真夏の夜のドラマSPアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 玲梛夜
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 8.2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 08/20〜08/24

●本文

「夏といえば」
「肝試し」
「そして恋」
 うわ、また何か言い出すぞ、と彼女は身構えた。
 この上司二人‥‥南野郁夫と北空甲陽のごり押しで最近ドラマを作っているような気がする。
 それでも自分は一番下っ端なのである。
「ドラマのネタですか」
「おう、どっかの学校借りて肝試しアーンドラブだ」
「ベタですね」
「ベタだからこそ、だ」
 うんうん、と二人は頷き合う。
「‥‥どうぞ企画を通してください、ええご自由に」
 もう慣れてしまった、というよう彼女、東谷貴子は溜息をついた。

 ドラマあらすじ
 夏といえば肝試し、ということで近所の幼馴染八人組は夏休み中の学校へと忍び込む。
 学校等は違えども、彼らの友情は厚く、当然の如く、誰が好きだという話も出てくる。
 そして、この肝試しで好きな相手に告白しよう、となったのだった。
 それが成功するかしないかは、それぞれ次第なのである。

 役者募集
 年齢の制限は特になし。幼馴染であって全員が同級生であるという必要は無い。
 学校が違う、などで今はなかなか会えない、などそれぞれ設定は足して貰って構わない。

 補足
 この話では全員が誰かに恋をしていなければならない、ということはありません。
 もちろん応援する人もでてくるはず。
 片思い、三角関係どんとこい。
 ただし、ラスト、最低一組はカップル成立する方向性は変えない。
 また、学校は撮影許可してくれた小学校で行います。
 理科室、音楽室、肝試しルートは考えていただいて構いません。

●今回の参加者

 fa0074 大海 結(14歳・♂・兎)
 fa0984 月岡優斗(12歳・♂・リス)
 fa1463 姫乃 唯(15歳・♀・小鳥)
 fa2640 角倉・雨神名(15歳・♀・一角獣)
 fa2791 サクラ・ヤヴァ(12歳・♀・リス)
 fa3072 草壁 蛍(25歳・♀・狐)
 fa4263 千架(18歳・♂・猫)
 fa4286 ウィルフレッド(8歳・♂・鴉)

●リプレイ本文

●肝試しをしよう!
「肝試ししないか? 皆でさ、元気もだぞ」
「勇気兄さんが言うなら‥‥しょうがないなぁ‥‥」
 夏休み、久しぶりに揃った幼馴染の前で福永 勇気(月岡優斗(fa0984))は肝試ししようと言い出す。その弟である元気(ウィルフレッド(fa4286))も付き合うか、という雰囲気。
「しようしよう!」
 今年から隣町の学校に入学し、久しぶりに幼馴染で遊べる姫神 唯奈(姫乃 唯(fa1463))はノリノリだ。
 そしてホラー大好きな片倉 神名(角倉・雨神名(fa2640))はもちろん大賛成。
「非現実的、だからこそ私がそれを証明するわ」
 科学や機械いじり好き、そして気の強い矢場サクラ(サクラ・ヤヴァ(fa2791))も参加する気満々。
「それなら私が赴任している中学校で。怪談紹介してあげる」
 メンバーの中で最年長、今年中学教師となった草加 雅(草壁 蛍(fa3072))は場所提供をする。
 面白いこと至上主義の雅としては楽しみで仕方が無い。
「千夏ちゃんも行く‥‥?」
「ええ、折角だしね。今日だって久々に会えるって朝から喜んでたのよ」
 春日 朝陽(大海 結(fa0074))は控えめに本宮 千夏(千架(fa4263))へ聞いた。
 朝陽は恐いものが苦手でできれば行きたくないけれども皆が行くのならと心を固める。
「じゃー明日、夜に先生の学校の前で待ち合わせな!」
 大方の事を決めて解散、したのだがこの肝試しの裏計画を知る者たちは戻ってきた。
「援護射撃ばっちりするわ。それに『人の恋路ほど楽しいショーは無い』のよ」
 雅の言葉に神名は頷きながら言う。
「お互い好きあってるのに言い出せないのよね。おせっかいかもしれないけど‥‥」
「これぐらいしないとあの二人は駄目だろ」
「そうそう、だから今まで幼馴染のままだったんだよ」
 そして勇気に唯奈も頷きあう。
「朝陽ももっと早くに言ってくれればいいのになぁ」
「勇気は小さいのに心は大きいわね、先生見直しちゃうわ」
「そう、俺は‥‥って今何気に小さいって言ったし!」
「気のせいよ」
「それより早く計画ねろう!」
 神名はすぱっと話を切りそして計画は立てられていくのだった。

●夜の学校
 夜の学校は静かだった。
 あらかじめあけておいた窓から中へと進入。
「ち、千夏ちゃんそんな大胆な‥‥」
「これくらい普通よ」
 浴衣の裾をまくって、千夏は中へ。他の皆もそれに続く。
「それじゃあ今日のコースのご案内」
「お化けなんていないけど、暗闇を歩くのはドキドキね」
「サクラちゃん強がりじゃないの?」
「そんなことないわ!」 
「はいはい、理科室、階段上がって二階美術室、んで音楽室だな。大丈夫、バレやしねー。もしバレたら先生置いて逃げれば大丈夫だって! 言い訳してくれるしてくれる」
 静かに、音を立てないように扉を開ける。
 そして薄暗い廊下を進んでいく。
「わわ! 廊下の角になにかいたよ! 絶対何かいたもん!」
「え、い、いないわよっ! なにもいないわっ! 怖くなんてないわっ!」
 神名がびくっとし、そしてきゅうっとサクラの服の裾を掴む。
 お化け否定派のサクラは気のせいと強がるもののちょっとびびっていた。
「言ってる事と違って微妙に震えてるぞ、お前」
 苦笑しながら勇気は言う。そして元気にしっかり後ろついてこいよと声をかける。
 すると元気はむっとした表情に。
「そんな心配なんてされなくて大丈夫だよっ!」
「怒るなよ」
 先頭を進んでいた勇気を元気は追い越し進む。
 そして最初のポイント理科室前。
「この理科室はね‥‥呻いて動くのよ人体模型が」
「なんで動くの‥‥?」
 怖がりつつも興味有りと神名が問う。すると雅はにっこり笑みを浮かべ。
「何故なら本物を使っているから、本物を剥製にしているからなのよ。だから時折呻くの『僕の肺は何処? 僕の心臓は何処?』ってね‥‥今もきっとホラ!!」
 ガラっと扉をあけると、カタカタっと人体模型が動く。
「!!」
 と、言ってもひっそり雅が細工し、扉を開けると模型が動くようにしていただけなのだけれども、それを知らない面々は怖がるには十分。
「う、動いたよね、動いたよね!」
「そう? 気のせいじゃないかしら。あ、ホルマリン漬けかわいい〜!」
 朝陽が驚く中、千夏はいたってマイペース。そのマイペースさに裏計画は本当に上手く行くのかとちょっと不安が募る。
 そして唯奈もマイペース。
「あははは、夜見ると何だか不気味〜!」
「‥‥理科室終わって次いくか」
「り、理科室は結局何もなかったわね」
 おいていくぞーと、声をかけながら、次のステージは階段の踊り場。
 唯奈は元気に階段を駆け上がって、そして鏡を覗き込む。
「きゃーっ、血塗れの女の子が映ってる! なぁ〜んだぁ、私のピンクの服が、暗くて赤っぽく見えただけだったぁ!」
「知ってる? 4時44分44秒にこの鏡の前に立つと血塗れの少女が現れるって。まだそんな時間じゃないからまぁ現れないわよね。その少女を見た者は鏡の世界に呑み込まれて二度と元の世界に帰れなくなるそうよ」
「鏡に映るのは自分たちだけよ。ここも何も無し」
 サクラが次、と以降とした時、雅がそういえばと言葉を続けはじめる。
「そういえば‥‥この時計の時間、4時44分で止まってるわね‥‥だからかしら鏡に赤い人影が!」
「きゃ〜〜〜っ!!」
 雅の言葉に、鏡に背を向けていたサクラは振り返らず一番近くにいた勇気に抱きつく。
 勇気も突然の事でちょっと吃驚。
「おい、大丈夫だって。何も映ってないぞ」
「ほ、本当‥‥?」
「‥‥お前もくっついてるのか、朝陽」
 朝陽しっかり‥‥! と、彼の恋を知るものは思う。ついでに、どうせなら千夏にくっついた方が良かったのに、とも思いつつ。
「た、たまたまそこにあなたがいただけで‥‥怖かったからじゃないわよ!」
「はいはい、先生、次行こうぜ」
「そうね、次は美術室よ」
 踊り場の鏡を後にして残りの階段を上がる。
 美術室の扉はしっかり閉まっており、慎重に音を立てないように気を使う。
 美術室には、胸像や、他にもいろいろなものが置いてある。
「あの胸像の眼‥‥涙を流してるわよ、赤い涙を」
 蛍はそう言って、懐中電灯を胸像に向ける。胸像の眼からは流れる赤い一筋(もちろんこれも仕込み)。
「あああああ、あんなの気のせいよ、気のせい!」
 わーっと騒ぐ一方で、唯奈はあたりを見回す。
「どうした、唯奈」
「あれ? 千夏ちゃん何処行っちゃったんだろう?」
「確かに一人足りないよな、朝陽探してきて。よろしく」
「え!?」
「そうだよ朝陽君、探しに行ってあげなよー。私達は先に音楽室に行ってるからね〜」
「ひ、一人で!?」
 それじゃあよろしく、と美術室に朝陽は置いていかれた。
 どうしよう、という思いと一人きりの恐怖で朝陽はしばらく動けなかった。
 けれどもやがて、ぎゅっと拳を握り、怖いと思いつつも今までたどったルートを逆流していくのだった。

●暗闇の中で
「いつの間にかはぐれてしまったみたい‥‥そのうち会えるわよね」
 一人はぐれた千夏はいたってマイペースだった。
 階段の段数を数えたり、踊り場の鏡を何度も覗き込むことに執着していたら一人になってしまっていた。
 カラコロと下駄の音を響かせながら、向かうと言っていた美術室の方へ。
 と、前方から足音が。
 一瞬びくっとするが、千夏はよく眼を凝らす。
 それは、朝陽だった。
 朝陽はまだ千夏がいることに気がついていないらしく、少しおどおどしている。
 千夏は嬉しくなって足早に。その足音がまた良く響き、朝陽はびくっとする。
「朝陽君!」
「あ、千夏ちゃんかぁ〜、吃驚しちゃった」
「驚かせちゃった? ‥‥ごめんね。でも探しに来てくれて嬉しいわ」
 千夏はにこっと笑う。その笑顔に朝陽は少し頬を染めて。
「手繋ごう。別に怖いとかじゃないからね。千夏ちゃんがいなくならないようにだよ」
「うん」
 手を繋いで、二人は歩き出す。
 二人の間に会話は無く、あたりは静かだった。
 朝陽は黙って、そして考えていた。そして今言わないとこの後もずっと言えないかもしれないと、意を決した。
「あのね‥‥僕千夏ちゃんのこと好きなんだ」
「え‥‥」
「千夏ちゃんは僕のこと何とも思ってないかもしれないけど‥‥それだけ言いたかったんだ」
「‥‥私、好きな人がいるの」
「そ、そうなんだ、そっかー、そっか‥‥」
 朝陽はやっぱり駄目か、としょんぼりする。
 でも千夏は満面の笑顔で残りの言葉を伝えた。
「‥‥今一緒に居る人」
「そっか、今一緒‥‥」
 かぁっと顔が赤くなり、へにょんと朝陽は座り込む。
「だ、大丈夫?」
「な、なんか、嬉しくて力が抜けちゃったって言うか‥‥あははは」
「そうなの?」
 朝陽と千夏、互いに見詰め合って笑顔を浮かべる。
 と、何やら少しはなれた所から声が。
 二人は手を繋いだまま、そっちへ向かう。その場所は音楽室。
 開いたままの扉から中をこそ覘くと。
「やーっとあの二人、くっついたな。俺にも相手いねーもんかな‥‥背伸びたら出来るだろうか」
「長かったね〜」
「え、そうだったの!?」
「くっつくとかくっつかないとか‥‥何?」
 幼馴染達が話しているのは自分達の事らしい。
「あ、千夏ちゃんに朝陽君!」
「おめでとー」
「よかったわね」
 朝陽と千夏は照れつつも、その繋いだ手を掲げることで幼馴染達に自分達の事を伝える。
 そして、肝試し、残りのルートを辿るためにまた出発するのだった。