【AbySS】NightOf‥‥アジア・オセアニア
種類 |
ショートEX
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担当 |
玲梛夜
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
4.4万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
10/21〜10/23
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●本文
ロック中心なライヴハウスAbySS。
そこはすでにハロウィン一色になりつつあった。
「ふんふんふーん、ふんふふーん♪」
鼻歌の主は、オーナーの平木メア。
「メアちゃんはいカボチャ!」
「ありがとうシブちゃん」
「‥‥なんでここにいるのシブ」
と、テレビなんかにも出ている有名人さんがここで暢気に飾り付けを手伝っていたりもする。
「まぁ、気晴らし? 色々? てかメアちゃんにあの三日間騒いでヨシいつやっていーの、って聞きにきてこうなってんの。聞くのしっかり忘れてたんだよね」
「なるほど‥‥」
オーナーの甥っ子カオルは納得した、と頷く。
「シブちゃんにライヴハウス貸す前に、ハロウィンなライヴするのよね、ふふふ。全員仮装!! あとお客さんはお菓子食べ放題コーナー作るからそれも作るのよね。マフィンにクッキー、それから、えーと‥‥」
「‥‥頑張ってね」
「ちょ、カオル乗り気になれよ! 手伝えよ、ハロウィンだぞ!?」
「カオルちゃんたらつまらない子!」
テンション高く、騒ぐ二人を敵にして、カオルは溜息をつく。
二人揃うとちょっとめんどくさい。
「とゆことでハロウィンライヴの内容でーす。30日にしないのは私が早くしたいから」
『Night Of Halloween』
お菓子くれないとイタズラしちゃうぞ!
それもあるけどここでは音楽くれないとイタズラしちゃうぞ!
気は早いけどハロウィンイメージ、楽しい音楽奏でてくれる子募集!
もちろん観に来るのもOK!
ただし、今回は観に来る子も演奏する子も仮装が基本!
どんな仮装になるのか楽しみね!
でも危険な長物持ち込むのはダメ!
しっかり楽しんで歌ってね!
そして私の好みで仮装大賞決めちゃうわよ!
見事選ばれた人には‥‥何かあるかも!
「で、今回は僕も観にくるー。仮装はかぼちゃ大王」
「ぶ。かぼちゃかぶるの?」
「うん。ほら有名人だから、バレるとめんどい。歌わずに遊ぶ方だからさ」
「変装してもバレそうだよね」
「気にしないのよ、カオルちゃん。騒ぎが起こったら‥‥責任はとってもらうから」
メアはにっこり笑って事前に蓮へと釘を刺す。
「肝に銘じておきます‥‥あ、ライヴ始まる前の午前から僕来るよ。開店前から仮装してそこにいれば最初は吃驚するかもしれないけどお客さんきっと気にしない。それにお菓子つくるのも手伝う」
「気にするよ、かぼちゃだし‥‥」
カオルの呟きは、ライヴについて楽しく話す二人の声でかき消されていた。
●リプレイ本文
●ライヴ準備は大忙し
AbySSの厨房には、その日南瓜が散乱していた。
そしてそこへまた新たな南瓜が星野 宇海(fa0379)によって到着した。
「あら、頑張ってますわね〜」
「南瓜増えたー! よし彫るぞ! ありがとう宇海嬢!」
南瓜の海から顔を出したエプロン三角巾装着済みの渋谷蓮は嬉しそうに南瓜を受け取る。
「ちー嬢かぼちゃパス。きゅきゅっと下書きよろしく」
「期待しちゃダメよ!」
「わかってるよ、わかってる‥‥大丈夫、失敗したって事で‥‥」
千音鈴(fa3887)は受け取った南瓜にジャック・オ・ランタンの顔を書いていく。
「その微妙なズレ具合がちー嬢らしいよね‥‥」
「どうもありがとうっ!」
千音鈴はちょっとヤケという雰囲気で声を出す。
「あはは、頑張ってるね。僕も手伝うよ、クッキーとモンブラン大量生産しようっと」
と、厨房に人が増えてくる。明日、ライヴハウスに並ぶお菓子作りの手伝いを明石 丹(fa2837)も開始。
「そういえば南瓜の中身はどう使うの? よかったらちょっとほしいな、南瓜を練りこんだ型抜きクッキー作ってみようと思って」
「お、それもいいね! それじゃあ出来立てほやほや南瓜!」
と、蓮はお菓子作り参加中の藍川・紗弓(fa2767)に南瓜をパス。
そして蓮は南瓜を裏ごし開始。そしてそれは南瓜プリンになるらしい。
「そいえば、ホールどうなったかなー? ちょっとみてくるねっ」
「あ、私も一緒に。クーどうしてるかな‥‥」
と、作業一段落した蓮と紗弓は厨房からホールへと移動。
ホールでは高い所担当、黒羽 上総(fa3608)は丁度飾り付けを終わり、よしと見上げた所だった。そしてその手伝いは嶺雅(fa1514)がしっかりと。
「お、すっごい!」
「力作だヨー!」
「だな。あっちも終わって‥‥ないようだな‥‥」
と、紗弓ライヴハウスの場所を下見に来て、準備中なのを知って楽しそうだと手伝いに参加していた劉 葵(fa2766)は、同じく共に来ていた、なんだか凝ったものを作ろうと試行錯誤中だった。
葵が装飾していた所は、段ボールや厚紙、アルミホイルで作った星型や南瓜形をした傘付き電球やらが下がっており、それらは十分なほど凝っていたのにさらに凝る気らしい。
「壁に形の影が映るようステージのライティングに合わせて吊したら面白いかも、よし‥‥」
「‥‥クー、そろそろストップ。はいはい、力仕事を厨房でしましょうね」
「紗弓、いつの間に‥‥いや、これからまだホールは‥‥」
「はいはい、凝るなら厨房で凝ればいいわ」
葵を捕まえて連れて行く紗弓。葵はまだ未練有りという表情だったが一緒に厨房へ。
「仲の良いカップルだねー。と、そういえばあと一人いたよね?」
「ああ、そこで」
「小腹が空いたと」
「‥‥へばってるね」
器用に邪魔にならないテーブルの下に倒れこむのは椿(fa2495) 。
「お、お腹空きまシタ‥‥!」
「確かにいい時間だよねー。それじゃあさくっと御飯作るかー、二人は彼引っ張ってきてね!」
椿を二人に任せて蓮は厨房へ戻る。
そこでは葵がクッキーの種こねこねの力作業をし、他にもお菓子は出来上がっていた。
「ちょい見ない内に何か料理上手くなった?」
「花嫁修業もガンバッテマスヨ? お菓子作りが楽しすぎて料理がおろそかなんてなってナイデスヨ?」
「紗弓、あやしい‥‥」
「怪しくないない!」
紗弓は誤魔化しつつ、手を動かそうとお菓子作りを続ける。
そしてその傍らでは大きな鍋どーん、で湯が沸かされ始める。
「僕御飯作るねー」
「わ、なんだろう」
何を作るのかはできてからのお楽しみ、ということで湯を沸かしている間に下準備を済ませていく。
その材料からぺペロンチーノであること判明。
「メアちゃんから教わった御飯でーっす。よいせ、あったあった」
調味料の棚の奥から取り出されたるは唐辛子がすでに入っているオリーブオイル。
「それ使うの? 作り方みておこうかな」
「うん、いいよいいよー。パスタ茹ったからやっちゃうー」
紗弓に横から見られつつ、蓮のぺペロンチーノ完成。
「ホールの方で食べようか」
「お皿運ぶわね〜」
「んじゃ、作業一休みで御飯タイム!」
お皿にフォークに色々とホールに。
先に食べてて、と蓮に言われ面々御飯中。
「あら、いい匂い! たっだいま〜」
と、出かけていたオーナーのメアが帰ってくる。
「あら、シブちゃんは?」
「ここー、南瓜プリンできたの持ってきた!」
厨房からトレーに人数分の小さな器のせてやってくる蓮。
表面がブリュレのように焼かれたプリンだった。
「あ、これ弟にお土産でほしい。どんぶりで」
「どんぶりかー。じゃあ明日どんぶりで作っとくね!」
「俺も、俺の分も!」
「オッケー! てか一人食べてる量多いよね、君! 二つくらい作っとくかな‥‥」
「どれだけいっぱいでも食べ物は粗末にせず食べマス」
「ふふ、食べ物もライヴも、明日は楽しみがいっぱいね」
「そうだね、楽しみ楽しみ。ところで明日カオルは?」
「仮装が面倒なんで、って事務所でごそごそしてる気らしいけど、そうは問屋が卸さないわ。引きずり出すわよ、シブちゃん」
「うん、あれだよね、手間かけさせてるんだからものっそい苛めてあげないとね」
「あ、シュウマイでよかったら作ってくるよ」
過去の事を丹は掘り返しつつにこっと笑う。
「さらに追い討ちかけそうですわ、明石さん」
「違うよ、優しく傷を包み込んであげるんだよ、トラウマ払拭頑張れカオル君」
「更なる大打撃になりそうな気もするわよ、カオルちゃんだし‥‥じゃあ、御飯終ったら明日に向けて準備続けましょうね」
メアはそう言って笑顔を浮かべた。
●ハロウィンライヴは仮装必須
ライヴの当日は、様々な姿で人がやってくる。
ホールは準備ばっちりで、お菓子料理コーナーが端っこに用意され、そこかしこにハロウィン雰囲気を感じる装飾が施されている。
オーナーの平木メアは、三角帽子に箒持って魔女。
「やっと約束果たせますわね」
「ええ、しっかり歌って行ってね。それにしてもスリットが‥‥むむ、もう私には無理だわ‥‥」
宇海の衣装は深紅の露出度高しの大胆なスリット入ロングドレス。そして黒マントに深紅のピンヒール。髪はアップにしてラメが光り、長い付け爪は赤。
「ヴァンパイアですわ〜」
「ばっちりね! そして、ワンコさんがいっぱいだわ」
上総は長袖タートルシャツにズボンとシンプルだが、黒のふさふさ付耳と付尻尾が揺れる。そして首輪も有り。
「メアちゃん、ワンコじゃなくて狼さんだよ」
と、苦笑しながら丹は言う。丹は首から右肩、右上腕にかけてと、尻尾の中程を包帯巻き上から襟刳りの大きなスパイダーメッシュのシャツにカーキパンツ&ブーツでワイルドにきめていた。
「‥‥ふさふさね」
「アリスの時は付け尻尾だったけど今回は本物フサフサ」
「自前ってことよね?」
「うん」
丹が頷くとメアはがしぃっと尻尾掴んで触りだす。
「あ、ちょ、付け根くすぐったいから、くすぐった‥‥!」
「楽しいっ‥‥」
もちろん誰も止められません。
「あ、いいな! 俺も俺も!」
「ダメ、嶺雅ちゃんには上総ちゃんの尻尾があるでしょ!」
そして独り占めもしてみたり。
嶺雅はちょっと残念、と言う。そんな残念中嶺雅は黒スーツの上にマント、シルクハットを。そして半獣化で黒い翼を出している。
「はい、魔女さんにお花プレゼント! 花の女王ダリア!」
と、尻尾ふさふさ堪能中のメアに横から椿は花束を差し出す。
椿は白ロングドレスで半獣化、翼出しで天使仕様。そして化粧もしっかりと。
「ありがとう。女装が決まってるわよ!」
「嶺雅サンと会うといつも女装なんだよネ」
「うん、フラグぴこーんって!」
ぴこーん! と、メアは笑って繰り返す。
準備終わった千音鈴もうきうきで登場。
「ああ、やっぱり仮装楽しいっ!」
半獣化してふわふわの耳を揺らし、赤のミニドレスに編上げサンダル。チェーンベルトや髪の鎖風の飾りで番犬を思わせる。
「ほら、本当のワンコさんだよ、メアちゃん」
「ちーちゃん、お耳を触りたいわっ‥‥!」
「いいわよっ! ボルゾイの耳をどうぞっ! 北欧神話の冥府の番犬ガルムイメージなの!」
と、騒いでいると昨日準備を手伝ってくれた二人が到着。
「あれ、まだ開店早かった?」
「大丈夫よ、良いカップルさんだわ」
「死後の世界のロミオとジュリエットがテーマなんだ」
「そう、髪型もばっちりよ」
紗弓が白いベールを捲るとそこにはジュリエットのあの髪型が。灰白のロングドレスはぱっと見、ウェディングドレスのようだが、所々ぼろぼろになっている。メイクも青白さ意識して、そして小道具に毒薬注意、というように髑髏マーク有りの小瓶を持って。
葵は褪せた衣装を裂いて破いてボロボロに。接着剤を使って作った蜘蛛の巣をまとって、片手には短剣を持つ。髪には粉をふって白っぽく。メイクは紗弓と同じように青白く、そして目のしたにはクマが。
「何かちょっとした舞台やるような気分で楽しいかも‥‥」
「そうね。死者の国の幸せカップルを演じちゃいましょう」
葵と紗弓は視線合わせつつ笑いあう。
「シブは?」
「シブちゃんは、準備がちょっと頭が重いとかで最終調整中よ」
「頭?」
と、どったんばったん階段を下りてくる足音が聞こえてくる。
ついでに騒ぎながら。
「ちょ、僕いかないしっ! その前に耳とか似合わないし!」
「何を言うか、来い!」
声でばっちり分かるのだが騒ぎながらやってきた二人。
ジャック・オ・ランタンな南瓜を被り黒マントにオレンジ南瓜パンツをはいた蓮と、何もしてないカオル。
「か、南瓜パンツ‥‥!」
ぶふっとその姿に笑いを堪えることはできず、それぞれ笑う。
「え、超いいでしょこれ。カボチャ大王隊長でございますから! で、この猫耳をカオルの頭に‥‥すいません届きません!」
「だから、僕は仮装はいいって‥‥」
「嶺雅君パス! 装着頼むよ!」
「了解!」
「しなくていいからっ!!」
と、まだまだライヴ前に一騒動あるのでした。
●リバティブルー Trick or treater Halloween night
暗闇から淡く、光が揺れる。
椿はキーボードで助っ人に入り、丹はベースを抱える。
ミディアムテンポで、低音が響き、宇海の歌声がそこへ重ねられる。
「 薄闇つれて幕開けのサイン さあ始めましょう
あなたは無邪気なtrick or treater
尖った三日月を撫でる白い指先
黒猫が小さく喉を鳴らす 」
ヴァンパイア宇海はウルフミイラマン丹の首筋に噛み付く真似を。
そして肩から腕をつつーっとその長い赤の付け爪でなぞっていったりも。
大人っぽく妖艶な歌声と絡みは歌ともリンクする。
ふっと音を潜め、囁くように。
「 ゴチソウをあげるけど イタズラしていいよ
はぐれた星雨を頼りに繋ぐ指先
永遠が静かに夜を抱く 」
そして、音が一瞬止むと、テンポはアップ、楽しくにぎやかな歌がシャウトで始まる。
キーボードのギター音とベースの音は響きあって。
「 魔物も戸惑う 目の眩むような夜に乾杯!
今日は気取ったLady&Gentleman
パーティは始まったばかり
朝まで踊ろう 二人熱が冷めるまで
魔物達の声さえ至上の音楽
Halloween night! 魅惑のNight!
全てが目覚めるその瞬間(とき)まで
Halloween night! 蠱惑のNight! 」
楽しく華やかにラストもシャウト。
気持ちよくラストをばしっと決めたのだった。
●華鈴 I wanna‥‥
椿はキーボードを、千音鈴はベースを持ち、助っ人に上総がエレキギターで入る。
派手にくるくると変わる証明の中、前奏はアップテンポ、ハードロックで始まる。
「お約束台詞ヨロシク!」
椿は観客に向かって叫び、歌が始まる。
「 Are you ready to say?(Yeah!)
Let’s say! 」
『 TRICK or TREAT 』
椿の言葉に観客は答える。
そしてとんとんと語感良い歌が聞こえてくる。
「 森羅万象 有象無象 一夜の宴
It’s magical Halloween night!
海千山千 羽化登仙 正体なんて無問題
It’s fantastic party(Yeah!)
踊れ 天使に悪魔 神も魔王も今夜は見逃し
歌え 蕩けるような 甘い囁き give me 」
と、少し曲の雰囲気が変わって心情的なメロディが。
ライトも色を消して。
「 Are you ready to say?(Yeah!)
Let’s say! 」
『 TRICK or TREAT 』
最初とは少し異なった雰囲気の同じフレーズ。
ライトは青みを帯びていく。
「 二択だなんて 何て残酷な台詞
蒼闇の向こう キミの全部が欲しいのに
ただ欲しい恋しい 私が誰でも愛して
夜が明けても忘れないよう 胸に楔を打ち付けて 」
曲はしっとりと聞かせるように、でもそれもすぐ、最初のテンションへと戻る。
ライトもくるくるとたくさんの色が回る。
「 どんな菓子より Deliciousなキミが欲しい
どんな悪戯より Riskyなキミが欲しい
It’s mysterious Halloween night! 」
千音鈴も声を重ねてコーラスを。
低音がしっかりと聞こえる曲は、元気に華やかに。
『華鈴』の二人らしさが出ていた。
●flicker Moon
「 Moon light 闇に浮かぶ一条の光
柔らかく 時に冴えざえと
この身をを照らし 包み込む 」
静かな曲の雰囲気。ライトは淡く嶺雅だけを照らし出す。
そして暗転。
一気に照明が明るくなり、うって変わってアップテンポな曲が流れ出す。
助っ人で椿がギター、千音鈴がベースで入り、二人はコーラスも入れる。
「『knock knock 今晩は』
midnightに扉を叩かれ
闇から目覚める
Ah 約束の時間まではまだまだ余裕なのに!
trick or treat!!
さぁ選択の時!!
お決まりのように選択はお菓子で
両手一杯にプレゼント!
君達の笑顔が伝染
Ah 幸せそうだし美味しそうv(食べちゃうの!?) 」
嶺雅が歌って、上総がキーボードを引く。
音に合わせて自然と体は動く。
天使椿を口説くようなフリを入れたりと舞台の上はにぎやかだ。
「『knock knock 今晩は』
midnightに響く何度目かのノックの音
扉を開ければcuteなlady!!
白い肌に艶やかなドレスが月よりも美しくって
Ah やっぱり食べちゃ(もうそれはいいから!)
思わず手を取り私と踊りませんかと華麗にお誘い
さぁ選択の時!!
答えはどーする? 」
と、観客に向かって嶺雅が問うと帰ってきた反応は。
『失敗ー!』
その言葉と同時にふいっと椿は嶺雅に背を向けて。
ぽつーんと嶺雅のみにライトが当たる。
そして曲の雰囲気も『フられた、ショック!』と、スローテンポに。
「 フラれた僕の心の傷
癒してくれるのは君だけさ
さぁ共に踊ろうジャック・オ・ランタン 」
曲の終わりとともにジャンっと、弦の音。それと同時に舞台は暗転した。
●Halloween Night Party
暗くなっていた舞台がぱぁっと明るくなると、出演者勢ぞろい。
明るく元気、ノリと勢い良いリズムが流れてくる。
『 オレンジお月様に 魔女も精霊達も踊り出す夜(Yeah!)
僕らも負けずに飛び出せ Dancing! 』
しっかり声重ねて思い切りツッコミ入れるように歌う。
ライトも明るく、キラキラと散らして。
『 狼男もドラキュラも 思う存分 叫べ飛べ口説け(え!?)
僕らも負けずに月に歌え Singing! 』
英詞はシャウト気味に思い切りよくユニゾン。
嶺雅は手にタンバリン持って相変わらず椿天使を口説き中。
丹と千音鈴はベース持って。
『 今宵はハロウィン・ナイトです
少し早いけどそれはスルー(大人の事情!)
お菓子いっぱい頬張って カボチャぶんぶん振り回し
こっそり悪戯 天使と悪魔も手を取る Special Night 』
宇海はネットにカボチャ入れてそれを歌に合わせて本当に振り回す。
『 Come On! Let’s Halloween Night Party
世知辛いしがらみも忘れちゃって
声枯れるまで歌え 動けなくなるまで踊れ
Come On! Let’s Halloween Night Party
明日のことは明日考えればいいさ
人生何とかなるもんだって 顔上げれば
空飛び笑うJack−o’−Lantern 」
ハロウィンの楽しい夜は、まだまだこれから。
●仮装大賞授与式
「はいどんぶりプリン!」
「歌ってお腹が空いてるとこにアリガトー! 他にも食べていい? クッキーにそれからええと‥‥」
「落ち着いて食べるがいいよ! そしてどんぶりカボチャプリン二号は冷蔵庫の中で君にお持ち帰りされるのを待ってるからね」
ライヴ終わって、無礼講ハロウィン仮装パーティーの開始。
観客も間近にいるさっきまで歌っていたメンバーにドキドキしつつ楽しくお菓子食べたり話したり。
とりあえず椿の最初の仕事は胃袋いっぱいにする事で。
「舞台の上ではしっかり歌ってたのに終わるとお腹減ったーのギャップだな」
そんな椿を見て、葵は苦笑する。昨日もよく食べるのを見ていたがやっぱりギャップはギャップ。
「あ、紗弓嬢が黒袋にオレンジリボンでラッピングはって言ってたのしたらね、お菓子持ってく女の子たちがかわいいってお持ち帰りしてったよ! もうすでにありません」
「ハロウィン色可愛いんじゃないかなあってしたんだけど‥‥なんだかそれ嬉しい」
「よかったな」
「そんな二人で、かぼちゃプリン一つを仲良く分け合うといいよ!」
と、重い頭支えつつ、紗弓と葵に一つのカボチャプリンとスプーン2本を手渡して。
二人ちょっと照れつつ笑う。
「カボチャ大王隊長、がんばってるね」
「丹君! いやもう変装ばっちりだからねっ」
「あはは、そのテンションでそうかも、ってバレバレっぽかったけど、まぁいっか」
「いいのですよ、バレたらバレた時ー」
「ふふふ、ヴァンパイアと一緒に逃げます?」
「そしたら番犬ガルムは匂い追って弄りにいくわ」
「‥‥僕はこれ、愛されてるんでしょうか‥‥」
被り物の中から視線を感じて丹はきっとそうだよ、と笑む。
と、キィンとマイクの音が響いて、視線はそちらに向く。
舞台でメアが大きな包みを持ってにこにこしていた。
「まだまだハロウィンパーティー続くけど今回の仮装大賞の発表でーす。皆素敵でかわいくてかっこよくて迷っちゃったわ。私の独断と偏見で決めさせてもらいました。ちなみに大賞へのプレゼントはお菓子いっぱい詰め合わせよ」
「お菓子っ!」
「それプレゼントしておにーちゃんの株アップ‥‥!」
「‥‥嶺雅は切実だな‥‥」
椿と嶺雅は並んでお祈りポーズをとりながら、商品を見つめる。
「なんだかものすごい執念を感じるんだけど‥‥発表よ、仮装大賞は‥‥」
と、間をおいて。
緊張の一瞬。
「ロミジュリの二人よー!!」
葵と紗弓のいる方をメアが示すと視線はそこへ集まる。
「大賞もらっちゃったわね」
「やっぱり細部を凝ったから‥‥」
「凝り性さんなんだから」
メアにいらっしゃいと手招きされ、嬉し恥ずかし舞台へあがる。
「私が二人を選んだのは、幸せそうだからっていうのがあるの。これからもお幸せに! はい、仲良く二人で分け合ってね! 二人に拍手ー!」
他の観客からぱちぱちと拍手送られてありがとう、と紗弓と葵は手を降る。
「さ、時間はあともうちょっとしかないけど、ハロウィン本番に向けてしっかり予行練習、楽しんでおいてね!」
まだあるお菓子などなど、それぞれ食べつつ、いろんな人と交流しつつ、ハロウィンパーティーは無事に終わった。
そして、あとはお楽しみの。
●さぁ打ち上げです
「よぉし、片付けも終わったー!」
「大王隊長、その頭かぶったまま片付けできちゃうなんて‥‥」
「もう顔がそれになっちゃったんじゃないの? 大丈夫? シブ、大丈夫?」
「もう体の一部みたいなものになっちゃったのでしょうねぇ〜」
「なんか、慣れたよー。でもそろそろとるね、ああ、頭が軽い」
かぽっと被り物ぬいで、蓮は一息つく。
「さて、片付けも終わったから打ち上げです。まずは油断させるために屋上で葵君持参の花火をぱちぱちしよう。そしてそのままちょっと寒いねーとか言って‥‥」
こそっとすみっこで打ち合わせ。
「何してるの、打ち上げするって。あまりもの屋上に運んだよ」
こそこそしているところへ獲物登場に、挙動不審になってしまう。
「なんでもありませんわっ! ささ、カオルさんも上に参りましょう」
「そうねっ! カオルちゃんもねっ!」
「? ‥‥いくことはいくんだけど‥‥」
「ぼ、僕は着替えてからいくからねー!」
ということで、と千音鈴と宇海に両サイドから捕獲され連行されていくカオル。
「カオル君、がんばれ」
丹はそんなカオルの背中をひっそりと見守る。
「丹君も打ち上げいっておいでー。メアちゃんが待ってるよー」
「そうだね、蓮君も後でね」
丹も屋上へ。
そこではパーティーのあまりものお菓子や料理を残すのもったいない、と食べる椿が最初に目に入る。
そして花火をぱちぱちと屋上で。
ちょっと季節外れでも、澄んだ空気の中でそれは綺麗だった。
「火の始末はちゃんとするのよー」
「はーい」
メアは火の始末を注意しつつ、自分も残り物をちょこちょこ食べる。
「あなた、良い食べっぷりね」
「ありがとうゴザイマス!」
「食べっぷりのいい椿にもプレゼントだ。二人にも」
上総は全員分用意していた見た目同じのプレゼントを渡す。
「中身一緒?」
「一緒だが違うな」
もらったものはもらった本人の前で開けるのが当たり前、というように躊躇いなく開けるメア。
出てきたのはジャック・オ・ランタンのチャームのついたネックレスで。
「あら、かわいい、ありがとう」
「何が出るかは運次第、俺からのちょっとした悪戯だ」
上総は笑って言う。
と、屋上の扉が開き、脱・カボチャ大王隊長した蓮がやってくる。
カボチャ大王隊長じゃなくなったのだが、なぜか瑠璃色の振袖。
「宇海嬢、着付けビミョーにわかんない!」
「あらー、言ってくだされば着せてあげましたのに‥‥」
「シブ、どうしたの‥‥」
「カオルもするんだよ」
「え‥‥」
回り見ると、するんだぞ、と視線が言っている。
「仮装しなかったカオルちゃんにちょっとしたお返しよ」
「ほら、メアちゃんからの許可もばっちり! カオルちゃん覚悟‥‥」
「待って、なんとなーく、何しろって言ってるのかわかるけど、わかるけどっ! 三十すぎたおじさんにそんなことしても楽しくないし」
「僕も過ぎてるから」
「楽しいですわよ」
「ダイジョーブ! 女装しまくってる俺がちゃんとさせてあげるからっ!」
狭められていくにじりよじりの包囲網にカオルは逃げ場無く。
ご近所迷惑も考えて、叫ばないカオルちゃんって大人よねとメアは呟く。
「怖いことなんて何も無いんだヨー!」
「十分怖いですっ!」
「カオルちゃん、男は度胸よっ! 猫耳あきらめてつけたんだから女装もできるわっ!」
「そうだよカオルちゃん! 俺もドレス持ってきたんだからっ! 持って来たのが無駄になるのはダメ!」
盛り上がる彼らをちょっと離れてみつつ、和やか雰囲気の一角はというと。
「宇海嬢、帯きつい、死ぬっ!」
「大丈夫ですわよ、これくらい。えい」
「ぎゃあ!」
一方では帯をぎゅむっと締め中。
「あはは、カオルさん大変そうだねー」
「仮装嫌がった罰ゲームみたいなものよ」
「手厳しいな‥‥では俺は、退屈しないように‥‥お嬢さん、今夜のひと時をご一緒していただけますか?」
「あらやだもー! おばさんに何言ってるのよー! お嬢さんだなんてー! 一緒に女装大会放り込んじゃうわよー!」
上総の言葉にきゃあっとメアはテンション上げて背中をばしばしと。結構痛かったりする。
「せっかくですもの、上総さんもご一緒に。私、弟が使ったウェディングドレス持ってきてますのよ、身長も同じくらいだし‥‥」
メアの言葉を聴いた宇海はにっこり笑顔を上総に向ける。
獲物フラグぴこーん、という感じだった。
「お、俺もか?」
「クロちゃんもする!? ツインテールツインテール!」
と、嶺雅もしっかり聞き逃さず。
「これから楽しい着せ替えファッションショーねー」
「マコちゃんはしないの?」
「僕の女装は、メアちゃんだけが見るもので他の人には見せないのです」
「あら嬉しいこと言ってくれるわね! さぁ皆で下にGOよ! 打ち上げ大会はまだまだ続く!」
「おー!」
「カオルさんは椿さんから借りたゴシックドレスかしら、楽しみね、お化粧もしなくちゃ」
「僕帰る!!」
悲痛な声も響く中、打ち上げたい会第二部、大女装大会の開始であった。
いやいや諦めて女装、進んで女装、それぞれ差はあるものの、女装するのー! と、主張していたメンバーの心をしっかりと満たせたようで。
そしてこの後、女装しなさいと義務付けられたメンバーはしぶしぶだったりや何か吹っ切れたような笑顔で記念写真を何枚か撮られる。その格好のままで『全員集合!』な写真はメアの事務所の机の上、ではなくて机の中に後日内緒でひっそりと飾られることになる。