紅葉狩りドラマSPアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 玲梛夜
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 11/30〜12/04

●本文

 今でもちゃんと、覚えている。
 あの不思議な体験。
 祖父母宅の近くにあるあの紅葉の綺麗な神社で、一緒に遊んだ彼らのことを。
 今思うと、幻だったのかもしれない。
 でも、現実だった。
 その証拠に、今も彼らの一人からもらって面を僕は持っている。
 神社の敷地内、降る紅葉の中で出会った彼らは、何者だったんだろう。
 それぞれが動物を模した面をつけていて。
 神様? 妖怪?
 そんなのはわからないけれども、面を見るたびに思い出す。
 その時のことを、今思い出している。

●キャスト募集
 必須キャストは主人公、そして面をつけた不思議な人たち。
 その他は臨機応変に演じてもらって構わない。
 特に何歳、性別とこだわりはなし。
 主人公もプロット段階で仮に僕、であるので少女であっても構わない。

●補足
 ドラマで描かれるのは過去、不思議な人たちと遊んでいるシーンとなる。
 ドラマには『まだ遊びたいが日が暮れるから帰らなければならない主人公に、一番仲良くなった子が自分の面を渡す』というシーンを組み込んでほしい。

●今回の参加者

 fa0074 大海 結(14歳・♂・兎)
 fa2044 蘇芳蒼緋(23歳・♂・一角獣)
 fa2837 明石 丹(26歳・♂・狼)
 fa3319 カナン 澪野(12歳・♂・ハムスター)
 fa4263 千架(18歳・♂・猫)
 fa4584 ノエル・ロシナン(14歳・♂・狸)
 fa4808 柊棗(17歳・♀・小鳥)
 fa4882 ヒカル・ランスロット(13歳・♀・豹)

●リプレイ本文

●Cast
ローラン・中条:ノエル・ロシナン(fa4584)
神社の巫女:柊棗(fa4808)
白狐:カナン 澪野(fa3319)
天狗:大海 結(fa0074)
猿:蘇芳蒼緋(fa2044)
山犬:明石 丹(fa2837)
三毛猫:千架(fa4263)
熊:ヒカル・ランスロット(fa4882)

●めぐる記憶
 手の中に今もまだある、面。
 僕の名前はローラン・中条。
 今にしても『アレ』が何だったのか──今でも判らない?
 ただ、手元にある白い狐の面、それだけが本物だ。
 本物。
 ローランは、そのときの事を思い出す。
 父方の祖父母の家の近くにあった神社で、あったことを‥‥

●不思議な出会い
「フランスでも日本でも、取り立てて変わったことはないなぁ‥‥」
 のどかな自然の中で視線をめぐらす。ただ、紅葉が綺麗な山。それだけだ。
 だがその中でひときわ赤い色。それは鳥居だった。
「あんなところに‥‥」
 なぜか気になって、その鳥居の方へ向かう。そこから伸びる、長い石段。
 石段を上がって上がって、辿り着いた先。
 そこには神社があった。
 神を奉る社。
 そこにいたのは、落ちた紅葉をせっせと竹箒で掃く‥‥風体からして巫女。
 それくらいはローランにも分かる。
 ふと、彼女と視線があって挨拶しあう。
 そして。
 ふと気がつくとくすくすと笑い声。
 いつの間にか、神社の境内周りに、面で素顔を隠したものたちがいた。
 くるくると踊りあうものたち、その様子を優しく見るものたち。
 それぞれ、面の意匠は違っていた。
 ローランは、少し驚く。
「へぇ‥‥人間とは珍しい。誰が呼んだか呼ばれたか‥‥」
 草木染の短い丈の和服。軽やかに歩けばカランコロンと下駄の音が響き、一つに束ねられた髪が踊る。
 面は、三毛猫。
「変わった子がいるね‥‥一緒に遊びたいな‥‥」
 と、踊っていた一人と視線が合う。
 白い、丈の短い着物、髪は銀色で緩く後ろで縛り流している。
 面は、白狐。ちょっとずらして口元だけ見える。
 そして熊の面をつけた子も、そのような雰囲気で。
「久しぶりの晴れ空だけれど雨間だね」
「青兄」
 静かにやわらかい声が響く。その声の方には、三人の面をつけたものたちよりも大人、といったものがいた。
 ぞろりと牙をむき、つりあがった目縁には朱の青い山犬の面、襟足が少し長い灰の髪を無造作に流し、濃紺の着流し。
 顔を上に向け、スンと鼻を鳴らすと皆の方を向いて。
「明日にはまた降りそうだ。」
「雨、降るの?」
「降るよ、さあ、折角だもの皆遊ぼう」
 背中を押すような言葉を送り、ローランの足も自然とその中へ。
「さて‥‥今から鬼事の始まりだ。皆、逃げろー!」
 三毛猫の声に全員走り出す。ローランは突然の事で反応が遅れる。
 と、三毛猫がローランを指差して。
「で、お前が鬼だ。鬼の交代は無し‥‥全員、『みけ』も捕まえてみろ♪」
「えっ、全員!?」
「そう全員、ほら『えん』も」
 三毛猫は。着流しに顔上半分を覆う猿の面をつけた青年の横を駆けながら言う。
 その言葉に、猿は木に寄りかかるのを渋々とやめた。
 ローランから一番近いのは猿。
 捕まえようとすると、ひらりとからかうように逃げられる。
「鬼さんこちら手のなるほうへ」
「君には簡単に捕まってあげないよ」
 と、わざと傍に寄ってくる、甚平と下駄の天狗面の子。
 天狗も軽やかに動いて、なかなか触れられない。
 と、かさりかさり、と落ち葉の上を踏みしめる音。
 山犬が、妙な動きをしていた。バランスをとりながら、足を下ろす位置を探しているような動き。少し見ていると落ち葉の上を選んで歩いていた。
 まるでその音を楽しんでいるかのように。
 ローランはゆっくり彼に近づいて、後ろからアタック。
 しっかりと捕まえる。
「うわ‥‥ああ、僕が最初?」
「最初だよ」
 そう、と山犬は行って、ローランの頭を撫でる。
 と、恐ろしい面のはずなのに、なんとなくその面の下で山犬は優しく微笑んでいるようだった。
「さぁ、他の子がまだだよ、いっておいで」
 山犬を捕まえる様子を見ていた他の面の者たち。
 ローランは彼らに向かって走っていく。
 最初に天狗、そして熊に猿。
「捕まえたっ!」
「! みけも捕まった‥‥あとは‥‥」
「僕だけだね、うん、僕で最後だね‥‥!」
 くすくす、と笑いながら逃げる白狐。
「ほらほら頑張って追いかけないといつまでも終わらないよ〜」
 天狗は木の上から足をぶらぶらさせながら、楽しそうに二人を見る。
「白狐‥‥楽しそうだな」
 三毛猫の呟きに猿は小さく頷く。
 生き生きと走り回る二人。
 でも、白狐はちょっとした拍子に気を抜いてぱしっと手をつかまれる。
「あーあ、捕まっちゃった‥‥そうだ、他の遊びをしよう、かごめかごめ」
 まだまだ楽しく遊び気は満々。
 ふと見ると三毛猫はおらず、山犬と猿はただ自分たちを見守っている。
「あなたは、遊ばないの?」
 ローランは掃除をずっとしている巫女に気になって問うと、彼女からは微笑みが返ってくるだけ。
 ちゃんと答えてと言う前に、かごめかごめの輪の中へ。
 最初に真ん中に座ったのは天狗。
 しっかりと後ろにいたのは「くまちゃん!」と熊面の子を当てる。
 そしておおはしゃぎ。
「やったねあったり〜。絶対そうだと思ったんだよね! 次は白狐が真ん中だよ」
 白狐を真ん中に、ローランと天狗、そして熊が手をつないでくるくる回る。
 ローランの知らない歌を歌う彼ら。
 歌がとまり、ローランは白狐の真後ろに立っていた。
「お、かごめかごめしてんのか」
 手に山葡萄やアケビを持ち、姿を消していた三毛猫は戻ってくる。
 起用に仮面の下の口にそれらを運んで、事の成り行きを見守って。
「‥‥‥‥ローラン!」
「え!? ど、どうして名前‥‥」
「なぜわかったのか不思議?」
 笑う白狐たち。
「何故分かるかは――内緒♪」
 内緒、内緒、と呟きは重なる。
 と、そのなかにぱんぱんと手を打つ音が響く。
「そろそろ夕餉の頃‥‥いい時間だよ、帰らないとね」
 穏やかな声色。
 すっと白狐は「青兄」と呟きながら見上げるが、首を静かに横に振られ悲しげに俯いた。
「ちぇー、遊び足りない‥‥」
 三毛猫は不満を呟き、くるっと背を向ける。
 熊は、ローランの傍へよりちょっと服を引っ張って、そして山犬の後ろにさっと隠れる。
「もう終わり? 人間の時間って早いよね‥‥それじゃ、バイバイ」
 天狗はローランの周りをくるっと回って、あっさりと別れを告げる。
 と、ぽふと頭の上に置かれた手。くしゃっと撫でてくる猿の口元には微笑み。乱雑に撫でた後、猿はしゃがみこみ視線を合わせる。
「縁があったらまた会おう」
 そしてローランから離れ、白狐の背を少し押す。
「‥‥楽しかったね‥‥これ‥‥お礼なの‥‥」
 白狐は、その面を取る。
 ふわっと銀の髪がその拍子に広がり、夕日色に染まる。
 そして、面をローランの顔に当てるように渡してくる。
 表情は、泣きそうで、儚げ。けれども、笑顔を浮かべて。
「これを見て‥‥たまに思い出してくれると嬉しいな‥‥」
 その表情に、ローランはなんだかやるせない思いがこみ上げてくる。
 面を受けとてって。
「うん‥‥ありがとう‥‥さようなら」
 ローランは白狐の顔、額にひとつ優しくキスをおとす。
 白狐はちょっとびっくりし、そして照れながらもさようならと言って、仲間のもとへ走っていく。
 ローランは、彼らに背を向けた。
 そして一歩二歩。
「人はすぐに忘れてしまうから‥‥」
 呟いた白狐の頭を猿は撫でる。
「‥‥覚えてるといいな」
 三毛猫もそう呟いて。
 山犬はローランの後姿と、まだ遊び足りないが、それを我慢する仲間たちに面の下から、微笑みかける。
 ざぁっと、風が紅葉を運ぶように鳴く。
 ローランはその音を聞いて、もう一度さよならを言おうと振り返った。
 その瞬間彼らの気配も、姿ももはやなくて。
 はらり、と紅葉が落ちてくるだけ。
「あれ‥‥?」
 辺りを見回してもカゲもカタチも無く。
 ローランは巫女の下へと走る。
「あの、皆は?」
「‥‥皆は、皆はすぐそばに」
「そうじゃなくて‥‥」
 巫女に詰め寄って、話をきくもののその話は右から左。
 頭によく入らない。
 ただ、面だけがローランの手にあったのだ。

●そして今
 日が落ちるときまで、一生懸命‥‥そう、遊ぶのに一生懸命になるなんて何年ぶりだろう、ともかく一生懸命遊んだ。
 あれは、一体なんだったんだろう。
 今でもローランはあの時のことを鮮明に覚えている。
 後から考えると、からラはフランス語をネイティブに操っていたことになる。
 まるで言葉の壁など無いように。
 他にも山犬がスンと鼻を鳴らして言ったように、次の日は雨だった。
 そして今でも分からないことの一つ。
 何故、名前を知っていたのか。
 一度も名乗ってなどいなかったのに。
 不思議。
 不思議が一杯だった、紅葉落る世界での出来事。
 白狐の面が手にある限り、ローランは忘れない。
 ずっとずっと、彼らのことを忘れない。