七夕ドラマ再びアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 玲梛夜
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 9.4万円
参加人数 8人
サポート 1人
期間 08/07〜08/11

●本文

「8月7日も七夕っちゃー七夕だよな」
「だな」
「ですね」
 少しばかり薄暗い会議室。そこで彼らは話をしていた。
「あの七夕ドラマの続きがみてみたい」
「お」
 表情を見ればすぐにのった、という様子。
 にやり、と笑って言葉が続けられていく。
「へたれ彦星のその後、みたいな‥‥あれで織姫と幸せになれるとは思わないんだよな‥‥」
「ああ、まだ何か起こりそうだよな」
「幼馴染も姉上もな」
「織姫サイドも何があってもおかしくないし」
 だんだんと盛り上がってくる話に、新米スタッフは溜息をついた。
 この流れは、もう実行される流れだ。
「‥‥やるんですか?」
「やるに決まってるだろ」
「そうだ!」
 上司二人に逆らうこともできず。
 こうしてとんとん拍子にドラマの作製が決定されるのでした。

 ドラマあらすじ
 へたれ彦星は天の川をわたり、織姫とであった。
 だがしかし、そこで終る彼らではなかったのだ。
 あれから一ヶ月、彼らはどうしているのか‥‥

 補足
 ドラマの結末については話し合って決める。彦星が織姫とよりを戻そうが、新しく恋をしようが、自由。
 衣装についてはそれぞれの希望を最大限叶えるよう努力するが、一般的範疇からは外れないように。
 撮影クルーはこちらでほぼ用意だが、関わりたいと思う方がいるなら、役者以外の方、たとえば小道具、メイク、演出等の協力者も歓迎。

●今回の参加者

 fa0898 シヴェル・マクスウェル(22歳・♀・熊)
 fa0911 鷹見 仁(17歳・♂・鷹)
 fa1463 姫乃 唯(15歳・♀・小鳥)
 fa2495 椿(20歳・♂・小鳥)
 fa3369 桜 美琴(30歳・♀・猫)
 fa3487 ラリー・タウンゼント(28歳・♂・一角獣)
 fa3516 春雨サラダ(19歳・♀・兎)
 fa4002 西村 哲也(25歳・♂・ハムスター)

●リプレイ本文

●彦星、絶賛へたれ中
「コベコっ! 俺にはもうお前と煌と姉様しかいないよ‥‥!」
 天の川のほとり、彦星(西村 哲也(fa4002))はひしっと愛牛、コベコへと抱きつき、べそべそと泣いていた。
「織姫が会ってくれない‥‥きっと俺がダメな男だから織姫に捨てら、捨て‥‥」
 必死で言葉を飲み込む彦星。
 そんな彼を、木の影から見守るのは綾(姫乃 唯(fa1463))という少女。
 彼女はひっそり、彦星に想いを寄せていた。
「今がチャンスですわ! しっかりやらなくては‥‥!」
 と、彼女の傍を風が駆ける。風を作っていた者は、空腹に耐えかねて彦星の所へたどり着く前に、ばたりと倒れた。
「あ、あとちょっとなのに‥‥お、お腹がっ‥‥」
 彦星から少し離れた所。コベコは気がついてふんふん鼻をならしながら彦星に行き倒れている者を教えた。
「! 行き倒れ‥‥コベコ偉いよ」
 ぶもっ、と自慢気に鳴くコベコを褒め、彦星は倒れている人物をつついてみる。どうやら黒緑翼の鵲らしく、翼色は薄い。
 彦星が控えめに声をかけると彼は薄っすらと目を開けた。そして一言。
「‥‥お、お腹、空い、た‥‥」
 その言葉を最後、鵲は力尽きたのだった。

●姉上、一撃を放つ
「彦星、襟がずれて‥‥背中は誰?」
「お腹が空いているそうです、姉様」
「それならお菓子が‥‥」
 彦星の姉、月華(桜 美琴(fa3369))は戸棚から菓子を取り出した。
 と、同時に彦星に引きずられてきた者はそれを奪うように食す。
 その勢いに二人は驚きを隠せない。
「‥‥御馳走様でした‥‥って、ああ、彦星! ごめんごめん! うっかりしっかり橋を‥‥なんだっけ‥‥そうかけ忘れて、織姫の所に行けなくてごめんなさいっ」
「橋‥‥川は自力で渡ったよ」
「自力!?」
 驚いた表情を向けられ、彦星はうん、と頷いた。
「す、すごい‥‥これはもう兄貴と呼ばなくては!」
 そして彼は翠(椿(fa2495))と名乗りキラキラと羨望の眼差しを彦星へと向け始める。
「あら、弟分ができてよかったわね。このまま少しはしっかりするといいんだけど」
「俺はしっかりしてます。ところで姉様、何故ご機嫌なんですか?」
「ふふふ、それは‥‥お見合いの話が舞い込んできたのよ! 逃がしてなるものかー!」
 心にしまっておいた方が良さそうな本心を言うほどに浮かれまくりの月華。
 彦星はそんな月華にお相手はどんな人なのかと聞く。そして、どのような人物なのか知り、驚く。
「一回り以上年下の人と見合い!? 年下の兄様!? 大丈夫なの姉様!? その年齢差は犯罪です!!」
「犯罪じゃないわよ」
 蹴りたいところを月花は我慢。我慢していたのだが。
「あれ、蹴りが来ると思ってたのに来ないなんて‥‥気味が悪いです!」
 それには流石にムカっとして、反射的に月華は蹴りを繰り出す。
 もちろん彦星は逃げられるはずも無く、その衝撃によろめき窓へぶつかる。
 窓からは心配で中を見ようとしているコベコの薄桃の鼻先が見え隠れ中。
 そして、その一撃の様子を見ていた翠は、兄貴と慕う彦星にけりを叩き込む月華に感動してすがりつく。
「ね、姐さんと呼ばせて下さい!」
 ひしっとくっつかれて、えぇい邪魔、とばかりに手加減無、月華は翠にも蹴りを。
「姉様、痛いですっ!」
「彦星がいつまでもヘタれてるからよっ! ヘタれる前に煌の所に行ってきて。胡弓の手解きをして貰いたいからそれを伝えてほしいの。私は準備でして後で行くわ」
「何の準備ですか?」
 きょとん、と蹴られて痛い所をさすりながら彦星は問う。
 月華はにっこりと笑った。
「お見合いの準備に決まってるでしょ!」
 繰り出される月華の蹴りで追われるが如く、彦星と翠は部屋から飛び出した。
 走る二人、追いかけるコベコを眺めながら、ふと月華は思い出す。
「‥‥そういえば煌のお兄さんが今、いたような‥‥」

●彦星、ピンチ
 翠、コベコと共に彦星は幼馴染の家へと向かうその途中。
 彦星は、普段の彼からは予想もつかない速さで物影に隠れた。
 コベコと翠もそれに。
「兄貴、どうしたんだよ?」
「静かにっ、み、みつかったら‥‥!」
 彦星が視線を送る先、そこには織姫の友人である都(シヴェル・マクスウェル(fa0898))と従者であるサラサ(春雨サラダ(fa3516))が。
 二人は並んで、彦星宅に向かう様子。
「お、織姫からの最後通告なんて嫌だっ‥‥!」
 必死な彦星をみて、翠は頑張れ兄貴、と心の中で応援。
 そして暫く隠れ、都とサラサに見つからない様に彦星たちは幼馴染宅へ向かう。
 その家では煌(ラリー・タウンゼント(fa3487))にその兄である洸(篠田裕貴)が剣の稽古を終え丁度談笑中。
「煌ーーー!!!」
 煌の姿を見て彦星は走る。その気配に煌は振り向き、勢いあまって躓く彦星を受け止めた。
「‥‥落ち着け。襟が乱れている」
「う、有難う」
 てきぱき、と煌は彦星の服装を整えるその手際の良さは圧巻。
 と、彦星の後ろにいた翠と煌の視線が合う。
 誰だ、という視線を煌が送る中、彦星が兄貴と呼ばれている事も照れつつ自慢しながら翠を紹介。
「7月7日を忘れていたとは‥‥なんと間抜けな」
 呆れた、という表情に翠はテヘ、と笑い返す。
「ところで、何かあったのか?」
「そうなんだ、姉様が、姉様がっ‥‥お見合いをするんだ‥‥!」
「漸く身を固める事が出来そうなのか。良い事ではないか」
 でも、と言う彦星。煌も心中は複雑でこれ以上の言葉は出てこない。
 そんな気まずさを感じてか、洸はぽん、と煌の肩を叩いた。
「煌、彼が彦星?」
「そうです、兄上。彦星、こちらは‥‥」
 煌は兄を紹介しよう、とするのだが、彦星はさっと身を隠すように煌の影へ。そして目が合っては、ワンテンポ遅れて煌の影に収まる。
「嫌われたかな?」
「私や彼の姉‥‥月華以外の人間には常にこのような調子です。私の兄だとわかれば、その内に心を開くようになる筈です」
 そうだといいな、と洸は苦笑する。
「彦星〜! 煌〜!」
 と、愛牛に乗って月華到着。
 しかしその傍らには都とサラサが。
「あ、彦星様逃げないでください〜」
「織姫から伝言を預かってきてる」
「彦星、逃げちゃ駄目よ」
 逃げようとしたが、月華に言われては逆らえるはずもなく。
 今、彦星の目の前には都がいる。
「やあ、久しぶり。今日は織姫からの伝言を伝えに来たんだ」
 都はニヤリと笑い言葉を続ける。
「‥‥織姫は今回は逢いたくないってさ」
「違いますよぅ〜、織姫様は、機織缶詰状態なんですぅ〜」
 サラサは都の言葉にすぐフォローを入れた。だがそれは彦星の耳には届いていない。
 彦星は暫く硬直した後、力の限り、逃走。その俊敏さは言うまでも無く。
「彦星ったら‥‥今は彦星より自分の事ね。煌、胡弓を教えてほしいの。これも好印象の為‥‥いえ、婦女子の嗜みね」
 月華は途中咳き込みつつ、言う。煌はそんな彼女にわかった、と苦笑。
「弦に強く弓を押し付けては良い音は奏でられない。優しく、撫でるように弾くのだ、こちらでしよう」
「ええ」
 煌達は屋敷に入っていく。
 と、サラサは都が何か面白い事をしてやろうと考えるような表情を浮かべているのを見逃さなかった。
「だ、駄目ですよ、何もしちゃ駄目ですよ!」
「はいはい、見てるだけにするよ。ところで‥‥」
 あの鵲は大丈夫なんだろうか。
 呟いて都が指差した先、そこには翠が倒れていた。
 もちろん、空腹で。

●彦星、デートす、る‥‥?
 これはチャンス、だった。彦星が一人でいる。
 2人きりになれるチャンスを綾は逃さなかった。
 ゆっくりと綾は彦星に近づく。
「彦星様」
 優しく呼びかけて。
「コベコ様の事でお話が‥‥」
「コベコ!?」
「はい、最近コベコ様の毛艶がとても良いと思っているのですわ」
 大好きな大好きな牛の話。泣いていたのだが、それが嘘のような笑顔を彦星は浮かべた。
 そして牛トーク。
 暫くは、調子良くとんとんと話は進み、綾も彦星とこうして話せる事が嬉しくあった。
「彦星様とこうしてお話出来るなんて、光栄ですわ」
「そうかな? それで、コベコが‥‥」
 だがやはり尽きる事無い牛トークに綾は耐えられなくなり、控えめに他の話を振る。
 選んだ話は家族。当然のように彦星は月華について話す。
 綾としては、自分についての事も聞いてほしいのだが彦星はそんな気を回せる人間ではない。我慢にも限界がある。
「もう、彦星様ったら、女心が分かっていらっしゃらないんですから! もう知りませんわ!」
「で、姉様も煌も‥‥え?」
 すっと立ち上がり、憤慨しながら綾は去る。
 彦星はその状況を飲み込めていない。
 そして、一人置かれて出した結論は、彼女となら牛トークが思いきりできる、だった。

●そしてその日はやってくる
 姉のお見合いはめでたい、けど姉を取られるようで気持ちはモヤがかかっている彦星。
 ここ数日、翠と共に姉のために色々と頑張ってみたのだがそれはどれもよい方向には向かず、余計に気を逆撫でして蹴りを貰うばかりだった。
 そしてお見合い当日、彦星はコベコと共に朝の散歩へと出かけていた。
 月華は翠に弁当を託す。翠は、くれるのかな、と瞳キラキラ。
「彦星に渡してね、頼んだわよ♪ 途中で食べたら‥‥分ってるわね?」
 最高の笑みの脅しに翠は必死に頷く。けれども三歩でそんな事は忘れただ手元に弁当がある事は喜びへと変わる。
「お腹空いてるんだよね‥‥食べよう」
「渡したばかりでしょう!」
 月華は遠慮なく蹴り、翠に思い出させる。
「あっ、兄貴にお弁当渡します!」
「そうよ、お見合いの邪魔しないでね〜!」
 翠の姿が見えなくなるまで月華は見送る、そして自分は、しっかりこれからお見合いの準備だ。
 その頃彦星は丁度家に帰ろうとしているところ。
 食べちゃ駄目、の言いつけを守り腹ペコで倒れている翠を見つけたのはコベコ。
「翠!?」
「‥‥あ、兄貴‥‥これを」
 彦星は翠に弁当を渡され、そして思う。
 やっぱり姉様は‥‥!
 コベコと共に家へと彦星は帰って行く。その姿を翠は、空腹で気が遠のく中、見送った。
 その頃月華は、見合い相手である銀羽(鷹見 仁(fa0911))と向き合っていた。
 若くて顔が良い、下っ端兵士といった風に月華は感じていた。
「あの‥‥私の方が年上ですが、嫌じゃないですか?」
 月華の問いに
「いえ、そんな事はありません。母が妻にする人は年上が良いと言って聞かせてくれました」
 あら、マザコン? そんな思いが月華の頭をよぎる。
 実際は銀羽は母親思いで誠実。
「そうですか、では仕事はどうですか?」
「仕事ですか‥‥己への静かな自信を持っていれば、慌てなくても自分の能力に相応しい立場につく事ができると思っています」
 にこりと笑顔と共に銀羽は言う。けれどもこれも、月華にちょっとやる気が無いんじゃないのかしら、と思わせる。
 なにやら2人の間には、ズレがあるようだった。
 少しばかり緊張した空気、それを破ったのは、帰ってきた彦星。
「姉様! 姉様!!」
 突然の侵入者に何事だ、と銀羽は身構える。
 けれども姉様という言葉に、弟かと緊張の糸を緩めた。
 その瞬間。
「彦星の御馬鹿!」
 彦星に向かって繰り出された蹴り、は勢いあまって銀羽へヒット。
 銀羽はその力に少しよろめく。
「あ、間違えたっ! ご、ごめんなさいっ」
「いえ、大丈夫です」
 銀羽は苦笑しつつ、彦星と月華を見る。
 ここには自分より月華を必要としている者がいるのだなと思いながら。
「月華さん、このお話は無かった事に‥‥あなたはとても魅力的な女性だが‥‥どうやら私に構っている暇はなさそうですからね」
「‥‥さ、さりげない心遣いが痛いわ‥‥」
「姉様、姉様結婚しないんですね?」
 彦星の言葉にこくん、と月華は頷く。
「姉様っ‥‥!」
 彦星は嬉しい嬉しいと泣き笑う。
「やはり‥‥結局はこうなるのだな」
 と、月華の見合いが心配でそろそろ終わった頃か、とやってきた煌は苦笑しつつ、けれどもどこか嬉しそうに言う。
 そしてそこには都とサラサも。
 都は月華の見合いの相手である銀羽を見合い前にちらりと垣間見ていた。その時は、ん? と思いつつもサラサに釘をぶすぶす刺されまくっていたので言わなかった。けれども破談となった今なら。
「しかし、未来の天将さまとこんなところで顔を合わせるとは思わなかったな」
「未来の天将!?」
 都の言葉に、月華は食いつく。
 そして銀羽を見ると、そう言われてますね、といったような肯定の表情。
「逃がした魚は大きかった‥‥!」
 くぅっと悔しがる月華に、彦星はにっこりと笑いかける。
「姉様、これからもずっと嫁き遅れていてくださいね!」
「余計なお世話!」
 当然の如く、蹴り一発。
「こんな私を好いてくれる酔狂な人は‥‥居ないのかしら‥‥」
「姉様ここにいますここに!」
「月華様、そのうちまた出会いがあります。都様、都様、そろそろ本来の目的を‥‥」
「ああ、そうだった、すっかり忘れてた。本当はこれを届けに来たんだよ」
 サラサは月華を励まし、そして当初の目的を忘れないでくださいと都をつつく。
 都は大げさに忘れていた、というフリをしつつ、彦星へとあるものを渡す。
 それは見事な織物。
「織姫が忙しい合間を縫って彦星のために織った着物。次はこれを着て会いに行くと織姫も喜ぶんじゃないかな?」
 にやりと笑いつつ都は言う。
 彦星は、今までの事は勘違いだったのかとやっと理解。
 そして和やかに一段落の一同を窓の外から見つめるのは、綾。
「彦星様‥‥わたくし、諦めませんわよ!」
 もしかしたらまだ一波乱あるかもしれない彼らの話は、ここで一度、おしまい。