Fauvisme―LiBeRTY3アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 玲梛夜
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 8.2万円
参加人数 8人
サポート 1人
期間 10/08〜10/12

●本文

 感覚を研ぎ澄ませ。
 捕らわれず、自由に使われるべきだ。
 流れる音に決まりはない。
 理性なんていらない。
 共に歌う、共に奏でる。それだけでいい。
 それだけで、幸せで楽しい。
 自分の半身をみつけたら、世界の色が変わっていく。

 遠い遠い未来の世界。
 世界は音で支配されていた。
 その世界の中心は『アブソリュト』というユニゾン。
 そしてその下の四天王、親衛隊。
 治安を守り、支配する彼らは、人々にとって善でもあり悪でもあった。
 世界を覆すには、きっかけが必要で反乱もあった。
 今は、世界は少しずつ違う形へと、変化している。

●ストーリー
「お帰りなさい!」
 城に戻ればそこには待つものたちの顔があった。
 音の毒は、緩和された。
 でもそれと引き換えに、失ったものもある。
 調律師からヒントを得て、それをどう生かすも、殺すも、自分たち次第。
 そして、互いの溝を縮めるのも。

●出演者募集
『Fauvisme』では出演者を募集しています。
 配役は世界観を壊さない程度で自由に設定可能。
 四天王などの肩書継続も可能。

●補足
 前回よりの続きとして話の流れがくんであります。
 城に戻ってそれから、というところ。
 それぞれの立場、そしてこれからを考えてください。

●今回の参加者

 fa1276 玖條 響(18歳・♂・竜)
 fa1744 雛姫(17歳・♀・小鳥)
 fa2726 悠奈(18歳・♀・竜)
 fa2837 明石 丹(26歳・♂・狼)
 fa4028 佐武 真人(32歳・♂・一角獣)
 fa4181 南央(17歳・♀・ハムスター)
 fa4657 天道ミラー(24歳・♂・犬)
 fa4980 橘川 円(27歳・♀・鴉)

●リプレイ本文

●戻るべき場所
 長い旅から戻ってきて、迎えるのはよく知る面々。
 ただいま、おかえりとそれぞれが声を掛け合う。
「音‥‥っ」
 ただいま、と言う音達のもとに満(南央(fa4181))は駆け寄る。
 そして、今までと違う彼らの音に気がつく。
 それに顔を一瞬ゆがめる者の、それはかかった声でもってかき消された。
「ちゃんと食ってたか?」
「おかえり!」
 篝(佐武 真人(fa4028))は満の頭を撫でつつ、ただいまを伝える。
 元気にしていたんだなと、旅の間何事もなかったようで篝は安心する。
「皆、いない間守ってくれてありがとう」
「お帰りなさい」
 嵐(雛姫(fa1744))は柔らかな笑顔を浮かべる。その笑みは、音たちと、ユニゾンである斎(橘川 円(fa4980))にむけて。
 そして黎(明石 丹(fa2837))に向けて。
「ただいま、ちゃんと手紙届いたよ」
 と。笑顔でいう黎に満の手をひきつつ家に帰ろうとする篝が声をかける。
「一緒にこい、今日くらいは休みたいだろう」
「いいの? それじゃあお言葉に甘えて‥‥またあとで来るね」
「はい、お気をつけて」
 黎は篝と満の元へと向かう。
 ふと、満と黎の視線がかち合う。
「あっち、放っておいていいの?」
「うん?」
 満に問われ、その視線を追う。そこには迎えた者たちに囲まれた音と葎がいた。
 黎は、満に笑む。そしてゆっくりと大事なものを扱うように言葉を紡ぐ。
「言葉で尽くせるような事なら音も葎も理解してる」
「そういう関係っていいね」
 大切にしているのがわかる、と満はそれ以上言わない。
 三人は篝の家へと向かう。
 そして、それぞれ自分のあるべき場所へと、帰っていく。

●変りつつ
 お帰りなさいと迎えるのも、疲れもあるだろうとそこそこに嵐は図書館へときていた。
 することはまだあるのだ。
「頑張ってますね」
 と、一足さきに図書館にいた流(星野・巽)は嵐に紅茶をいれて差し出す。
 それと同時に、開く図書館の扉。視線はそちらへ向かう。
 入ってきたのは静(玖條 響(fa1276))だ。流の姿がそこにあることに驚きつつも嬉しさは隠せない。
「お帰り、連絡が無いから心配してた」
「色々見てきましたよ」
 今まであったこと、知りえない情報の受け渡し。
 そこへ、また図書館へと入ってくるものたち。
「差し入れもってきたよ」
「今日もがんばろう!」
 悠(悠奈(fa2726))と閃(天道ミラー(fa4657))と、そして斎もそこにいた。
「お顔を‥‥もう少しみたくて来てしまいました」
 もちろん報告したいこともあるのだけれども、離れていた分を埋めたいと思う。
 斎は手紙のお礼を伝え、そして笑む。
 でもその笑みが今までと違うものであることを嵐は感じとっていた。
 ぴと、と斎の顔を両手で包み込む。
 そして、額をこつり、とくっつけて、彼女だけに聞こえるほどの小さい声で気持を伝える。
「無理は禁物ですよ」
「‥‥はい」
 やっぱりわかっているのですね、と斎は思いながらまたありがとうと、言う。
 そしてそれぞれ図書館での作業を、始めていく。
 その前にどことなく沈んでいる嵐に悠は弁当を渡す。
「下ばっか見てたら気分も下降しちゃうよ? これ食べて元気出して!」
 それにありがとうございます、と柔らかく、笑う嵐。
「あなたも、暗い顔は無し! スタートラインはここからだもん、気に病む必要は無いの!」
 悠の言葉は、斎にも向けられる。
 ついこの間までいさかいを起こしていたのに、今ではこうして励まされる。
 ああ、縮まっているんだなと斎は微笑んだ。
 弁当は、静にも。
「今日もお弁当もってきたの、ついでよ、ついで!」
「弁当? うわ‥‥押し付けられた」
 と、その様子を閃はなんだかもやもやとした気持ちで、みていた。
 その視線を感じた悠はどきっとする。
「どうしたの、閃」
「別にー」
「もうっ! ちゃんと閃のもあるんだってば!」
 ばしっと渡されて、自分のだと嬉しくなる。
 キラキラと瞳輝かせてありがとうと言うと、なんだかどちらも恥ずかしくなる。
 そんな二人をみていた静と嵐。
「あのお2人お似合いだと思いませんか?」
「そうだな、いいコンビだと思う」
 嵐と静、二人の言っていることは微妙にずれているのだが、それぞれ気がつかないままだ。
 逆に、悠と閃も二人をみてこそこそ話をする。
「お似合いだよね♪」
「ねー?」
 にまにましつつ、二人をみれば顔が近い。ぱっと距離をとったりもする。
 図書館では少しずつそれぞれの距離が縮まっていた。

●あり方
 ここは篝の家。
 黎を招きいれ、満は二人に今までのことを話し始める。
「今、郊外と協力して作業にしてるの。中央の事が伝わりにくいでしょ? だから週一で向こうに行ってる」
「すごいね、満」
「お前が?」
 篝はそれは本当か、と驚きを含んだ声をだす。それは成長をしているんだという嬉しさも、交えて。
「出来る事は少ないけどね」
 まだまだやることはいっぱいある、と満は笑う。
 そして、その笑顔が消えて、二人を見る。
「詳しい話が聞きたいな」
 そう言われて、黎と篝はあったことを話す。
 二人の話に、満は何を音に感じたかをそこで知る。
「それで音は‥‥」
 想うこともあり、俯いた。
「でも無事だったんだから良い!」
 けれどもすぐ顔をあげて、前向きに物事をとらえる。
 そんな満が、黎と篝にとってはかけがえない者なのだ。
 それからしばらく色んな話をして、夜になる。
「もうこんな時間か‥‥休むか」
 篝は満を促し、黎には家の鍵を投げ渡す。
 それをぱしっと受け取った黎は、鍵と篝を交互に見た。
「閉めたら表の鉢の下だ」
「古典的だね」
「うるさい」
 話していて、結構わがままなやつなんだなと篝は黎に妙な好感を抱いていた。
 それじゃあ、と黎は外にでる。
 言われた通り、鍵を閉めたら鉢の下へ。
「さて‥‥」
 すっと黎は瞳細めて、城を見る。
 きっと篝は自分がこれからどうするかをわかって、お開きにしたんだろう。
「行こうか」
 そういった黎の肩に、白鳩が舞い降りてくる。

●夜闇の中で
 こつんこつん、と窓を叩く音。
 城の上部は壊れたままで生活は一階が基本となっている城。
 葎はその音に気がついて窓辺に立つ。
「?」
 窓をあけて下をみると、そこには黎。
 小声で、口に手をあてて。
「開ーけーて」
 葎は無言のままで、一度窓を閉める。
 黎は反抗期かな、と小さく笑って再度鳩に窓をたたかせた。
 しつこく。
「‥‥なんだ」
「開けて」
「開いてる」
 諦めたのか、最初から拒む気はないのか、あけ放たれた窓から黎は葎の部屋へと入る。
「何しにきたんだ」
「音の為に葎は我慢するでしょう」
 笑いもせず悲しみもせず、ただあるままのことを黎は言う。
 言われた葎は、黙った。
 それは肯定だった。
「寝るまでいるから」
「‥‥ああ」
 音が悲しめば葎もそうなるというのを黎はわかっている。
 だから音でなく葎の元へときた。

『おもしよ鎮め眠りを守れ 沙の一つに刻は廻る 蕾よ開け花香を抱け 色の一つに刻は変わる』

 黎の子守唄が、静かにそこで響いていた。

●音楽祭
「ここからなら、皆の音色が聞こえるから」
 少し大人びた笑顔で凛という満の姿に、篝は眩しいものを見るように瞳を細めた。
 ふたたび行われる音楽祭。
 それが始まる前に、満は篝を慰霊碑の前へと連れてきていた。
 小高い丘の上、花を添える満の背を篝は見つめる。
 何も言わず、馳せる想い。
「お前は先に行ってろ」
 あとから行くと篝に言われて、満は何でと思いつつもその言葉に従う。
 満の姿が見えなくなり、篝は持っていたヴァイオリンケースを開く。
 音狂いであり、また多くを失った戒めから、表立って奏でる事が今までなかったが、調律師達の考えに触れ、そして自分の狂った音でも役立てられたことから再び絃をとることを自分に許した。
 久しぶりに触れるヴァイオリン。
「俺に出来る最後の仕事だ」
 篝はヴァイオリンケースを閉じ、それを持って音楽祭へと向かった。
 ゆっくりと篝は音を奏で始める。
 そして、その頃城のひっそりとした場所で音はしゃがみ雑草をぶちぶち抜いていた。
 そこへ嵐がやってくる。手にはデルフィニウムを持って。
 おちる影に音は顔をあげて、嵐を見上げる。
 嵐は一緒にしゃがみこみ、花を差し出す。
「貴方の笑顔、護らせてください。そしてどうか、顔を上げて」
「‥‥顔なんて上げられない」
 他の人の音を削って、そして彼らはそれを当り前のように受け入れた。
 それが反対に、辛い。
「ひとりで切なさを抱えるのはもうやめにしましょう‥‥?」
 気遣いながら言い、そして音楽祭へと行きましょうというものの、音は頑なだ。
「あ、いた!」
 城内を回って音を音楽祭りへと誘いにやってきた満。
 どんなに誘っても、行くとは言わない音に満はむかっとくる。
「歌わないなら、私も歌わないから」
 皆が笑えるように頑張ってきて、音も笑ってほしい一人なのにそんなのじゃ嫌だと満は言う。
 そこへ黎と葎がやってくる。
 三人の様子を見てどういう状況であるか、すぐに理解して黎は歩み寄った。
「葎は一緒に歌うって、音も歌おう」
 その言葉に音は答えない。黎は少し間をおいてから言葉を紡ぐ。
「ズルイ言い方していい? 歌って欲しいからあげたんだ、音に。だから、一緒に」
「‥‥本当に、ズルイ言い方」
 そんなこと言われたら、歌わなきゃ君達に失礼だと、音は言って立ち上がる。
「歌いたいんでしょ?」
「歌いたいよ、我慢してたから。嵐、花ありがとう。満も、ありがとう」
 まだ持っていたままの花を受け取る。
 嵐は嬉しそうに、笑顔を浮かべた。
「音楽祭、皆で歌おう。でもその前に、ちゃんと伝えないとね」
 その頃、音楽祭はもう始まろうとしていた。
 だがやってきた音たちは、ちょっと話をと、演奏のタイミングを遅らせる。
 そして、旅でのことを伝えていく。
 出会った調律師たちも、音狂いや世界の崩壊も狂いではなく変化の一つという考え方。
 そして音の抱えていた毒のこと、それを和らげることによって得た成果。
「誰か一人ではなく皆で進む選択肢もある‥‥でも色々と降りた身だから、これをどうするのかは皆に任せるよ」
 黎は話の細くをした後で、そう言って嵐たちへとバトンを渡す。
「何故人は争うのか、ずっと考えてました‥‥」
 ここ最近ずっと図書室で調べていた歪みの原因。
 それは争いや歪んだ想いから生じた音が解消されずに世界に溜まり、毒になったのではないか。
 それと反対に、反乱が起きた時のあの歌で一つになった時、様々な音の力が生じたのに、混沌ではなく優しさがあった。
 嵐はふっと満の方をみて笑む。
「皆で協力し合えばなんとかなるのではと思います」
「皆で力を合わせれば、世界の狂いも分け合えるのではないかと思う」
 もし、よりたくさんの人が参加して手伝ってくれるのならまた調律師たちのところへ相談にもいきたいと斎は言った。
 音合わせの可能性を、彼らは示す。
 そしてそのことを知らされていく側。
 閃は初めてきく話に驚きつつ百面相。
 悠は、それらの話を未来への可能性として受け止めていた。
 それぞれの反応は様々で、すぐにどうこうするという結論がでるものではない。
「皆でって言うのは簡単だけど、これ以上難しいことはない‥‥」
 満は呟く。考えたことはいっぱいあるがまだ言葉にするのは難しいところもある。
「‥‥してもらうんじゃなく動き出す事を一人ひとり考える事で初めて始められる。狂いの為じゃなく、心の為にそれを目標にしたい」
 満はその想いをしっかりと胸に抱く。
 話をきいてざわめく中、やってきた篝はあたりの様子から旅のことを話したのだと知る。
「ただ、それが生んだ悲しい終わりもあると忘れない事だ」
 やるのは悪くないが、そちらに意識を向けて過去を忘れてしまっては意味がない。
 と、ずっとこの話をしているわけにもいかない。
 どこからか音が流れ始める。
 その音に、集まったものたちは惹かれ始める。
 重なっていく音。
 今まで加わることのなかった音も、そこへと重なる。
 歌声で、ギターで、フルートで、ヴァイオリンで。
 ふと、淡い蛍火のようは光が降り注いでくる。
 それは篝の生み出すものだ。
 今までの反乱で亡くなった者たちの姿が、共に演奏の輪へと加わっていく。
 彼らも楽しげに音を生み出す。
 それは幻でなく、共に歌い奏でているように。
 誰もが、音を生むことを心から楽しんでいた。



 音の重なりに、心は正直に。
 今ある音がそのうち実を結ぶ。
 昔奏でられた音も今の音へとつながっていく。
 今の音は未来の音へとつながっていく。
 互いをしって一人が考えて動けばきっとこれから前へ進んでいける。
 これからの、この世界の彼らは、少しずつ音を合わせていく。
 ゆっくりとゆっくりと。
 果てない時間をかけて。
 これはその一つの切欠となった出来事の、一部。