Fauvisme―Escapeアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 玲梛夜
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 易しい
報酬 0.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/02〜05/06

●本文

 感覚を研ぎ澄ませ。
 捕らわれず、自由に使われるべきだ。
 流れる音に決まりはない。
 理性なんていらない。
 共に歌う、共に奏でる。それだけでいい。
 それだけで、幸せで楽しい。
 自分の半身をみつけたら、世界の色が変わっていく。

 遠い遠い未来の世界。
 世界は音で支配されていた。
 その世界の中心は『アブソリュト』というユニゾン。
 そしてその下の四天王、親衛隊。
 治安を守り、支配する彼らは、人々にとって善でもあり悪でもある。
 世界を覆すには、きっかけが必要だった。

●ストーリー
 そう、と音は言う。
「反乱だって」
「らしいな」
「どうするの、アブソリュトは」
「‥‥なるがまま、かな」
「そうだね」
 四天王からうけた報告。それをさらっと流す。
「黎は、そろそろ昼の歌かな?」
「ん、多分」
「嵐は‥‥ああ、庭にいる」
 一人ずつ、きっとあそこにいるな、と音は思い出す。
 きっと静は図書館で、蛍は部屋だろう。
「‥‥音、何かよくないこと、考えてるだろ」
「え、別に」
 そう言って、浮かべた笑顔は凶悪。
「ちょっと脱走しようかなって思ってただけ」
「は?」
「飽きた、ちょっと遊んでくる!」
 そう言って、音は葎の横通り過ぎ、部屋から出ていく。
「お、音!!!」
 音は、自分をアブソリュトと知る者も、知らないものも巻き込んで、城の中走り回る。
 そして――
 
●出演者募集
『Fauvisme』では出演者を募集しています。
 今回募集中は『四天王』『親衛隊階級』です。
『一般階層の面々』→『親衛隊階級』へのチェンジは可能。『親衛隊階級』→『四天王』へのチェンジは役者同士の相互了解を持って可能。欠員での補充、下克上などのような形で行われる。
『一般階層の面々』→『四天王』へのクラスアップは現在ありません。

『四天王』補足
 四天王は必ずしも『ユニゾン』であるということはありません。その一人だけで普通レベルの『ユニゾン』とはれるくらいの力があります。
 四天王ABCDがいるとしてAとBはユニゾン同士、Cは一人身、Dはユニゾン持ちだが相手は親衛隊、一般階層という状況は有です。身分違い、敵同士などもOK。
 なお、四天王には通称のようなものがあります。ユニゾンとしてもつ通称と、個人として持つ通称です。
 現在四天王状況
『アニカ、黎』『シルフィード、嵐』『イノセント、静』『アイス、蛍』

●補足
『アブソリュト』
・世界を支配する二人組通称。
 音と葎の二人。その能力は謎。その姿を知る者はごく僅か。
『ユニゾン』
・対となる二人。考えなどは違っていても、体の奥底に流れる音は同じ。
・出会えば自らの持つ力を飛躍させることができる。
・力の飛躍は個人、能力の方向性が違っていても、互いに認識できる範囲内(可視範囲)にいれば極限まで引き上げ。どちらか一方が歌っているという状況などでも引き上げ。
・歌×歌、歌×楽器、楽器×楽器と表現方法は三つに分かれる。
『音の力』
・自分の奥底に流れる音を理解し、奏でる事によって破壊、創造という力を持つことができる。ただし持てるのは一つの能力のみ。
・音の力同士をぶつけ合う場合、この能力は互いにかき消され合い使用できない。
・この音の理解の切欠は人それぞれ。ふいに気がつくこともあれば、いつの間にか、と様々。
『侵食』
・ユニゾンである者が組み第三者に力をぶつけること。音同士をぶつけ合い起こる現象。物理的な衝撃は無しだが精神的衝撃はありうる。破壊ではなく飲み込み、相手を丸め込み傘下におさめるイメージ。ただし、勝負は一度負けたからと言って次も負けるとは限らない。

『この世界観での暗黙の了解』
・『ユニゾン』は『個人』に仕掛けはしない。
・『ユニゾン』か『フリー』かは、勘のいい人はわかるもの。
・『ユニゾン』は二人目まで存在する。

 長くなるため必要最低限と思われるものしか記載していません。
 他、何かあれば答えます。

●アブソリュト、音について
性別不詳、実際は貧乳の女。
人前にでてくることがないのでアブソリュト、とわかるのは四天王とそのユニゾン、及び葎のみ。
何をしでかすかよくわからないタイプ。
自分がアブソリュトであることは言いません。
最終目標は、城内脱出。

●今回の参加者

 fa0074 大海 結(14歳・♂・兎)
 fa1514 嶺雅(20歳・♂・蝙蝠)
 fa1744 雛姫(17歳・♀・小鳥)
 fa2837 明石 丹(26歳・♂・狼)
 fa2993 冬織(22歳・♀・狼)
 fa4131 渦深 晨(17歳・♂・兎)
 fa4133 玖條 奏(17歳・♂・兎)
 fa4980 橘川 円(27歳・♀・鴉)

●リプレイ本文

●風のごとく
「黎、おはよう!」
「おはよう、なんだかご機嫌だね」
「うん、朝から‥‥きた!」
 挨拶もそこそこに黎(明石 丹(fa2837))は楽しそうに走っていく音を笑顔でのんびり見送る。
 そのすぐ後に。
「音どっちいった!?」
「あっち」
「みつけたら捕まえておいてくれ、脱走とか不穏なこと言っているから」
 そう言い残して葎は走っていく。
「‥‥脱走かぁ‥‥」
 呟いて、黎は来た道を戻り始める。アブソリュトへの挨拶は終わったから、他の面々の元に。
 その頃音は親衛隊が主に使うフロアを走っていた。
「おねーさんはなんで走ってるワケ?」
 と、今まで見たことのない人と興味を持った晴(大海 結(fa0074))がたたたっと走り寄って、そのまま並走。
「私はね、悪い相方から逃げているんだよ。ちょっと離れてみるのもいいかなと思って脱走中」
「脱走‥‥面白そうだから協力してあげる」
「本当? ありがとう。とりあえず迷子だから外まで案内してくれると嬉しいんだけどな」
「了解、こっちこっち」
 強力な晴という味方を得て音は笑顔を浮かべる。
「頼りにしてるよ」
「任せてよ」
 二人はきょろきょろあたりの様子をうかがいつつ、場内を進んでいく。
 それはあやしさ満載。
 二人がいる場所から少し離れた場所ではその頃、これから巡回に出かける和(冬織(fa2993))といってらっしゃいと手をふる零(嶺雅(fa1514))がいた。
「頑張ってー! 応援してるからネー!」
「‥‥いってきますねー、零君」
 少し進んでから思い出したように和は振り返って零にほにゃらとした笑顔を向けて手を振る。
「今日も良いお天気です‥‥」
 和が向かうのは晴と音のいるのとは逆方向。
 二人と先に出会ったのは、零の方だった。
 勢いよく角を曲がったところをどーんとぶつかる。
「わ、ごめん!」
「や、大丈夫デス。んー? お兄サン、そんなに急いでどーしたの」
「おにー‥‥ふふ、そうだね、このまっ平らな体じゃあそうみえるよね、おにーさん、おおにー‥‥」
「違うよ、おねーさんだよ」
「えっ!? それはゴメンナサイ!」
「うん、まぁ慣れてるからいいんだけど、いいんだけどね」
 と言いつつも結構深く思っているらしい。零はごめんねと苦笑いを浮かべる。
「お困りならお手伝いするし! ね! 俺が助けてあげる! 道案内ならバッチリだヨー‥‥きっと!!」
「あんた、大丈夫なの?」
 晴が念を押すように問うとどーんと安心して、と零は胸を張って答える。
「人が多い方が楽しいし、いざというときは壁になってね、期待してる」
「そうだね、大きいし‥‥その時はよろしく」
「任せ‥‥壁!?」
 そんな状況が来ないのを零は祈るのだった。
 祈るのだったのだが。
「‥‥なんか、人の少ない薄暗い、変な道にばっかり進んでない?」
「僕が案内してればもう城の外のはずだったんだけど‥‥」
「あれー? おかしいなー」
 首をひねる零なのだが、迷子状態。
「じゃあ適当に走りまわってみる? よーい、どん!」
「あ、フライング!」
 城内マラソン、本格的に開始。

●侵入者
「‥‥」
「和ちゃん見回り御苦労さまー」
「‥‥あ、零君も御苦労さまですー‥‥」
 たかたかたかっと巡回中の和の横を走り抜けていく面々。
 和はやんわりのんびり言葉を返す。
 だがその数秒後。
「見知らぬ人‥‥侵入者? あのー、どなたですかー?」
 和は追いかけながら、首をかしげて問う。
「あれ、誰?」
「和ちゃん! 俺のユニゾンだよー」
「‥‥ちょっと待ってくださーい、追いかけますよー」
「いやいやもう追いかけてるし」
 待てといわれても走るはなんとなくやめられない状況。
 こうなってくると和としては不審者の疑いが強くなってくる。
「零君、お仕事してくださいー、お隣にいるんですからー」
「お仕事って何ー?」
 後みつつきゃらきゃら笑いながら走る。
「あ、人っ!! ‥‥良かったら道を‥‥ってあれー?」
 走り抜けていく面々を見つけて、ちょうど迷子中の那津(渦深 晨(fa4131))は助かった、と声をかけるのだが素通り。
 だが、和が追いかけているのをみて、追いかけられているのは悪い人、という構図がぽわんと浮かぶ。
「手伝わなくちゃ!!」
 そう思って、和の後を追いかけて追いつく。
「状況はよく分からないけど、あの人捕まえるのに俺も協力しまーす!!」
「助っ人ありがとうございますー」
 那津はヴィオラを取り出して、走りつつ頑張って音を奏でる。音は基本に忠実にしっかりと流れだす。
「! なんかぺとぺとする感じ」
「零、彼悪者だよ! 応戦!」
「和ちゃんの隣に悪者!?」
 音の言葉に乗せられて、零は歌を紡ぐ。

「 絡まる絡まる鎖達
  逃げることはかなわない
  もがけば更に食い込むだけ 」

 陽だまりのような暖かな音から生まれた光の輪は那津の手元に飛んでゆく。
 けれどもそれは、和の生み出す氷塊によって落とされる。
「零君何してるんですかー」
 同じようなやり取りを何度も繰り返し。
「親衛隊ってば面白いね。でも追いかけっこも飽きてきたかな‥‥」
 音は言って目を細める。
「次の角曲がるよ」
 彼女たちが曲がろうとする角の先。
 そこでは今。笑(玖條 奏(fa4133))がため息をついていた。
「まったく‥‥どこへ行ってしまったんでしょうか‥‥」
 笑が探しているのはきっと今頃迷子中の那津。
 少し目を離した間にどこかに消えてしまっていた。
 何度目かの溜息をついた時、騒ぎながら角を曲がっていく一段。
「こんにちわ」
「あ、こんにちわ」
 挨拶をされて何となく返す。
 そして。
「あ、笑いたー! どこ行ってたんだよー! 笑も早く早く! 行くよ!」
「那津! ‥‥よかった、出会え‥‥どこに、ですか? 出会ってすぐどこに連れていこうと‥‥出会えたのでいいか‥‥」
 那津と出会った笑は和たちと一緒に追いかけ始める。
「あの人たちを止めればいいんですか?」
「そうみたい、俺の音じゃ距離があるし走ってるからあんまりいい音でないんだ」
「私の音では交わされるか落とされるかなんですー」
「私が壁を作ります、走っているし距離があるからそんなに強いものは作れませんが一瞬の足止めにはなるでしょう」
 笑は言って音を紡ぐ。
 その音は音律、音階を一定をたもつどことなく型にはまったような硬い音。
 音たちの前の空気が振動してその行き先をふさぐ。
「! 右、右!」
「右っていうと、中庭だよ、逃げ場所なくなるけど‥‥面白いからいいか」
「中庭!? あ、いるだろうなぁ」
 この時間はあの人物がいるはず、と音は思う。
 なだれ込むように、中庭へ。
 
●運命の瞬間
 どたばたと走りまわっている一陣がいるころ、先日の件を報告しに来ていた斎(橘川 円(fa4980))はふと歌声にひかれて、自然に足がとある方向へと向かっていた。
 なぜだかわからないけれどもそちらに行かなければいけないと、感じる。
 聞こえてくる歌声は少しずつ、よく聞こえるようになっていく。
 澄んでいるはずなのに、どこか物哀しい音に惹かれるまま、斎は城の中庭へと導かれる。
 そこで歌っていたのは嵐(雛姫(fa1744))。
 ふと、彼女は人の気配を感じて振り向く。
 嵐と斎の視線が、あう。
 その瞬間に、奇妙な納得感。昔から知っているような、そんな感覚。
 この人だ、と理解する。
「あなたが‥‥私の、半身?」
 驚きと喜び。
 二つの感情が混ざった言葉は風にのって斎のもとに届く。
 斎は、静かに頷く。
 見つけたのは、ユニゾン。
 自分の片割れ、半身。
 そうであるけれども、斎にとっては仕え守るべき存在でもあることを直感で感じていた。
 嵐は斎の元に駆け寄る。
 そのまま、泣きそうな笑顔を浮かべてふわりと抱きつく。
「会いたかった‥‥やっと見つけた‥‥ずっと探して‥‥!」
「貴方が、私のユニゾン‥‥なのですね」
 その問いに、嵐は頷き答える。
「やっと‥‥やっと満たされる‥‥あなたの名前は‥‥」
「私は斎だ」
「斎‥‥綺麗な名前。私は嵐」
「嵐‥‥」
 名前を交わすだけで分かり合えるような感覚。
 それぞれ聞きたいこと、話したいことはたくさんある。何から、どうしようと考えは浮かんでは消えの連続。
 そんな場面に。
「逃げないでくださいー」
「逃げるよ、力ぶつけたら被害拡大しちゃうから除けるのが一番だしね!」
「和ちゃんご乱心!? 落ち着いてー!!」
 がやがやマラソン続行中の面々が走りこんでくる。
 もちろんムードは台無しで。

「 空に漂う命の源 手を取りて凍れる鎖となれ 」

 和の音から生み出される氷塊を身軽に避けながら、音は嵐を見つけそちらへ向かう。そして斎の姿に一度瞬き。
「みつけた?」
「はい」
「そっか、おめでとう! おめでとうついでに助けてね」
「‥‥零君乱心ってなんですかー!」
 何テンポか遅れて、瞬間的に標的チェンジする和。零はあわてて、それから逃げる。
「ああ、お花畑がっ。これは何事なんですか?」
「城内マラソン延長戦かな」
 のんきに話していると、上から降る氷塊。
 素早く音を奏でて、斎はそれをふるう。
「!」
 いつもよりも早く、強く形作られる光の剣。輝きも今までとは段違いに。
 そして、何よりもその破壊力が上がっていることは震ってみて一番自分が感じる。
 一閃で砕ける氷塊がきらきらと降り注ぐ。
「ああ‥‥いい音だね。いい人と出会えて本当におめでとうだ」
「音様はのんきにせず隠れてください、お花の中に!」
 今の状況がどういうことなのか理解が完全にできないが、音は嵐にとってアブソリュトである前に一人の大切な友人。
 歌を歌い、癒し守る風を生み出す。

「 虹を目指し翔る風よ 友を護る力を貸して 」

 高く澄んだ歌声は響きわたる。
「賑やかだと思ったら‥‥ここにいたね」
 ふと、一瞬静まった音の中に響く声。
「黎まで出てきちゃった‥‥」
「四天王と知り合い‥‥?」
「昔からのお友達」
「迷っちゃったんだね、珍しく出歩いたら僕も迷子になりそうだったよ。道すがらみてきたけど、片付け大変そうだね、これ」
「‥‥四天王とお友達‥‥?」
 追いかけていた側の和は考える。
「それなら、不審者じゃなですねー、お騒がせいたしました。零君、いきますよー」
「待って和チャーン! おねーさんさようならー!」
「僕も、楽しかったよ」
 マラソンも終わり、楽しんだと晴は言って中庭を去る。
 笑は、黎や嵐に最大限礼を尽くして、那津を引きずっていく。
 残ったのは音、黎と嵐と斎。
「良かったね嵐、本当に良かった」
 と、黎は嵐を見て笑顔を浮かべる。何も聞かずに、わかったらしい。
「ありがとうございます」
「嵐を宜しくね」
「はい」
 大切な友人である嵐、ずっと昔に自分も憧れた出会いを黎は眩しそうに瞳を細めて、笑顔で祝う。
「音様、何故この場に?」
「え、うん。葎のプリン食べたら怒っちゃって。あ、見つかったらまずいから、行くよ」
「あはは、なら僕がフォローしてあげるね」
「嵐たちの邪魔はしたくないしね。運命なんだ」
 じゃあね、と音は黎を連れて中庭を出る。
「‥‥心と体、両方に傷を‥‥」
 その背を見送りながら嵐は呟く。
 先ほどの癒し、音はそれを確実に受けていた。
「嵐! 音こなかったか!? 脱走するって言ってる、見つけたら捕まえておいてくれ」
「脱走!?」
 突然現れた葎は、それだけ言い残してその場を去る。
「‥‥音様、嘘を‥‥」
「きっと考えがあっての事だろう」
 しゅんとする嵐に斎は声をかける。
 城下での一般階層から投げられるイメージとこの場にいる人たちのイメージは違う。
「そうですね‥‥どこかへ行かれるなら私も連れて行ってくださればいいのに」
「その時は、私も一緒に」
 出会ったばかりのユニゾンは、共にいることを望みあう。

●城の外で
「あー出られた! ‥‥お目付け?」
「ううん、きっと音がしてることは必要なことなんだとおもって」
「葎は大事なところで甘っちょろいから‥‥私がするんだよ」
 そのまま無事に城からでてきた音。なんとなく流されるようにでてきた黎。
「黎は帰っていいんだよ」
「ここで一人だけ戻ったら葎にも何か言われそうだよ」
「そうだね‥‥靴屋にいかないとね」
 常に裸足で歩きまわっている黎に、最初に必要なものと音は笑う。
「葎がね、出かける時はお財布持つようにっていつもいうから反射的に握ってきたよ。お金も入ってる」
 ごそごそと胸元から出てきたのはひも付きがまぐち財布。
「あ、屋台のあれおいしそう‥‥」
「音、ダメ」
 財布の口をゆるめそうになる音の手を、黎は抑える。
「‥‥そうだね、うん。やることしてから、楽しめばいい」
 静止を受け止めて、音は言う。
 音が見る先のどこかに、音が求めるものがいるはず。
 黎は、何も言わずに臨むままに、ついて行く。
 これから起こる一波乱、それを拡げていくことを承知で、音は行動を起こす。
 
●満ち欠け
「嵐、見つかってよかったな」
「ありがとうございます。でも‥‥」
「喜ぶことは喜べばいい。斎、だったか、嵐をよろしく」
「はい」
 黎を除く四天王とそのユニゾンが集まる。
 事は大きく、隠しておける事ではない。
「音が城下にでた。きっと何かするはずだ。歌う前に、見つけて連れ戻してくれ。黎が一緒だろうから‥‥早まらなければいいんだけどな」
 葎は窓の外に目を向ける。
 どこかに、いるのはわかっている。
「反乱の件もある。アブソリュトとしては簡単には動けない。頼りにしている」
 言葉は静かに深々と。
「反乱は‥‥どうして起こるのでしょう‥‥ひとつひとつは綺麗なのに噛み合わないのはなぜ‥‥」
 嵐は瞳を伏せながら思う。
 迷い揺れる皆の明日に、希望の風が吹きますようにと。