Fauvisme―Collapseアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
玲梛夜
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
7.9万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
04/19〜04/23
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●本文
感覚を研ぎ澄ませ。
捕らわれず、自由に使われるべきだ。
流れる音に決まりはない。
理性なんていらない。
共に歌う、共に奏でる。それだけでいい。
それだけで、幸せで楽しい。
自分の半身をみつけたら、世界の色が変わっていく。
遠い遠い未来の世界。
世界は音で支配されていた。
その世界の中心は『アブソリュト』というユニゾン。
そしてその下の四天王、親衛隊。
治安を守り、支配する彼らは、人々にとって善でもあり悪でもある。
世界を覆すには、きっかけが必要だった。
●ストーリー
きっかけは小競り合い。
それを収めようと間にはいった親衛隊。
けれどもどうしてかいつの間にか、一般階層の面々と親衛隊がいがみ合う形となる。
そこから軋轢はひしひしと生まれる。
●出演者募集
『Fauvisme』では出演者を募集しています。
今回募集中は『親衛隊階級』、『一般階層の面々』です。
『一般階層の面々』→『親衛隊階級』へのチェンジは可能。なお、実は『親衛隊階級』でした、というのも可能。
※なお今回より、『一般階層の面々』中に四天王クラスの力量持ちが一人いても良いこととなります。
●補足
『アブソリュト』
・世界を支配する二人組通称。
『ユニゾン』
・対となる二人。考えなどは違っていても、体の奥底に流れる音は同じ。
・出会えば自らの持つ力を飛躍させることができる。
・力の飛躍は個人、能力の方向性が違っていても、互いに認識できる範囲内(可視範囲)にいれば極限まで引き上げ。どちらか一方が歌っているという状況などでも引き上げ。
・歌×歌、歌×楽器、楽器×楽器と表現方法は三つに分かれる。
『音の力』
・自分の奥底に流れる音を理解し、奏でる事によって破壊、創造という力を持つことができる。ただし持てるのは一つの能力のみ。
・音の力同士をぶつけ合う場合、この能力は互いにかき消され合い使用できない。
・この音の理解の切欠は人それぞれ。ふいに気がつくこともあれば、いつの間にか、と様々。
『侵食』
・ユニゾンである者が組み第三者に力をぶつけること。音同士をぶつけ合い起こる現象。物理的な衝撃は無しだが精神的衝撃はありうる。破壊ではなく飲み込み、相手を丸め込み傘下におさめるイメージ。ただし、勝負は一度負けたからと言って次も負けるとは限らない。
『この世界観での暗黙の了解』
・『ユニゾン』は『個人』に仕掛けはしない。
・『ユニゾン』か『フリー』かは、勘のいい人はわかるもの。
・『ユニゾン』は二人目まで存在する。
長くなるため必要最低限と思われるものしか記載していません。
他、何かあれば答えます。
●リプレイ本文
●流れもの
「待たせたねキリカ」
みつけた、と手をあげてヤミマル(七式 クロノ(fa1590))はキリカ(長澤 巳緒(fa3280))のもとへと歩いて行く。
「いいの‥‥ヤミマルは寄り道好きだから」
キリカは笑いを浮かべて、ヤミマルと向かい合う。
「ここはいい音が渦巻いているね」
あたりを見回して、ヤミマルが言うと、キリカは頷く。
「‥‥ヤミマル、楽しそう」
「ああ、楽しいよ」
そして二人は、騒ぎを求めて、それが起こりそうな場所へと向かう。
酒場へ。
二人がついた酒場では、悠(悠奈(fa2726))が歌っていた。
歌声は落ち着いた張りのある声で紡がれる。
けれどもそこに乗る気持ちは、歌を楽しむという気持ちがない。
ユニゾンでもある姉が風邪で、薬がいるのにお金はない。
稼ぐために、歌う状況に逆戻り。
そのせいで気持に余裕がないのに、いつもの調子で話しかけてくる、閃(天道ミラー(fa4657))。
「もっと聴かせて! 歌えるだろー。あ、もしかしてもったいぶってたり?」
「‥‥‥‥」
悠は返事をしない。
二人はいつもケンカをするけれども、それはじゃれ合いのよう。
今日はそれから、ちょっとどころかものすごくかけ離れた雰囲気。
「悠、歌えってば」
背中を向ければわざわざ回り込んで正面にくる閃。
そんな閃にむかって悠はきっと視線をきつくする。
「もう! 私は忙しいの! あっちいっててよ!」
その言葉になんだよぉ、と眉根をよせ、頬ふくらませて不機嫌になる閃。
けれどもふと、悠が機嫌が悪い理由に気がつく。
いつも一緒にいるはずの姉がいない。でもその理由は聞かない。
それとこれとは別。閃にとってはほかの人の音をきくということが心配より先行する。
「また前の状態に戻ってるぞー」
「いつもと同じじゃないのよー! 暇人に付き合ってる暇はないの!」
その言葉に閃はむっとする。
「暇じゃない! 俺だって音聴くのに忙しい!」
それは暇なの、と悠はキーっと怒る。
二人はばちばち火花散りそうなほどにらみ合っていた。
そんな二人のやり取りをみていたヤミマルとキリカ。
ヤミマルは、ふっと二人にわざと聞こえるように言葉を投げる。
「やれやれ‥‥もう少しマシな音はでないのかい?」
「何?」
「ぎゃあぎゃあと‥‥それともここは不協和音が売り?」
わざと吹っ掛けるように、笑いを含んだ声。
閃はむっとしてヤミマルを睨みつける。
ケンカはしていても、悠の音は好きな音。
それを馬鹿にされるようなことは、許せない。
だが閃より先に口を開いたのは悠だった。
「文句があるなら出て行けばいいでしょ!」
「そんだけ言うなら外出ろ。イイ音持ってんだろ、聴かせろよ!」
喧嘩していたはずの二人は、口をそろえるかのように。
ヤミマルは、それにも動じない。
「俺の音? こうなりたければ、その身に刻むかい?」
ヤミマルは持っていたエレキギターの音を鳴らす。それと同時にグラスがすっぱりと切れ、中にあった水が零れる。
「上等」
売り言葉に買い言葉。
言葉投げるたびに、ぴりぴりとした空気。
その中でキリカが歌う。彼女が触れたグラスは、ぐにゃりと溶けて。
「 言葉は引き金 放たれるのは魂
言葉は歯車 動くのは世界 」
「やれやれ‥‥俺の言葉、解らないかな? ま、降りかかる火の粉は払うとしよう」
最初に店の扉を開けたのは閃。
自分の楽器を持って外へ。
そして悠が出て、ヤミマルとキリカも続く。
「さぁ、ギグを始めようか」
音と音のぶつかり合いは、何よりも気持ちを高揚させる。
●音と音
最初は様子見で、軽くあてがうように。
音はぶつかって力を消すがその音は残って響く。
「なかなかいい音じゃん!」
「そっちもな」
けれどもまだ足りないと音は強くなり始める。
それは、周りの者にも影響を与え始める。
反れた音は周りの建物に、びしっと亀裂を入れ始める。
騒ぎに人が、集まり始める。
晴(大海 結(fa0074))もそのうちの一人。
流れる音を聞いて感じるが、ただそれだけ。
自分が口説き落としている最中の音のように心は震わない。
ただ近くで見ているだけ。
「ま、そのうち他の人来るだろうし‥‥いっか」
そう言って晴はただ見る。
ヤミマルと閃の音と音はぶつかり打ち消し合う。双方互角、どちらも引くに引けない状況。
ユニゾンとして揃っているキリカとヤミマル。二人が音を完全に合わせれば閃と悠が打ちのめされるのはわかっていることだ。
だからキリカとヤミマルは音を合わせず、ただ隣にいるだけ。
ユニゾンがいない閃と、この場にユニゾンがいない悠。
その音は、二人の音にも負けないほどに意強い。
「 一重決意は忘却に 二重悲しみも記憶の彼方
永久に続くルフランさえも 溶け行く 溶け行く
溶け行くココロ 無限旋律の彼方へ 」
キリカと悠の歌は混ざり合って消えあう。
どちらもただただ残すのは音の響きだけ。
響きあうけれども、何も残らないかのような感覚。
そんな音をきいて、ただ通り過ぎるつもりだった架(千架(fa4263))は立ち止まる。
せっかくの音が消える、と悲しそうな顔。
そこに知っている悠と閃の音が加わるから余計、そう思う。
だがそこへ、音がやんだほんの一瞬にかけられる声。
「何があった。事情は知らないが落ち着かないか。とても冷静に話ができる状態ではないだろう」
「そうです、喧嘩はダメですよって、モモちゃんも言ってます」
きっちりと親衛隊の制服をきて髪を項のあたりでひとまとめにした斎(橘川 円(fa4980))、そしてその後ろからひょこっと現われたのは、聖(月見里 神楽(fa2122))だった。
「どうやら、招かざるのゲストの登場のようだ」
親衛隊がこの場にそのうち来るだろうことは十分に予想できていた。
そしてその遠り。
ヤミマルはまた挑発するように言って、場をあおる。
悠は、親衛隊に対してよい感情をもってないのを露にする。
「‥‥親衛隊が何の用よ!」
「親衛隊? バガテル‥‥コンダクターのタクトでしか歌えない悲しい人達‥‥本当に‥‥つまらない人達‥‥」
「私は‥‥騒ぎが起こっているから止めようと‥‥」
「止める? 今更何しに来たの?」
悠の冷たい言葉は斎に突き刺さるように響く。
おさまりそうもない状況に、晴はため息ひとつついてから、人垣から抜け出て斎たちのそばに立つ。その服装は改造によって原型は少し、パッと見たくらいではわからない。
「騒ぐんならもうちょっと場所選べば? みっともないよ。こんな町の真ん中で」
「あ、晴もいたんだね」
「いたよ、最初から今までみてた。一般階層のくせに生意気なんだよね」
「晴、そういうことは言ってはいけない。誰も、同じだ」
「お小言なんていらないよ」
斎にたしなめられ、晴は面白くないとぷいっとそっぽを向く。
閃は、親衛隊といういままで気にかけていなかった存在に改めて目を向けた。
晴と聖は自分よりも、格段に幼い。
そして彼らの登場で自分の怒りが覚めて、落ち着きを取り戻したのは事実。
親衛隊だからと、敵意を露にする面々とは少し違い、じっとそれぞれに興味津々。
だが止める言葉を無視して、また音が鳴り始める。
「あー、もう喧嘩はダメです! 止めないならこうですよ?」
にこにこと兎ぬいぐるみに話しかけつつ説得していた聖はきいてくれない彼らにむかってにっこりと笑顔で、歌い始める。
聖が歌って生まれる黒い霧、それはふわりとそばにあった木の根元の方へ。そしてそこで霧散する。
「あーあ、間違えちゃったね、聖」
そう言って、晴は笑う。
と、みしっと音。
その黒い霧が根元で散った木が、倒れる。
「きゃあっ!」
「うっわ!」
「危ないー!つぶされるところだった!」
倒れた木からは、鳥が飛びたつ。
それが一つのまた引き金。
影の存在。
親衛隊がやってきて、騒ぎが収まるかと思ったのにひどくなる一方。
音はひどく乱れていく。
架が悲しむ。だから、影が生まれた、目覚めた。
騒ぎを止めようと増える親衛隊、そこで生まれる音のぶつかり合い。
それが広がってひどくなる。
「危ないんだよっ!」
閃は言いながら、音を小さく、けれどもしっかりと出してそれを防ぐ。
傷つけるのではなくて、守るために。
その閃の音に、ひとつの音が重なる。
それはかすかに、ひっそりと。
「?」
閃は乗せられた音が少し違うと思いつつも、それに今気を回すよりもすることがある。
その音によって、知らずのうちに落ちていく体力。
それは親衛隊にむけて。
「あれ? ‥‥なんかしんどいかも‥‥飽きたし、帰るよ」
と、異変を感じ、それによって気分が覚めた晴。
「晴、勝手な行動は‥‥」
「他にもいっぱいいるんだし、大丈夫だよ」
晴は、少しふらつきながらもその場所を離れる。
「あんた達みたいなのが居るから私達が苦労するの!」
「たった一つの『音』に世界を縛る権利は無い、誰もが気付いているハズだ」
悠は叫び、あおるように、そこにいるものすべてに聞こえるようにヤミマルは叫ぶ。
「今、世界を覆う音はモレンド‥‥自由を奪う音‥‥そんなの私もヤミマルも許さない‥‥皆もそうでしょ?」
ヤミマルに呼応するように、キリカも周りへと言葉を向ける。
言葉と、この状況は斎の心を、揺らす。
「‥‥私が見ていた世界は、歪んでいたということなのか?」
「斎‥‥」
「ここを離れよう、聖」
へたりと今にも倒れそうで、寄りかかってくる聖を支えながら斎は言う。
ここでは体も休まらない、そして何よりも時折聞こえてくる音が、体力を奪っていくのがわかる。
自分自身も長い間いれば、危ない。
引くことを伝達し、自分たちもと思った時に。
流れの音が一つ、斎たちの方へと響く。
よける間もなく、衝撃を覚悟した。
けれどもそれは、捻じ曲げら得て消える。
いくつもの音が重なる中で、それはなぜだかわからないけれども、消えたことは確かだった。
「何だ? 今のは‥‥」
「斎も、聞いた? 誰かわからないけどかばってくれたみたい」
斎は頷いて、聖を支えながら離れ始める。
その二人の前に、立つ架。架でなく、影。表情は、やわらかくありでも冷たい。
「次は手加減しないよ」
二人が横を通る瞬間に影は言う。
冷えるよな声色。
「さっきのはお前が‥‥何かしていたのか」
「お兄ちゃん、怖いです。ね、モモちゃん」
その言葉と表情に、聖は本能的に斎の後へと隠れ、自然と手を振り払う。
それに合わせて影は突き飛ばされたふり。
「大丈夫?」
影に走り寄った悠。
手をさしのばしながら、斎たちをにらむ。
「‥‥あいつ等は‥‥下なんてどうだって良いんだ‥‥」
手を差し出し、立ちあがらせながら、悠は唸るように言う。
斎と影は不穏を感じながらも、長いはよくないとその場を、去る。
少しずつその場から戦うための音が引いて行く。
そして後に残るのは、破壊されて傷ついたその場所と、人の気持ち。
「あ、いつのまにかあの二人もいない‥‥」
後片付けをしながら、閃は始まりとなった二人を捜す。
いつの間にか、その姿は場から消えていた。
「‥‥あれ、架いつもとなんか違う?」
閃は言って、架をのぞきこむが架はいつもと変わらなさげ。
何? と不思議そうな表情を浮かべる。
「ん、気のせいか!」
そう納得して、閃は倒れた木を運んだり、と修繕するものたちの輪に溶け込んでいく。
この町の惨状と同じように、二つの間の溝は決定的なものとなる。
「架は変わらない‥‥だから僕が変える。大切なモノを守る為‥‥皆を欺いても」
誰にも聞こえない、小さな声で架は、影は呟き気持ちを固めた。
●ここにはいない
「痛‥‥やっぱり俺もか‥‥まずい、な‥‥‥‥流れる音、流れた音にはいない‥‥」
ここは路地裏。
背中を壁に預けて、溢れる音に耳を傾ける。
手は喉元を、押えるように置かれていた。
でもその音の中に探している音はなかった。
「強ければいいわけじゃない‥‥でも強いに越したことはない‥‥」
と、その路地裏に響く駆けてくる足音。
通り過ぎていくのはヤミマルとキリカ。
ふっとキリカと視線が合う。
こぼれ落とされるのは言葉。
「聞こえる‥‥? 言ったでしょ‥‥面白くなるって」
その言葉、確かにそのとおり。
二人の姿が見えなくなって彼は呟く。
「面白いか‥‥面白いんだろうな。何もしなくても、変るのかもな‥‥」
世界なんて。
「音にも聞こえてるかな‥‥」
静かな中、遠くから聞こえる歌。
誰かが歌っていて、それはどこか懐かしい、聞いたことのあるような旋律が、くすぐるように。
「‥‥この歌、城からか」
よく聞けばわかるじゃないかと、彼は笑ってその城へと帰る。
まだあるべき場所はそこだから。