ACOUSTIC ROCK!ヨーロッパ
種類 |
ショート
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担当 |
玲梛夜
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
1.3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
06/26〜06/30
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●本文
『大英博物館で調査』
それは人目を引くことに違いない。人目につくのは構わないのだけれども、場所柄観光客、現地の人間と人は多い。それすべてが大挙することはないが、念には念を。
多くの人が集まり調査に支障をきたす、などということがあってはたまらない。
それならばもっと目を引くことをやれば良い、という提案が出る。
木を隠すなら森の中。
場所としても、大英博物館の周りにはいくつかのスクエアがある。賑やかなことをして人目を集めるにはもってこい。
場所は、そこで。
一箇所に固まってやってもよし、分かれてやってもよし。
けれどもその行いが景観を、その周りの雰囲気を壊すような事ではいけない。
そこでいくつかの条件を提示する。
『楽器はアコースティックオンリー』
『歌はマイク無しの地声で』
『照明、舞台なども無し』
その場所の雰囲気を壊さずに音楽を奏でるのが、条件。
英国のロック好き、音楽好き、はたまた通りすがりの人まで集め、その日頃培われた能力を発揮してほしい。
『大英博物館で調査』を手助けし、成果を挙げるも挙げないも、WEAに協力してくれる芸能人次第。
なお、自分達のできる範囲でやれる演出については許可をするが、後始末は自分達できっちりと、自分達が出したゴミなどのお持ち帰りは絶対に。
バックバンドなどの用意は無し、集まったメンバーでできる限りの最大限、をやってほしい。
●リプレイ本文
●ベッド・フォード・スクエアにて
「運搬やってくれるだけで感謝ね」
運びこまれたドラムセットを一撫で、藤宮 光海(fa1592)は同じネクサスメンバーの二人に笑いかける。
「公園とか路上とか、三人でいろんな所でやったっけ」
「この雰囲気、学生の頃を思い出すな」
八田 光一郎(fa1591)はウッドベースを抱え、その場の雰囲気を楽しみ、七式 クロノ(fa1590)は懐かしむ。
「懐かしいな‥‥情熱は今も変わらない‥‥さあ、始めるぞ」
「音楽に国も人種も関係無い! 楽しんでいこうぜ」
水分補給準備もばっちり、ネクサスは活動を開始する。
短く力強いオープニングジングル。
クロノはすぅっと息を吸い込む。
「ネクサスがやって来るヤァ! ヤァ! ヤァ!」
明るく華やかな音で周囲をざわつかせ惹きこむ。
惹きこんだら、もうこっちのもの。
ジャズ、R&Bを取り入れたアレンジの持ち歌を数曲披露。
そして憧れと尊敬を込めて、有名リバプールサウンドバンドの曲を。
自分達の緊張はない、周囲の目も好意的。
「聴いているだけでOKかい? 一緒にやろうぜ!」
音楽に壁は無く、溢れるのは笑顔。
乗ってきた観客に予備に持ち込んだギターをクロノは投げ渡す。
「こっちも1本出すよ」
と、光海もドラムを叩く手を止めてギターを一本。
最初はためらいつつ受け取られた楽器も、そのうち三人の音へと絡んでくる。
誰でも知っているような曲を一緒に。
聴衆と一緒になって、けれども自分達の音は失わず。
即興セッションを行ったりと周囲をどんどん巻き込んでいく。
時々水分補給をしては休み無く熱く弾き続ける。
体力の限界なんてこの楽しさで吹き飛ばして。
クロノはアコースティックギターの魅力を引き出し、力強い声で。
光一郎はウッドベースをフィンガーピックで力強く、そして声を重ね。
光海はクロノと光一郎とのバランスをみつつパワフルなドラムプレイ、そして二人とは違う声質をアピール。
「調査支援なんて関係ないな、いつものネクサスで、最高の情熱だ!」
「おう、調査支援? 関係無いぜ! 楽しめよこの時間をよ」
「二人とも‥‥でも、そうね、こんな楽しい事滅多に無いし!」
熱い二人を諌めようとするものの、光海も流されて。
いつものネクサスの最高を、披露する。
聴衆も増え、そろそろ一発、自分達の音楽を。
今このスクエアの中心にいるのは自分達だと嫌でもわかり、そしてどこかそれが心地よくもある。
一度今までをリセットするように音を止める。
「ラストは新曲だ。Smile again」
「 落ち込んで下向いたキミどうしたんだい?
夢を追いかけ頑張るキミの眩しさが
僕等にパワーをくれるのに 」
クロノと光一郎の声が重なる。
ドラムとアコースティックギター、ウッドベースの音に乗せて。
「 楽しい事無いなんて嘘さ好きな事が出来る
夢を追いかけられるそれだけで十分さ
明日はきっと晴れだから 」
今度は光一郎と光海の声を重ねて。
また一味違った雰囲気。
そして、三人の声を重ねて自分達を聴衆へと、アピール。
三人の声が合わさってこそのネクサス。
「 Never ending a dream
醒めないでくれよこんな楽しい世界なんだ
Smile again
キミの笑顔が元気の素さ
Never ending a music
歌い続けるよキミが笑顔になるまで
Smile again 」
気持ちよく響く歌声。
言葉は通じなくても、音楽では通じ合える。
曲が終って、今まで一緒に楽しんでいた観客達からは惜しみない拍手と声援。
三人顔をあわせて笑いあう。
これで仕舞い、というのが残念でたまらない。
楽器を仕舞い始めると、周囲からありがとう、楽しかったと、そう言われているようで。
「最後まで気持ち良く行こうぜ、掃除掃除!」
「ああ、そうだな」
「たまにはいい事言うじゃない」
片づけをしつつ、世話になった場所の掃除を。そんな三人をみて聴衆も一緒に掃除をし始める。
最後までしっかりと。
「音楽の力って偉大だなー」
関心しつつ、ネクサスの仕事は無事に終った。
●ブルームズベリー・スクエアにて
「うふ、うふふ、路上‥‥じゃなくてスクエアライヴ‥‥こういうのをやってみたかったのっ」
周囲にハートを撒き散らしつつご機嫌クク・ルドゥ(fa0259)。その隣では星野 宇海(fa0379)が笑顔を浮かべている。
「歴史の漂う街! 感動ですわ♪」
そんな二人の服装は和服。この場所ではとても目を引いた。
ククは紗の着物に草履。そしてひそりとスパッツ着用。宇海は爽やかな紗の浅葱色の訪問着を。
「よし、がんばろー!」
「蜜月欧州進出だしな」
と、張り切る姿を仁和 環(fa0597)は見守る。
「初日に人の流れとかもみて色々調整したし、上手く行くだろ」
「聴衆も巻き込んで楽しく演れれば良いね」
蜜月メンバーである早河恭司(fa0124)も準備は万端と言った様子。今日は黒の革パンに長袖Tシャツと体力の消耗等も考えての服装。
「あと‥‥一人くるんだよね」
「そうだよ、恭司パパ」
パパじゃない、と恭司が言うと同時に背後から最後の参加者、神保原和輝(fa3843)が現れる。
「遅れてすみません」
「これで全員、じゃあ‥‥始めようか」
どどん、と場所を陣取る。いつもこのスクエアにはない雰囲気に、周りの人々は興味津々。
先陣を切るのはスーツをきちっと着こなした環。その手には三味線。調弦をしっかりとして、そして。
「よっ!」
歯切れ良い掛け声から環は自分の持てる三味線の技を披露していく。
その音は、公園に広がって観客を引き寄せる。その関心をつなげようと、イギリスと馴染みの深い曲をアレンジして演奏していく。
それにはコーラスも軽く加えて。
だんだんと環の演奏にのってくる聴衆、そこへしゃかしゃかと音が一つ加わる。ククが環に借りたマラカスで一緒に演奏。襷掛けをして多少は動きやすく。
三味線とマラカスの音を重ねてそのまま、蜜月の曲へと流れ込む。いつの間にか恭司もアコースティックギターで参戦。
「次は私達の曲『眠れる森』!」
響きだす音は静かに抑え目。
けれどもちょっと女の子らしさを感じさせるような雰囲気。
「 きっと此処は眠れる森
世界を舞台にした壮大なお芝居は
今日も今日とて廻り続ける
平凡・普通・退屈・諦め
限られた毎日を消費する生き方で
空を飛ぶ鳥にあこがれて
羽がないコトを嘆くだけで
そんな世界に嫌気が差して
お姫様は目が覚めた
一糸乱れぬお芝居はある日突然狂いだす
『輪を乱すな、置いてかれるよ』
非難罵声の嵐の中でお姫様は歩き出す
ない物ばかりに憧れて
諦めばかりの毎日で
きっとあなたは飛べないけれど
夢を掴む事ができるのにさ? 」
環の三味線、恭司のギターの音にククはマラカス鳴らしつつその澄んだ優しい声をのせる。
予定調和、定められた事のようにその響きはしっかりと。
「 rout in this sleeping days!
Bloom in this fuckin’days!!
眠り姫のままじゃいられない
不条理だらけの台本なんか
ガラスのヒールで蹴散らしちゃえ 」
と、元気良くククは何も無い空に思い切り足を蹴り上げるパフォーマンス。
草履を蹴り飛ばすほどの勢いでギャラリーは行き成りのそれにちょっと驚く。
けれども楽しんでいるようで。
「 rout in this sleeping days!
Bloom in this fuckin’days!!
切り捨てるものを知るのが知恵で
手放せる強さが勇気だって?
そんな格言はゴミ箱へ
指くわえてみてるといいわ
主人公は私なの!
結末だって変えてみせる! 」
曲のラストは音をしっかりカットアウト。
余韻よりもインパクトを。
蜜月の曲が終るとそれとなく、メインの歌姫は交代。
次は宇海が前へ。
まだまだ周囲は何があるのかと期待の視線。
「憧れの英国♪ ここで歌えるなんて‥‥夢のようですわ♪ 曲は、『未来』」
と、三味線からWEAに用意してもらった和琴へと環が楽器をチェンジし、その音を奏で始める。
流れるような和琴、その上に恭司がバイオリンを奏でて二重奏。
「 曇り空を見上げては 『有り得ない』と笑っていたの
私の手のひらは小さくて
夢も 希望も 涙さえも 繋ぎ止めておけなくて
果てない空を想っては 『届かない』と諦めていたよ
僕等の距離は遠すぎて
時も 理想も 愛情さえも 留め置く事が出来なくて
黄昏に届いたならば きっと願いが叶うから
黄昏の向う側には 光輝く世界があるから
Please do not forget. 光差す明るい世界を
Please do not give up. 何時の日か訪れる未来を 」
語るようにゆったりと、英国のトラディショナルミュージックを感じさせるバラード。
心地よく流れる音は途中からテンポを上げて力強く。
一度宇海の声は止まりゆっくりと、なっていく。
和琴の音は語りかけるように、時に強く、時に穏やかに。
バイオリンはそれを支えるように。
そしてまた、ゆったりとした音楽に声が合わさる。
「 Believe that we can meet again some time.
We will walk along,some time.
Under the sky of dusk. 」
ケルト音楽の雰囲気を纏った曲は和琴の余韻を残し幕を閉じる。
その余韻の中、和輝のフルートの音が響く。
ちょっと一休み、という感じだ。
演奏する曲は英国の地に因んでの選曲。
懐かしさに溢れ、暖かい響きに満ちた曲。
低音のリズムの上に滑らかなメロディが。
単純な旋律なのだけれども、その中には優美さが。
和輝の奏でる曲はスクエアに響く。
最後の一音までしっかりと。
その音が消えると同時に手拍子。
和輝の演奏の合間にちょっと休んだメンバーは元気一杯。
手拍子のリズムは誰もが知っている有名な曲。観客も何を歌うのか理解し、同じように手拍子。
今度は楽器の音はなく、響くのは手拍子と声のみ。
環は上着を脱いで袖をまくりあげ、一緒に一緒にと周囲を煽る。
煽らなくても十分に盛り上がっているのだけれどももっともっと、と。
手拍子に加え足踏みも。
それはスクエアを揺らすほどで、そこに乗る声はそれ以上の響きを持つ。
一致団結してくるとリクエストは、とククが尋ね、あがってきたものを臨機応変に、恭司はギターとバイオリンを、環は三味線、アコーディオン、ウクレレと楽器を変えていく。
和輝のフルートにあわせククと宇海が歌ったり、はたまた恭司、クク、環で蜜月の曲を披露したりと多種多様に演奏は変化。ロックからケルト音楽風と多岐にわたり飽きさせることは無い、反対に目を離すと損をしてしまうような気がしているのか集まったものたちは動かない、というより動けず。
五人はちょっとずつ休みを取ることで絶え間なく続けていける。
だがしかし、暗くなり始め演奏するにも限界。
これでお仕舞い、と伝える五人に周りからは暖かい拍手と声。
ありがとう、楽しかったと言っているのが伝わってくる。
それだけで心満たされるのには十分。
●お仕事終了、全員集合
「お疲れさーん」
「お疲れさまですわ」
お仕事終了後、二箇所に分かれていた八人は集合。
それぞれ満足な様子なのは伝わってくる。
「そっちはどうだった?」
恭司が尋ねると光一郎はばっちりだった、と親指立てて返し、クロノと光海もその通りと頷く。
「どうやらお互い‥‥楽しかった、みたいだな」
「大満足だよ〜! もうすごかったんだから」
それぞれどんな様子だったのかを熱く語り合い報告しあう。
どちらも大成功と言える内容で、ちょっと張り合ってみたりも。
「そういえば調査はどうなったのかな‥‥」
と、ふと和輝が呟く。
全員そんなものあったね、としっかり忘れていたようで。
「まぁ、多分‥‥あれだけ騒いで人集めたし‥‥」
苦笑交じりに環が言うと、確かにと思い出しながら頷く。
「きっと成功してますわ」
調査の結果を知るのは、この少し後。