Fauvisme―LiBeRTY2アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
玲梛夜
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
7.1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
09/21〜09/25
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●本文
感覚を研ぎ澄ませ。
捕らわれず、自由に使われるべきだ。
流れる音に決まりはない。
理性なんていらない。
共に歌う、共に奏でる。それだけでいい。
それだけで、幸せで楽しい。
自分の半身をみつけたら、世界の色が変わっていく。
遠い遠い未来の世界。
世界は音で支配されていた。
その世界の中心は『アブソリュト』というユニゾン。
そしてその下の四天王、親衛隊。
治安を守り、支配する彼らは、人々にとって善でもあり悪でもあった。
世界を覆すには、きっかけが必要で反乱もあった。
今は、世界は少しずつ違う形へと、変化している。
●ストーリー
城で、音楽祭が行われている頃、その一方では。
「あー、あの山っぽくない?」
「場所的には‥‥最後の一つだな」
「だめでもともと、いこうか」
中央の城から遠く離れて、音たちは辺境にいた。
始まりは、一冊の日記。
崩壊した城を片付けている最中にみつけたもの。
初代アブソリュトが残したと思われる、日記。
朽ちたそれにはとある一族の存在が記されていた。
『調律師』と呼ばれている彼らは、過去とても少なかったらしく、今もまだいるのかは分からない。
だが人の音の狂いを正す、という能力はもっているらしい。
駄目でもともと、とある辺境にいるという情報だけで彼らを探しに、きたのだった。
「そういう人たちいるなら初代がなんとかすればよかったのに」
「そうできなかったって書いてあっただろう」
初代と同じ時代を生きた調律師の長は、協力を拒んだと書いてあった。
世界が歪むなら、それはそれでいいじゃないかとありのままを選んだのだ。
「まだ一族があって、話を聞いてくれるといいね」
言葉は風に消されて、彼らは山との距離を縮めていく。
●出演者募集
『Fauvisme』では出演者を募集しています。
配役は世界観を壊さない程度で自由に設定可能。
四天王などの肩書継続も可能。
音と葎に城からついてきた面々、途中から何らかの理由で合流したというのも有ですが、その合流シーンは尺の都合上描かれないと思ってください。
なお『調律師』はいなければNPCが補います。
●補足
・『調律師』が協力的、非協力的は役作りとしてお任せですが最終的には協力となります。
『調律師』の基本スキルは字のまま調律です。
調律方法には個人差ありですが、基本的にその対象と接触をもたなければなりません。
・音と葎が求めるのは「音の毒消し」、「世界の狂いを止める方法」です。この答えを調律師がもっているかは、現時点では不明です。
●リプレイ本文
●隠れた山の中
生茂る緑も、空気もどこか濃いと思わせるその山。
そこへ一行は、分け入っていた。
「少し休まれますか?」
「まだいけるかな、でもありがとう」
冬(ミッシェル(fa4658))に気遣われ、音は笑う。
今回の旅は黎(明石 丹(fa2837))と冬、そして枝連(氷咲 華唯(fa0142))、篝(佐武 真人(fa4028))が城から、斎(橘川 円(fa4980))がユニゾンである嵐から連絡を受け駐屯地から合流した。
冬は、ちらりと黎とともに歩く篝を見る。反乱軍のリーダーが何故ここに、と思い少し気にする。
歩みより、というのもを見せるという点では、篝が今回の旅に同行するという事はとても大きかった。
「あー、いたいた。ようこそ音の皆さん」
ふ、と遥か先から声がかけられる。
緑のその奥に人の姿がある。
「俺はツェイ、あなたたちが探している一族の一人だよ」
突然に現れ、ツェイ(嶺雅(fa1514))と名乗った青年はとても友好的だった。
そして、里まで案内するという。
「どうする?」
いきなり現われて、案内するなんて少し怪しい。
「‥‥街での見回り時に見かけた事があるな」
「俺も知った顔だ」
斎は街で見たといい、篝は知った顔だと軽く片眉を吊り上げる。
「二人が知ってるなら、大丈夫かな」
黎がにこりと笑って言えば、意思は固まる。
そして一行は、ツェイの後をついて行く。
まだまだ深い、森の中へと。
●調律師の里
「ついたよ」
「辺境にようこそ」
ツェイの案内でついた村では、一人の女性が微笑みとともに待っていた。
名はミュン(星野 宇海(fa0379))と名乗り、弟から話を聞いていたと、ツェイの方をみた。
「案内、ありがとう。正直、調律師‥‥あなたたちはいるかいないか、私たちにとってわからなかったから賭けみたいなものだった。出会えて素直にうれしいよ」
音は言って、笑う。
枝蓮にとっては初めて聞く調律師。だかこれからに関わるものなのだと、なんとなく理解する。
「‥‥歓迎はしてないんだがな」
「ジェナったら」
ミュンの後にいた男、ジェナ(西村 哲也(fa4002))は言って、眉をひそめる。
それぞれ、思う事がばらばらなのは今の状況ではっきりとわかる。
「話、聞いてもらえるかな?」
「こんな山奥まで来たんだ、話くらいは、聞こう」
ジェナは背中を向けて、里の奥へと入っていく。
「きっと、彼が一番偉いんだね」
黎が言って、あとをついて行く。
それにつれられて後に後に。
奥へと進みながら里の様子をみればとても穏やかだ。
ついこの前まで、争っていた自分たちとは違う世界がそこにあるような感覚だ。
通された家はこじんまりと。
それぞれが場所を決めると、沈黙が流れた。
「話さないと始まらないんだが、用がないなら帰ってくれ」
「用は、あります。お願いがあってまいりました」
ジェナの言葉に冬が返す。音たちが口を開こうとしたのよりも、先だった。
それは四天王として、やるべき事をという姿勢の表れだ。
一つずつ、丁寧にそれぞれが足りないところを補いながら、今までなにが自分たちに起こっていたかを伝えていく。
反乱軍と親衛隊、四天王との対立、争い。
きっかけとなった歌、それぞれが歩み寄ろうとする姿勢。
そして今。
世界にたまる狂いを、正す方法を探している事。
そして音の体にある毒。
「狂いをとめるには、あなた方の協力が必要なのです」
「このままにしておけない、世界の狂いを止める方法がわかるなら教えてほしい」
冬の言葉に、熱のこもった斎の言葉も重なる。
斎にとって敬愛すべき同期である冬。冬はふっと表情を和らげ斎に笑む。
「‥‥そうよ! きっとそうっ!!」
と、じっと話をきいていたミュンが声を上げる。
なんだ、と視線はそこへと、自然と集まっていた。
「調律の力は世界の修復機能の一端かもしれないわね。音で音をねじ曲げているから歪みが大きくなるんじゃないの?」
「ミュン、おちついて」
弟のツェイにどうどうとたしなめられ、ミュンは黙る。
その様子を一瞥しジェナは瞳を伏せた。
「お前たちの話はわかった。だが協力はしない」
何故、という視線にジェナは言葉を続ける。
「俺はお前たちの言うそれを『狂い』とは思わない」
「ジェナ! そんなこと」
「ミュン」
言いかかってくるミュンの名をジェナは一度呼ぶ。
そして、ここへとやってきたものたちをぐるりと一周、見渡した。
「理由がほしいという顔だな。敢えてそう呼ぶとしても自然にそうなるのであれば抗うな。議論の余地はない」
これ以上は、言うことがない。
ジェナの素振りはそう言っており、さっさとその場から立ち去ってしまう。
「‥‥出会えたのです。何も手がかりを得られずに終わらずに済んだ事に感謝しなければなりませんね」
「そうだね」
断りの言葉に、気が沈まないわけではない。だが、諦めないという気持ちも冬はちゃんと持っていた。
「そうだな‥‥私たちはまだ互いをよく知らないというのもある‥‥正直、彼の言葉には驚いた」
自分たちと、考え方がまた違う。
でもそれを押し付け合うのではなくて、話す事も、歩み寄る事もできる。
「しばらく、ここにいてもいいかな?」
「いいですよ、遠い場所の話をきかせてくださいね」
ミュンは快く承諾をし、一行はしばらく、滞在する事となる。
「出来ないとは言わなかったね」
瞳を細めて、今までのやりとりを反芻した黎は呟く。
確かに、言わなかった。
「焦っても仕方ないだろう」
苦笑交じりの声は篝のものだ。
そう、まだここには来たばかりなのだ。
●抱えたもの
「どうして一緒に来たの?」
笑顔の黎の言葉に篝は不機嫌そうな表情を浮かべた。
わかっているくせに、聞くのかと。
篝の思った通り、黎は何故篝が共に来たのかを知っていた。
というか、今回篝が来る切欠を作ったのが黎自身だった。
篝にとってこの旅は今まで距離のあった反乱軍と城側は近づいている事を示すという意味もあったが、自分に起こっている事の本質を、知るために来たのだった。
その答えは、もうすでに自分の中で出かかっている。
「来たのは、あの子の為?」
あの子、と名前は出さずに黎は言う。
だが二人とも思い浮かべるのは、一人しかいない。
皆を歌う事で繋いだ、あの子。
「失くしたものに縋り付くだけでは進めない」
否定せず、篝は一歩進んだ言葉を返す。
「二度と繰り返してはいけないからな」
「篝は厳しく、そして優しいね」
黎の言葉に篝は一瞬眉を顰め黙った。
二人の間には、それとなく理解し合う空気があった。
それぞれ立場は違っていたが考える方向は同じだ。
「狂いも音、か‥‥」
篝が呟く、と同時にばさばさと羽根音が聞こえてきた。
見上げれば、白鳩が黎めがけて数話降りてくる。
「ああ。来たね」
黎はその鳩たちを連れて、冬と斎のもとへと向かう。
冬と斎はというと、それぞれの知らない情報をだしあい補い合っていた。
城にいる冬と、さまざまな場所を回る斎。
城には斎のユニゾンである嵐がおり、やはり連絡をとっていても気になるのだ。
「斎、冬」
と、呼び声がかかる。
冬はにこりと、自分に四天王を明け渡した黎に笑顔を向けた。
斎は、尊敬すべき先達に少し緊張していた。
それをわかって、黎は笑顔を向ける。
「城の様子を知らせに鳩が飛んできたからね。知らせようと思って。斎にも、手紙が来ているよ」
鳩の飛ばし主はもちろん嵐で、現状を伝え何事も滞りなくという事が書いてあった。
「‥‥協力してもらえるといいな」
「いきなり来てOKは難しいね」
黎は斎のつぶやきに、でもまだこれからだよと励ましを加える。
「そうですね‥‥見方の違いなら今までもあったのです。きっと理解しあう事が出来るはず‥‥頑張りましょう、黎様、斎様」
冬の言葉に二人は頷く。
と、黎はそうだ、と一羽の鳩を呼び、斎の肩へと止まらせる。
「可愛がってやって、城との連絡はいつでも取れる子だから」
くる、と小さく鳴き声。
黎は城から出る君には必要でしょう、とこの先を考えて斎へと一話の鳩を贈った。
「ありがとうございます」
斎はその気持ちに深く深く、礼をする。
そして黎の持つ気持ちにも、報いようと思うのだった。
「さて、僕はこれから食い下がってくるよ。一緒に行く?」
「はい」
二人の声は重なり、ジェナ達のもとへと彼らは向かう。
●調律師からの条件
彼らが来てから数日、ジェナは拒否の姿勢をずっと変えなかった。
会う事も、話も聞く事もしない。
だがツェイとミュンは彼らの話をきき、そしてそれをジェナに伝えていた。
今日も、また。
「ジェナ、彼ら必死よ」
「そうか」
「〜〜〜っ!! どうしてわからないのよっ!!」
「止めときなよ、ミュンが力任せに言っても意味ないでしょ」
ミュンがかーっと突っかかろうとしたのを、ツェイが止める。
諭すような言葉に、ミュンは言葉をとどめた。
その様子をみて、ジェナは自分の考えを告げる。
「音は音だ。狂いだと言い自ら歪め続けた結果、彼らはその報いを受けた。哀れとは思うが手を加えても新たな歪みを生むだけだ」
ジェナの言う事はわかる、でも。
「貴方にはその力が有るでしょう?! 助けられる術が!」
まだ言葉を続けようとする姉を、弟はしっかりと止める。
「これは、あの人達が説得すべき事なんだから大人しくしてなよ」
ほらほら、と言い足りないミュンをツェイは引っ張っていき、ジェナは一人、残される。
いつまでもこの状況でいるわけにはいかない。
どこかで一つ、キリをつけなくてはと思う。
外からは相変わらず、話をもう一度という声。
もう一度だけなら。そこで区切りをつけようと、ジェナは思った。
立ち上がり扉を開ける。
すると一瞬驚いたような彼らの表情。
「これきり、だからな」
なかなか諦めないのはよくわかった。
渋々承知するんだ、というような雰囲気のジェナ。
だが話あえる事に変わりはない。
全員が集まって、ジェナはその口を開く。
「ミュンたちから色々と聞いた。お前たちは調律を万能のものとでも思っているのかもしれないが違う。そして勘違いするな。都合良くお前らの音を治す為の力じゃない」
調律の力とは音に影響を与えるもの。
そして、やろうと思えば正す以上の事もできるのだとジェナは言う。
「使い方を間違えば大変な事になるんだ」
「それは音も一緒だよ」
わかっている、という表情は誰もが浮かべていた。
力を貸してほしいというのはよくわかった。そしてその力は自分にある。
「体にたまった、毒と呼ぶ狂い。元は音だ、それがお前の許容範囲を超えているから、毒になっているんだ」
「音の毒を消す方法があると、思っていいんだな」
「ある、だがそれには条件がある。お前らが拘るその自分の音を削るという事」
この意味がわかるか、とジェナは言う。
そして覚悟も、あるかと。
「私の体を治すには他の人に迷惑かける?」
「歪めらた毒も元は音、各自が持つ音を削りその余白で毒を分担すれば、圧迫されている音自身の『音』も少しは戻る」
「俺が毒を貰う」
「葎一人だけにさせないよ」
僕も、と黎は前へ出る。それに音は本当にいいのかと、訪ねた。
「二人が僕の立場でも同じ事をするでしょう?」
そう言われてしまえば言い返せない。
「音は音なら、役に立てるか‥‥」
歪みを受け入れる事を覚悟した篝も力になれるなら、と言う。
「私も」
「待って、君の力はこれから必要になる力だ」
斎の言葉を黎がさえぎる。
どうしてだ、と思う所に、冬の言葉。
「私は辞退を。四天王という立場であるからこそ辞退します。でも、皆様を支える覚悟はあります」
まだやらねばいけない事はある。
だからこそ、ここはという気持ちを冬は持っている。
「‥‥わかった。皆さんにお任せします」
斎は深く、礼をして自分の気持ちも、皆に託す。
「まとまったようだな、それじゃあ」
「待って! 私も手伝うわ! 黙って見てるなんて出来ないもの!」
バン、と今まで外で話を聞いていたミュンがジェナに向かって言う。
否と言う必要もない、ジェナは頼むと短く答えた。
「手を」
音はジェナの手をとる。
触れてその違和感たるモノをジェナは見つける。
「彼女に触れて」
ジェナの言われた通りにそれぞれ動く。
毒たる物を救い上げて、音を削り、分ける。
手伝いがあっても、その過程は辛いものだった。
でも、終わるまではと気を張り巡らせる。
「ジェナ」
ミュンの呼ぶ声には大丈夫だと視線を送る。
やがて終わった、と言うと同時に手を離し、その場にがくりとジェナは膝をついた。
「! 大丈夫!?」
「久しぶりだったから」
「なんだか軽い感じだ」
「僕たちもあんまり変わったような感じはしないんだけど」
ジェナはいずれどういうことかわかる、と小さく返す。
そして。
「世界の狂いも、今のと同じだ。調律師にも限界は、ある」
一人の狂いにジェナのこの疲労。世界をとなるとものすごく大がかりなことになるのは考えなくてもわかる。
「考えつくのは‥‥世界中せーので『音合わせ』するとかな」
もし、世界でそれだけの音を揃えられたなら、その時には一族で世界の音を繋ぐ媒介になってやろう。
ジェナはそう思うが、言わない。
「ジェナ、本当にありがとう」
「そう思うなら早く帰れ」
そっけないジェナに、この調律師に、皆は感謝する。
目的は、達した。
この里とも、別れの時。
●帰還
白鳩が空を舞う。
その鳩は、まっすぐ黎の元へと向かってきた。
「嵐が飛ばしたのかな。待ってそうだね」
待つ者のいる場所へ早く、と気は急き高まる。
けれども。
「音」
「ん」
沈む心も、あった。