Fauvisme―Scaleアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
玲梛夜
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
10.4万円
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参加人数 |
15人
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サポート |
0人
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期間 |
08/22〜08/26
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●本文
感覚を研ぎ澄ませ。
捕らわれず、自由に使われるべきだ。
流れる音に決まりはない。
理性なんていらない。
共に歌う、共に奏でる。それだけでいい。
それだけで、幸せで楽しい。
自分の半身をみつけたら、世界の色が変わっていく。
遠い遠い未来の世界。
世界は音で支配されていた。
その世界の中心は『アブソリュト』というユニゾン。
そしてその下の四天王、親衛隊。
治安を守り、支配する彼らは、人々にとって善でもあり悪でもある。
世界を覆すには、きっかけが必要だった。
●ストーリー
その時聞こえた歌が全部、終わらせたのだと言ってもいい。
いつも聞こえていたその歌は、静かに、そこに暮らすものたちに浸透していた。
その争いが終わって、一週間がたつ。
アブソリュト、階級といったものはまだ存在していた。
けれどもそれがあるが、ない状態で彼らはそれぞれの距離を詰めていた。
あの日から、今までの日々とは少し違う、平和な日々が始まっていた。
四天王とアブソリュトはこれからを話しあった。
一般階層も面々も、どうしたいかを形にする。
そしてそれを、今日は一つにする日なのだった。
●出演者募集
『Fauvisme』では出演者を募集しています。
今回募集中は『四天王』『親衛隊階級』、『一般階層の面々』です。
『一般階層の面々』→『親衛隊階級』へのチェンジは可能。『親衛隊階級』→『四天王』へのチェンジは役者同士の相互了解を持って可能。欠員での補充、下克上などのような形で可能。
なお、実は『親衛隊階級』でした、というのも可能。
『一般階層の面々』→『四天王』へのクラスアップは現在ありません。
『四天王』補足
四天王は必ずしも『ユニゾン』であるということはありません。その一人だけで普通レベルの『ユニゾン』とはれるくらいの力があります。
四天王ABCDがいるとしてAとBはユニゾン同士、Cは一人身、Dはユニゾン持ちだが相手は親衛隊、一般階層という状況は有です。身分違い、敵同士などもOK。
なお、四天王には通称のようなものがあります。ユニゾンとしてもつ通称と、個人として持つ通称です。
現在四天王状況
『アニカ、黎』『シルフィード、嵐』『イノセント、静』『アイス、蛍』
※『一般階層の面々』中に四天王クラスの力量持ちが一人いても良い。
●補足
『アブソリュト』
・世界を支配する二人組通称。
『ユニゾン』
・対となる二人。考えなどは違っていても、体の奥底に流れる音は同じ。
・出会えば自らの持つ力を飛躍させることができる。
・力の飛躍は個人、能力の方向性が違っていても、互いに認識できる範囲内(可視範囲)にいれば極限まで引き上げ。どちらか一方が歌っているという状況などでも引き上げ。
・歌×歌、歌×楽器、楽器×楽器と表現方法は三つに分かれる。
『音の力』
・自分の奥底に流れる音を理解し、奏でる事によって破壊、創造という力を持つことができる。ただし持てるのは一つの能力のみ。
・音の力同士をぶつけ合う場合、この能力は互いにかき消され合い使用できない。
・この音の理解の切欠は人それぞれ。ふいに気がつくこともあれば、いつの間にか、と様々。
『侵食』
・ユニゾンである者が組み第三者に力をぶつけること。音同士をぶつけ合い起こる現象。物理的な衝撃は無しだが精神的衝撃はありうる。破壊ではなく飲み込み、相手を丸め込み傘下におさめるイメージ。ただし、勝負は一度負けたからと言って次も負けるとは限らない。
『この世界観での暗黙の了解』
・『ユニゾン』は『個人』に仕掛けはしない。
・『ユニゾン』か『フリー』かは、勘のいい人はわかるもの。
・『ユニゾン』は二人目まで存在する。
長くなるため必要最低限と思われるものしか記載していません。
他、何かあれば答えます。
●リプレイ本文
●陽の光
壊れた城は少しずつ修復されていた。それは花壇も同じで世話をする嵐(雛姫(fa1744))の心が現われているようだった。
「嵐様! お疲れ様ですっ!」
嵐に挨拶を陽(姫乃 唯(fa1463))は元気にする。
「ありがとう。そうだ‥‥今度一緒にご飯食べませんか」
「え‥‥はい!」
いつかの日のことを思い出して嵐は微笑む。
「嵐様、そろそろ時間です」
と、花壇へとやってきた斎(橘川 円(fa4980))。
彼女の胸に、嵐は花を飾る。
今日一日頑張ろうという想いをこめて。
「おっはよー!! 早くしないと始まるゾー! あ、弁当忘れた!!」
そして、もうすぐだと知らせに走る閃(天道ミラー(fa4657))。
城下から、人がやってくるのを知らせながら通り過ぎる風だ。
枝連(氷咲 華唯(fa0142))は晴(大海 結(fa0074))に見つかりうんざりしながら、やってくる。
「先に皆さんは言ってください。私は片付けをちょっとしてから行きます」
嵐は斎たちを先に送り出して、片付け。
そこへ影が一つ落ちる。
何をしているの、と悠(悠奈(fa2726))が覗きこんで。
一方、城下から向かう者がいれば、城から出てくるものもいる。
「四天王として最後の仕事かもしれません‥‥つべこべ言わず行くのよ、天邪鬼!」
図書室から蛍(千音鈴(fa3887))にひっぱりだされた静(玖條 響(fa1276))は、気になることを問う。
「蛍は四天王続けんの?」
「静は?」
「必要であるなら続けるし、必要でないならやめる。流といられれば何処でもいいし」
「アブソリュトを支える必要がなければ、やめるわ。でもこれから自分に何が出来るかが未だ分からないから知りたいし、見つけたい」
「あのさ‥‥流が、俺と蛍は似てるって。似てるならさ、仲良くなれると思うんだけどどう?」
「‥‥何か悪い物でも食べたの?」
蛍は首を傾げつつもまぁいいかと言う。
もうすでに、集まっているものはたくさんいる会議をする予定の場所。
「あ、斎。あのさ、嵐とは一緒じゃないわけ? ってか嵐はどこにいんの?」
「嵐様はもうすぐ参ります」
「ふーん」
嵐に用があった静は、斎を見つけて問う。
その答えに完全に納得はしないまま、自分の席へと向かう。
そして、人が集まり、ざわめきが広まっていく。
●それぞれの
「!」
満(南央(fa4181))はある二人の姿を見つけて走る。
「勝手な事ばっかり‥‥怒ってるんだからね!」
怒鳴ろうとした想いは詰まり、ボロボロと涙とともに満は自分の気持ちを音と黎(明石 丹(fa2837))にぶつける。
「ごめん、ごめんね。ほら鼻ふいて」
服の端で拭いちゃえ、となる音に、黎がティッシュを差し出す。差出ながら満の頭を撫でる手には、驚きながらもごめんねの気持ちを含めて。
「でも、無事でよかったぁ」
二人まとめて、満は抱きついて。そしてそれが収まれば、すっきりしてまたあとで、と自分の席へと走る。
その満が駆け寄った先に、いる男をみて黎は瞳を細める。
篝(佐武 真人(fa4028))、反乱軍のリーダーだ。ふと視線は交わって、二人ともお前か、と互いに知っているぞと無言で意思を交わす。
「黎様、そろそろです」
「うん、ありがとう」
古い顔なじみで信頼するものでもある冬(ミッシェル(fa4658))に促されて黎は自分の席へ。それと同時に、満に声をかけ背中を押す篝。
これから、を話すための会議が始まる。
それぞれ、意見がぱらぱらと出始める。
嵐の示した身分関係なく平等に診てもらえる病院の新設は、悠の心に響く。
閃は互いに何をしているのか分かりやすくするための回覧板作り、そして音と歌での交流を案として出す。
前に進むための案は、拍手で迎えられてゆく。
だが一番メインの問題は、これから。
今ある体制をどうしていくか。
今ある、親衛隊、四天王、アブソリュトがどうなっていくのか。
親衛隊から、ということで陽は辿々しいながらも自分の想いを口にする。
「きっと理解しあえると思うんです。自分達の力で頑張って行きたいって皆が思うなら。階級はなくていいし、あたしも親衛隊からは退きます。親衛隊の立場じゃなくても。今はまだ見付けられないけど、この世界の為に出来る事、きっとあると思うから」
言い終わって、陽は一息。
そこに篝がたちあがる。
「俺達は満だから止まったんだ。お前らの言葉に納得したわけじゃない」
この平和は仮初だと、今の現実を伝えていく。
「反乱を起こすにも体力がいる‥‥今はただズタボロで誰も動けないだけだ。上下がどうこうより、力のあるやつはその使い方を間違うなってことだ。俺が言えた義理じゃないがな」
篝の言葉には力がある。
今まで反乱軍を率いていてきて、失った仲間も多い。
彼らを悼むために全身黒衣、そして鋭い眼光は威圧感を持つ。
篝だからこそ言える言葉が、響いてそれぞれの気持ちに落ちていく。
言葉を伝えた篝は、再び席に座り、満へと視線を投げる。
さぁお前が伝えろというように。
満は、それを受けて伝えるべく立ち上がる。
「親衛隊、四天王をなくすのではなくて、これからの枠組みとして利用できないかと思います。今は新しい組織を作っているだけの余裕がないのは、どちらも同じだと思います」
さきほどの、篝の言葉もあり、満の言っていることの意味を、理解するものもいる。
「その為にも」
一呼吸、溜めて満は、音や律、四天王たちをすっと、見る。
「親衛隊のゆきすぎた行為を無視せず規制する約束が『上』の人間からも欲しい」
「それじゃあ、その約束は僕が形として、誠意として表わそう」
ゆっくり、でもしっかりとした声が響く。
その声の主は『アニカ』としてある黎。
「でもその前に」
黎は律と音の方を見る。
「何代も、支配者で柱で重しで‥‥受け皿で、二人にも思う事はあるでしょう」
「音、ただ支配してたわけじゃないでしょ? アブソリュトと世界との関わりを教えてほしい」
黎の言葉を聞いて、満も問う。
そして、全てのものから集まる視線にアブソリュトの二人は視線を合わせた。
「世界にある音は一つじゃない一人じゃない、二人が背負う物も分け合う事が出来るんじゃないかな?」
「そうだな、皆も、知るといい」
二人は言って立ち上がり、そこにいるもの全員、見渡した。
●意味
思うことが正しいかどうかは、誰にもわからない。
だから間違う。
「今はもういないけど昔は音狂いがいた」
何故かは分からないが自分の音が狂っていく人。狂いは酷くなれば、全てを壊すものだった。
最初にアブソリュトと呼ばれた者はそれを消そうとした。
でもアブソリュトがいる意味も、最初とは変わってしまっているはず。
「私は狂いをある周期で無にしてた。でもそれをやりきれなくなった」
「音の能力を超えたものは俺が変えたが、それは音にとって毒で」
次にアブソリュトに成りえるものを探したけどいない、どうしようかと思っていたら反乱。
完全でなくても世界を変えてればと思ったけれど、止められたからねと音は言って、満に笑みを向ける。
「アブソリュトの仕事が無くなれば昔に戻るだろうがすぐそうなる事はないはず」
時間が有り余っているわけではないが、急ぎすぎる必要もない。
「音狂いが出てこないとそれがどんなものか分からないけど」
「これも上と下とのありようと一緒に考えてほしいな」
もしかしたら昔と違って音狂いは生まれないかもしれない。
それはまだ、わからない。
「泣いてくれる子もいるし、私は歌わない事にした。自分勝手だけど、世界の狂いはもう正されない。世界の狂いは少しずつ溜まっていく」
「俺達も人任せなところは、あったが‥‥自分が大事なのは誰でも当たり前なのはわかっている」
「でもちょっと、好き勝手しすぎたね。私たちもその責任の一端だ、良い方向に向くようにしていこうと思ってる」
「もう大丈夫だと誰もが思えるまでアブソリュトが必要ならそのままでいることにした」
「アブソリュトをどうするか、っていう話はないけど、またおいおいね」
これで、一通りかなと音は言う。
そして、黎が口を開く。
「その責任の取り方の一つとして、僕は、四天王を降りようと思う」
今まで、四天王としてずっとあった『アニカ』がいなくなる。
それは長年続いていた世界が変るということだ。
反乱軍の持っている反発感情を少しは抑えることができるだろうという思いと、葎と音の今後を考えて、動きやすいようにと思ってのこと。
「でも空いた席を巡って争いが起きることは望ましいことじゃない。僕の後には‥‥冬に、入ってもらいたいと思っている。数年、地方にいたけれども、真面目で、理解力もある」
冬、と呼ばれて立ち上がった青年。
丁寧に礼をして、口を開く。
「四天王に立つという責任を果たすため、尽力することをこの場で誓います。上下で隔たりが産まれるのは避けれないことかもしれませんが、支える人がいればこそ、私もまたその人達を支えていきたいと思います」
真直ぐ、その意思を伝えた冬に、拍手が送られ始める。
それはいつの間にか、全体へと広がっていた。
そしてその拍手とともに、会議は終わる。
会議が終わればそれぞれ、想いを抱えて動き出す。
「御苦労さん、満。俺は先に帰る」
「はい!」
篝は満を労い早々に、家族の元へと帰途につく。
満は、少し考えて、黎の所へと走った。
●得たもの
「どうしてそんなに嫌なのかがよくわらないんんだよね」
「性格」
会議が終わって晴は枝連を追いかける。
追いかけて、諦めないと伝えてついて行く。
そのしつこさに枝連は溜息をつく。
「積極的にいくしかできなかったんだよ」
「一緒にやるかどうかは考える」
その言葉に晴は喜んでこれからも頑張ろうと思う。もう一つの目標、四天王になることも。
そしてこの傍で、悠は閃へとお弁当を渡す。ここしばらく続けていたその行動の意味を、ニブチンの閃はまったく気が付いていない。
それでも、気がつけという想いをこめて悠は作る。
「あぁ‥‥行っちゃった」
渡して、すぐ走っていく閃。けれども。
「ありがとなー!!」
少し走って、閃は振り返って悠に言葉を向ける。
その言葉は悠の顔を無意識に綻ばせる。
「うん! また後で!」
閃を見送り、悠は視線を巡らせる。すると話をしたいと思っていた者の姿。
「あの‥‥この前はごめんなさい。親衛隊という理由だけで話しを聞こうとしなかったから‥‥切欠をくれて有難う!」
「私の拙い呼びかけに応えてくれてありがとう」
声をかけられた斎は微笑む。
また話をしようと互いに言葉をかわす。
そこへ、嵐がやってくる。
会議前に、会っていた悠と嵐。
嵐は、花が好きなのと問われて、すぐ答えられなかった言葉を伝える。
「花は大好き‥‥昔、親切にしてくれた方が、花の力で支えてくれたんです。でも、私1人ではその方を助けられなかった‥‥」
だから。
「貴女の力、貸して下さいませんか?」
花の話に、悠は少し表情を変えていたが、その言葉には笑みを返す。
「貸す借りるじゃないよ『一緒に頑張る』んでしょ?」
「はい、一緒に!」
気持ちを合わせた二人を、斎は笑んで見守る。
「いた。お疲れ。あんたのボケで皆に迷惑かけてない?」
「静様」
珍しく外へ出てきていた静は嵐たちをみつけてやってくる。
ほらやる、とぶっきらぼうに渡された花を嵐は受け取り驚きながら大喜び。
「いらなくても返すなよ」
「‥‥何か‥‥大人げないなぁ‥‥」
静の態度に漏らした言葉、静は悠に応戦する。
「何? そういうこと言うお前も大人げない気がするけど」
そして嵐は。
「お2人とも仲良しさんですね♪」
『違う!』
ずれた言葉に、否定が重なって響いた。
そして、そんな様子をほほえましいと斎は見ていたのだった。
●響
「あの‥‥四天王やめるなんて驚いちゃった」
「そうすることが一番だと思ったから」
運よく崩れなかったテラス。
そこに黎と満は今いた。
「歌、教えてほしい。歌って」
「満には満の音がある。ユニゾンでなくても確かに響くその強さが」
黎の歌声が響く。
それに満も、声を重ねる。
そして、その声に気がついて、テラスを訪れるものもいた。
気がついて、黎は歌うのを一度止める。
「嵐‥‥ごめんね」
「いいえ」
笑顔で答えるが、我慢しているものは大きい。
黎はそれをちゃんとわかっている。
「頑張ったね」
「‥‥ぅ‥‥お、おかえり、なさい」
我慢していた涙が溢れだす。
黎は嵐の頭を撫で、そしてもう一人へと言葉を向ける。
「おいで」
隠れているのは知っているから、声を重ねていたのは知っているからと。
呼ばれて、蛍は恋人の形見の竪琴も一緒にテラスへと向かう。
いつものツンとした表情はなく、とても自然に、でも少しわたわたしながらまだ素直になりきれないところを見せる。
そしてまた、歌い始める黎に、それぞれが声を重ね始める。
『 輪に足りぬなら繋ぐように
満たされぬなら塞ぐように
知るは最善の日と‥‥ 』
響く歌に、黎は頬笑みを浮かべて一つ言葉を足す。
「――在るは己が為で無し」
そして、そのフレーズが、また歌として、響く。
『 在るは己が為で無し 』
●終って始まれ
「歌ってるな」
歌声は音と葎のところにも届く。
「うん、いい歌。ねぇ、満みたいな子がさ、もっといればいいね」
「ああ」
「前向きもいいね」
「ああ」
「さっきからああしか言ってないね、葎」
音は笑う。
そして言う。
結局世界は、簡単には、すぐには変わらない。
ただ、変わる切欠を、得ただけにすぎないと。
どうなるかは、これから次第。
「本当に、『在るは己が為で無し』だね」