【AbySS】YourHorrorアジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
玲梛夜
|
芸能 |
3Lv以上
|
獣人 |
1Lv以上
|
難度 |
普通
|
報酬 |
6.7万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
09/12〜09/15
|
●本文
ロック中心なライヴハウスAbySS。
オープン前、ビルの地下に続く螺旋階段を下がって誰もいなければオーナー達は厨房にいたり、屋上にいたり、はたまた事務所にいたり。
そしてオーナーである平木メアの今日の出現場所は‥‥ライヴハウス、のクーラーが一番あたるとこだった。
「涼しい‥‥」
「‥‥ちょ、やっぱり寒いよここ」
「だって暑いんだもん」
「効きすぎだよクーラー。まぁ。まだ暑いから気持ちはわかるんだけど‥‥」
半ば呆れつつ、どうにかならないものかな、とカオルは苦笑する。
そして自分もクーラーの風が当たるところへ。
「あー、でもメアちゃんがクーラーの下に立ちたい気持ちわかるかも‥‥これが生ぬるい風とかだったらいやだね」
「生ぬるい‥‥それだわカオルちゃん!」
「え?」
何事か思いついて、メアはカウンターの方へ。そしてそこにおいてあるメモにがーっと何かを書いていた。
きっとライヴのテーマなんだろうな、とカオルは思う。
「じゃーん、これっ!!」
お知らせ。
『Your Horror』
夏も終わったけどまだ暑い!
で、夏の忘れ物、怪談しなくちゃ
それも音にのせて
みんなの怖い話をよろしくね
「‥‥難しいと思うよ、それ」
「やればできる子でしょ、皆。で、カオルちゃん今回もお掃除監督ね」
「やっぱり」
「で、打ち上げは怪談大会!」
「えー‥‥」
不満そうなカオルに、にっこりとメアは笑う。
「そういえば、カオルちゃんって怖いの苦手だっけ‥‥ああ、楽しみ‥‥!」
やる気のメアと、正直勘弁してくれという雰囲気のカオル。
こうしてライヴは催されるのでした。
●リプレイ本文
●ライヴは
「一時預かりね」
「金庫にでも入れといたら安全かな」
「よろしくね、カオルちゃん」
氷桜(fa4254)の危険物一式、一時預かり。
「ここはライヴハウスで音楽を楽しむ所。危険な物持ち込みはもってのほか。自分がライヴ行く時、楽しむ時、危険な物持って行かないでしょ? もちろん行く場所に危険なものはそうそう無いと思うわ。それと同じよ」
「‥‥すまない」
「まぁまぁ、それ位にして‥‥お土産のケーキ食べて、はい」
明石 丹(fa2837)は二つの包みを差し出す。
「抹茶シフォンと、最近はまってるキャロットケーキ。勿論低カロリーだよ」
「ありがとうマコちゃん。そうね、楽しくやりましょう。ライヴ久しぶりって感じだし!」
「初めましてだね、でもカオルさんはロクナビのときにお世話になったお兄さんだよね?」
「こちらこそ、お世話になりました。今日はよろしくね」
月見里 神楽(fa2122)の言葉にカオルはにこりと微笑み、また番組に遊びにきてねと付け足す。
「私はお兄ちゃんがお世話になりました! 来たかったの〜! 頑張ります!」
「お兄ちゃん‥‥ああ、はいはい! 来てくれてありがとう、お兄さんにもよろしく伝えてね」
元気の良い悠奈(fa2726)にメアは言って、そして他方を向く。
「ディーちゃんも、ちーちゃんも今日はよろしくね。とっても楽しみにしてるから」
「テーマが‥‥テーマですからね‥‥」
「ディー、暗黒オーラ全開ね! ふふふ、私も蝋燭しっかり百本持参、打ち上げ楽しみ!」
「え‥‥や、そのやる気は‥‥いらない、よ‥‥」
DESPAIRER(fa2657)と千音鈴(fa3887)の言葉を聞いてカオルの表情は青くなる。そしてメアがそれを、怖いがりさんと煽った。
「そういえば最近、どこかの地下でエレキの音と怪しい声が聞こえるとか‥‥」
「やっ、やめっ‥‥」
自ら相当怖い話しが駄目な事をオープンにしてしまったカオルの災難は、この日最後まで続く。
と、階段から足音。そこには阿野次 のもじ(fa3092)の姿。
「あ、いっちゃん! その姿‥‥」
のもじの姿は黒のゴスロリ、手袋、レースガーター。各種白い逆さ十字架と星をちりばめられ、髑髏の首輪に拳銃ホルダー。
「アニメにあわせてねっ! 死神バンド用の曲、要練り直し必要ぽい未完成だけど。とりあえず1曲皆の前でいってみようと」
そしてのもじの後にピンク系のTシャツとブルージーンズ姿のぇみる(fa2957)も。
「ぇみると言います、今日は宜しくお願いします」
深々とお辞儀して礼。そして頭を上げてぇみるは続ける。
「バックバンド居ないので、バンドさんを頼みたいですけど」
「それは、無理ね。常駐バンドさんなんていないわ。ライヴハウスは箱、中身は自分たちで作るもの。都合良く、なんてないの。今まで出てきてくれた子たちはお互い力貸し合って良いもの作ってくれたの。皆はお仕事としてきてくれてる。お客さんもいて、私も楽しむのが一番だけど商売でもある。だから、不完全なものはお客さんには見せれないわ。それに曲の練り直しは前進していくアーティストなんだからあるわ。けどとりあえずできた曲はお客さんにも自分にも失礼よ。残念だけど今回はぇみるさんとのもじさん、二人は舞台に立ってもらえないわ」
ここまで言って一呼吸彼女は置く。
「舞台には立たせてあげれないけど、見ていくのもお勉強。残るのも帰っちゃうのも自由よ‥‥言葉選ばずに言ってるかもしれないから頭冷やしてくるわ」
そう言ってメアは事務所へ向かう。
「ああ言ってるけどオーナーも残念がってるよ、うん。さ、ライヴの準備始めよう」
カオルはフォローをちょっとだけして、皆に準備を促した。
●Peony Lantern 〜千音鈴&神楽〜
ぼうっと抑え目の照明の中、バックには緋牡丹の影絵が映る。
しんと静まり返ったライヴハウスに響くのは時計の秒針のように規則正しいリズム。
それは神楽がドラムのスティックで生み出す音だ。
そしてパイプオルガン調の音色をキーボードから千音鈴が奏でる。
神楽はゴシックロリータ、千音鈴は緋牡丹のポイント柄の入ったゴシックドレス。色は共に黒。
「 混沌の闇夜 照らし給えPeony Lantern
愛し貴方の元へ 今宵も狂おし想い供に
禍つ夢 恍惚の刻 其の身に満たしてあげる 」
と、曲は三拍子から四拍子へ変化。
やや強めだった音は弱くなる。
「 時計の針重なり 硝子の森に響く靴音
何処へ隠れても無駄よ
貴方と私隔てられるものなど 何一つ無い
欺瞞と虚飾に満ちた世 街は無惨な瓦礫の塊
貴方失うこと 恐れるは愚か
死の果て迄も貴方追う 我が身狂わす想いこそ
無垢に穢れた恐怖 」
音は強まりアクセントにはドラムの音。
それを合図に三拍子のリズムがまた響く。
怪談『牡丹燈篭』をモチーフにした曲はいつのまにか最後のフレーズを残すのみ。
「 罪と罰 泡沫の印 其の身に刻んであげる 」
観客に向かって千音鈴の表情は艶やかに誘うように背徳的に。
最後の一音までしっかりと鳴らし、ライヴハウスは静まり返った。
●Gonna Take You 〜DESPAIRER&神楽〜
神楽の黒と対照的にDESPAIRERの衣装は白のドレス。
その姿が抑え目の照明、闇の中にぼうっと浮かびあがった。存在感は、抜群である。
スローテンポなピアノの音。その音色は静かで透明感が感じられた。
綺麗に響く音にDESPAIRERの歌が折り重なる。
「 自分のヌケガラ そっと見下ろす
恨みも妬みも 一緒に捨てた
残ったものは この気持ちだけ
あなたといたい その想いだけ
この世の全てと比べても あなたの方が重かったから
あなたを失うくらいなら 他の全てを投げ捨ててでも‥‥!
身体を離れ 夜を飛び越え これからあなたを 迎えに行きます
私はあなたを 連れていきます あの娘のいない 別の世界へ
たとえその先が 地獄でも‥‥私は何も 怖くないから
アナタガイレバ ソレデイイカラ 」
捨てられた恋人への想いは断ち難く、自ら幽霊となって相手を連れ去りにいくほどの狂気、悲恋をほんのりと怪談ぽく仕立ててDESPAIRERらしさがでた曲は、歌詞の中に深く深く想いが沈んでいるようだった。
●my fear 〜T‐stone’s〜
神楽はまだ舞台の上。今回は全員へ演奏の協力を受けていた。またドラムの前に神楽は座りなおす。そしてトップを飾った千音鈴もエレ・アコースティックギターを持ってお手伝いに。
ドラムの音と、メロディアスなギターの音で曲は始まった。
薄暗い舞台の上、演奏の二人と、歌い手だけにピンスポットがあたる。
悠奈と氷桜は少し距離をとり、声を合わせる。
「 What do you fear?
Is it a death or a pain? 」
悠奈は裾広がりな白のロングドレス姿で歩み、一人歌う氷桜の傍へ。
そして氷桜の胸に片手を置き、視線を顔のほうへ。
「 I think
It’s now broken
relation breaks
you parting 」
氷桜のパートが終わると悠奈は氷桜の胸に顔を埋め、そのまま歌う。
「 but,another one
It’s stagnation
doesn’t advance now
loose relation continues 」
途中で顔を上げ、そして悠奈はそっと離れた。
「 what do you fear?
Is it a death or a pain? 」
二人声を重ねてまたそっと近づく。
最後は囁くように。
「It’s my fear...」
舞台は暗転し、声だけが響いていた。
●Nighty night 〜丹&神楽〜
青い間接照明の中、ラフに黒シャツとレザーパンツ姿で丹はピアノの前へとスカート揺らす神楽をエスコート。
その後でギターを自らも掲げる。
始まりは切々と、甘いギターの音から。
丹が歌うのは愛憎紙一重の狂愛歌。
「 紙一重とか表裏一体とか
言いあらわすには面倒だから捨ててしまおう
約束は無効 強く欲しいと思うこと
愛することとそれ程違いはないでしょう 」
スローテンポ、優しいピアノの音が、強くなっていく。
それにあわせて丹は観客に視線を向け、より一層煽る。
「 nighty night lover
sew heart sew heart
白く翳る月なにも映さない瞳に寄せて
かつて僕ら見下ろした夜を踏み荒らす 」
徐々に勢いを増した音の最後は、広がり、ライヴハウスに染み渡った。
●待ちに待った?
ライヴも終わり、ちょこっと片付けをして、ライヴハウスに蝋燭の灯りがぼうっと浮かぶ。ムードは満点。
「ちょ、僕帰‥‥」
「駄目だよカオル君、折角なんだから帰っちゃ。懐中電灯で顔、下から照らしたり楽しまないと!」
「そうそう、駄目ですよ〜」
がしぃっと丹と神楽に捕獲されてカオルは引き戻される。
すでに全員スタンバイOK状態。
「さ、私が盆略でお茶点てるわね! いる人は挙手!」
「神楽も錦上添花持ってきました! お湯を注ぐとポットの中でお花が咲くのです!」
「‥‥俺も手製のラスクとデボンシャーティーを‥‥明石氏のには負けるが‥‥糖度は保障する」
氷桜はスコーンやジャムを出す。そして抹茶のケーキにキャロットケーキ。
飲み物は色々とセレクト自由。
「食べるの専門な私としてはこの状況は嬉しいっ!」
「はいじゃあ皆色々行き渡ったし、一番は神楽ちゃーん」
「はーい。ええと‥‥実話なんだけど大丈夫かな? マネージャーさんが通ると、いつも必ず転ぶ廊下があるの。決まって同じ場所、赤いドアの部屋の前ね。あるとき、そこの職員のお姉さんに、よく転ぶんだって冗談ぽく話してたよ。そしたら、数年前の雨の日に、赤いドアの前で転んだ人が居たんだけど、打ち所が悪かったらしくて、そのまま逝ってしまったってお話ししてくれたの。最近は転ばなくなったみたいだから、天国へ行けたのかな?」
「ええ、行けてるわ。きっとそうよ」
神楽にメアは微笑んで言う。そして次、と指名されたのはのもじだった。
「べたな怪談話。夜中にトイレに行くと中から赤い紙いるかい青い紙いるかいの声が赤い紙だと血塗れ青い紙を選ぶと凍死、黄色い世界を選ぶと狂気の世界に連れて行かれるの。うーん、最後の黄色興味あるかも。あと未成年ににぺとりと張り付いて呪いの言葉、紫の鏡紫の鏡紫の鏡‥‥」
「ああ、懐かしいわねそれ! ってカオルちゃん大丈夫?」
「‥‥‥‥え? あ、ちょっと気が‥‥もう今日は最初から地下からエレキの音とか声とか‥‥」
「あ、それ私かもしれない。イヤ! イヤ! ハスタ! まっどさいれんと・ないと・やはとか叫びながら曲作ってるから」
「曲! 折角だから歌って歌って!」
と、曲となるとメアおおはしゃぎ。のもじは一フレーズ、歌う。
「 LADY FANTOM
寿命が縮んでも許してね☆ 巷に地タマに溢れ出す
お掃除の同意人が必要なのさ(えらばれましたオメデトウ)
YOUR TOWN CRAZY CRAZY CRAZY CRA‥‥
他言無用にタゴンも無用 」
「完成が楽しみね」
のもじの歌も聴き終え、話はまた怪談に。
次は氷桜の番だった。
「‥‥怪異では無いが‥‥ちょっと危なかった話だ」
そこで、一息。
「‥‥私用で遠出する際にやけに安いレンタカーを借りたんだが‥‥調子が悪いのかエンジンルームから異音がする‥‥初めは気にならなかったが‥‥段々いらついてな、気を紛らわそうとカーステレオをつけたんだが‥‥これもノイズ交じりでブツブツと呟くようにしか聞こえない。‥‥挙句の果てにカーブの前でブレーキが効かなくなった‥‥半獣化してドアを蹴破って逃げたんだが車はそのまま崖から落ちてしまった‥‥安いからといって安易に借りる物では無いな」
「それ危険だよ氷桜さん! って‥‥皆なんでそんな体験が有るの?!」
悠奈は氷桜にひしっと抱きつきつつ言う。氷桜はそれに照れて真っ赤、硬直する。
「ちーちゃんとディーちゃんは?」
「私が話すと‥‥ねぇ?」
メアの言葉に、意味深な笑みを浮かべて千音鈴は微笑む。そしてその千音鈴の視線はカオルの後ろに固定。カオルはびびりまくりで挙動不審。
「私は‥‥うちのプロダクション‥‥実は、出るんですよね‥‥それに、こういう話しは呼びますからね‥‥ほら、そこにも‥‥」
DESPAIRERの話は、話の内容よりもDESPAIRER自身の雰囲気の方が、怖かった。
そしてその雰囲気の圧されてか、偶然か、蝋燭の炎も揺らめいたりする。
「うっ‥‥も、もう僕駄目かも‥‥」
「あはは、そろそろカオル君もまいってるみたいだし、この辺にしとく? 片付けしてお腹もすいたし‥‥シュウマイ持ってきたんだよ。さっき出しそびれちゃってて、はい、カオル君蓋あけて? 何か食べると落ち着くよ」
丹はシュウマイ入の容器をカオルに差し出す。もうあと一押しで泣いちゃうぞ、という雰囲気のカオルはほっとしたようにそれを受け取った。
シュウマイの入っている重みはしっかりとある。
かぽっと蓋をあけるとそこには。
そこには。
「!!!!!!」
シュウマイが、無い。
「マコちゃんたらいたずらっ子ねー」
「あはは、シュウマイは蓋から外して食べようねー」
「食べる食べる! ってメアちゃんカオルちゃんが!!」
「しっかりしっかり!」
ちょっとしたいたずらのシュウマイドッキリ。
誰もが結果を予想したその引っ掛けに真面目にひっかかったカオルは、しっかり意識が遠のいている。
「ああ、大丈夫よー。良くある事、それよりも皆でシュウマイ食べましょうね」
メアのその言葉になら良いか、と意識はシュウマイへと向く。
今回はカオル一人がオタオタするだけの美味しい打ち上げになったのだった。