ロクナビ!!:M and Iアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 玲梛夜
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 2.6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 08/16〜08/19

●本文

「平木、次のテーマはイカがいい」
「イカってイカですか、あの食べるイカですか」
「音とイカ。ずいぶん深いテーマじゃないか」
「ありえないテーマです、殴ってあげましょうか」
 打ち合わせ中の一場面。
 どうしようもない上司に平木カオルの青筋は切れそうになる寸前だ。
「イカ好きなんだよ、イカさし、イカめし、イカ焼き‥‥」
「‥‥百円あげるんで食べてきてください。そしてもう帰ってくるな」
「平木、百円で買えるわけ無いだろう!」
 お前の着眼はそこか、と思いながらカオルは力なく笑う。
「テーマは僕が決めるんで、あなたはそのお好きなイカについて一人で考察してください」
 もうこの上司嫌。
 そんなことを思いながらカオルはテーマを考えるのだった。

『ロクナビ!!』
 この番組はロック中心音楽番組なのだが歌うことのない番組だ。
 毎回出されるテーマについてトークをするのだ。

 テーマは毎回、『音』と、『何か』
 第一回目のその『何か』は『意思』
 自分達の奏でる『音』と、『意思』について語って頂きたい。

 テーマに関してどのような話をするのか、それはお任せ。
 どんな話をしてくれるのか、楽しみである。

●今回の参加者

 fa0244 愛瀬りな(21歳・♀・猫)
 fa0379 星野 宇海(26歳・♀・竜)
 fa1376 ラシア・エルミナール(17歳・♀・蝙蝠)
 fa2174 縞榮(34歳・♂・リス)
 fa3004 ラム・セリアディア(14歳・♀・リス)
 fa3461 美日郷 司(27歳・♂・蝙蝠)
 fa3920 Neiro(21歳・♀・蝙蝠)
 fa4254 氷桜(25歳・♂・狼)

●リプレイ本文

●収録開始の前に
「あ」
 平木カオルはNeiro(fa3920)を見つけ、笑顔を浮かべた。
「連続でありがとうございます」
「今回もお世話になるわ、どうぞよろしくね」
「お世話になってるのはこっちかもしれませんね」
 その言葉に、Neiroも笑う。
 と、カオルは背後から呼ばれる。振り向くと星野 宇海(fa0379)がそこにいた。
「カオルさんと私は初対面ですけれど、弟がお世話になってますわね。今日はよろしくお願いしますわ。あら、今度のお仕事は知り合いの方が多いのね、気楽にできそうですわね」
「弟さん‥‥ああ、はい。こちらこそよろしくお願いします」
 カオルは少し記憶を手繰って、そして思い当たり有、と宇海へぺこりと頭を下げた。
「ところで、イカはよろしいんですの?」
「え?」
「‥‥カオルも難儀な上司を持ったものだな。俺も同じようなものか‥‥」
 宇海の隣、美日郷 司(fa3461)は溜息一つつきつつ言う。
「‥‥上司のイカ好きはそんなに広まっているんですか‥‥」
 カオルは司と同じように、深く深く、溜息をついた。

●音楽で意思疎通
 OPと共に、今日の出演者入場。
 白基調のセットは相変わらず、だ。
 最初にカメラに向かって挨拶したのは愛瀬りな(fa0244)。
「こんばんは、愛背りなです! 音楽の世界の見聞を広めたい、と思い参加させていただきました。皆様と楽しくお話&色々な音楽観、ロック観を学べれば幸いです♪ 皆様、意思の強そうな方ばかり☆ どうぞよろしくお願いいたします」
「何か今回は知り合い多いね。これなら気楽に話が出来そうだ。こう見えても初対面には遠慮するたちだし」
 と、ジョーク交えつつラシア・エルミナール(fa1376)は手をひらひらと。
 その次は氷桜(fa4254)。
「‥‥舞台歌手志望の氷桜だ。今は日雇いのスタントと、趣味で作詞をしている。現在勉強中の音楽をより深め今後の指針にしたい」
 元気にラム・セリアディア(fa3004)も。
「こんにちはー! ラム・セリアディアでっす!! お兄ちゃん&お姉ちゃんとお話できるの凄く楽しみっ! よろしくお願いしまっす!」
 そして縞榮(fa2174)、宇海、司、Neiroもそれぞれ自己紹介をし、話は本題へ。
「音と意思‥‥かぁ。改めて考えると、音楽に対して『意思を持って』っていうのは結構少ない‥‥かも? 歌うのが好き! ってのは本能な気もするしなぁ」
「‥‥他人の意思を感じる瞬間は、どんな時だ?」
 と、氷桜は皆に問う。それに最初に答えたのは司だった。
「‥‥意思を感じるのは、同じ音楽を奏でている時‥‥だな」
 皆の視線を受け司は続ける。
「音を聞けば‥‥大体分るからな‥‥音色は人が思う以上に思想や感情が出る‥‥セッションは‥‥それが面白いんだが‥‥な。これは‥‥音楽をやる奴なら‥‥分るんじゃないのか‥‥意志疎通‥‥とでも言うのか?」
「音楽で意思疎通かぁ‥‥できるよ。音楽は世界共通‥‥ってお約束出すまでも無いね。音は嘘をつかない‥‥ってのはちょっと格好付けすぎかもしれないけど、本当に音楽が好きな奴ならそいつの歌なり演奏なりをじっくり聴けば分かるんじゃないかな」
「ラシアも可能だと思うか‥‥俺の場合‥‥話すより音を聞いてもらったほうが‥‥早い‥‥」
「なるほど〜、奥が深いです!」
 りなは司の言葉に頷き、笑顔を浮かべた。

●込める意思
「‥‥あと、もう一つ聞いてみたいことがあるんだが‥‥いいか?」
「何だろう! お兄ちゃんどうぞ!」
 氷桜の質問二つ目をラムは促す。
「‥‥何を思い歌うのか、ということだ‥‥込める意思、というのものか」
「あたしも気になるね。音にどんな意思を込めて演ってるか。歌う側のあたしとしては演奏する側の考えも知っておきたいね」
 氷桜の質問にラシアがプラスする。最初に問いに答えたのはりなだった。
「私は、そうですね‥‥やはり聞いてくださる方でしょうか。昔は歌うことにコンプレックスもあったのですが、経験を積んでそれも少しずつ薄れて‥‥前は上手く歌おう! と必死でしたが今は聞いてくださる方の心に残るように歌おう! という気持ちが強いですね。曲のメッセージ、あたしの感情が伝わりますように‥‥と♪」
「あたしが歌を書く時いつも思うのは、この歌を聴いて一人でも多くの人が何か『きっかけ』を掴んでくれたらいいなってことよ。あたしの歌はあたし自身が学び、経験したことを言葉にしているの。もちろんポジティブなメッセージばかりでなく、ネガティブなメッセージが込められている事もあるわ。でもそれは決して『世の中には救いがない』って事を伝えたいんじゃなくて、『こんな辛い事があってもあたしはこうして笑って生きている』『いつかまた笑える時が来る』っていう事を伝えたいのよ」
 偽りなく、等身大の自分を表現するNeiroのスタイルを言葉にして確認するように、彼女は言う。そして氷桜にあなたは、と返す。
「‥‥未熟な俺の歌でも聴いてくれるものたちに対する感謝‥‥かな」
 氷桜は少し照れながら言う。
「演奏する側としては‥‥まぁ偶然こうやって楽器を手にして色々と自分の意思を込めた曲を奏でたりしているわけなんだが‥‥」
 と、榮はサックスを取り出す。
「昔言葉がない時代に意志を伝えるために音を発したりしたとかいう感じだと思うがね。相手に意思を伝える手段の一つが音であると思っている。それが次第に歌になり言葉が付け加えられるようになって意志を容易に伝えることが出来やすくなっていったんだと思う。だから、自分の心の奥に秘める物を表現する物の一つが音であるということかな? その辺が他の人間は、動きだったり表情だったり絵だったりするわけなんだろうね」
 榮は手にあるサックスを一撫で、そして続けた。
「私のサックスとの出会いは高校時代‥‥それ以前から色々と楽器には触れさせられていたんだが、自分の意思で楽器を選んだのはこれが最初だったんだ。自分の意思を込めた曲を初めて作った時は感動を覚えたね。もちろん自己満足で相手に伝わるかもわからない‥‥だけど、成し遂げたときの達成感は凄い物だったよ‥‥今にして聞いてみると、稚拙であまりいい出来ではなかったけどね。意志と言うよりは、簡単な音階の変化だけで、明るい気持ちになったり、悲しい気持ちになったり、猛々しい気持ちになったり‥‥音楽って凄いよな」
 ちょっと話が逸れてしまったかな、と榮は苦笑。そして話は元に戻り、宇海が語りだす。
「私はその歌の気持ち‥‥というのかしら? 一番伝えたい『感情』を思いながら歌いますわね♪ たまに感情移入しすぎて‥‥帰って来れなくなりますの。そういう意味の『思い』でないなら‥‥大切な人かしらね。家族や仲間に対する想いは私の歌の根底にあると思いますわ、そして聞いて下さる方達の顔を想像して歌いますわ」
「‥‥なるほど‥‥勉強になった、ありがとう」
 それぞれの言葉を氷桜は受け止め、また一つの糧としていく。
 と、Neiroは次はあたしの質問、と微笑んだ。

●きっかけ
「皆が音楽業界に入ったきっかけを訊きたいわ」
「在り来たりですけれど‥‥父が音楽人なんですの。だから自然に‥‥ですわねぇ‥‥」
「俺も両親は音楽家だから‥‥幼い頃から自分も入るものだと思っていた‥‥もっとも‥‥クラッシックだが‥‥これでも一応そっちの出身だ‥‥気が付けば‥‥BLUE‐Mに居るな‥‥」
「あ、でも直接の原因はツカちゃんかも?」
 宇海は笑いながら司の方を見る。司はというと何故だと少し不思議そうで。宇海は言葉を続ける。
「私が9歳くらいの時に一緒にピアノを習ってまして‥‥下手くそって言われましたの! だからいつか見返してやる、ピアノは下手だけど歌は歌えるのよって!」
「‥‥負けず嫌いな‥‥子供の言葉だから‥‥本気にするな‥‥そう言えば幼い頃に『大きくなったら私の後ろで演奏しなさい!』と言われたような‥‥洗脳なのか‥‥?」
 最初は苦笑していたものの、過去を思い出しながら司は遠い目に。
 そんな司を放置、宇海は他の皆さんは、と促す。
「この音楽業界に入れたのも、どっちかというと偶然、ね。アメリカにいた頃に、街角で歌ってたら声かけられて。ひょいひょい話に乗っかってったら、日本でデビューしてたのよね。自分の意思で掴み取った! というよりは、運良く流された、て感じかな。勿論、歌うのは理由もなく大好きだったから、それが仕事に出来て嬉しかったけど♪」
 答えたのはラム。笑顔浮かべて、そして言葉をまた続ける。
「ただ、ちゃんとお客さんに聞けるものに! 楽しめるものに! というプロ意識は芽生えたかも。今までは本当に好き勝手! だったから‥‥ほとんど即興で歌ってたり、ギター持ってるくせにアカペラだったり」
 てへっといたずらっ子のような笑み。続いて氷桜も。
「‥‥誰かに夢や目標を与えられる存在になりたかったから‥‥昔とは逆に、な」
「あら、なんだか意味深発言ね」
 Neiroはフフ、と笑みを浮かべたがそこで言葉を止める。ツッコミをするとしたら収録後。

●原動力
「それじゃあ私からも‥‥音楽を続ける原動力を答えていただければ嬉しいですわ。その前に自分でも答えますわね」
 宇海は訊くならまず自分から、と自分の持つ答えを話し始める。
「やはりやはり好きという感情ですわね♪ 歌いたくて堪らないという衝動の様なモノ‥‥本能に近い何か‥‥かしら? この年になって歌っているのも、そのせいかしらね? 死ぬ瞬間まで歌っていられたら‥‥本望ですわ♪ ツカちゃんは‥‥私の弟の巽かしら?」
 いたずらっ子のように宇海は司に微笑んでバトンパス。もちろん司は振られたからには答えなくてはいけない雰囲気に、慌てる。
「ま、まぁ‥‥それも理由の一つだが‥‥巽が居なければ来なかったし‥‥」
 司の声はボソボソと小さくなっていく。が、このままではいけないと気を取り直し答える。
「何もない所から紡ぎ出される音の不思議さ‥‥かもしれない‥‥無から有を生み出せる感動‥‥それが‥‥止められない理由かもしれない‥‥」
「あたしも似たようなもんあるかな? 単純に歌うことが好き‥‥って言うのが一番だけど、もうちょっと掘り下げるならノって来たときに感じられるお客サンとの一体感って奴かな。あの感覚が好きなんだよ。あの感覚を覚えたらやめられないね」
「原動力‥‥何を想い歌うのかと同じになっちゃいますが、聴いてくださる方ですねっ」
「そうね‥‥あたしを心から支えてくれる人達の存在。あたしの歌を聴いて応援してくれるファンや、あたしの活躍を心から祝福してくれる友人。そして何があってもあたしを受け止めてくれる家族‥‥みんな素晴らしくて、あたしの誇りよ」
「あたしもっ! 時に厳しい評価をくだされることもあるけれど、反省させてくれたり『じゃあ次はこうしよう!』ってアイディアにもなるしっ。お客様、というよりは先生に近いよねー」
 りな、Neiro、そしてラムの思う事は重なる。
 けれどもそれがまったく同じ意思からできているわけはなく。
「皆がいるから、だからくじけそうな時や、行き詰った時にいつも自分に言い聞かせるの。『こんなことでへこたれていられない、みんなが支えてくれてるんだから!』ってね。世界にあたしを支えてくれる人が一人でもいる限り、あたしは歌を通してその気持ちにこたえ続けたいと思ってるわ」
「‥‥考えたら『聴いてくれる人の意思が、あたしを動かしてる』のかも。お客さんを喜ばせたい! というあたしの意思と、『ラムにこんな曲歌ってほしい』という聴いてくれる人の意思。勿論、媚びて100%合わせるわけではなく、あたし色に染める。うん、そんな感じ、かな☆」
「‥‥皆それぞれだな‥‥俺は‥‥偏に夢の実現のためだが、確かに聞いてくれる者は大事だな」
「そうですわね、皆さん色々。ありがとうございましたわ」
 質問をした宇海の言葉で、一区切り。
「それじゃあ他にもお話しよう!」
 そしてまた、音楽と意思についてのトークは続いていく。

●収録終って
「お疲れ様でした、放送の時も、ちょこっとカットでいけそうです」
「本日は有意義な時間をありがとうございました♪」
「お疲れ、諸君!」
 収録後のスタジオ。
 労いあう中にいつのまにかカオルの上司も、いた。
「! 愛瀬君!!」
「何でしょう?」
 と、その上司は挙動不審。
「そ、そのTシャツ‥‥!!」
 彼が指差す先、りなの黒ピタTシャツの背中には小さく『烏賊』と白文字で。
「ど、どこで買ったんだい!?」
「‥‥そこまで烏賊に汚染されてるんですか‥‥」
 大興奮の上司にカオルは冷たい視線を。
 その様子をみてラシアは一言。
「誰かさ、背中に書いてあげれば?」
「‥‥よし、俺が書こう‥‥」
 氷桜はスタッフからマジックを借りて、彼の背後に詰め寄る。
 その後背中に文字が書かれたか、書かれなかったかは‥‥知る人ぞ知る。