Fauvisme―Absoluteアジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
玲梛夜
|
芸能 |
3Lv以上
|
獣人 |
1Lv以上
|
難度 |
普通
|
報酬 |
7.9万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
04/25〜04/29
|
●本文
感覚を研ぎ澄ませ。
捕らわれず、自由に使われるべきだ。
流れる音に決まりはない。
理性なんていらない。
共に歌う、共に奏でる。それだけでいい。
それだけで、幸せで楽しい。
自分の半身をみつけたら、世界の色が変わっていく。
遠い遠い未来の世界。
世界は音で支配されていた。
●ストーリー
争いの耐えない日々。
力あるものがいれば、虐げられるものもいる。
それを好まないものがいた。
それを見ているだけを好まないものもいた。
二人は出会って、『絶対』になる。
そうして二人は、『絶対』になったのか、それを知るのは同じ時代に生きたものたちだけ。
●出演者募集
『Fauvisme』では出演者を募集しています。
今回は始まりとなる話なので親衛隊や四天王はありません。
なお、今回より『音狂い』解禁します。
『音狂い』はこの時代は確率3割でおきる現象ですが、本編では確率1割未満の現象です。
●補足
『ユニゾン』
・対となる二人。考えなどは違っていても、体の奥底に流れる音は同じ。
・出会えば自らの持つ力を飛躍させることができる。
・力の飛躍は個人、能力の方向性が違っていても、互いに認識できる範囲内(可視範囲)にいれば極限まで引き上げ。どちらか一方が歌っているという状況などでも引き上げ。
・歌×歌、歌×楽器、楽器×楽器と表現方法は三つに分かれる。
『音の力』
・自分の奥底に流れる音を理解し、奏でる事によって破壊、創造という力を持つことができる。ただし持てるのは一つの能力のみ。
・音の力同士をぶつけ合う場合、この能力は互いにかき消され合い使用できない。
・この音の理解の切欠は人それぞれ。ふいに気がつくこともあれば、いつの間にか、と様々。
『侵食』
・ユニゾンである者が組み第三者に力をぶつけること。音同士をぶつけ合い起こる現象。物理的な衝撃は無しだが精神的衝撃はありうる。破壊ではなく飲み込み、相手を丸め込み傘下におさめるイメージ。ただし、勝負は一度負けたからと言って次も負けるとは限らない。
『この世界観での暗黙の了解』
・『ユニゾン』は『個人』に仕掛けはしない。
・『ユニゾン』か『フリー』かは、勘のいい人はわかるもの。
・『ユニゾン』は二人目まで存在する。
長くなるため必要最低限と思われるものしか記載していません。
他、何かあれば答えます。
『音狂い』
自分の音が狂ったもののこと。
狂いは、気がつかないうちに始まり、気がつけばユニゾン消滅している。
また、他の人と音が合い、三人目、四人目ともなりうることもある。
なぜ音狂いが起こるのかは謎。
●リプレイ本文
●音を探して
いつもの日常は変わらない。
だからこそ変化はほしい。
もし起こる変化があるのなら、それはユニゾンと出会うこと。
なくすこと。
もしくは、音が、狂うこと。
●水の音から始まる
流れる音は心にしみこんでいく。
庭にほとほとふる雨は蛍(宮坂 冴(fa5592))の手にあるヴァイオリンをよけてはじかれていく。
「蛍、おっはよー」
ふと声をかけられて蛍はそちらを向く。
ご近所さんの英(渋谷蓮)だ。今日もいい音だねと笑いかけてくる。
「蛍の音は、いつも水みたいにしみこんでくるねー。優しくて気持ちいい音、うん」
庭の垣根から顔をのぞかせて笑う英に蛍も笑み返す。
「俺の音、そう言ってもらえてうれしい。何となく響く音だから‥‥二人の気持ちが重なってそう聞こえるんだろうね」
「音は正直だよ、何よりもね」
「そうだね」
そう言って二人はしばらく世間話をする。
「あ、そろそろ工房の掃除しなきゃ‥‥」
「おお、引きとめちゃってごめんねー。今日もがんばって!」
中に入っていく蛍を見送り、英はまたどこかへ向かう。
日課の気まぐれ散歩。
と、道でとんと肩が触れる。
「あ、ごめんねー、大丈夫?」
「こ、こっちこそごめんなさいすみませんっ」
「あれ、燐?」
ふっとフードの下の知った顔を覗き込む。
燐(アイリス・エリオット(fa5508))はそれにびくっとして深くフードをかぶりなおして、ささっと去っていってしまう。
「‥‥どうしたんだろ? 前はあんなじゃなかったよなー?」
久しぶりに会った燐は以前の明るさが微塵も感じられなかった。けれどもどうしてと聞こうにも、彼女はどこかへと消えていった。
まぁ、そのうちまた会えるか、という結論。
変わらない町並みを見ながら英は歩いて行く。その風景の中で、きょろきょろとする李鴉(渦深 晨(fa4131))。動くたびに、背負った楽器のケースも揺れて動いている。
「李鴉、何? 探し物?」
「探し物じゃなくて、探し人。修が行方不明」
「え、行方不明なのはむしろ李鴉の方なんじゃ‥‥」
「そんなことないって!」
軽口たたきあっていると、そこに探し人、修(玖條 奏(fa4133))がやってくる。
少し走ってきたのか息は荒く。
「探しました、勝手にどこか行って‥‥」
「あ、ほらやっぱり李鴉の方が探されてる側じゃん」
「間違い、逆だからそれは」
訂正をいれる李鴉だけれども、表情は気まずそう。
それが本当は修の言葉が正しいのだといっている。
「放浪の旅ってどう? 久しぶりに帰ってきて感想は?」
「‥‥どこでも同じ、かな」
「見るものは変わりますけど、俺達は変わらないから」
「なるほど。てか二人はユニゾン同士じゃなかったんだ」
はた、と李鴉と修は顔を見合わせあう。
「いつか現れるといいんですけど」
「それまでは我慢かな、こいつで」
「あはは、仲良くしなよー」
冗談でいっているのはわかっている。だからじゃれあうように、交わされあう言葉は軽い。
「おはようっ! 今日も元気そうねっ!」
と、その横を通り過ぎていくのは椛(千音鈴(fa3887))だった。元気にどこかへと向かっていく彼女。その勢いにそのまま視線は引かれるように向く。
「元気だなー」
「きっと今日もあそこでしょうね」
「あそこ?」
修は頷いて、続ける。
椛の向う先は雅(星野 宇海(fa0379))の家だと。
●二人の距離
「みーやーびー! ‥‥今日も反応なし? また明日もくるからね」
反応がない扉に向かっていい、椛はその場を離れる。
そして、雅はそのさっていく背中をこっそりと見ていた。
「どうして、あんなに普通なの、元気なの、椛‥‥」
お互いに、ユニゾンでなくなったのに変わらない椛。雅は不思議に、思う。
音狂いとなった自分。失ったユニゾン。
それは雅にとって、大きすぎる。
けれども椛にとってはそれは、どうやら違うらしい。
椛は変わらない生活を送り、変わらない態度をとる。
「蛍、フレット減ってるの見てー」
椛は蛍の店へやってきて、楽器を見てもらっている間、自分で茶を入れてくつろぐ。
狭いが、大きな窓からみえる風景は、町を見渡せるかのように広がっていた。
「今日もまた門前払いだったの」
「ふーん」
「でも、気にせず明日もRETRAY! 雅ならわかってくれるはず!」
「そうだといいね」
椛の話に相槌を打ちながらてきぱきと蛍は手を進めていく。
そしてものの少しの間に楽器はもとの、一番いい状態へと戻る。
「はい、これで大丈夫」
「ありがとう。今日はもう一回いってこよう、雅のところ」
そういって楽器を受け取って椛は蛍の工房を出る。
それと入れ替わり立ち替わり。
「メンテしてほしいんだけど」
「あ、遥」
遥(忍(fa4769))は自分の手のひらサイズのトランペットを蛍へと渡す。
蛍はそれを受取って、チェックを開始。
「音狂いってどう思う?」
「音狂い? いつか自分にも起こるかもしれないよね。でも、その時にならないとどうするかわからないし、人それぞれだよ。見つける答えの形は人それぞれ」
「‥‥友達に音狂いの子がいてね、音狂いが切欠で色んな物を怖がっていて‥俺とは話してくれるけど他の人とはまだ無理で、元気になって欲しいんだよね」
「遥はその友達のこと大事に思ってるんだね。音と気持ちはまるで同じ物じゃない、似てるけどどこか違う‥‥同じなのかもしれないけど今の俺には分からない‥‥真剣に誰かのために悩んでる遥がちょっとうらやましい」
「うらやましい? これも人それぞれかな‥‥音が狂うより、心が狂う方が俺は嫌だなって思うんだけど‥‥」
「それは、うん。わかるよ。はいメンテおしまい」
終わったよ、と蛍は楽器を遥の手へと戻す。
「今度、その人と一緒にここへおいでよ」
「うん、連れてくるよ。それじゃ」
受け取った楽器を手に、遥はその友達、燐の元へと向かう。
●あるがままに
ぼーっと空を見上げる姿。
何を見ているのか気になって英は朝来(氷咲 華唯(fa0142))の隣に腰を下ろす。
見ていると嬉しそうに笑ったり、感動したり、泣いたりと朝来は忙しい。
「何か楽しいことある?」
「空とか‥‥綺麗だから‥‥」
「空、空かぁ」
一緒に見上げてみるけれども変わりのない青空。
「‥‥朝来には何か感じるものがあるんだね」
「うん、いっぱいある」
と、朝来は唐突に歌いだす。その歌声は朝来の性格を表すように素直でまっすぐな音。
静かなその曲は彼の周りにふわりおほのかに光をともす。
好きなように歌えれば、それで満足。
朝来は歌うのをやめて、嬉しそうに笑う。
「それが今の、あるがまま?」
「そう、あるがままだ」
そう答えて、朝来は歩きだす。
「あれ、どっかいくの?」
「気の向くままにね」
その背中を見送り英は笑う。
「朝来の音もいいなぁ‥‥」
と、後からだかだかと足音。なぜだか反射的に隠れてしまう。
みていると、燐がきょろきょろとあたりを見ながらやってきて。
きょろきょろしている分、足もとも危なくこけかけてみたりもする。
「燐!」
「!」
と、彼女を呼ぶ声。
そこには会えたと嬉しそうな表情を浮かべる遥。
「遥さん、こんにちは」
「うん、こんにちは」
「‥‥」
「‥‥い、今から見晴らしのいいところで楽器含んだけど‥‥一緒にいこう」
そう言って、答えが返る前に遥は燐の手を取って、歩き出す。
二人が向かうのは、小高い場所。
「誰もいない‥‥」
「ここなら」
「ここなら、平気」
燐は小さく笑顔を浮かべて笑う。
遥はトランペットをもって、高らかに陽気なファンファーレ。そして燐も、と目くばせ。
燐は静かに、穏やかに歌いだす。
やがて遥の音は燐に重なる。
ユニゾンでないけれども心を重ねて、思いを伝えるように。
音が終わって、二人は顔を合わせる。
にこっと遥は笑顔を浮かべて、燐もふわりと笑顔を向ける。
「楽しかった!」
「うん‥‥私‥‥まだ、歌える。多分‥‥ううん、もう大丈夫‥‥」
音に乗せて伝わってきた遥の気持ち。
こんなに気持のいい音、音狂いなんて気にしなくていいんだと。
燐にそれは伝わって、燐自身も一歩前にすすむ。
音狂いになったけれども歌えないワケじゃない。世界は変わらないし、音狂いになった事実も変わらない。けれども自分が変わることは、できる。
「そろそろ帰るか!」
遥は燐に手をだして、また手をつなごうと示す。
つないだ手を揺らしつつ、二人は、もと来た道を戻っていく。
遥は、自分の音が狂えばもしかしたら、燐のユニゾンになれるのかなと、ひっそり心に思いながら。
●ひっかかり
「お久しぶりっ! 酒場にいないから心配しちゃって来ちゃったよ」
「李鴉、修‥‥お久しぶりね」
「お久しぶりです、どうしたんですか? 元気ないですよ」
雅は少し、家の扉を開けて出てくる。
そして、椛とユニゾンでなくなったことを告げた。
「ふーん‥‥ね、ユニゾンってそんなに重要? そんなに必要?」
「え‥‥? 大事な半身よ? ほしくないの?」
「そうですねぇ‥‥興味はありますよ。色々と面白そうですし」
修は不思議そうな表情の雅に答えて、微笑を浮かべる。
「わっかんないなー。音がなくなって縁がきれるならそれだけの関係だったってコトでしょ? そんなのが重要なの?」
「貴方も出会えば解るわ‥‥私はもう居ないけれど」
椛を思って、小さく弱く、笑む。
「音より大事なものって一杯溢れてると思うけど? ま、いいや。雅さんの元気な顔見れたし‥‥俺たちまた行くね。バイバイ」
李鴉と修は連れ立って、その場を後に。
「音が一緒って大事? 修も欲しい?」
「一番大切にしたいのは『音』よりも、その人との『相性』ですね。相方が悪人だったりすれば、もし音が合って頼まれたとしてもユニゾンなんてこちらから願い下げです」
「俺は‥‥気が合うヤツなら一度は会って一緒に演ってみたいな」
「楽しく、歌えるかな」
「きっと! な、一曲やんない?明るくて‥‥弾むようなメロディで」
「一緒にとは‥‥また、突然ですね‥‥いいですよ」
李鴉はヴィオラを取り出す。
人の往来があっても、気にはしない。
「 ひとつふたつ紡がれる 魅惑の音の道標
果てなく遠き地の先で その片翼は目を覚ます
同じ空の下でなら いつか奇跡は起こるだろう
両者出会いしその時に 運命の翼よ羽ばたいて 」
その音は、雅の元にも響く。
音に耳を傾けていたその時。
「雅ー!」
姿を見つけて走りこんでくる椛。
久しぶりの出会いに椛は雅に、抱きつく。
「ここで会えたがっ! 雅、行くわよ」
そう言って、椛はそのまま雅を二人が最初に出会った酒場に連れ出す。
「何考えてるの?! こんなところに連れてきて」
「え、二人が最初にあった場所だし‥‥特に深い意味はないわよ」
あっけらかんと笑う椛。
そうだ、こういう人だったと、雅は思い起こす。
「椛の音は狂ってるのに心は何一つ変わらないのね‥‥」
「あ、音狂い? そんなの、もしかしたら一周回って元の音に戻る可能性も断言出来ないだろ? 名言伝授!! 『二度ある事は三度ある』‥‥Nice昔の人!」
「‥‥そうね」
「それに音が同じ人増えたら、仲間増えて楽しくない?」
椛の能天気さを目にして、雅は自分は何を考えていたんだろうと思う。
と、ふと椛は真面目な顔。
「最初に出逢った時、何考えて歌ってた? 今と違うの?」
「今と‥‥」
雅は、思い出す。
過去、出会った時にどうであったかを。
あの時も絶望的だった、だが諦めてはいなかった。
「椛はなぜ私と一緒にいたの?」
「そんなの考えた事ない。強いて言えば‥‥楽しいから?」
きょとんとした表情で答えられ、雅はふと笑顔を浮かべる。
「久しぶりに‥‥どう? ‥‥奇跡を信じて」
「もちろん!」
「 空に届け新しい詩よ
魂の音色を響かせながら
今宵、全てが生まれかわる‥‥ 」
ユニゾンではないけれどもあう音は心地よい。
もしかしたら、と希望を持って、雅は歌う。
そして椛は、この音の楽しさをかみしめるように演奏する。
「雅、変わらないんだよ、友達なのは」
歌う彼女に向って、椛は小さく呟いた。
●出会わない音
「皆それぞれ音もってるけど‥‥僕とはかみ合わない、か‥‥」
流れて、聞こえてくる音に耳を傾けながら英は呟く。
こんなに音があふれていても、自分と重なる音は流れてこない。
「ま、そのうち出会えるか!」
前向きに、この事態を捉える彼。
彼と、そのユニゾンが出会いアブソリュトと呼ばれるようになるのは、まだもう少し先のこと。
●おまけの裏側
「台本で未定だった渋谷さんのお相手は結局いないままでしたのね」
「うん、だったね」
撮影終わってまったり中。
「理由きいてきたんだけどねー、なんか、誰かとユニゾるよりこっちのほうがバランスよさそうだったらしいよ、うん。何僕マテの状況じゃないこれ?」
「‥‥マテ」
ぴたっと動きを止める蓮。
「‥‥アイリス嬢のおにーたまが乗り移った‥‥!」
「シブ! そのままマテ! どれくらいもつか試してあげるわ!」
「そんな試練いらない! いらないけどなんとなく動けない!」
「渋谷さん、動いたらこのあと焼肉で、おごりで」
「晨、また‥‥」
「えー!」
「焼肉ー! 動けー!(ドーン」
「ぎゃあ! ちょっと大きい人! ちょ、幼稚園児かー!」
「焼肉いこうか」
「あそこ! あそこがいいわ! あの高級焼き肉店!」
「楽しみです、焼肉焼肉」
「決定ー!!??」
焼肉にGO!