ、恋人が来るのか‥‥」
「そうらしいですわね。でもこのわたくしを待たせるなんて‥‥反対に驚かしにいってやろうかしらね」
友人、都(シヴェル・マクスウェル(fa0898))との午後のひと時。ツーンと済ましたイメージの曲の中、織姫(楊・玲花(fa0642))は彦星を怒っているようなのだが、本当は嬉しく、何時もよりかすかに表情は緩んでいた。
「姫様〜、だめですよぅ、幾ら早く会いたいからって彦星様と行き違いにでもなったらぁ〜」
と、従者であるサラサ(春雨サラダ(fa3516))が嗜めると織姫はキッと表情を鋭くする。
「‥‥何の事ですの? 早く会いたいなんて事ありませんわ。わたくしの行動に口を挟むなんて、ずいぶん偉くなりましたわね」
きっと視線をきつくして織姫は言う。まぁまぁ、とその場を都がとりなして。
「それなら見てきてあげよう」
「え、都!?」
織姫が止める間もなく、都は彦星を迎えに出る。
その道中で、都は一つ、思いつく。
「ちょっと誘惑して遊んでみようか‥‥」
都はニヤリ、と笑い彦星を待ち構える。
その頃彦星は、川を渡りきり息も絶え絶え、こうなったら行くしかないと腹を括った所だった。
びしょ濡れのままとぼとぼと歩く。
と、妖しげな雰囲気の曲の中、都は薄く透ける衣服の裾をちょっと捲り上げ、彦星へと意味ありげな視線を送る。
「お兄さん、お暇?」
「お、俺?」
辺りを見回しても自分しかおらず彦星はオロオロと周囲を見た。
「お兄さんとお茶でも、と思っているんだけどどう?」
「え、お茶ですか? 是非、ええ、是非」
声をかけられて嬉しいらしく、彦星は即答する。これから織姫の所へ行くなんて事はするっと頭から抜けてしまったようで。
彦星は笑顔で都の方へとやってくる。
「何のお茶を飲みますか?」
「そうだね‥‥」
「お茶を飲みながら何を話しましょう。そうだ、俺、牛の事なら良く知ってるんですよ。可愛いですよね、つぶらな瞳がこう‥‥胸をキュンとさせて‥‥それで」
と、嬉しそうに延々と彦星は牛についてイキイキと語りだす。その様子に都は、困って苦笑する。
「あはは‥‥ヘタレだな‥‥」
「何か?」
「何でも。あ、そういえば用事を思い出した。また縁が会ったら」
「あ、はい。またご縁があれば‥‥」
じゃあ、と意味あり気な笑顔を都は向け、そそくさと彦星の元から退散。
そして彼より先に織姫の所へ、と走る。
そのころ織姫は、というと‥‥都の帰りをそわそわと待っている状態で。
「遅いですわ‥‥」
心中は、穏やかではない。
「ただいまっと‥‥こっちに来てるよ彦星」
「そう‥‥」
そっけなく答えるものの、織姫の心は嬉しさで一杯だった。
だったのだけれども、そこへ都が水を差すようにあった事、を告げた。
それは織姫にとって、よろしくない事で、もちろん機嫌も悪くなる。
そんな様子をスズ(桐沢カナ(fa1077))はにこにことただ見守っていた。
主人である織姫は怒っているけれども、それはちょっとした事だと思いつつ。
●彦星到着、そして
「とうとう、ついた‥‥お、織姫‥‥」
躊躇いがちに彦星は織姫の家へと入る。
「遅くなって‥‥」
「帰ってくださいませ、お会いする気はございません」
つーんと冷たい声に、彦星はオロオロとする。
今この場には二人しかいない。という事は、自分にはとっても優しいはずなのに。
と、かたんと物音がした方向を見るとそこには‥‥
「あ、さっきの‥‥」
「また会ったね。織姫の友達の都っていうんだ、よろしく彦星」
「はい、ええと‥‥」
どういう事、彦星は首をかしげる。
それと同時に、織姫の静かな声が響いた。
「浮気なさったそうですね。わたくしというものがありながら‥‥」
「う、浮気? 浮気なんて‥‥」
「なさったでしょう、都と」
「え、あれ、あれって浮気!?」
もごもごっと言葉を上手く出せずにいる彦星。
そこにのんびりとスズの声が響いた。
「あら〜彦星様はよほど織姫様にお会いになりたかったんですね〜。都様を織姫様を見間違うなんて〜」
「え、うん、そうそう、そうなんだよ織姫」
「嘘を言わないでください。ああ、もう出て行ってください!」
「でも‥‥でも、織姫!」
「はいはい、出て行った出て行った」
まだよく状況が理解できていないような彦星は、追い出されぴしゃりと閉められた扉を何度も叩き、織姫の名前を呼ぶ。
けれどもそれに織姫は取り合いはしなかった。
やがて彦星の声は止み、しんと静かさだけが残る。
「‥‥いいの? 放っておいて」
「いいのですわ、あんな人」
つーんとする織姫の下にサラサが近づきはらはらとした表情で言う。
「姫様〜、素直になりましょうよぅ〜、彦星様、きっと泣いてらっしゃいますよぉ」
それに織姫はそうでしょうね、と言うだけで。
そんな織姫に、スズはお茶を差し出す。
「織姫様〜そんなに怒っていると体に悪いですよ〜。お茶を飲んで落ち着いてください〜」
「‥‥そうね」
織姫はその出されたお茶を一口。そうしているうちに心も落ち着いていく。
と、そんな織姫の横で都はぽつりと、呟いた。
「まあ、あの様子じゃ帰りの川に身投げしててもおかしくないよな」
「身投げ!?」
身投げの言葉に織姫は反応し、そして手にしていた茶を置くと立ち上がる。
表情には出さないようにしているのだろうけれども、心配でたまらないといった様子で立ち上がり、そして家を出る。
慌ててサラサはついていくが、都とスズはのーんびりとそんな様子を眺めていた。
「ま、そんな度胸がある男かは見ての通りだろうが」
「さすが都様〜織姫様の事をよく理解しておいでですね〜」
都は肩を竦めて言い、スズはにこにこと笑顔だった。
●天の川で
ちゃぱちゃぱと愛馬、ならぬ愛牛にのって月華は天の川を渡っていた。
蹴り飛ばして渡らせたものの、やはり彦星が心配でならない。
と、川を渡り終えたところで月華は幼馴染であり彦星の親友である煌を見つけた。
彼の姿は、普段着で何やら慌てて馬に飛び乗ったのでは、と思えた。
「あら? 貴方も心配して来たのね?」
「別に‥‥私は遠乗りに来ただけだ」
煌はそっけなく答え、月華はそんな様子に少し、笑った。
「あ、彦星‥‥」
巡らせた視線の先、煌はどうやらまた泣いているらしい彦星を見つけ行こうとしたが、その足を止めた。
何故ならば、織姫が彦星の傍へやってくるのが見えたからだ。
「煌、隠れて見守りましょう!」
月華は煌を繁みに引っ張り込み、そこから彦星の様子を伺った。
彦星は、というと泣きながら、また川が渡れないとオロオロしていた。
「川‥‥また川‥‥でも‥‥」
時々べそべそと、まだ出そうになる涙をぬぐいつつうろうろオロオロ。
「彦星」
「え‥‥」
名前を呼ばれて振り向くと、そこには織姫が。
ちょっと決まり悪そうにそこに立つ彼女を見て、彦星の涙腺は一気に緩んだ。
「ご‥‥ごめんなさい織姫、ごめんなさい、ごめんなさい。でも‥‥でも好きなんです、好きです、ごめんなさい好きです!!!」
泣きながら走りより、怒涛の勢いで縋り付き、そして『ごめんなさい』と『好きです』を繰り返す彦星を、織姫はそっと抱きしめた。
「‥‥まったく。しょうがない人ですわね。あなたが格好悪いのはいつもの事ですから、少々の事は諦めてますわ」
「う‥‥本当、に‥‥?」
「‥‥とりあえず涙をお拭きになって。あなたが会いに来てくれると言ってくれて、ちょっぴり嬉しかったですわよ」
織姫の言葉ににこっと彦星は笑う。
「‥‥進歩がないわ」
「彦星だから‥‥」
繁みからこっそり見ていた二人は溜息半分、まぁよかったかという想いを持つ。
と、彦星が気付き織姫の腕から離れ、走り出す。
「え、彦星?」
「煌〜!! 俺ちゃんと織姫に会えたよー!!」
「‥‥みつかった‥‥」
がさがさと繁みから出て、煌は飛びついてくる嬉しそうな彦星を受け止めた。
「頑張った甲斐があったな」
「実の兄弟みたいねぇ‥‥いえ、それ以上だわ」
その様子に月華ははちょっと遠い目をし、その言葉に煌は赤面し、俯いた。
そしてそんな様子を見せ付けられている織姫は。
「な‥‥わたくしの事を好きと言っておきながら、あの態度はどういう事ですの!」
「まぁまぁ、落ち着こう織姫‥‥」
「み、都っ!」
実は傍でしっかりと今の様子を見ていた都、そしてハルサとスズの二人も出てきて。
都は織姫の肩を叩きながら笑いをこらえていた。
「でも姫様〜、一応彦星様とお会いできたしよかったですぅ〜」
「それはそうなのだけれども、でもっ!!」
イライラとする織姫をみてか、月華は彦星を見る。すると視線があって、にっこりと、彦星は笑みを向けた。
「次は姉様ですね!」
「お・お・き・な・お世話よっ〜!」
月華は盛大に蹴りを一発、ご祝儀代わりとばかりに彦星へ。
「端から見ている分には面白いが‥‥大変だな」
「都だってかき回したでしょう」
「ま、退屈はしないだろう?」
織姫に睨まれても都はそれを流し、そして笑う。
「皆様‥‥お疲れさまです〜。取って置きの玉露があるのですが〜いかがですか〜?」
と、どたばた雰囲気の場に響いたスズの声。
いつの間にか天の川のほとりには全員がくつろげるようにお茶のセットが。
誰も断る理由なく、そこで一服。
コミカルな音楽流れる中、茶会が終るころには、彦星と織姫の仲はちょっとだけ、ほんのちょっとだけ進呈。
彦星と織姫はこの後、相変わらず周囲に心配されながら、幸せになりましたとさ。