Fauvisme―LiBeRTY1アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 玲梛夜
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/07〜09/11

●本文

 感覚を研ぎ澄ませ。
 捕らわれず、自由に使われるべきだ。
 流れる音に決まりはない。
 理性なんていらない。
 共に歌う、共に奏でる。それだけでいい。
 それだけで、幸せで楽しい。
 自分の半身をみつけたら、世界の色が変わっていく。

 遠い遠い未来の世界。
 世界は音で支配されていた。
 その世界の中心は『アブソリュト』というユニゾン。
 そしてその下の四天王、親衛隊。
 治安を守り、支配する彼らは、人々にとって善でもあり悪でもあった。
 世界を覆すには、きっかけが必要で反乱もあった。
 今は、世界は少しずつ違う形へと、変化している。

●ストーリー
 会議から、一か月後。
 日々は緩やかに、流れている。
 壊れた街は少しずつ、少しずつ治されていった。
 落ち着き始めた日々の話。
 上と下と、それぞれの理解を深めようと、音楽祭が開かれることとなった。
 ただし、音のぶつけあいなどを起こさないために、楽器で奏でるものは歌で、歌で奏でるものは、楽器で、となった。

●出演者募集
『Fauvisme』では出演者を募集しています。
 配役は世界観を壊さない程度で自由に設定可能。
 四天王などの肩書継続も可能。

●補足
・音楽祭とは、それぞれが音を、奏でていく、ただそれだけのこと。
 歌で能力を発揮するものは楽器、楽器で能力を発揮するものは歌で、という方向性になる。
 なお、音楽祭といいつつも、歌うことはともかく楽器は簡単なもの以外難しいと思われるので教えあいっこなどもあり。
 かなりフリーなものとなっている。
 この祭の狙いは、互いの距離を縮め、仲良くなっていくことにある。
・アブソリュトの二人は、今回、どこかに行っています。次回帰ってくる予定です。なお音と葎はいなくなる旨をちゃんと色々な人に伝えてあります。

●今回の参加者

 fa0074 大海 結(14歳・♂・兎)
 fa1276 玖條 響(18歳・♂・竜)
 fa1744 雛姫(17歳・♀・小鳥)
 fa2712 茜屋朱鷺人(29歳・♂・小鳥)
 fa2726 悠奈(18歳・♀・竜)
 fa3887 千音鈴(22歳・♀・犬)
 fa4181 南央(17歳・♀・ハムスター)
 fa4657 天道ミラー(24歳・♂・犬)

●リプレイ本文

●始まる音楽祭
「おはようございます」
「!?」
 蛍(千音鈴(fa3887))は後からかけられた声に驚き、振り向く。
 そこには青い花をもった嵐(雛姫(fa1744))が笑顔で立っていた。
「歌、届くといいですね」
 鳩が定位置とばかりに嵐の頭に降りる。
 歌っていた姿を見られた蛍は恥ずかしいのと同時に、あることを言わなければ、と思う。
「あの‥‥お、お花いつも有難うございますっ」
 もじもじ口ごもりながらいつも部屋においてもらっている花の礼を言うと嵐は笑顔を浮かべた。
「喜んで頂けて嬉しいです。またお持ちしますね」
「楽しみにしています‥‥っ」
 蛍はぺこりと、耳まで真っ赤な状態で頭を下げる。
「今日も一日頑張りましょうね」
 自分たちの生み出す音が、すべてに届くようにと思いながら。
「それではまたあとで」
 言って、嵐はその場から去る。もう一つ、日課をこなすために図書館へ。
 そこでは静(玖條 響(fa1276))がいつものように、引きこもっていた。
 そんな様子に、嵐はこのままじゃダメだと思う。
 今日はせっかくの音楽祭。外に出た方が良いと思う。
「静様、今日は音楽祭があるのですよ」
「音楽祭? 何か聞いたなぁ、あんた楽器弾くだろ? ボケでも出来る楽器やるよ」
 そう言ってどこからか静が取り出したのはリコーダーだった。
「‥‥静様ったら‥‥音楽祭に一緒に行きませんか? 私にリコーダーじゃなくてフルートを教えて下さい。ね?」
「えぇ?」
 最初はあんまり行きたくない、といった顔をしていた静だったが、嵐に絆されて「なんで俺が‥‥」とつぶやくところを、連行される羽目になった。
 広場や城内、そこかしこでもうすでに音楽祭は始まっていた。
 耕作(茜屋朱鷺人(fa2712))の三味線の音が響く。
 他の者に業を教わっているその横を閃(天道ミラー(fa4657))は悠(悠奈(fa2726))の手を引っ張りながらすぎていく。
「音がいっぱいで楽しいな!」
「そんなに引っ張らないでよ〜」
 繋がれた手。
 嬉しいのだけれども、少し照れる。
「あ、満!!」
 と、満(南央(fa4181))の姿をみつけて悠はそちらへと、今度は閃を引っ張ることとなる。
 久しぶりの再会に、悠は満に抱きつく。満はそれに驚いたがすぐに笑顔になった。
「会えて嬉しい。元気だった?」
 久しぶりと話していると、そこに静をひっぱる嵐もやってくる。
 偶然か必然か、出会った彼らは互いに視線を合わせた。
 悠と嵐は手を振りあい、満はちらりと、自分の後にいるものたちをみた。
 反乱側の心は、まだ遠いものもいる。
 でも、歩み寄ろうという気持ちはあるのだ。
「少しずつだけど理解してくれる人も増えてる。音楽祭、楽しくなるといいね」
 満はそろそろ始まる、という意味も込めて言う。
 それぞれが場所を移動しようかと離れようとした時、満は嵐を呼びとめた。
「あ、あの!」
 勢いで呼びとめて、そして続ける言葉。
「お花、もらえますか?」
「ええ、ちょっと待っててくださいね」
 そう言って、ささっとどこかに言ってすぐ戻ってきた嵐の手には花がいっぱいあった。
 受け取って、満はありがとうございますと嬉しそうだった。

●歌、楽器、チェンジ
「楽しいね、こういうのもいいや」
 晴(大海 結(fa0074))はいつものように、ただ楽しそうだからというだけで参加した音楽祭を満喫していた。
 どんな状況でも難しいことを考えてもキリはない、今あることをするのが一番。今日はそれが、音楽祭。
 そんな考え方は楽観的すぎるといわれることがあるがそれが晴なのだから仕方ない。
 過去、少しだけ触ったこととがあるトロンボーンを演奏していく。
 上手下手、よりも楽しむことが一番だ。
「はい、声出してー」
「フゴッ」
 基本は腹式呼吸、と閃に悠は教える。その教え方は少々鬼。
「悠ー、俺ちょっと疲れたー」
「お弁当」
 ちらり、と見えた悠の手作りお弁当。それをみてシャキーンと、閃はまたやる気を取り戻す。
 そして音楽祭の意味を思い出すのだった。
 一方の静と嵐。静は嵐にフルートを教えていた。
「大切に使えよ。ボケして壊したら新しいのね」
 音は出る者の、なんだか変な音しかでてこない嵐。
「ちゃんと押さえないと間抜けな音に聞こえる。あと姿勢悪いし、余所見しないで集中しろよ」
「ぁ‥‥ごめんなさい‥‥」
 何度も何度も失敗して、そうしてフルートの音が澄んでくる。
「スパルタのおかげで聞けるようになったじゃん」
「嬉しい‥‥でも」
 でももう少し優しく教えて下さっても良いのに‥‥と小声で嵐は言う。
 ちょっと拗ね気味。
「静様、次は歌です。がんばりましょう」
「‥‥別に歌なんて」
 普段から声を出すことがあまりない静は逃げようとするがそうはさせない嵐。
 しっかりと、腕を掴んでいた。
 と、楽しそうな声が聞こえてくる。
 こちらも同じように楽器と歌と、教えあいっこをチェンジした二人。
「えー? それじゃわかんないよー」
「そこを抑えてびーんっ‥‥って離してー」
 違う、こうだと手を伸ばして教えようとする。
 その手が、悠の手に触れる。
「あ‥‥」
 その瞬間に悠は真っ赤になってうつむき、閃も何やら思ったことがあったらしく変な声をだす。
「が、頑張ってくださいませ!」
 そんな様子を百面相しながら見守る嵐。
 その見守る様子を少しあきれた感じで見る静。
 嵐の視線に気がつく閃。
「嵐も腹減った? 悠の弁当食べるか? 美味いぞ!」
「ち、違います閃様! そうじゃなくて‥‥!」
 嵐の様子に、おかしな方向で理解をした閃は笑顔を浮かべる。
 あなたたち二人を見守っていたのです、と嵐も言うに言えない。
「そんな調子で音楽祭で演奏なんてできんの?」
「そういうあんたはどうなの?」
 鼻で笑うような静の声にむっとして悠は答える。
 ばちばちと火花が散るその横を、竪琴もって巡回中の蛍が通りがかる。
 どんな様子なのかは、遠くまで聞こえていた声でまるわかりだ。
「どっちも似たようなものでしょう」
 ぼそ、と聞こえるように、通りざまに残す言葉。もちろん聞き逃されるはずもなく、しっかりとどういうことだと止められる。
「お互いの事を言えるレベルではないかと」
「そんなことない! ちゃんと歌えるんだからな! なぁ!」
 ドーンと一緒に歌練習中、という意識からか閃は静に同意を求める。
「私も頑張ってるんだから!」
 四人で小さな口論。
 それを、嵐はにこにこと笑顔で見守っていた。
「やっぱり仲良しさんですね♪」
 その言葉に一斉に『違う!』と声が重なる。
 一瞬にして、息が合った瞬間だった。
 それから話をして、それぞれの距離を少しずつ縮めていった五人。
 そして巡回へと蛍は戻っていく。
「お前こそちゃんと教えろよ」
「はい! 折角の綺麗なお歌、皆様に聴いて頂かないと勿体無いですっ」
 竪琴が弾ける蛍に歌えないと思われたされたままでは気が済まない静
はぼそりと嵐に言う。
 嵐はもちろん、と嬉しそうだ。
 そして微妙に、それぞれを意識し始めた二人も、練習を再開する。

●表の裏で
 最後にそれぞれの成果を見せたり合奏をしようということになった音楽祭。
 それぞれ思い思いの場所で一つの曲を、となるが、自然と人々は城へと集まってくる。
 その中で、反対にそこから離れるものもいた。
 生み出される音が、その音色が聞こえてくる丘へと向かう満。
 手頃な石を、前もって見つけて、今日のこの日にしようと思っていた。
 優しく歌い、その石を切りだしていく。
 いくつもそれを生み出して、それを綺麗に積んでいき、最後に。
『―届くよう 忘れぬよう』と、刻み込む。
 そして、嵐からもらった花をその『慰霊碑』に備えた。
「『皆』にも聞こえるかな‥‥この音。無駄じゃなかったよ。ちゃんと、届いてる」
 共に戦ってきた仲間を思い出しながら、満は聞こえてくる音に耳を傾け、そして空を見上げる。
 語りかけるような言葉に、風がふわりとほほを撫でた。
 凛とした笑顔を向け、満はその場に背を向ける。
「これからも、まだあるんだから」
 これからも無駄にしないかどうかは自分たち自身なのだと、満は思う。
 この積み重ねを無駄にしないためにも、やるべきことはたくさんあるのだ。
 満は音楽祭へと、戻っていく。

●新しく続いてゆくもの
「おおー! 緊張したー!」
「でも楽しかったね!」
 今日の成果がどんなものか、多くの人の前でそれをみせた閃たち。
 昔から歌われている民謡は、優しく穏やかに響いた。
 拙く間違いもあったが、今日は技術を争うものではない。
 楽しめればそれでよかった。
 そして、最後に全員で、皆をつないだ歌を、ということになる。
 流れ出す音は緩やかに、最初は距離感を測るように控え目に重なっていく。
 でもそれは、いつのまにかしっかりとした音色へとなっていった。

『 輪に足りぬなら繋ぐように
  満たされぬなら塞ぐように
  知るは最善の日と 』

 毎日聞いてきた歌は体に染みいる音。

『 在るは己が為で無し 』

 新たに生まれた言葉のその意味も、響いて行く。

『 広がる円環留まるを知らず
  広く浅く 遠く深く
  満ちる希望は陰りを知らぬ
  つなぐは絆 とこしえに 』

 そしてまた、今を表すかのように、歌は繋がれていくのだ。
 丘から戻ってきた満は少しおくれて、ヴァイオリンで音を奏でる。
 一緒にきた仲間たちの表情はまだ固い。
 けれども音色は正直で、皆楽しんでいた。
 それぞれの心が近付けば、嬉しい。
 気持ちは素直に、音に現れている。
 ゆっくりと、変わって、近づいて、満ちていく心と音がそこにはあった。

●いないもの
 空に向って、小さな歌が響く。
 満は今日この場にいなかったものたちの無事を祈って歌っていた。
「大丈夫かなぁ」
 いなくなることは、誰もが知っている。
 だが何故かというはっきりとした理由は、一部のものしかしらなかった。
 その理由を、満は知っている。
「無茶はしないだろうけど、心配‥‥」
 だから、心届くよう祈りを込めて歌うのだった。
 そして、もう一人その理由を知っているものは空いた時間に少しでも手伝いになれば、と様々なことを調べていた。
 場所は図書館で。
「何してんの?」
 図書館の主、静はわたわたと忙しそうに動く嵐にもうちょっと静かにしなよ、という視線を送った。
「調べごとをしているんです。でもこう本がいっぱいあると‥‥」
 古い本は、朽ちて読めないところもある。それでも、何かせずにいられないのだ。
 皆の、力になれるように。