ホワイトデーメモリアルアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
玲梛夜
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
9.4万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/14〜03/18
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●本文
「へたれもあとちょっとかー」
「ちょっとだなー‥‥よし、今度は温泉ロケだ」
「温泉って四月じゃなかったんですか?」
「ああ、そうなんだが、まだちょっと肌寒い季節のほうがいいんじゃないかと思って。温泉で乙女心だ!」
「意味不明‥‥」
ドラマあらすじ
月華がもっていた温泉チケットを使い、どこかの山奥の温泉に行くことになった面々。
一ヶ月前、夢の中での不思議な体験、バレンタインデーの対となるイベントがあることを、通販事情に詳しい神様から聞いた男性陣。女性陣にも、その話は聞こえてくる。
男性陣は何かしようと思うものの、それ以上に、女性陣は何が起こるのかとひやひやどきどき。
いったい温泉地で、何が起きるのか‥‥。
補足。
温泉ロケです。
衣装はいつもの天界衣装。
事前にバレンタインデーのお返しイベント、ホワイトデーについて全員耳にしている。
今回は、そのお返しをするまでのどきどき心理を女性陣メインで描く予定。
男性陣はいつもの調子でどったばったとよろしくお願いします。
なお、こべこたちもついていきます。
●リプレイ本文
●出演
彦星:西村 哲也(fa4002)
織姫:楊・玲花(fa0642)
月華:桜 美琴(fa3369)
煌:ラリー・タウンゼント(fa3487)
ざらめ:桃音(fa4619)
杏:忍(fa4769)
崚:Iris(fa4578)
●温泉へ行こう!
「温泉の券があるのよね‥‥せっかくだし皆でお花見もかねていかない?」
という提案を月華がして数日後。
一行は、馬、及び牛に乗り温泉地へ。
此度の旅行、男性陣の心のありようは複雑だ。
真っ直ぐだけれども複雑だった。
何故ならば、ざらめからホワイトデーというものがありますの、と入れ知恵をされていたのだった。
「織姫さんと月華お姉様の恋の行方を見守りますのー♪」
ふふ、と笑うざらめは月華の愛牛、黒颯に一緒にのって笑う。
「でも‥‥ホワイトでーって何ですの? 白い日って‥‥」
だがしかし、このざらめ情報も少し、というかとてもあやふやな情報。間違っている確率は高い。
「煌ってば、道中でももてもてね。多くのお嬢さんがぽわーって見つめてたわよ」
「‥‥そうか?」
「‥‥そうだったの」
月華と煌は、いまだ微妙な距離感のままだ。
反対に織姫と彦星は、いつもながらの雰囲気だが、距離はどんどん縮まっている。
なんだかんだ言っているうちに、一向は目的地へと到着する。
はらはらと桜の花びらが舞うそこは、幻想的世界。
「たまには仕事を忘れて、こうしてゆったりと過ごすのも悪くないですわね‥‥」
「そうだね、楽しまないといけないね」
いつもと変わらず彦星はにこにこと笑う。
一向は、今晩とまる予定の宿に到着する。
落ち着いた佇まいの宿。
そこに荷物降ろして一行は『まず温泉みてみないとね!』とどたどたと見に行く。
「広い、外にお風呂‥‥!」
すごーい、と瞳きらきらさせながら凝視。
めったに体験することないロケーションに、誰もが心躍らせる。
「天の星も骨休めかニャ。そんなに感動するとは‥‥おもしろいのニャ」
と、いつの間にか彦星たちの後ろに、一人の青年が立っていた。
煙管をくゆらせ、着物は着崩した、耳と尻尾付のどうみても人間ではないもの。
だが、敵意は感じられない。
自分はこの山奥に住む妖怪、名は崚と彼は名乗った。
崚にとってこの温泉は毎日来ている自分の風呂なのだった。
「この温泉は青年と春告げる姫が恋に落ちたという伝説が残る温泉ニャ」
「伝説ですか?」
「そうニャ。伝説に肖って、恋愛成就の秘湯だニャ」
「恋愛っ」
「成就っ!!」
「さらに効能は腰痛肩こり、水虫そのほか色々、そしてもちろん」
「もちろん‥‥?」
「勿論、美肌効果ばっちりニャ!」
「入るわよ! 存分に入るわよ!!」
こうしちゃいられないわ、と月華はお風呂セットを取りに行く。
「姉様‥‥そんなにお肌がっ」
●露天風呂パニック
「さぁ! お肌つるつるにするわよ!」
「そうですわね、ゆっくりつかりましょう‥‥」
「お風呂ですのー、泳いじゃいますのー!」
髪一つにまとめてざらめははしゃぐ。
この声は、もちろん男湯にも響く。
「‥‥何を騒いでいるのか‥‥」
煌はまったりと湯につかっていた。
と、がらっと扉が開く音。
そこには頭の上にはタオルとあひる隊長装備の彦星とコベコ。
「コベコ、こっちだよ。煌、置いていくなんてひどいよ!」
「彦星、コベコはメスだろう? 入れるならば女湯のほうが適切だ!」
「あ‥‥!」
そもそもコベコと一緒に風呂という所と、その格好からしておかしいのつっこむ所はそこではないらしい。
彦星は、コベコ女湯にお行き、と一度男湯から出て、コベコを女湯のほうへ入れる。
そして戻ってくると、女湯の方から。
「ちょっと彦星! コベコいれるなら言いなさいよ! まったく」
と、月華の声。
「姉様よろしくお願いしますー」
「走ったらこけるぞ、彦星」
「大丈夫だよ!」
ざぶっと肩まで使って二人はのんびりする。
「‥‥煌、ホワイトデー考えた?」
「いや‥‥」
「姉様にはコラーゲン系だよ! ほら肌って聞いただけでさっきも‥‥」
「コラーゲンか‥‥」
その言葉を受けて、煌はまじめに考える。
そしてその頃、この露天風呂で新たな騒動の引き金となる白猫便の杏は、迷っていた。
「ここどこ‥‥卓上カレンダーお届けする人どこ‥‥!?」
泣きそうになりながらつづらを背負ってほてほて。
と、人の気配がしてふと茂みから顔を出す。
するとそこは女湯。
「でね、そしたら彦星が‥‥って、あら」
「知ってる人!」
「! わ、わたくしの柔肌を目にしていいのは彦星だけですわ‥‥!」
手近にあった桶を織姫は投げる。
「ざらめちゃん!」
「はいですの!」
はわー、と嬉しくて飛び出す杏。
だがしかし、ずんずんとよってくる月華とざらめは、怒っている様子。
「月華様! はしたないですわ。そんな大股開いては‥‥タオルが落ちます! 胸がこぼれます!」
織姫の制止も、月華には届かず、知ってる人! と走りよってくる杏に月華の蹴りと粗目の頭突きが炸裂する!
「ふにゃああああ!!!!」
宙を舞う杏。
本能か、上着だけ華麗に脱ごうとするも絡まり、男湯へ頭からダイブ。
ばしゃあああん!! と派手な音。
「な、何!?」
「牛グッズの人‥‥!」
「ね、猫の丸洗いはやめてぐごぼごぼっ‥‥!!」
「何もしてないし、足つくぞ、温泉だからな」
ぎゃああ、とパニック中の杏に冷静な突っ込みが煌より入るが聞こえてはいない。
仕方ない、と煌くは首根っこ捕まえて、振ってきた人を勢い良く掴んで湯から引き上げる。
「あ、何時ぞやの‥‥宅配便の白猫‥‥」
こうして、杏は無事に救助されたのだった。
●ホワイトデーってなぁに?
「へぇ、ホワイトデーなんてものがあるの‥‥確かに煌と洸に渡したけれど‥‥あれ夢だしねぇ‥‥」
「でももらうですの! 三倍返しで戻ってくる日ですの! 怠ると‥‥のろわれるんですの!」
「そうなの? じゃあ期待してようかしら‥‥煌はどうするつもりかしらねぇ‥‥あら? どうして煌の名前を‥‥不思議だわ」
「月華様、それは煌様のことを‥‥」
「え? 何? 煌がどうかしたの?」
「‥‥ニブさんでしたのね」
織姫はため息をつく。
そして自分も彦星のことを思う。
何かお返しとしてくれるのなら、それはそれで嬉しい。
そのときのこと考えると、ちょっと気恥ずかしい。
女性陣がまだ温泉でホワイトデーで盛り上がれば、すでに湯上りの男性陣も盛り上がっていたりする。
一部違う方向で。
「いい湯だったニャ‥‥」
「そうですね‥‥」
いつの間にか崚も一緒にのほほん。
と、彦星は自ら杏の元へと酔っていく。
「今日は何持ってきてくれたの? 牛グッズの人!」
「う、牛グッズは‥‥つ、つづらの中にあります‥‥」
そう行ってつづらごそごそ、杏はこれをどうぞと彦星に牛柄バスタオルをプレゼントする。
「煌! もらったよ! 牛!」
「そうかよかったな‥‥そうだ」
「あとは織姫に送るもの‥‥変な贈り物じゃ甲斐性なしって思われちゃう‥‥っ! 俺が用意できるもの羽織姫持ってそうだし‥‥うーん、うーん」
悩む彦星の傍で、何か思いついて煌は杏に近寄り耳元でこそこそ。
彦星も、それを聞き耳たてる。
「それならこんなのが‥‥」
真面目に何かを選んでいる煌と、それに便乗彦星。
崚はその姿をじっと見守る。
そして、彦星は煮詰まる。
「助けて温泉博士ー!!」
「それは俺のことかニャ?」
崚にすがりつき必死でうなづく彦星。頭の中で思考が一蹴して崚は温泉博士ということになったらしい。
ふむ、と少し考えて、崚は言う。
「夜になったら、イイもの見せてやるニャ。カップルさんは必見ニャ」
「え?」
夜、温泉の裏の少し置くにくるニャ、と崚は言う。
「あ、湯冷めしないようにニャ」
「‥‥なにかあるのかな? あ、白猫さん俺もみせてー!」
それは行っての、お楽しみ。
●夜、桜満開
「織姫、こっちだよ、こっち」
「ちょっと待ってくださいませ!」
崚に教えられた道を辿っていく。
そこは温泉の裏の、少し奥まったところ。
彦星は織姫の手を引いて、歩いていく。
そして、やっぱり全員二人が気になるわけで。
「あ、煌‥‥お互い相変わらずね」
「そうだな‥‥」
偶然ばったりと出会う二人。
煌ははにかみながら、答える。
「‥‥そろそろ彦星のお守りも卒業かしらねぇ」
「月華‥‥」
少し寂しそうな、けれどもやさしい笑みを月華は浮かべてつぶやく。
そしてもう一組。
「オバケ怖いー! オバケー‥‥」
「ちょっとうるさいですの! ほら大丈夫!」
ざらめと杏も、こそこそとついていく。
と、うわぁ、と声が響く。
彦星と織姫の漏らした声だ、
「すごい‥‥早咲きの桜‥‥これが『願いの桜』かぁ‥‥」
「綺麗ですわね‥‥」
「‥‥あのね、織姫。これを‥‥織姫の髪に、合うかなって」
すっと差し出したのは、杏から買った、高くもないありきたりな櫛。
「あ、い、いらなかったら‥‥あの、あの、ごめんね」
「いえ‥‥う、嬉しいですわ」
織姫はそれを受け取って、照れる。
一方、それをみていた煌も。
「俺も‥‥これを。この前は夢の中でだったけどありがとう」
「え‥‥あ、ありがとう」
煌が差し出したのは、髪飾り。
それを月華も受け取って、似合うかしらと髪につけて笑顔浮かべる。
良いムードのの二組を、ざらめは泣く杏の尻尾捕まえたまま見守る。
「どちらの桜ももうちょっとで咲きそうですの♪」
と、そこへとすとすとすとす、とどんどん大きくなる足音。
「あ、コベコ! せっかくのいいムードなのに!」
「ぶもっ!!」
「コベコ! コベコも桜見たかったんだねー!」
「‥‥もうこのパターンにも慣れましたわ‥‥」
●桜の、お話
温泉ライフも満喫し、一向は帰る日を迎える。
「桜はどうだったかニャ?」
「綺麗だったよ、教えてくれてありがとうございました温泉博士!」
「そういえば、温泉の伝説ってどんな話だったのですか?」
「ん? 伝説ニャ? 伝説は‥‥ただの人であった青年は、姫に相応しくなろうと山奥へ。けれど、長い命を望む欲が青年を妖に落とし、あれほど願った姫の姿は霞のように消えてしまう。姫は神霊、妖の目には映らんのニャ。これの教訓は‥‥あるがままの大切さってやつニャね」
「あるがまま‥‥」
「そうニャ。そしてこれは恋愛成就のお守りニャ。カップルさんも片思いさんも恋探し中さんも持っていくニャ」
一人ずつ全員に崚は桜の花弁をプレゼントする。
「あんた達の恋の春もばっちりニャ。春告げる――桜姫の守りを」
と、ざらめはじーっと崚を見つめる。
「何ニャ? 花弁もう一枚いるかニャ?」
「なんでもないですのー! ありがとうですの!」
「ざらめちゃん、行くわよー」
「はいですの!」
こうして、一向はいつもの生活へと戻っていく。
「コベコ、毛艶よくなったね。温泉ってすごいや、またこようね!」
「コベコにはしっかりなのに私にももっと効果が出ていいはずなのにっ!」
いつものテンションで帰っていく一行。
ふっとざらめは後ろを振り返る。
「桜姫さん、お隣にいらっしゃいますのね。見えなくとも、一緒ですの」
神であるざらめには、桜姫の姿が見える。穏やかに、彼女は笑っていたのだ。
「ざらめちゃんどうしたの? さっきから何か言ってる?」
「‥‥皆さん幸せになられるとよろしいですの!」
こうして、それぞれの距離が縮まった温泉旅行は、終わる。
そして、彦星にとって来るべきときが、とうとうやってくるのだった。
だがそれは、また次のお話。