ロクナビ!! OPED制作アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
玲梛夜
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
1.3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
06/17〜06/21
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●本文
「聞いているのか平木!」
「聞いてません」
「おいいいいいいいいい!!!」
上司は、傍にあった机をばしっと叩きながら叫ぶ。
「あーすいません、徹夜なんですよ、徹夜、一週間ほぼ徹夜。叫ばないでください頭いたいいたいいたいいたいわあああああああああ!!!!!」
「しっかりしろ平木いいいいい!!!」
「無理いいいいいい!!!」
がくがくと、上司は部下、平木カオル(ひらぎ・かおる)の肩を掴んで揺さぶる。そしてそれは勿論逆効果。
しばらくして二人は距離をとり、落ち着く。
「ぜぇはぁ‥‥僕としたことがテンションあげてしまった‥‥で、なんですか。新番組のあれやこれで僕忙しいんですが‥‥」
「それだ、ロックな音楽番組、なのにテーマ曲が、ない」
「あ」
しばらくの沈黙が、流れる。
上司と部下は、互いに互いの神経をすり減らしながら話をする。
ふと気がついた穴にさらに神経をすり減らす。
「どうするんだ、どうするんだあと一週間と二日前だぞ」
「適当に誤魔化‥‥」
「それ、無理」
二人は視線を合わせた後、頷きあう。
「すっばらしーロックなテーマ曲を作ってくれるやつら引っ張って来い!! さぁ行け平木! いくのだ平木!」
「引っ張ってこなくてもプロダクションが連れてきてくれます。ていうか今日テンションおかしいですねどうしたんですか」
「妻が家を出て行った!」
「‥‥ふぁーいと」
自分で言ってがくりと膝をつく上司を生暖かい目で見ながらカオルは自分のデスクにつく。
そしてカオルは欠伸をしつつ、眠い目をこすりつつ各プロダクションへ伝達準備を始めるのだった。
歌わないロック中心番組ロクナビ!! OPED募集。
OPEDともロックを感じさせる曲であることが必須。
応募締め切りは五日後、スタジオで演奏、その後選考。
選考は番組スタッフで、結果はその場で伝えます。
なお、ドラムやピアノなどはスタジオに備え付けてあります。
●リプレイ本文
●スタジオにて
「終ったら打ち上げタコヤキパーティせえへん?」
笑顔で女子の面々に声をかけるのはジェイムズ・クランプ(fa3960)。
そんなジェイムズにMIDOH(fa1126)は睨みを利かせる。
「手が早いから気をつけろよ。気がつくといつの間にか肩に手を‥‥回すなっ」
「芸能界ってナンパな人が多いのかなぁ?」
小首をかしげながらクク・ルドゥ(fa0259)は苦笑しつつ二人の様子を見守る。
「女の子は褒めないかんやろ?」
「‥‥あまり誉めると有り難みが‥‥薄れます‥‥」
MIDOHのパンチを受けつつジェイムズは言う。それにアマラ・クラフト(fa2492)は静々と言葉を発した。傍で紅 勇花(fa0034)も地雷踏みすぎと苦笑する。
「グループでというのもちょっと楽しそうだったわね」
と、少し離れて見ていたNeiro(fa3920)は呟く。
「次はグループでやればいいッス」
そんな彼女の背中を軽く叩く旺天(fa0336)は上機嫌。
「採用されれば俺っちの知名度上昇! 人気も上昇‥‥するかはわからんスけど兎に角! 気合入れていくッスよー!」
「やる気満々だね」
「お、マコトも参加ッスねー」
明石 丹(fa2837)は知った顔に声をかけ笑顔を浮かべた。
そしてスタジオの扉が開き、騒ぎながら入ってくるのはスタッフ達。
丹は先日知り合った、平木カオルを見つけ笑む。カオルもそれに気付き、眠い目を擦りつつ笑んだ。
「あ、この前は」
「カオルさんライヴぶり‥‥締め切り抱えてたんだ」
「あ、よろしく! 本放送始まったら見るよっ」
苦笑を浮かべつつの丹。MIDOHも先日ライヴで出会って顔見知り、声をかける。
「今回は急な事で申し訳なく思いつつ‥‥選考前に何か質問あればお答えします」
それにしゅばっと手を上げたのはクク。
「どんな番組なのか教えてほしいです!」
興味津々、とククは答えを待つ。
「そういえば募集時に内容書かなかったけ‥‥」
「テーマがありそれに合わせてのトーク番組。一回目のテーマは愛、次は烏賊」
「烏賊は違うだろ、勝手な事言わないでください」
ククの質問に最初に答えたのはカオルの上司。変な答えにはカオルからツッコミが。
「補足すると司会者無、出演者主体。楽器とセット使って歌うのは無、即興でハミングくらいなら可。ロック界の将来を担う人達にテーマと絡めて自己をナビゲーションしてもらう、っていうのがコンセプトです」
「なるほどー、ありがとうございましたっ!」
ククはペコっと頭を下げ、一つ謎が解けたと笑顔を浮かべた。
●Tutelary Presents
「一番手貰いってことでOP用に『IN THE DARK』」
アマラ、MIDOH、そしてジェイムズの三人のユニット名はTutelary。意味は守護者。
リムの音後、流れ出すのはアマラのギター。ややゆっくりの曲調を抑え目なタムとスネアが支える。
メインボーカルを務めるのはジェイムズ。コーラスはMIDOH。
「 煌めく星に君は何を見る?(天使の囁き 悪魔のつぶやき)
輝く太陽に君は何を見る?(神の祝福 魔人の誘惑)
目前に広がる世界が 真実なのか(偽りの世界)
人の世の狭間に 広がる闇に 君は何を見る
(Desire Despair)
人の心の隅に蟠る闇に 君は何を見る
(Desire Despair) 」
徐々に盛り上がるようにテンポアップ、そして間奏。
ギターのアマラは早弾きでその腕を披露、ドラムのMIDOHはハイアットシンバル抑え目にリズムを刻む。ジェイムズはベースの音をキーボードに登録し、ギターに添うように奏でる。
間奏も終わり間近、転換でタムとスネアを二拍、そしてライドシンバルを強めに三拍。
曲の雰囲気は間奏に引きずられないよう、早くなりすぎないように注意しながらドラマチックに。
「 残酷な現実が 君を傷つける
堕天使たちの誘惑 『メシアは何処に行ったのか?』 」
三人でのハモリも交え、曲調は最初と同じように変化。
「 煌めく星に君は何を見る?(天使の囁き 悪魔のつぶやき)
輝く太陽に君は何を見る?(神の祝福 魔人の誘惑)
目の前に広がる世界は まやかしなのか(愚か者の世界)
狭間に広がる闇に抱かれ メシアは何処へ
(Desire Despair)
人の心に救いはないのか 光は何処へ行ったのか?
(Desire Despair) 」
そしてまた間奏を挟み曲は続く。
ドラムの音は強めに、ポイントではライドシンバル。
ハーモニーを奏でる場所ではさらにバスドラムを強く。
緩急をつけて。
「 残酷な現実が 君を傷つける
救い手を求めて 『君は闇を這いずる―――』
哀れな小羊よ 求めるのを止めて
自分の足で 『立・ち・上・が・れ!』
(幻のメシア 偽りに固められた世界)
戦いの火蓋は 切・ら・れ・た―――!! 」
ラストは間奏で使ったメロディーを短く少しゆっくりとアレンジ。
最後の最後は敵を切り倒すイメージでライドシンバルの音が響くが、すぐ手で押さえられ消音。
余韻だけを、残す。
●ククマコ Presents
「ククマコってそのままだね」
手元の資料を見つつ、カオルは二人に笑いかける。
「マコ太‥‥じゃない、丹さんとククで、ククマコです、宜しくお願いしますっ」
「ククさんと気合入れて作ってきたから眠気なんて吹き飛ばしちゃうよ。欲張って両方作ってきました。最初にOPを。ロックを感じさせるって事から本音・本性・勢い・疾走感をテーマに『Real intention』」
眠気を吹き飛ばす、にカオルは期待してると笑って返す。
OPについて軽く解説した後、音源を持ち込んで丹自身はベースを握る。
流れ出すドラムロールをバックにククと丹は、視線を合わせ、息を合わせる。
「 ロクナビ! 」
番組の名前を二人揃ってシャウト。ギターとベースの音も重なり曲は盛り上がっていく前奏。
「 見飽きた空虚をなぞる僕達は
この胸が隠した本当を忘れたふりしてる
進むための足で蹴り飛ばした タイム
視界を覆う翼を広げたら ダイブ 」
ツインボーカル、歌詞のラスト、歯切れ良く番組名コールと同じように思わず飛び上がるような意気込みでシャウト。
弾けるリズム、そのアクセントには鉄琴の隠し味。
「 Real intention(目を開けて)
さあ今こそ
Real intention(心届けて)
君の真実が見たい 」
ククメイン、元気な歌声に誘うように丹の声が重なる。
力強く賑やかなメロディは最後までキープされ続ける。
OPを演奏し終わって一息、けれどもまだまだ二人は元気。
「次はEDでララ・ロックです」
音が、流れ出す。OPと同じようにギターとドラム、そしてワンポイントの鉄琴。
スローテンポ、歌詞は『ラララ』だけ。
二人は掛け合うように歌い合う。
ラテンのリズムで曲を盛り上げ、さらにボーカルの重ね録りでコーラス、ハモリも入ると音には広がりが。
力強いメロディと明るいメロディが重なり合い、最後は余韻を残しつつ曲は終る。
『ラララ』だけなのに十分だと感じさせた。
「EDだから、終った〜って感じるように、聞いてて楽しくなる曲です」
「歌ってる僕らも楽しかったからね」
二人はにこりと笑み合って曲の披露を終えた。
●Neiro Presents
「Neiroさんは、ソロで‥‥EDでしたね」
「はい、音源はこれを。別録りして調整してあるわ。選考だから完成度と、音がイメージし易い方がいいと思って。勿論ヴォーカルはあたしの生歌。曲名は『Alive』」
Neiroは微笑を浮かべながらCDをスタッフに渡す。
曲は悲しげなスローストリングスに、雨と雷鳴の効果音から始まる。
そこにNeiroの囁くような語り。
「My heart has been bruised
But it’s over
I don’t need you anymore
Yeah‥‥
Cause you’re just a little boy‥‥」
一瞬音が止まり派手に演奏が始まる。最初の悲しげな印象は一変しテンポアップ、そして重低音とビートの効いたハードロックに。
「 あなたに傷ついた愚かな日々
あの頃はどうしようもなく弱かった
でも戦う事を学んだ今
傷は美しい力だと知った
瞳を開けばそこは新しい場所
何処へでも行ける
何だってできる
これ以上構わないで
ママゴトは終わったから 」
サビに入るとギターは早弾きで音を響かせ、Neiroはアドリブとフェイクを交えながら曲を盛り上げていく。
「 I’ve had enough
自由に振舞うの
I’ve had enough
さよならを言うとき
気持ちが高ぶるくらいに
I feel so alive 」
Neiroの歌はエコーで余韻を残しながら、終った。
●旺天 Presents
「それじゃ準備ヨシって事で、演るッス! EDに『System of my dawn』」
足りない音は自力で用意してきた音源から。
自らはドラムを叩きながら、歌う。
前奏はギターの独奏から、次にベースが加わり、最後にドラムと1フレーズ毎に音が増えていく。
耳に残り易いシンプルなメロディー。
「 ノーネクタイのショータイム 笑いながら
限界までスカイハイ 二人きり 」
メロディーはそのまま、曲のアクセントにクラッシュシンバル。
ハイハットシンバルもクローズから徐々にオープンし、音を華やかせていく。
「 Fly blind
向かい風は強いほどいい 遠くまで飛んでいけんだ
夢みたいに躍りたいな
System of my dawn
気がつけば朝
壊れてるみたいに遊んでただけ 」
サビではクラッシュを多様、音は強烈になっていく。
そして同じように音を繰り返し二番。
「 馴れ合いのドライバー 臆病で
スレイブのスライダー 引き裂いて
Break neck
眠りながら走ってんだ 誰の目も気にしないで
倒れるまで止まりたくない
System of my dawn
目覚めれば君は 近くには居ない
手を伸ばした 」
ガツンと強烈な音、思い切りの良い音で曲はラストへと突っ走り止まらない。
「 System of my dawn
気がつけば朝
壊れてるみたいに遊んでただけ
just rock’n’roll,yeah! 」
サビをもう一度、そして『yeah!』のタイミングとあわせ渾身の力を込めてクラッシュ一発。
弾ける、そんなイメージを与えつつ演奏は終了。
●紅 勇花 Presents
「僕が作ると何かメタルっぽくなっちゃいそうだったけどやれるだけやってきたんだ。歌詞は無し、ギターソロ曲『Katharsis』」
「インストゥルメンタル?」
「ギタリスト前面押し出しって事」
スタッフに向けて勇花は軽く笑いながらギターを持ちその弦を弾き始める。
暫く閉塞感の強いスローテンポを保つ。その後明るく変調し、アップテンポで開放感のあるメロディに切り替わる。
そのまま、上昇していくようなメロディ。早弾きを交えつつ駆け上がるような雰囲気を出す。
サビはメロディを受け継いだまま高音主体、アッパーに。その最後はきぅぅぅぅぅぅん、と反響音を三連続。
後奏は曲調そのまま、更にテンポを上げつつうねるような早弾き。
演奏のスピードを少しずつ落とし、最後に強い音を一鳴らしてラストを飾った。
●選考難航中? ドキドキ発表
全員の演奏は終わり、スタジオに残されて早二時間以上。
スタッフ達は別室で選考中。
「遅い‥‥ですね‥‥不安です‥‥」
アマラが不安をふと口にする。
「ふみゅ、蜂蜜レモンゼリーもスタッフさんの分残すだけだし」
「ククさんのゼリーおいしいから」
「丹さんの持ってきたコーヒーもぴったり」
話すネタも尽きに尽き、そろそろ退屈にご退場願いたい所。
と、視線が集まるドアノブが動いてスタッフ達が中へ。
誰もがきた、と思った瞬間。
「長い間待たせてすみません」
カオルがぺこっと頭を下げて一言。そしてそのまま言葉を繋げる。
「最初に、どの曲も完成度は高くて、その点はすごく良かったです。けどこれは選考で、番組のイメージもあるって事で選ばせてもらいました。えーと、まず‥‥」
息を呑み心臓は早鐘を打つ。早く聞きたいようなそうでないような。
「まずOP。Tutelaryの曲、攻撃的イメージが強くてそれが番組に合わず。ククマコの曲、コールが嬉しかったんだけど、印象が強かったのは旺天さんの曲」
「ん? あれ、ちょっと待つッス、俺っちEDとして‥‥」
「最後が良いね、勢い良く切ってそれで出演者登場終了、いいじゃないか」
押し切られました、というような表情をカオルは全員へ向ける。どうやら上司の意見が勝ったらしい。
「EDは『ララ・ロック』ラララだけであんなにいい音だからね。Neiroさんの曲は面白い、個人的に僕は好きなんだけれども語りの所がイメージに合わずごめんなさい」
「やったねククさん」
「うん、嬉しいー!」
丹とククはわーっと小さく喜びあう。
「あ、喜んでる所ごめんね、まだあって‥‥」
と、まだ話は続くらしく。
「紅さん、サビのラストの三連続あたりをアイキャッチにほしいなと上司が」
「あの音には痺れる‥‥区切りとしてインパクト大」
「EDにはならなかったけどもしかしてラッキー?」
「そう思っていただければ。そして最後に大きな仕事をお願いしたく。OP、EDとも足りない音を今から完成させて下さい」
スタッフ一同、頷いて。
「楽器なら用意できるし‥‥ごめんなさい本心は時間がない」
「大変だね、カオルさん‥‥」
「そう思うなら是非。スタジオもう一つとったから。良いですよ、ね?」
「文句無し、よ。これも自分の評価だものね」
Neiroの言葉にそれぞれ頷く。
異を唱えるものはおらず、二組に分かれて曲に広がりを持たせる作業を開始する。
二組から生まれた曲を全員で再構築、より良い二曲へ進化。新番組のOPEDを飾る事となる。