妖古譚―刀アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
玲梛夜
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
8.2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
09/29〜10/03
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●本文
東の国に住む妖たち。
人ならざる彼らには、ひとつの決まりがある。
白く、長い刀が現れたら、それを持つこと。
その刀は、いつの間にか持ち主を選び現れるといわれている。
その刀は、欲する者もいれば、そうでないものもいる。
力が強いものの前に必ず現れるわけではない。
持ち主と認める基準は誰もわからない。
髪紐と紺青の下緒が結えられた白く長い刀。
その刀は、白く大きく、古いものの所へと還ってくる。
「おかえり」
低く笑うような声が、暗闇に響く。
刀はリンと、一啼きして、別の形をとり始める。
「色々な妖をみてきた。でもやっぱり、あなたのそばがいい」
「では、話すといい。その者たちが、今どうしているか、私の千里眼でみよう。お前の言葉含めて、私は世界を知りたいよ」
●妖古譚―刀
妖古譚では毎回メインとなるものは刀の持ち主です。
今回の刀の持ち主は、白蛇です。
刀の本来の持ち主である白蛇のもとへもどった刀は、見てきたことを話す。
そして今、その者たちがどうしているか、白蛇は千里眼で見ることができます。
今回は白蛇と刀の話と、今現在の、刀が関わってきたものたちの話ということになります。
必須配役は白蛇、刀となります。
その他配役として、過去出演者、そして前三話ではでてきていないけれども過去、刀の持ち主だったもの、その周囲のものとなります。
性別も特に指定はありません。完獣化、半獣化自由です。
時代背景イメージは、前回の鴉より百年後あたりを想定してください。
なお、狐、鬼、鴉の回に出演した方が同じ人物ででることも、違う人物で出ることもOKです。
演じきれるのならば二役も可能です。
●リプレイ本文
●白蛇と刀
時の流れは遅くもあり速くもある。
「おかえり」
長い長い白い鱗ある体を少し動かしつつ氷(藤緒(fa5669))は刀を、白露(タブラ・ラサ(fa3802))へと言葉を放った。
「ただいま戻りました」
白露は刀の姿ではなく人の姿をとる。その白く長い髪には刀の姿の時、結えられた髪紐と下緒がそのままあった。
「さて、どんな体験をしてきたのか話を聞かせてもらおうかな」
長い長い白い髪を指で遊ばせつつ氷は白露へと言う。
白露は頷いて、一つずつ話をしていくのだった。
●見てきたものを
「驚かれることはあっても、あのように拒絶されたのは後にも先にもあの時だけだった」
静かに白露は言う。
「随分とお前を邪険にしていた狐だね? 結局は白を認めたようだが‥‥お前も中々に意地が悪い」
ひそりと覗き見ていたのだと暗に思わせるもの言い。
氷はくく、と喉の奥を鳴らすように笑う。
「『いらない』と言われた。けれど、だからこそより多くの人と触れる機会ができたのかもしれない」
「狐の、佐とやら‥‥今は友と放浪中のようだ」
ふっと瞳を、氷は細める。
そして氷はそういえば、と思いだすように次の話へと転がす。
「舜とか言う鬼に挑む為、良い出汁にされたようだね、お前」
もしかしてみたいたのですかと白露は言う。
その問に氷はただ笑うだけだった。
「素直じゃなくても、みんな誰かに向けた想いがあって‥‥それがよくわかる出来事だった」
白露は青鬼と過ごした日々の覚えている限りを氷へと伝えていく。
「僕の存在が、少しでもみんなが想いを伝える力になれたのは、本当に嬉しかった」
「白露が誰を如何して選ぶかは私にも分からない、気紛れは私と良く似ている」
同じだと嬉しそうに笑う。
「気まぐれに流れて、そして次にたどり着いたのは‥‥小さな天狗か」
「誰にでも大人にならなきゃならない時がある。僕がそのきっかけになることができたのは、光栄なことだよ」
そう、光栄なことだったともう一度、繰り返す白露。
初めて出会った時と、再び出会った佐を見送ったあとの翼の表情の違いを思い出して、白露は言った。
「それに、佐さんと予期せず再会できたのも、僕にとっては嬉しい出来事だった」
「嬉しかったか」
「再び会えるのはよほどのめぐりあわせがなければ起こらないから」
嬉しかった、と白露は言った。
「‥‥会うことはできないが見ることはできる」
私の千里眼の力で、と氷は言って、白露に触れる。
見るものを共有するために。
●いまの彼ら
『覚えている』
白露はふっと呟く。
最初に見えたのは凰(メルクサラート(fa4941))だった。
過去刀の持ち主となり、今まだ、刀を求めている。
そして次に、魁(メル(fa5775))の姿だった。
刀が、白露が魁の友である翼のもとを離れてから、魁は自分は成長しているのかと考えた。そして自分も、成長しなければならないなと思い旅に出ていたのだ。
「この山を越えれば、もう村か。皆、元気にしてるかな」
魁は緑を分け入りつつその頬を緩ませる。
皆に会うのは久しぶりで、とても楽しみなのだ。
「あれから随分経ったからな、あいつも大人になっただろうなぁ。俺は、少しは成長出来たかな」
同然だった鴉天狗の少年、翼の顔を思い出し、頬を緩ませる魁。
足取りはいつの間にか、早歩きからかけ足へと変わっていた。
その表情は、とても晴れやかに。
『お前が傍に居た事で、この小さき者達も成長したようだね』
『はい』
いいことだ、と思う氷の気持ちがなんとなく白露へと伝わってくる。
また、場面は切り替わる。
『おや、青鬼の好敵手、だな‥‥おや‥‥狐の里へ向って‥‥というか迷っているな、あれは』
あたりを見回す舜(アルヴァ・エコーズ(fa5874))。
自分も負けてはいられないと武者修行の旅にでたのだ。
道もよくわからず気ままに歩く、舜。
と、そこへ声がかかる。
「ねーねー、うちの里に何か用〜?」
興味をもって話しかけたのは颯(あずさ&お兄さん(fa2132))だった。
何をしに来たのか、教えてと期待に輝く瞳。
「何、里?」
里があるのか、ときょろきょろとする舜。颯はあれ、と思う。
「え〜? この先ってうちの里くらいしかないし、知ってて来たんじゃないのっ? 普通に通り抜けるような場所でもないし‥‥さては、ひょっとして迷子っ?」
「‥‥いや、そろそろだと思っていた」
微妙に空いた間。
颯は迷子でない風を装ったのだとすぐに悟る。
「本当かな〜? ま、いっか。里はここからあっちの方だよっ」
こうして、舜は颯という案内を得たのだった。
そして二人は他愛のない話をしながら進んでいく。
途中、舜の持つ吹けば草がよける角笛に興味をもった颯はそれをじーっとみつめた。
そして視線があった瞬間にぱっとはじけるような声。
「面白そう〜! ねーねー、私にもちょっとやらせてよっ♪」
「ほら」
少し迷いつつも、舜はそれを颯へと渡す。
颯はそれをご機嫌で噴きつつ、道案内を続けるのだった。
『道案内が現れたようで良かったと言うべきか』
面白いものをみた、と言うように声は笑っていた。
さて、と氷は仕切りなおす。
『白と二度、出会ったものは何をしているか‥‥』
移り変わる場面。
佐(Iris(fa4578))は養い子である匡(西村 哲也(fa4002))とともに旅の空の下にあった。
「なあ、今度どこ行くの? 佐の名前も随分知れちゃったから大変だよな〜」
「‥‥冬になる前には村に戻るか」
「佐の村? 俺はどこでもいいよ、佐と一緒なら」
白露が過去、出会った時よりも匡は大人びている。
年月を経て、力も増し、そして佐の気持ちも理解できるようになっていた。
確実に、成長していた。
そんな養い子を佐は嬉しく思う。
佐は捻た小僧の昔は出来るだけ帰らずに済むよう渡り歩いていたなぁと思い出し、そっと小さく苦笑した。
匡はそれにどうしたんだと問うが曖昧にはぐらかす。
始まりは、すべてあの村だった。
嫌なことも、嬉しいことも、あの刀と出会ったのも、全てあの故郷でのこと。
「思えば、お前と会わせてくれたのかもしれないな」
「ん?」
匡を、佐は優しく見つめる。
この養い子と出会わなかっただろう、村を出なければ。
村を出なかっただろう、自分の世界を広げなければ。
自分の世界を広げなかっただろう、刀と出会わなければ。
「刀のおかげだ」
色々あったが今はただ懐かしい記憶として思い出すことができる。
「刀? ああ、あの刀か! 随分と目の高いことだ、あんたを選んで現れたんだから」
匡はまるで自分のことを話すように、佐のもとにきた刀のことを褒める。
「でも今あんたを選んでるのは俺だけどな!」
変わらないことの一つ、それは匡が、佐のことが大好きなことだ。
独占欲はまだまだ、押えられない。
その言葉に、ふっと佐は笑みを浮かべた。
そして、そうだな、と短く肯定する。
肯定は突然のこと、匡はそんな答えが返ってくるとは思っていなかった。
だから、心底驚いて慌てて、そして照れた。
「え!? な、何言ってるんだよ! こういうのは流してくれないと恥ずかしいだろうが!! でも、もう一回!」
「もう一回か?」
そう、と詰め寄る匡を佐は受け流すように笑う。笑って答えはしない。
そしてまた詰め寄るの繰り返し。
きっとこの関係はかわらないんだろうと、どちらも思った。
この、心地よい関係。
「この先俺が選ぶのもお前のための道なんだろう」
小さくつぶやいて、自分の心のうちにあったものを佐は言葉へと変える。
「秋の夜は長い、帰る前に天狗の里にでも寄ってみるか?」
「佐が行くところならどこでも」
佐と匡は、二人並んで、歩いて行く。
そんなほほえましい姿が、氷と白露の視界から遠ざかる。
「ふふ‥‥狐を選んだお前の事を『目が高い』と褒めていたぞ?」
「嬉しい」
「当然だな、私の白露なのだから」
満足そうに、氷は言う。
そして話を進める。
「さて‥‥次は何処へ行く? 白露」
「何所にも行かずに、ここに」
「私の傍が良いなどと殊勝な事、何時まで続くのか。まぁ良い‥‥そうだね、次はお前が居ない間の私の話でも聞かせようか‥‥」
氷のどことなく嬉しそうな声に、白露は頷き返した。
離れていた主のもと、そこは白露にとっての居場所なのだ。
●時がそこに流れるから
刀はあるところへとに戻る。
また、誰かの元へ行くかは、わからない。
でも今、一番望むものの元にいることは間違いないのだった。