Fauvismeアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 玲梛夜
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/21〜03/25

●本文

 感覚を研ぎ澄ませ。
 捕らわれず、自由に使われるべきだ。
 流れる音に決まりはない。
 理性なんていらない。
 共に歌う、共に奏でる。それだけでいい。
 それだけで、幸せで楽しい。
 自分の半身をみつけたら、世界の色が変わっていく。

 遠い遠い未来の世界。
 世界は音で支配されていた。
 その世界の中心は『アブソリュト』というユニゾン。
 そしてその下の四天王、親衛隊。
 治安を守り、支配する彼らは、人々にとって善でもあり悪でもある。
 世界を覆すには、きっかけが必要だった。

 そして始る。
「ねぇ、俺のために歌ってよ、そこの二人。半身同士、だろ?」
「どんな歌が好み?」
「なんでもいい‥‥俺の心、ふるわせるなら、何でも」
 路地裏で、一人の青年が通りすがりのものたちの服の裾を掴む。
 そして、力なく笑う。
 ここから。
 世界が、動く?

●ストーリー
 日々なんの刺激もない日々。世界は平和で穏やか。
 そんな時、見知らぬ青年が城下にやってくる。
 自分のことを語らない彼は、それぞれの音を聞きたがる。
 日常に、少しだけの刺激。
 だからただ、歌い奏でる。

●出演者募集
『Fauvisme』では出演者を募集しています。
 パイロット版の青年は璃久アイジが演じることが決定しています。
 現在募集中なのは『一般階層の面々』のみとなっていす。
『親衛隊階級』『四天王』は後々、解除される予定です。
 また、『一般階層の面々』→『親衛隊階級』へのチェンジは話が進めば可能。同じように『親衛隊階級』→『四天王』へも可能だがこの場合欠員での補充、下克上などのような形で変わってくる。
 なお、話が進む中で実は『親衛隊階級』でした、というのも可能。
『一般階層の面々』→『四天王』へのクラスアップはありません。

●補足
『アブソリュト』世界を支配する二人組通称。
『ユニゾン』対となる二人。考えなどは違っていても、体の奥底に流れる音は同じ。出会えば自らの持つ力を飛躍させることができる。歌×歌、歌×楽器、楽器×楽器と表現方法は三つに分かれる。
『音の力』自分の奥底に流れる音を理解し、奏でる事によって破壊、創造という力を持つことができる。ただし持てるのは一つの能力のみ。また、音の力同士をぶつけ合う場合、この能力は互いにかき消され合い使用できない。
『侵食』ユニゾンである者のみできること。音同士をぶつけ合い起こる現象。物理的な衝撃は無しだが精神的衝撃はありうる。破壊ではなく飲み込み、相手を丸め込み傘下におさめるイメージ。ただし、勝負は一度負けたからと言って次も負けるとは限らない。

 長くなるため必要最低限と思われるものしか記載していません。
 他、何かあれば答えます。

●今回の参加者

 fa0142 氷咲 華唯(15歳・♂・猫)
 fa2726 悠奈(18歳・♀・竜)
 fa3280 長澤 巳緒(18歳・♀・猫)
 fa4263 千架(18歳・♂・猫)
 fa4619 桃音(15歳・♀・猫)
 fa4657 天道ミラー(24歳・♂・犬)
 fa5181 雪架(18歳・♂・小鳥)
 fa5480 ヒノエ カンナ(22歳・♀・猫)

●リプレイ本文

●変わらない日々の違う日
 お世辞にも綺麗とはいえない裏通り。
 でもそこは、この世界では生活するには当たり前の場所。
 そして、音の力を持つのも当たり前。
 生きるには、音が必要。
 自分に流れる音を理解して、気持ち込めれば力は動く。
 理解するのは、一瞬か、いつの間にか。

『 創るものと壊すもの エスプレッシーヴォにつむぐ
  出会いはオブリガート その先はきっとドルチェな彩り
  きっと動き出す そう世界が動き出す 』

 キリカ(長澤 巳緒(fa3280))は気持ちよく歌いながら歩く。
 そして、ふと立ち止まり、耳を澄ます。
「‥‥今日も、音がたくさん‥‥」

●路地に響く
 ひそりとした路地裏。
 枝連(氷咲 華唯(fa0142))はアコースティックギターを持ったまま歩く。
 ふらふらと気の向くように歩く枝連。その表情は、仮面つけたように硬い。
 人のいない場所に向かって。
「楽器、弾くのか?」
 ふと、声をかけられて振り向くと、この辺りでは見たことのない青年がいた。
「音、聞かせてほしいな」
「‥‥俺の音は、人に聞かせられるようなものじゃないから」
 そう言って、枝連はまた歩き出す。
 後ろから、ついて来る気配を感じて枝連は立ち止まる。
「‥‥ついて来るなよ」
「行く方向が一緒なだけだ」
 ついて来る事をやめない青年。枝連は諦めて進んでいく。
 そして少し開けた場所へ出る。
 枝連は放置されている木箱の上に座り、ギターを取り出す。
 けれども、弾かない。
「‥‥弾かないのか? 楽器が待ってる」
「あんたがいるから」
「俺のことは空気だと思って」
 問答繰り返し、それでも枝連は弾かない。
 と、距離をとって見ていた青年が、動く。
 その動きを枝連は、目で追う。ふと視線が、あう。
「無理強いは、できないからな。好きなときに好きなように奏でるのが、音だしな」
 青年はその場を離れていく。姿が見えなくなり、枝連はギターを抱えた。
 一音ずつ、鳴らしている。
 暖かで穏やかな、音。
 優しい音が響き、ふと今までの無表情とかわって、少しだけ、笑顔を浮かべる。
 大切な思いを含んだ音。
 それは静かに、響き渡る。
「‥‥暖かいけど、寂しい、切ない‥‥」
 枝連の音は、小さくだが青年の耳にも届く。
 ふと足を止めて、その音に耳を傾ける。
 音に映る心は‥‥

●明朗、わがまま、空から
「知らない人、見ない顔‥‥歌? 楽器?」
「歌」
「歌って」
「今は、無理」
「ケチんぼー」
 知らない人、とくれば興味津々。
 閃(天道ミラー(fa4657))は唇尖らして、文句を言う。
「今は、だからそのうち。俺よりも、お前が弾けばいい。聞きたい」
「いいよ!」
 背負っていた漆黒のギターを閃は持つ。
 高い音から激しく流し、勢いを少し沈めてさらさらと。
 気分によって変わるのか、テンポも音も、一貫性なく気ままに踊る。
 閃の音は、上手いのだが、惹かれるかというとそういうものはない。
 ただ、上手いだけ。
 穏やかに終わる音。
 どう、と自慢げな表情を閃は青年に向ける。
「俺、上手いだろ?」
「‥‥上手い。対は、いないんだな。ほしいとも、思わない?」
「いたら面白くなりそーだけど今は別にいいや。1人でも楽しいから」
「本当に?」
「本当」
 そうか、と青年は言葉を返す。
 けれども音に、閃の気持ちは現れていた。
 本当は対がほしくてたまらない。
 言葉よりも気持ち染み出る音は正直。
 と、ぽつりと鼻先に落ちてくる雫。
 二人はそろって上を見上げる。
 空は快晴。
 だが、歌が聞こえる。
 高く透明で美しく、響く声。
「歌‥‥」
 その歌の方へ、自然と足が向く。
 響くのは上、建物の屋根の上から。
 白(雪架(fa5181))は、視線を上に歌うが、下からの視線に気がつき、歌うのをやめる。
「もっと歌えばいいのに」
 青年は、見上げて言う。
 白は猛烈に嫌な顔して、見下ろす。
「金払う気もねえのに人を流し扱いすんじゃねえよ。タダ聞きか、あぁ?」
「聞こえたから‥‥聞いていただけ」
「うぜぇ」
 半眼で見下ろす。
 その後に短く、白は歌う、と同時に青年の上に水が落ちる。
「うっわ、びっしょびしょ!」
「‥‥そうだな」
 閃は笑い、首周りに巻いた迷彩のバンダナを少し口元引き上げて、笑う。
「嫌われたな。しょうがない」
 青年は怒るでもなく笑い、白に背を向け歩き始める。
 閃は、その背に手を振って逆方向に。
「‥‥アホくせ」
 二手に分かれる二人みて、白はまた歌い始める。
 アブソリュトのいる城を見ながら、歌うそれは賛美歌。
 上から見下ろしてる連中、全て地に落としてやるといつも思いながら、その意思は歌と矛盾しているようで、していない。
 純粋さ通しているから。

●帰り道に響かせて
 光(桃音(fa4619))はてくてくと買い物帰り中だった。
 いつもと変わらない風景。
 けれども聞こえてくる音はいつも違う。
 ふと、足を止めて光は耳を済ませる。
 優しい音も、悲しい音も、すべて受け入れるように、耳を傾ける。
 その頃、光の対たる架(千架(fa4263))は、大切な幼馴染が帰ってこない、と家の中をうろうろしていた。
 まさか一人で荷物が持てない、躓いてる、絡まれてるんじゃ、と思考はぐるぐると回る。
 とても心配。
 迎えに行ってくる、と家族に伝えて飛び出してからそれはよりいっそう加速。
 きっとこっち、と架は街の中を歩く。
 ふと、触れる琴線。
 本能より深いもので、光を感じる。
 光も、架を感じて視線を巡らす。
 互いに同じタイミングで見つけあい、向け合うのは笑顔。
 声のでない架は表情で言いたいことを伝えるが、光とは心で通じ合える。
 それはユニゾンだからなのか、二人の絆なのか、その両方かもしれない。
「一人で大丈夫だって言ったのに、架は心配性ね」
 光の言葉に、架は笑顔で『なかなか帰ってこないから心配したけど、無事でよかった』と伝える。
「遅くなってごめんね! 寂しかった?」
 その問いに、架はこくんと頷く。
 そして、二人は並んで家路を進む。
「二人、ユニゾン?」
 その途中で、声をかけられる。
 同じタイミングで振り向く光と架。
 そこには、今まで見たことない顔の青年。
「貴方、勘いいのね。私達がユニゾンって分かるなんて」
「今までたくさん、ユニゾンみてるし‥‥そういう感じが強かったから。なぁ、二人の音が聞きたいんだけど、聞かせてくれないか?」
 青年の言葉に光は一度瞬き。
「私は別に構わないけど‥‥架はいい?」
 光は架に問う。
『光が良いなら、断る理由ないよ』
 微笑で架は答え、光はそれじゃあ、とオカリナを取り出す。
 架も、光のそれより一回り小さなものを出す。
 音を生み出すタイミングも、二人は同じ。
 響く音は、歩くような速さ。
 重なる音は柔らかな音色。
 けれども、幸せにも物悲しくも消える曖昧さ。
 受け取り手次第の音。
 けれども、二人のもつ音が同じなのが、よくわかる。
 メロディが途切れる。
 光と架はオカリナから唇を離すタイミングも一緒。
 架はぺこりとお辞儀を一つする。
「ありがとう、良い音を聞いた。きっとこれからも、二人の音は変わらないな‥‥ずっとそのままであるといい」
「変わらないわよ、ずっと」
 光は答え、ね? と、架に笑いかける。
 架はもちろんと頷き『そろそろ帰ろう?』と光に伝えた。
 家に、いつもの日常へ。

●懐かしい昔の歌
 青年と別れた後、閃は聞こえた歌に誘われるように一軒の店へと入っていった。
 そこは知り合いでもある悠(悠奈(fa2726))が働いている店だ。
 いつものように歌う彼女。
 閃は、隅でそれを聞く。
 一曲歌い終わり、悠と閃は軽く言葉を交わす。
「相変わらず優しい音だな。でも楽しんで癒す方がお得な気もするけどなー」
「‥‥貴方とは違うもの」
 悠はそう言ってそっぽを向く。
「そのうち楽しめるようになるって」
 閃は言って、また一人知り合いを見つけて手を振る。
 悠の姉、咲(ヒノエ カンナ(fa5480))だ。
 とろとろとぼーっとした雰囲気。手にしていたものも落としそうだ。
「お姉ちゃん! ぼーっとしてないでよ! またコップ割っちゃったらどうするの!」
「あら‥‥そんなことしないわよ‥‥悠はしっかりしているのね」
 いつもの姉妹の会話が始る。
 閃は巻き込まれては大変、とその場を去る。
 魅せの扉を開けると、先ほどあった青年とすれ違う。
 ふと視線が、会う。
「歌、きっとそこの店の二人なら歌ってくれるよ!」
「そうか、教えてくれてありがとう」
 閃と入れ違いに、青年は店に。
 お姉ちゃんがシッカリしてないから! とちょうど悠が言っていた場面に出くわす。
「いらっしゃいませ〜」
「さっき歌ってたのは‥‥君のほうか」
 青年は悠と咲の顔を見、悠のほうへ視線を向ける。
「そうだけど‥‥」
「歌って、俺に聞かせて」
「私の歌は‥‥タダでは歌えないの!」
 語尾はきつめに悠は叫びに近い声で言う。
 悠にとって歌うことは日々の糧のためで、そんなのはうんざり。
「歌は、嫌い?」
「そんなことないけど、でも‥‥」
「歌うの嫌いじゃないでしょ?」
「それは‥‥でもタダでは歌えないの、歌いたくないの」
 咲はそんな悠をたしなめる。
「そんなコト言わないで、幼い頃の思い出の歌でも歌おうよ」
「‥‥」
「私も歌うから‥‥ね?」
 優しく諭すように言われ、悠はしばらくしてから頷く。
「もう! 咲はお人好し過ぎる!」
 そういいつつも、悠は嬉しそう。
 二人は並んで、手を繋ぐ。
 あわせる声は懐かしい歌。
 幼い頃二人でよく歌った、歌。
 風が巻き起こるような雰囲気で、咲の高音域に澄み渡る声と、悠のやや低く、落ち着いた張りのある声が重なる。
 さわさわと室内なのに風が頬撫ではじめる。
 二人の重なった声が生み出す風。
 それは体も心も、癒す音。
 歌い終わると同時に風は、凪ぐ。
「悠と一緒に歌えて幸せだよ、私」
 咲は笑顔を悠に向ける。
「ユニゾンは、やっぱり悠とがいいな」
 対が悠であること、咲であることを二人は感じ、また深く心にそれを刻む。
「うん‥‥そうだったね。二人で良かった‥‥」
 忘れかけそうな当たり前なこと。
 悠は、青年に顔を向ける。
「‥‥ありがとう。歌う切欠をくれて」
「俺は何もしてないよ。ただ聞きたいっていっただけ」
「それで十分なの」
「そうね、悠ちゃんと歌えたからそれでいいの」
 咲と悠は嬉しそうに、笑いあう。
 悠にとって、これから歌い続けることに変化がおきたのかもしれない。少し

●傍観者
 夕暮れ時、キリカは青年と出会う。
 歌って、と言われキリカは反対に切り返す。
「あなたは歌えない小鳥?」
「今は、歌えない小鳥かな。小鳥ってがらでもないけど」
「‥‥いいわ歌ってあげる」
 青年の言葉を受けて、キリカは一つ息を吸って、茜色の空に手をすっと伸ばし、軽やかに、歌い始める

『 動く動く 世界が動く
  動く動く 今はまだレントだけど
  動く動く そしていつかフォルテフォルティッシモの流れ
  インプロヴィゼーションからオペレッタへ
   そしてオペレッタはいつしかオペラへ変わる
  世界は新しい歌声を望む
  世界は古き歌を忘れる
  渦を巻き壊れ生まれる
  そう カデンツァは次のオーヴァチュアへ 』

 さらりと軽く流すように歌うキリカ。
 表情は豊かに、声を響かせる。

「貴方が覚えるのはどんな歌? 世界を導く新生の歌? それとも自分さえも滅ぼす破滅の歌?」
「さぁ‥‥どれだろう」
 歌ってくれてありがとう、と青年は言い、キリカを通り越して歩む。
 キリカは立ち止まったまま瞳を伏せる。
「貴方にも聞こえているはず‥‥これから多分‥‥いいえ、きっと面白くなるわ」
 呟く言葉は風の音でかき消される。
 歩みだすキリカは自分の歌声とともに、始る闇の中に消えていく。

●夜の帝国
 薄暗い部屋で、青年は今日のことを聞かせてという人物に、話をする。
 思い返すのは、昼間のこと。
 それぞれが音を持っていて、それは、心に染む音。
 でも、まだ何か足りない。
 何が足りないのかわからないけれども。
「結局、まだみつからない?」
「みつからないね。一生みつからないかもしれない‥‥」
「早く、みつけないと」
「わかってる‥‥でも、きっと俺は間違ってる。世界じゃなくてお前のためだけにしてる」
「そうかな? そう君が思ってても、必要」
 二人の声色は真剣で、切羽詰っている。
「早く、全てを覆すことのできる音か‥‥守れる音を‥‥」
 呟きは、闇に、音に溶ける。
 おそらく至高たるだろうその音は、まだみつからない。