【AbySS】開幕狂騒曲アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
玲梛夜
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1.3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
2人
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期間 |
06/10〜06/16
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●本文
ひっそりと隠された場所にそのライヴハウスAbySSはあった。
地下に続く階段は長くて螺旋状。それを下ると広い広い、ホール。
まだ真新しい匂いがそこには満ちていた。
と、その長い螺旋階段を下りてくる人物が一人。薄暗いホールに立つ人物を見つけてにこりと笑った。
「いないのかと思ったー、おめでとおばちゃん」
「おばちゃんて言わないで、甥っ子」
「あっは、ごめん。メアちゃんおめでと」
ありがとう、と平木メア(ひらぎ・めあ)は甥に笑って答えた。
「んでも、オペラ歌手引退してなんでライヴハウス、しかもロック」
「ロック大好きなのよ。でもね、でもね、私感化されやすいからクラシックでとる音‥‥拍とロックでとる拍が混ざるの、そしてそれを先生に言われ続けてたわけ‥‥!」
くぅっとメアは唇をかみ締めながら言う。
それを甥はみてただただ苦笑するだけだ。
「じゃあ盛大にお披露目やらないとね、おばちゃ‥‥メアちゃん」
きっと鋭い視線をメアから受けて彼女の甥は黙り込む。
「そうね、盛大にね! 甥っ子のツテコネも総動員してね」
張り切るメアの後姿を螺旋階段の柵にひじをついたまま甥である平木カオル(ひらぎ・かおる)は苦笑しながら見ていた。
「カオルちゃんはあれよね、一応テレビ局の下っ端さんよね、私を満足させてくれそうな音作れる子、ひっぱってきて」
「や、それはプロダクションに依頼したほうが良いと思う」
「そうなの?」
「そう」
しばらくの間メアは考えて、そしてわかったわ、と頷いた。
「テーマとか無くて大丈夫?」
「テーマ? そんなの決まってるわ、お店開くのよ、お披露目なのよ、がんがんに激しい音でわーって盛り上がって、出発を感じさせる曲よ」
「あはは、その擬音でよくわかった」
カオルはやる気満々の叔母をただただ静かに見守っていた。
そして、多々あるプロダクションに依頼が舞い込むのだった。
●リプレイ本文
●笑顔で気合入れてねと
「あぁん、なんで私が来るより先に来てるのー! 鍵は?」
ライヴハウスのホール。出演者の姿を目に止めて階段を降りてくるのはオーナーの平木メア。
「おば‥‥メアちゃん遅い。僕が開けたんだ」
「あら甥っ子、ありがとう。待たせちゃってごめんなさい。私がオーナーの平木メア。メアちゃんって呼んでくれると嬉しいわ」
にこりと笑ったメアと最初視線があったのは明石 丹(fa2837)。
笑顔には笑顔で、丹は返す。
「明石丹です。オープンおめでとうメアちゃん。これからメンバー共々宜しくね。これ、お祝いのお花とケーキ、良かったら貰って下さい。お口に合えばいいんだけど」
ケーキはバター控えめ低カロリーだよ、と丹は付け足しながらメアに渡す。同時に鳥遊光稀(fa3852)もずずいっと花束を。
「オープンおめでとうございます! 記念すべきライヴに参加できてすっげえ嬉しい♪ 満足してもらえるよう、頑張るね。あ、俺は鳥遊光稀です。あとお祝いって事で小さいながらも花束を用意したよ。マコトがピンク用意してたし、真っ白で。メアさん色に染め上げてね☆」
「私もこれを」
同じく花束を一緒に差し出したのはEUREKA(fa3661)。
「Rockには薔薇が似合うかなーと思って。EUREKAです、よろしくね」
微笑と共に差し出した花束からは香りが漂う。
「全部綺麗、有難う。ところで‥‥さっきの私色に染めてはちょっと寒かったわよ、光稀ちゃん」
「嗚呼お願い寒いとか言わないでえええ」
意地悪な笑みに光稀はしゃがみこみ蹲る姿はちょっと微笑ましい。
「鳥遊、邪魔になるぞ、そこ」
そんな光稀を苦笑交じりにひっぱるのは陽守 由良(fa2925)だ。
「陽守由良だ、宜しく頼む。新しいライヴハウス、か。目出度いな、オープンおめでとさん」
そしてMIDOH(fa1126)も挨拶を。
「開店おめでとう。今回は素敵なイベントに参加できて、光栄に思っているよ。あたしは『Elevado』の御堂満里亜、よろしく♪ こっちは妹の‥‥」
「『Elevado』のリーダーを勤めさせていただいております、ローラと申します。開店おめでとうございます。マリアちゃんにくっ付いて見学とお手伝いさせていただこうかなって」
MIDOHの後ろからひょこりとLauraは顔をだしてぺこりとお辞儀。そしてお祝いにと持ってきたワインを差し出す。
「ワイン! あ、もう手がいっぱい。カオルちゃん貰って貰って!」
「ケーキも貰うよ」
「そうだ、皆で休憩の際に食えるように豚キムチ炒飯とキムチ鍋を作ろうと思ってるんだけど、いいか?」
MIDOHに勿論と答え、メアは厨房に行ってらっしゃいと言う。
「ありがと。あ、ドラム借りる気満々だから後で一発叩かせて貰うよ」
カオルはケーキにワインを受け取り、そしてMIDOHとLauraを厨房へと案内。
メアはくるっと、ラシア・エルミナール(fa1376)の方を向いた。
「ラシア・エルミナールだよ。栄えあるお披露目ライヴ、きっちり盛り上げていいスタートを切ってやろうじゃない。ロック好きならあたしだって負けてないし、オーナーとは気が合うかもね」
そしてラシアの隣にいた嶺雅も元気良く。
「初めまして! 俺も元々声楽やってたから親近感覚えて挨拶に来ました!! これから頑張ってネ? また機会があったら遊びに来たいし! あとflickerっていうバンドを宜しく!」
「flickerね、しっかり覚えたわ。声楽も楽しいけど、ロックの方がもっと楽しいのよね。後でお話しましょうー!」
そしてメアは残る、宇津木 驚(fa3847)とアリエラ(fa3867)に顔を向ける。
「アリエラです、初舞台なのですよ〜ドキドキなのです♪ 宜しくお願いします!」
「宇津木驚です。アリエラさんと一緒に参加だ、宜しく」
ええ、とメアは頷く。丁度MIDOH達も厨房から戻ってきた所。
メアは全員に笑顔を向けて一言。
「とっても楽しみ。気合入れてね」
●テンションあがってるのどうしよう!
開店の日、その最初のライヴ前にオーナーのメアは舞台に立つ。
「おめでとうの言葉、有難う。とっても幸せ、皆楽しんでいってください。記念すべき今日、演奏してくれる子たちは三組。もうすぐ開演です、期待してください」
メアの挨拶後、軽く拍手。
今日ここに来ているのは通りすがりの若者が多い。業界関係者もいたりするのだが大抵は隅に立っていた。
カオルもそんな一人で、挨拶後メアはそこへ走る。
「挨拶ご苦労様」
「有難う、テンションあがってるのどうしよう!」
「‥‥暴れないで、ね?」
言っても無駄だとわかってはいるけれどもカオルは言う。
そして、AbySSの最初の一歩は刻まれる。
●DOGEAR 焔花〜edn〜
驚は青のダメージジーンズ、白のタンクトップに袖を雑に切ったようなジージャン、そしてショルダーキーボードを。
アリエラはフワフワの髪をサイドでポニーテール、赤系グラデーションのフリルキャミ姿でエレキギターを持ちヘッドセットマイクを装着。
二人のライヴが始まる。
前奏はキーボードの音だけ。
そしてアリエラのベビーボイスが重なる。
「 咲く夜空に 舞い上がる一輪の花
煌く焔に 心ときめき明日を夢見る
僕達の夢に届け 冬の焔花 」
ギターの音が加わり局長はノリ良くアップテンポに。
「 去り際に背中で感じた 夜空の花火
僕達の未来を祝う 祝砲のようだね
確かに見える 遠く離れた遙かなるFRONTIER
其処に向かい 僕らは歩いていく 」
最初のように静かに、けれども今度はだんだんとテンポを上げ、そして曲調が変わっていく。
スマートでパワフルなカッティングのギターソロ。
アリエラが舞台を走り盛り上げると観客は答える。
転がり落ちるような、元気な曲調。
キーボードも加わり賑やかに。
「 恐いものな・ん・て・何もないよ! 」
元気なアリエラの声が響く。
「 だから、ねぇ 新しい世界を もっと見せてよ! Myダーリン
一緒に行くよ? 地平の果てまでも ずっとずっと
だから、ねぇ 連れて行ってよ 夢の彼方に! Myダーリン
Walk a way 二人なら大丈夫
新天地目指して駆け上る 果てない道もきっと楽園
Walk the life 手を放さないでね
I will go with you forever! 」
流れるような英語のハモリ。驚の声がアリエラに重なる。
ラストに近づくにつれて音は華やかに。
最後はジャンプでフィニッシュ!
と、舞台の二人とメアの視線が合う。
満足気にお疲れ様、と言っているような笑顔だった。
●flicker Invincible
白のロングコートに黒のノースリーブミニタイトワンピース、そしてブーツも同じく黒、髪もアップにしちょっとシャープな印象のEUREKAが開店を祝う。
「Congratulations! 『AbySS』starts! 今から走り出すAbySSには、openよりstartがお似合い♪ 今宵のflicker、Drums&SubVocalはMIDOH、Keyboardは私、EUREKA、そしてVocalはラシアの三姫!」
一度言葉を切ってEUREKAは見守るメアに視線を投げ、にこりと笑顔を向ける。
「無敵のLadyメア&AbySS&Audienceに捧げるは、その名も無敵『Invincible』‥‥Here we go!」
EUREKAの紹介が終ると同時にライヴ開始。
MIDOHは白のシャツとズボン、靴にダブルボタンと大きなバックルのついた妹お手製の白い、ぱっとみ腰丈ショート、実際ロングコート、を翻しながらドラムを叩く。
その力強くもあるドラムにEUREKAのキーボードの音とラシアの声が、重なっていく。
黒のロングコートに片足と腹部と、露出有りな服装にテンガロンハットをかぶるラシア。マイクを握り気合は十分。
虹をイメージさせるカラフルな照明の中、まだリズムを刻む程の音にラシアの声が曲に合わさる。
「 はるか遠くの空にかかる虹目指して
小さな鞄一つ持って歩き出す
どんなに速く歩いても すぐには着けない
「ドコニアルノ?」と聞いても 答えてはくれない 」
刻むだけの音が突然パワフルに。音は華やかに派手に。
それはラシアのパワーヴォーカルに合わさっても引けをとらないほど。
EUREKAの声も一瞬重なる。
「 Let’s exceed that rainbow.
Because you may take time
諦めなきゃ きっと辿り着く 」
三人の声が重なり、綺麗なハーモニーを奏でる。
まだまだ本領は出していない。
「 握り締めたこの小さな灯を 離さない(離さない)
両手に包み込んで 守るから(守るから)
雨に打たれ風に吹かれても まだ諦めない(諦めない)
「暗闇に迷い込んだとしても」 」
ラシアの声にあわせてMIDOHのコーラス。
十分盛り上がれる音にそれ以上を与える。
と、疾走していた音はテンポダウンして雰囲気を変えていく。
照明は色の数を減らし、瞬間消え、それぞれにスポットライト。
「 包み込んだ灯火 そっと差し出した
優しいあの光 強く道照らし出す
この暗闇を越えたその先が晴れているなら
瞳輝かせてまた歩こう
胸の奥揺らぎ続けてる 想いを抱いて
何処までも続く道を行こう
Let’s exceed that rainbow.(Let’s exceed that rainbow.)
諦めなきゃ きっと辿り着く 」
穏やかな音は途中から徐々に盛り上がり、それにあわせて照明も増えていく。
ラストは三人の声を合わせて思い切り弾ける。
鋭く声も音もカットアウト。
一瞬で静けさゼロはその余韻を十分に、引き立たせた。
●アドリバティレイア 夏夜−Midsummer eve CD−
「楽しもうね二人とも」
「鳥遊のお披露目も兼ねてるしな」
「二人の足引っ張らないように、でも何より三人で一緒に楽しめて聞いてる人にもそれ伝えられるといいな!」
黒のレザーパンツ、肩付近まで開いた襟刳りの大きなシャツからはトライバルが少し覘く丹。
黒のデニムパンツにスタッズベルトとグレーのタンクトップを合わせた由良。
光稀はランニングとサイドが編み上げになっているパンツを。
そんな三人の右手首には揃いのリストバンド。
それぞれ楽器を持って舞台に立つ。由良のMCの締めは光稀の紹介。
「ライヴハウスオープンも目出度いが、新メンバー加入っつー目出度いことがあったんで、紹介するぜ。ギターとボーカルをこなす鳥遊光稀」
光稀はぺこっとお辞儀をしてギターを軽く鳴らす。
「さて、演るか」
由良の言葉に二人は頷く。
「 3・2・1
3・2・1 LIBERTIES! 」
音は無く、囁く様に重なる丹と光稀の声。
それは観客に呼びかけ煽るように弾け、一気に駆ける様な旋律を奏でる。
「 短夜を楽しもう FIREFLYER
予感より速く燃え上がれ
瞼の裏でチカチカに明るい LOVE CALL
とても眠れはしないでしょう! 」
由良のキーボードは丁寧に、リズムを崩さないように奏でられ、丹のベース、光稀のギターもそれぞれ個性を前面に。
その三人の音にのってツインボーカルも冴える。
英語は爽快に歌を紡ぎ、そしてテンションも上昇。
と、音が少しだけ落とされ丹の声だけが響く。
「 ステレオタイプすり替えてみたところで
ブレーキはきかないんだから
往生際 調子はイイ感じ? 」
そして再び力強く。
「 さあ鐘鳴らして! 」
再び重なる丹と光稀の声。
二人は背中を合わせて音を鳴らす。
勢いに乗せ、そのまま突き進む三人の音。
「 今宵ばかりは譲れぬ MIDNIGHT
月の魔力か香る誘いよ
チープなセリフでやっと飾れば
振り向きざまの瞳に KNOCKDOWN!
追い風に煽られて STARTING LINE
始まっちゃいない
踏み出しちゃいない
だから今夜 」
音は突然、止まる
しかしまだ曲は終っていない。
ざわつく中で三人は手を上げて一緒にやろう、と観客に示す。
一緒に指折りしよう、と。
「 3・2・1 」
観客と一体になり曲のラストを。
三人の瞳にはもちろんメアが楽しそうに一緒にしている姿が映っていた。
そして手をつないで、深々と礼。
●また来てね
「皆有難う! もう私一緒に舞台上がっちゃおうかとっ」
閉店後、閑散としたホールには関係者のみ。
「メアちゃんの期待に答えれたみたいだね、よかった」
丹がにこにこ笑顔で言うとばっちり、とメアは返す。
と、アリエラが色紙を持って一歩前へ。
「くれるの?」
「はい、ここにいない人も含めてグループ全員の寄書です! どうぞ〜」
「それにプレミアつくよう頑張らなくちゃ」
「将来値打ち物になるようにね」
EUREKAと丹の言葉に皆頷く。
「いつの間に、嬉しいわ、ありがとう! お店に飾らなきゃ、どこにしようかしらー」
色紙を受け取ったメアを見て、由良は傍にいたカオルに言った。
「メアさんてノリが良い‥‥なんつーか見てて飽きない人だよな。カオル‥‥さんの方がオーナーっぽい‥‥ってのは言ったら怒られそうだな」
「呼び捨てでいいよ。うん、メアちゃんは面白い」
「そう、私はノリがいいの。って由良ちゃん、メアちゃんって呼んでって最初に言ったでしょ?」
二人の会話が聞こえたメアはずずいっと由良に寄り、練習、と一言。
「‥‥メア‥‥さんで勘弁してくれ」
「えー」
「由良、由良頑張れ!」
「陽守、腹括りなよ」
光稀とラシアに言われ、女が苦手な由良はたじたじだ。
「由良ちゃんの宿題ね。皆覚えておいてねー、わかったら挙手」
ノリで、はーいとほぼ全員手を上げる。
しなかったのは困る由良と苦笑のカオル。
笑いの中で、メアは一言全員に向けて一言。
「何はともあれ御苦労様。ライヴの時は、また来てね」
AbySS開店記念初ライヴは、見事に、成功。