Fauvisme―sideTheBig4アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 玲梛夜
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/16〜04/20

●本文

 感覚を研ぎ澄ませ。
 捕らわれず、自由に使われるべきだ。
 流れる音に決まりはない。
 理性なんていらない。
 共に歌う、共に奏でる。それだけでいい。
 それだけで、幸せで楽しい。
 自分の半身をみつけたら、世界の色が変わっていく。

 遠い遠い未来の世界。
 世界は音で支配されていた。
 その世界の中心は『アブソリュト』というユニゾン。
 そしてその下の四天王、親衛隊。
 治安を守り、支配する彼らは、人々にとって善でもあり悪でもある。
 世界を覆すには、きっかけが必要だった。

●ストーリー
 日々平穏な帝都の居城。
 四天王の面々は、そこから出ることは、有事とオフの時以外はほとんどない。
 四天王、そして親衛隊たちの、日々。

●出演者募集
『Fauvisme』では出演者を募集しています。
 今回募集中は『四天王』『親衛隊階級』、及び話の流れで必要ならば『一般階層の面々』です。
『一般階層の面々』→『親衛隊階級』へのチェンジは可能。『親衛隊階級』→『四天王』へのチェンジは役者同士の相互了解を持って可能。欠員での補充、下克上などのような形で変わってくる。
 なお、実は『親衛隊階級』でした、というのも可能。
『一般階層の面々』→『四天王』へのクラスアップは現在ありません。

『四天王』補足
 四天王は必ずしも『ユニゾン』であるということはありません。その一人だけで普通レベルの『ユニゾン』とはれるくらいの力があります。
 四天王ABCDがいるとしてAとBはユニゾン同士、Cは一人身、Dはユニゾン持ちだが相手は親衛隊、一般階層という状況は有です。身分違い、敵同士などもOK。
 なお、四天王には通称のようなものがあります。ユニゾンとしてもつ通称と、個人として持つ通称です。

●補足
『アブソリュト』
・世界を支配する二人組通称。
『ユニゾン』
・対となる二人。考えなどは違っていても、体の奥底に流れる音は同じ。
・出会えば自らの持つ力を飛躍させることができる。
・力の飛躍は個人、能力の方向性が違っていても、互いに認識できる範囲内(可視範囲)にいれば極限まで引き上げ。どちらか一方が歌っているという状況などでも引き上げ。
・歌×歌、歌×楽器、楽器×楽器と表現方法は三つに分かれる。
『音の力』
・自分の奥底に流れる音を理解し、奏でる事によって破壊、創造という力を持つことができる。ただし持てるのは一つの能力のみ。
・音の力同士をぶつけ合う場合、この能力は互いにかき消され合い使用できない。
・この音の理解の切欠は人それぞれ。ふいに気がつくこともあれば、いつの間にか、と様々。
『侵食』
・ユニゾンである者が組み第三者に力をぶつけること。音同士をぶつけ合い起こる現象。物理的な衝撃は無しだが精神的衝撃はありうる。破壊ではなく飲み込み、相手を丸め込み傘下におさめるイメージ。ただし、勝負は一度負けたからと言って次も負けるとは限らない。

『この世界観での暗黙の了解』
・『ユニゾン』は『個人』に仕掛けはしない。
・『ユニゾン』か『フリー』かは、勘のいい人はわかるもの。
・『ユニゾン』は二人目まで存在する。

 長くなるため必要最低限と思われるものしか記載していません。
 他、何かあれば答えます。

●今回の参加者

 fa1276 玖條 響(18歳・♂・竜)
 fa1359 星野・巽(23歳・♂・竜)
 fa1463 姫乃 唯(15歳・♀・小鳥)
 fa1744 雛姫(17歳・♀・小鳥)
 fa2837 明石 丹(26歳・♂・狼)
 fa3887 千音鈴(22歳・♀・犬)
 fa5176 中善寺 浄太郎(18歳・♂・蛇)
 fa5181 雪架(18歳・♂・小鳥)

●リプレイ本文

●始まる朝
 アブソリュト、そしてその四天王らがいる居城の朝は、かすかに流れる歌声で始まる。
 気遣うように小さく、だけれどもそれはしっかりと芯をもって。
 城下が見下ろせるテラスに立つ影は一つ。
 うっすらと、朝日が無常―アニカという通称をもつ四天王の一人、黎(明石 丹(fa2837))を照らす。
 白い、意匠の凝った繻子をまとい、裸足で黎は歌う。
 彼が歌う音は情熱的で伸びやかに、力強く。優しく流すように、歌う。
 その歌声は同じく場内にいるアイス、蛍(千音鈴(fa3887))の元へも響く。
「認めない‥‥私の対は貴方だけ。何故、あの人まで同じ音なの‥‥?」
 前四天王であり蛍の一人目のユニゾンは、もういない。
 形見の竪琴を抱きしめて、蛍は呟き、それをつま弾いて小さく歌う声は、黎のそれと同じもの。
 と、部屋の外をぱたぱたと走っていく足音が聞こえる。
 その足音の主は、シルフィードと呼ばれる四天王、嵐(雛姫(fa1744))。
 空色のドレスの裾を揺らして向かう先は黎のいるテラスだ。
 テラスにつくと、黎が歌い終わるのを待って、声をかける。
「おはようございます、黎様」
「おはよう、嵐」
 柔らかな笑みを浮かべ、黎は答える。
「今日も鳩さんたちが‥‥おはようございます」
 黎の歌声によってきた白鳩たち。嵐にも懐いており髪を軽く引っ張ったりしていく。
「挨拶してるみたいだね、好かれてる」
「そうだと、嬉しいです」
 ばさばさと飛びまわる鳩たちは、二人から餌をもらうと彼らの頭上を一周して飛び立っていく。
 それを、見上げて二人和やかに見送る。
「僕達も朝食とろうか」
「そうですね」
 そして二人はテラスから場内へ。
 共に食堂へいき、四天王のみ座るスペースへと向かう。
「おはようございます、朝食お持ちしました。何かございましたら遠慮なくお言いつけ下さいねっ!」
 二人に朝食をもってきた陽(姫乃 唯(fa1463))はにぱっと笑いながら言う。黎に声をかけられて舞い上がりそうなほど嬉しい幸せ。
 四天王へ強い憧れをもつ陽はジーンと感動をかみしめる。
「憧れの四天王様のお声が聞けるなんて〜!」
 二人から自分が見えなくなったところで小躍りして喜びを表す。
 そして遠くから、羨望のまなざし。
「あたしもいつか皆様みたいに立派な人になりたいですっ」
 キラキラと輝きに溢れるその視線は曇ることない。

●それぞれの時間
 嵐には日課がある。それは城内にある花々の世話。
 最初に向かうのは、アブソリュトのもと。
 コンコンとノックして、返事がある。
 薄暗いその部屋で気配は一つ。
 幾重にも、布が張られて顔は見えないけれどもアブソリュトだと嵐は知っている。
「嵐? いつも世話ありがとう」
「城内花畑化計画のためですから。お世話完了です。あれ、お一人、ですか?」
「うん、あいつは探しものでちょっと不在。それにしても、城内花畑化、いいね。ああ、さっき黎もきたよ、いつもの挨拶」
「黎様が? どこかで追いつくかしら‥‥」
「追いつくよ、行くといい」
「はい、失礼します」
 ぺこっと嵐は頭を一度下げて退室する。
 そのまま黎と同じ道筋を辿りながら、嵐は世話していく。
「あら、水がやってある‥‥」
 ふと触れた鉢。その土は湿っていて既に水をあげた形跡がある。
 こんな事をする人物に嵐は一人しか心当たりがない。
 きっと白様。
 ふわりと嵐は笑みを浮かべ、その相手を思い浮かべた。
 そしてまた花々の世話をしつつ周る。
 と、ふと嵐の目に青い花が映る。この花は、蛍が好きな花だと思いだし、それをもって彼女のもとへ。
「お花、持ってきました」
 ノックせずひょこりと蛍の部屋の中へ。
 冷たい視線を、蛍は嵐に向ける。
「‥‥許可なく入室とは礼儀知らずですね」
「同じ四天王なのに‥‥ここに飾っておきますね」
 そう言って嵐はまた、花の世話に戻る。
 蛍は文句言おうと口を開こうとしたが、それより早く姿はもうない。
 嵐は飾られた花をみて、また思い出す。
 あの人が好きだった花。
「貴方だけ‥‥」
 蛍が認めない、もう一人の半身である黎はその頃、ちょっとばかり、微妙にショックをうけていた。
 自分より年若い、イノセントの静(玖條 響(fa1276))。
 静の日々は、書庫での引きこもり。その途中に遭遇した二人。
 笑顔で黎が挨拶したそのあとで。
「ジジイみてー」
 そしてダッシュで逃げる静。
「‥‥若い皆から見たらそうなのかなあ」
 黎は別段、年老いているわけではないが、年齢の差が二人にはある。
 と、そろそろ昼の歌の時間になるのを思い出して朝と同じくテラスへ。
 昼は、力強く、力強く。
『 輪に足りぬなら繋ぐように 満たされぬなら塞ぐように 知るは最善の日と‥‥ 』
 その歌は、城下にも響く。
 四天王になってから、対の音色が応えないかと始めたことは、日課になっていた。
 その歌は、圧倒する。
 聞く者を。
 その歌は、どんなに扉を閉じても聞こえてくる。
 そして、響く。
「くっそ!!!」
 がしゃんと乱暴に音をたてて周りのものをなぎ倒す。
 白(雪架(fa5181))は聞こえてくる歌に反応して暴れる。
 耳をふさいでも響く歌。
「うぜえうぜえうぜぇ!!!」
 大きな声を出せば、叫びは歌として響き、ばしゃばしゃと容赦なくあたりを濡らす。
 自分自身もコントロールできない感情のせいで、びしょびしょだ。
「まーたヒステリーか? 猫かぶりも大変ですねえ」
 と、部屋の扉が開いて、光さしこむ。そこには白の本性を知る翠(中善寺 浄太郎(fa5176))がニヤニヤと笑いながら立っていた。
「‥‥黙れ煩いウザイお前なんかいらない」
 ギラギラと鋭い視線を向けられても、翠は気にしない。
「シャーシャー威嚇して、まるきり野良猫だな。迫力ねえとことか、まさに」
「うぜえ、お前もうぜえ。四天王もうぜぇけどお前もうぜぇ」
 白は歌い、水の塊を派手に翠へとぶつける。
「うおっ、冷てーなぁ‥‥お、これって水も滴るイイ男?」
 だが翠は大したことないと受け止めてじゃあなと白を一人にする。
 白は、しまる扉を見終わると思いきり壁を蹴りつけ、そして部屋の隅へ。
「‥‥この世から誰もいなくなったら落ち着くのに」
 そうしたら自分が一番、高い場所にいられる。
 白は丸くなり瞳を閉じた。

●シンメトリー
「あぁ‥‥相変わらずですね」
 聞こえてきた黎の歌声に目を細めて、流(星野・巽(fa1359))は立ち上がり、茶の準備を始める。
 その茶の香りに、本を読んでいた静は手を止める。
「ありがとう」
「いいえ。おかわりがいるなら言ってください」
「ん」
 そう言って、流はヴァイオリンを持つ。
 書庫で傷んだ本を見つけては、それを直していくのが習慣となっていた。
 つ、と弾かれる弓から流れ出すのは包み込むような、柔らかな春の光のような音色。
 きらきらと輝いて、本は修復されていく。
「‥‥流が外見若く見えんのは‥‥自分にそれ掛けてるから?」
 静は思ったことを口にした。
「何か言いましたか?」
「べつにー」
 静は視線を窓の外に向けながら茶を飲む。
「こんにちわ」
 と、ひょこりと手に花をもって嵐がやってくる。
「花なんかより食い物がいいー」
「そう言うと思って‥‥ミモザの砂糖漬けです」
「甘モンより辛いモンの方が好き」
 嵐が出したものに文句つけて我儘を言って、静は背を向ける。
「静‥‥すみません、嵐。これは後日お菓子にして返しましょう」
「本当? 楽しみにしてますわ」
 きらきらとした笑顔を浮かべた嵐に、流は笑み返す。
「では私はこれで、お花ちゃんと飾っておきますね」
「ええ」
 花を飾り終わり、嵐は出ていく。
 また二人になった静と流。
 ぼーっと外をみる静を、流はただ見守る。
 突き放す冷たい冬の光と、柔らかな春の光は一対。

●午後の一間
「‥‥いつもこのあたりに‥‥きゃあああ!!」
 中庭をきょろきょろしながら歩いていた嵐は、穴へと落ちる。
「お、今日もやっぱり引っかかった」
「今日もまた、引っかかっちゃった‥‥」
 花に埋もれた嵐はため息をつく。どうしてこうも、翠の掘った落とし穴にはまるのかと。
 翠に笑いながら引き上げられる嵐。
「花だらけになっちゃいました」
「花、好きだよな。何が好き?」
「アネモネ、かしら」
「アネモネか‥‥」
 よし、と翠はオカリナを取り出す。生む音は花を包んでその成長を加速させていく。
 ふわりと咲くアネモネの花。
「綺麗なもんだな。俺としては食べれる花も好きだが」
「食べれる? ‥‥辛いものとかあるかしら?」
 静の言葉を思い出して、真剣に問う。そうだな、と翠は答えを探す。
「ハマダイコンは葉や根が食べれるな。大根の葉と調理章は一緒だ。あとはワサビとか‥‥」
 そこでずっと立ち話し続ける二人。
「‥‥何やってるんだか」
 その様子を廊下の窓から見る蛍。
 歩く彼女に向けられる視線は距離を置かれたものだった。
 と、前からやってくる流と静。
 無言で会釈。
 静も無言で会釈をし返す。
 流は見守るだけで思うことは口にしない。
 それは彼らの問題だろうから。
 蛍と黎は、すれ違っても交わす言葉は皆無。
 前に進むことが、未だない。
「思い出も、大事ですけど‥‥」
「流?」
「なんでもありません」
 にこりと笑い、流は呟きを隠した。
 そんな二人を一瞬だけ、蛍は振り返り見つめる。
 心の中にあるのは羨ましさ。

●夜響く歌
『 おもしよ鎮め眠りを守れ 沙の一つに刻は廻る 』
 握った小石は、その歌が進むにつれてこまやかな砂に。
 それを風にのせて、飛ばす。
 儀式のように。
「変わらないものは、ない‥‥遅い帰りだね」
「今日は、早い方」
 後ろに知った気配を感じて、黎は振り返る。
「見つかった?」
「いや」
「まだ探し始めて少ししかたってないよ」
 黎は言って笑む。
 その笑みには困ったような笑みが返される。
「時間がない」
 言って、見上げる先は片割れのいる場所。黎も、同じ方向を見る。
 アブソリュト、半身、音のいる場所。
「音にとって歌うことは毒になった」
 やっぱりそうだったんだね、と黎は瞳を伏せる。付き合いが長い分、違和感も感じていた。
「歌うのは生きる一部なんだよ、だからやめられない」
「‥‥そうだな、それは俺も同じ」
「命を縮める音に何をしてやれるかな」
「僕らができることは一つだよ」
 歌う事。
「黎が、歌って。俺が歌うと音が余計に歌いたがるから」
 言われて、黎はまた歌い始め、彼は城の中へと入る。
「‥‥何? 怖い顔して‥‥」
「いつも、何してるんですか」
「色々と。お前も、まだここにいるんだ」
「ええ、いますよ、飽きるまで」
 流は笑顔を向ける。
 受け流すかのような笑みが返される。
「何してるか知りませんが、平穏が一番ですよ」
「そうだな‥‥この前、アイスに聞かれた。二人目を受け入れられるかと。否だと言ったら、ちょっと笑っていたよ」
「それで?」
「今はわからない」
 音と一緒に俺も病んでるのかもなと流のそばを通り抜けて、言う。
「アブソリュト」
 呼びかけにはひらりと手を振って、それで終わり。
 音のもとへ、彼は行く。
 音のいる部屋。音は窓から身を乗り出して黎のいるテラスを見ていた。
「音、黎が歌ってる」
「聞こえてる、いいね。好きだよこの声、歌、音の意味。蛍も一緒に歌えばいいのに」
「心の整理はすぐにはつかないよ」
 その言葉に、ふふっと笑い声が返る。
「君が言うならそうだろうね。そして君は二人目もなくすんだよ」
「音」
「私は、次の子たちと歌ってから、歌えなくなりたい。最後にみんなで歌ってから、歌えなくなりたい」
 音は言って、笑う。
「君の音が狂えば、私が歌えなくなっても一緒に音を奏でてくれる人がいるかもしれないね」
「音狂いなんて、今はいない」
「そうだね‥‥」
 黎の歌が、響く。
 夜は優しく、静かに空へ向って響く歌声。
 それに合わせて弱くはじかれる音。
 小さく、花を愛でながら交る歌。
 遠くに聞きながら眠るものも、聞かないようにするものもいる。
 音は音に惹かれて騒ぎ出すように広がる。
「歌いたいよ、一緒に」
「‥‥そうしたら、喉が壊れる」
「もう壊れてる」
「音、先代の戒めがある」
「ああ‥‥どうでもいいよ、そんなもの」
「音」
「どうでもいいよ、そんなこと。黎の歌に合わせたい、みんなの音に合わせたい」
 音は力なく、言う。
「歌いたいのに歌っちゃダメなのはつらいよ」
「俺も歌わないから」
 ふつ、と歌が止まり静寂。
 途端にすべての音が止まる。
「‥‥黎が一番近いかもしれないね」
「近いと言えば近い。でも、違う」
「うん」
「きっとどこかにいる」
「どこかじゃダメ、近くにいなきゃダメ」
「みつけるから、音」
「‥‥ごめん、わがまま言ってる」
 音は笑い、背を向ける。
 二人の間はまだつながっていて同じなのを感じる。
「明日、皆で話をしよう、他愛ない話。だから明日はずっとそばにいること」
「わかったよ、最近いなかったしな‥‥」
「うん、ちょっとお休み。根詰めすぎるとよくないよ、私も、葎も」
 その声は軽く、歌っていないが、歌うように。
 切欠が訪れるまで、もう少し。
 平穏が崩壊し始めるまでもう少し。
 動き出すまで、もう少し。
 夜が、降りてくる。