【AbySS】FallInLoveアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 玲梛夜
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 5.5万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/24〜03/26

●本文

 ロック中心なライヴハウスAbySS。
 オーナーのメアはイタリアから帰ってからずっとご機嫌です。
 今はおとなしくカウンターにすわって本を読んでいる。
 その隣ではいつものように書類ぺらぺらしながらチェックしている甥っ子カオル。
 と、いきなり、メアは本閉じて立ち上がる。
 そしてまた発する言葉もいきなり脈絡なく。
「恋い慕うっていいことよねカオルちゃん」
「は?」
「いいことよね!?」
 詰め寄ってくるなら、逆らわないほうがいい。
「そうだね‥‥」
「じゃあ次のライヴのテーマは恋慕しかないわね! ふふ!」
「‥‥どうしたの‥‥?」
「え、ふと思っただけよ」
 笑顔でメアはライヴの告知をだす。

 ライヴ告知
『Fall In Love』
 テーマは『恋慕』
 想いを歌に音に。
 素敵なものを期待しているわね!

 と、カオルの目に留まるのは一冊の本。
「ああ、これのせいか‥‥」
「何か言った?」
「なんでもないよ」
 メアが読み終わったばかりの本は、どっろどろの恋愛模様の物語なのでした。

●今回の参加者

 fa0034 紅 勇花(17歳・♀・兎)
 fa1744 雛姫(17歳・♀・小鳥)
 fa3596 Tyrantess(14歳・♀・竜)
 fa3867 アリエラ(22歳・♀・犬)
 fa3887 千音鈴(22歳・♀・犬)
 fa4790 (18歳・♂・小鳥)
 fa5307 朱里 臣(18歳・♀・狼)
 fa5316 希蝶(22歳・♂・鴉)

●リプレイ本文

●ライヴ前
「半年振りかぁ‥‥メアさん、お久しぶり。何か最近変わりあった?」
 紅 勇花(fa0034)は半年振りに訪れるライヴハウスを見回す。変わっているようで、変わっていない。
「何もないわねー、勇花ちゃんは?」
「‥‥僕? ‥‥何か、色んなモノを失くした気がするよ‥‥」
 勇花はちょっと遠い目をする。
「俺はここで演るのは初めてか。ま、なんにせよよろしく頼むぜ」
 Tyrantess(fa3596)もしっかり挨拶は欠かさない。
「よろしくね。初めてでも久しぶりでもここは歓迎よ!」
 オーナーのメアはにこにこ笑顔で迎える。
「メアちゃんお久しぶり〜!」
 きゃー、という感じのノリで千音鈴(fa3887)はやってきて、何故かお手。
「今回は恋慕がテーマ‥‥私の場合‥‥恋慕うというより恋狙うというか、競うというか。まぁ人生何があるか分からないものねってのを体験中! 春だし!」
「狙うのはワンコの性、狩猟本能よ」
「二度目ましてー! Smileじゃない手土産もってきましたー! 土筆、蒲公英、薺、石蕗‥‥天麩羅、おひたしと色々楽しめるぞ♪ はい!」
 どさーっと自主採取してきたものを希蝶(fa5316)はメアへと渡す。
「春は貧乏人には助かる季節‥‥恋じゃ腹は膨れんが、鯉ならウェルカム!! 鯉に恋してお前の骨まで食ってやるぜーみたいな」
「鯉なら近くの公園とかで泳いでそうよね、捕まえるならそこかしら」
「それは駄目だから」
 と、すかさずメアにつっこみを入れるのは甥っ子、カオル。
 そこへ慧(fa4790)がやってくる。
「カオルさんにメアさん、初めまして。今回はどうぞよろしくね。あ、メアさん。この間僕の恋人さんがイタリア旅行でお世話になったって‥‥おかげさまで、ちゃんと今もつけてるよ」
「あら、かわいい彼女さんがいて幸せものね! 大事にしてあげなきゃ駄目よ、捕まえたら逃がしちゃ駄目なのよ!」
 微笑んで挨拶し、そして首元のガラスの鳥モチーフのペンダントを少しはにかみつつ示した慧に意味不明の熱さでメアは語ってくる。
「すみません‥‥恋愛事になると熱くなる人なんです‥‥」
「こんにちは〜! お久しぶりにお邪魔なのです! お土産は春らしく苺のシフォンケーキです♪ クリームも苺で甘くて恋の味なの!」
 六月以来〜、とやってきたのはアリエラ(fa3867)。
 そしてその後ろには朱里 臣(fa5307)と雛姫(fa1744)が。
「カオルさんはSMSぶりだよね。メアさんは初めまして! 従兄弟から話は聞いてたから一度遊びに来たかったの。えへへ嬉しいっ。あ、お土産にね、その従兄弟が作ったキャロットシフォンなんだけど、良かったらどうぞ。女の子に嬉しい低カロリー、で伝わるかな?」
 臣が笑顔で差し出すのはキャロットシフォンケーキ。
「もちろんわかるわ! こんな可愛いいとこさんを隠してたなんて‥‥というかカオルちゃんも知ってたならちゃんと報告しなさい」
「タイミング逃してたんだよ、そういう事にしといて」
「メア様、カオル様。不束者ですがどうぞ宜しくお願い致します。お土産の桜餅です」
 雛姫はぺこりと頭をさげてお辞儀一つ。どきどきしながらお土産渡す。
「今日は、おいしいものがいっぱい‥‥終わってから皆で食べましょうね」
「えへへ、テンション上げすぎてスティック飛ばさないようにライブハウスまでの道、いっぱい練習したから大丈夫だよね。こんな風にならないようにしないと!」
 と、臣はすちゃっとドラムスティック取り出し叩く練習のふり、をしてスティック飛ばす。
「本番で飛ばさなければOKよ!」
 そしてライヴは始る。

●ELAN ―恋華〜RENGE〜
「恋する皆、FIGHT! と思いながら歌います」
 微笑たたえて演奏前に千音鈴は観客へ一言。柔らかなライトの中に希蝶とたつ。
 淡桜色のボレロカーディガンを白のレースワンピースの上に羽織り、髪はルーズアップし桜の簪をさす千音鈴。手にはアイスブリザードをしっかりと。
 希蝶はキーボード前に立つ。和柄のシャツにブルージーンズ。そしてトレードマークなヘアピンは桜。
 ぼんやりと薄桃色の花弁のエフェクトが、降り注ぐ。
 和の音はアップテンポ。
 ややスローなベースの音から曲は始る。
 そこに華やかにキーボードの音が加わり、和音揃えて勢いづけていく。

「 知らぬ間に心に咲いた花
  枯れることなく 日に日に彩に
  花の種 私の心に落とした貴方
  咲き誇る想い気付いてますか? 」

 同じメロディーは続く。
 けれども音階を上げて。

「 摘んでも摘んでも絶えぬ花
  命限れど 無限の想い
  あてどなく ふわふわ宙を彷徨う
  溢れ出す想い届いてますか? 」

 そしてテンポ落ちていく。
 音は高音から低音、低音から高音と緩やかにキーボードで響かせる。
 二人でハーモニーを、奏でる。

『 せめて夢で逢えたら 瞳閉じ願うのに
  貴方を想うと眠れない 』

 音を一つ、空白入れて。
 高く高く、伸びるように。

「 なんて悔しい矛盾 」

 スローテンポから速さは最初に戻る。
 曲にあわせて照明効果の降る花弁の量は変わっていく。

『 言葉では表せない想い
  それでもありったけの言葉に込め
  想いの花と共に 貴方へ贈ろう 』
「 スキ・ダイスキ・アイシテル 」
『 花弁から零れる 』
「 飾らぬ愛しさ 貴方へ 」

 声を重ねて、言葉の雰囲気に音も合わせる。
 ゆるりと音は遅くなって短く〆る。

●勇花 ―赤い糸
 半年振りの舞台に勇花はギターを持ってたつ。
 歌うのは妹から兄への近親愛。
 その想いは、ひしひしと伝わる。

 メインメロディーにそって開放的なイメージの音が流れる。
 勇花のアルトの声が伸びやかにそこに乗る。

「 小さな頃からずっと信じてた 二人繋ぐ運命の『赤い糸』
  だけど愛する事は許されなかった 二人繋ぐ現実の『赤い糸』 」

 転換でギターを掻き鳴らしメロディにうねりを。
 雰囲気はテンションを下げて、混沌に陥る。

「 分かっていたけど‥‥それでも、想いは‥‥決して、止められないから‥‥!

 切々と思いを乗せて、力強く声は響く。

「 断ち切れない、二人を繋ぐ赤い糸 こんなに、いつもすぐ側にいるのに‥‥
  縺れてゆく、二人を繋ぐ赤い糸 一つになりたい、願いは只空しく‥‥ 」

 音も声も激しく思いを歌い上げる。
 こめられる想いは深深と。

●Tyrantess ―Don’t love you
 Tyrantessはギターを持ち舞台の上へ。
 ギターヴォーカルだけで、今日は歌う。
「今日はちょっとらしくねー曲だが‥‥たまにはこういうのもいいだろ?」
 観客に向かい言葉を投げて、音を奏でる。
 音はややスロー。
 しっとりと。

「『またフラれた』って呟く お前の横顔
 『やっぱりな』って答えて じっと見ていた
  少し優しいだけで てんでさえない
  そんなお前は俺の 日常だった

  オトコとしてなんて 見たこともない
  お前なんかに俺が‥‥? 」

 一拍の無音は、次に続く緊張感を作る。
 一つ息を吸っての思い切りのシャウト。

「 そんなのありえねえ!

  I DON’T NEED YOU!
  早くどっかに行っちまえよ!
  お前なんかいなくたって 別に何も変わらない
  I DON’T WANT YOU!
  勘違いなんかするなよ!
  行き場のないお前に 同情しただけだから
  I DON’T LOVE YOU!
  No,no,no,no!! 」

 音も声も、力強く叫ぶように。
 だんだんボリュームあげてさらに強くシャウト。

「 けど もし 俺の隣が 心地いいなら‥‥
  ‥‥ずっと 置いてやっても いいんだからな‥‥? 」

 そしてトーンを落としてのメリハリ、静かに、ささやくように。

●慧 ―咲きゆく君へ
 慧はピアノの前へ、座る。
 裾に羽模様入りの黒のオーガンジーカーディガンと、ドレッシーな白タンクトップににジーパン。セルフレームの伊達眼鏡とライトに光返すのは右手薬指の指輪、スコール。そして恋人からイタリア旅行のお土産にもらった揃いのペンダント。
 白いスポットライトがぽっと。
 ヘルプは臣がドラムで軽快なリズムを刻み、ピアノの和音が重なる。

「 ふわり漂ったのは咲き初めの白木蓮
  そっと触れたくて 祈るように手を伸ばす
  春を告げている穢れなきその花は
  手折られるためじゃなく ただ微笑むために咲く 」

 甘く優しい音に、温かみのある声が合わさって。

「 からっぽの気持ち満たしてくれたのは
  先往く君の笑顔の香り
  誰よりも恋しくて 誰よりも愛おしい
  君を守っていきたいんだ 」

 しっかりとピアノで抑えた上に響くハーモニーは美しい。

「 さあ咲き誇れ 優しき花よ
  どんな闇も嵐も 近づけはしないから
  気がつけば春爛漫 頬を撫でる風は澄んで
  君という花があれば どこまでも行ける気がした 」

 花開くように華やかに紡がれる歌は伸びやかに響いていく。
 最後の一音まで綺麗に響かせ、フェードアウトするように。

●ElecTricker ―Clover
「ラジオで共演、電波ジャック狙ったメンバーで今日はよろしくお願いします!」
 臣は元気に笑顔を向ける。
 雛姫は白のシフォンカーディガン、若葉色のワンピ、四つ葉のクローバーの耳飾りとチョーカーつけ、手首と髪にクローバーと白詰草の花飾り。タンバリンを軽くならして観客に反応返す。
 アリエラは髪をサイドポニーテールに。シースルーの生成色シフォンの姫袖エンパイアチュニックの下には萌葱色のロングキャミ。七部丈スキニージーンズに白のバレエシューズ。ギターネックにはクローバーのマスコット。
 臣は薄桃のキャミに萌黄のタンクトップを重ね、白のメッシュカーディガン、グレージーンズ。腰まで届く明るい灰の髪はツインテールに結び上げて。首にはクローバーモチーフのヘッドが揺れるチョーカー。
 ライトは全てが映えるよう全体を淡く柔らかに照らし出すように。
 臣はドラムスティックを回してから、力強くドラムカウント。
 元気よく曲は始まり、そこに雛姫のタンバリンと歌声が乗る。

「 暖かな太陽が見守る丘で 一生懸命探したけれど
  見つからないね 四つ葉のクローバー
  まるで君みたい 隠れちゃってでてこないよ 」

 歯切れよい歌、メロディを歌声で、アリエラのギターはそれに添うように。
 アリエラがくるっとターンしたり、雛姫と背中合わせれば、臣もそれに合わせて音強めに。
 スポットは動き回る二人を追うように踊る。
 少しテンポを落として、訴えかけるように。

「 3枚でも5枚でもダメなの
  4枚で初めて『True Love』になる
  子供じみたおまじない
  でも 幸せを願わずにいられない
 『大好き』って言葉にしたら
  君は振り向いてくれるのかな‥‥ 」

 落としたテンポは元に戻る。
 ユニゾンで声を三人で、響かせて元気よく。
 曲の盛り上がりにあわせてバックライトは明滅。
 それはリズムをあらわすかのように。

「 あの日の約束を心に刻んで 一生懸命探したよ
  やっと見つけた 四つ葉のクローバー
  まるで君みたいな 優しい愛のかたち 」

 最後は優しくはもり、タンバリンの音をしゃらしゃらと響かせて。

●恋してますか?
 ライヴが終わり話はやはり恋の話に。
「歌みたいに俺を惚れさせる事のできるオトコなんて、まだお目にかかった事ねーけどな。いるのかな、そんなやつ」
「いるわよ、それはきっとどこかにいるわよ!」
「そういる! 絶対いるの! 他の皆も恋バナきかせなさいよっ!」
 標的は恋人持ち、略奪愛かもしれない千音鈴も、メアに続き熱い。
「慧ちゃんは幸せさんよね、ラブラブよね!」
「‥‥幸せです」
 にこーっと幸せそうな笑みを、慧は浮かべる。
 そしてアリエラもほわんとした表情で。
「恋って良いよねぇ。私もバレンタインに突貫して春が来たの〜、告白までのドキドキが凄く楽しい!」
「いつの間に‥‥!」
「もちろん今も幸せ進行形なの♪ WDも一緒にライブ出来たし〜格好良いんだよ〜」
 アリエラはのろけしっかり。
「臣ちゃんは同じバンドなんだよね〜良いなぁ」
「うん、同じバンド!」
「ここは幸せものの巣窟なの? そうなの? 勇花ちゃんは!?」
 いきなり話を降られて、勇花は一瞬の間を置く。
「半年前に言わなかった好きな人の話?」
「言いなさい、言いなさい!」
「い‥‥言えるワケないじゃないかッ!?」
 勇花はたじたじとうろたえる。
「‥‥俺は鯉が」
「はいはいちょーはわかってるわー。今は鯉じゃなくて恋よ!」
「何か恋する乙女に片足つっこんでる感じだが――他人事だし頑張れ」
 千音鈴をちょっとみた後に、希蝶は爽やか笑顔で応援する。
「皆様春爛漫‥‥見てるだけで幸せを分けてもらえる気がします」
 ほえほえ、と雛姫は会話ききつつ、思った事を言葉にする。
「メア様とカオル様にも大切な方はいらっしゃるのでしょうか?」
「私は皆大切! カオルちゃんは、特別な人持ったほうがいいわよ、いい年なんだから」
「それはメ」
「お黙りなさい」
「わたくしにも春がくると良いのですけれど」
 と、この雛姫の呟きが始まりだった。
「春ならここに! フリーなら!」
 ばしっとメアはカオルの背中を叩く。
「タイちゃんは二人が並ぶとカオルちゃん捕まると思うの、私なら逮捕だわ。勇花ちゃんは、慌てぶりからお相手がいそうなんだしちーちゃんも好きな人いるみたいだし‥‥略奪愛は‥‥できないわよね?」
「できるできないじゃなくて、しません」
「という事で雛姫ちゃんよ! 私かわいい姪っ子がほしいの、甥っ子はもういいの、姪っ子がほしいの」
「メアちゃんが意味不明ですみません」
 また自分の良い様に考えて、とカオルは頭下げる。
 今回のライヴも無事に、成功。