6月の花嫁ドラマSPアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 玲梛夜
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/29〜07/03

●本文

「お仕事です」
 三人でこもったとある会議室。資料をぱらぱらめくりながら雑談を交えつつ和やかに。今春に入社したばかりの新米が仕事の概要を説明する。
「今度できる結婚式場さんから、プロモーション用にミニドラマを作ってくれと依頼がきました。テレビでするものじゃないけれども、内容好きにしていいらしいです」
「結婚式場か‥‥というとアレだよな‥‥」
「ああ、アレか。浪漫だよな‥‥」
「浪漫‥‥」
「やりたいな」
「やるか」
「あの、よく話がわかりません」
 意思疎通をとれないのは新米のみ。
 古参の二人は、通じ合っている。
「結婚式といえばアレだろ、アレ」
「だからそれがわからないんですけど‥‥」
「「花嫁強奪」」
 古参二人組みの声は綺麗に重なる。
 新米がそれやるんですか、と硬直するものの、古参二人組みは止まらない。
 そのままストーリーの組み立てへと、流れ込んでいった。

 ミニドラマあらすじ。
 両親の強い希望でとある御曹司と結婚することになった花嫁。けれども花嫁には相思相愛の恋人がいた。
 そしてその相思相愛の恋人は結婚式当日、友人たちに協力して貰いこの花嫁を強奪しようと目論見る。
 すなわち駆け落ち。
 二人は友人たちに応援され、そして幸せに向かって走り出す。

 役者募集
 花嫁、花嫁の恋人、御曹司、友人たち、その他
 それぞれのもつ性格、個性は役者それぞれに一任。
 その他、は付け足したい登場人物(花嫁両親、結婚式場支配人、御曹司に想いを寄せる女性など)を役者で提示すればやって良し。

 補足
 ミニドラマのあらすじについても、登場人物をの立ち位置などを踏まえて無理のない範囲での変更は可能。
 ただし、花嫁が強奪されその恋人と幸せになるという方向性は変更しない。
 衣装についてはそれぞれの希望を最大限叶えるよう努力するが、一般的範疇からは外れないように。
 撮影クルーはこちらでほぼ用意ですが、関わりたいと思う方がいるなら、役者以外の方、たとえば小道具、メイク、演出等の協力者も歓迎します。

●今回の参加者

 fa0269 霧島 愛理(18歳・♀・一角獣)
 fa1431 大曽根カノン(22歳・♀・一角獣)
 fa1660 ヒカル・マーブル(20歳・♀・牛)
 fa2766 劉 葵(27歳・♂・獅子)
 fa2767 藍川・紗弓(25歳・♀・狐)
 fa2807 天城 静真(23歳・♂・一角獣)
 fa3516 春雨サラダ(19歳・♀・兎)
 fa3822 小峯吉淑(18歳・♂・豚)

●リプレイ本文

●撮影開始のその前に
「ほうほう、なるほどなるほど‥‥確かに」
「そうだな、結婚式場のプロモだし幸せ二倍‥‥採用」
 霧島 愛理(fa0269)の発案、全員一致でその方向がいいとなったストーリー変更はあっさりとスタッフに受け入れられた。
 むしろ好評なようで。
「それじゃあこの方向でストーリー組み立てる。台詞なんかはもうアドリブだ、その方が楽しいだろう」
「マジですか」
「本気だ」
 と、いうことで。
 ストーリーの流れのみ抑えた台本が渡され、撮影となる。

●花嫁とその恋人の事情
「え?」
 電話を取るとそこから響いてきたのは聞きなれた恋人の声。葵(劉 葵(fa2766))は間の抜けた声を、上げた。
 その声に対して電話の相手、恋人である紗弓(藍川・紗弓(fa2767))はもう一度同じ言葉を言う。
「だから、結婚を祝ってくれるでしょう?」
「え‥‥その、ま」
 待て、という言葉を言い終わる前に、そっけなくそれじゃ、と紗弓は電話を切る。
 ぷつんと虚しく受話器からは発信音。
 葵は嘘だろ、と呟きがしゃんと受話器を置く。
 紗弓とは勿論結婚も考えていた、そしてある額の結婚資金が貯まるまではとプロポーズも控えている真っ最中。目標額まであと少しというこの時に。
 葵は衝撃に言葉も出ず、今までから一転、失意の底へ。
 そして葵をそんな失意の底へと落とした紗弓もまた、事情があった。
 電話を切り、しばらくそのまま。
「はっきりしないだもの‥‥」
 なかなか踏ん切りがつかずプロポーズしてこない葵。
 このまま行ってもなにも変わらないんじゃないか、という不安。そんな時に持ち上がった話についつい、突発的に『受けます!』と言ってしまったのが始まり。
 馬鹿な事をしてしまったと思いつつも、生来の猫かぶりの上手さのせいかとんとん拍子に話は進んでしまった。
「‥‥これで、いいのかな‥‥いいんだよね」
 自己嫌悪に落ち込みつつも、ここまで話が進んでしまったらどうしようもないという諦めと安堵。
 猫かぶりを見抜いてくれるだろうと、葵に期待しているのだけれども。
 そして、紗弓の結婚話を耳にした吉淑(小峯吉淑(fa3822))は心配になり幼馴染である葵の元を訪れる。
 葵は、尋ねてきた幼馴染にどんな心境なのかと愚痴を吐く。
 吉淑も葵の心境を想い心を痛めるのだけれども、それだけに尚更かける言葉は見つからず。
 何度も尋ねる、そんな日が続いていたある日。吉淑は差し入れを置いて帰るところだった。
「‥‥ご飯買ってきたから‥‥ここに置いとくよ」
「‥‥なぁ、吉淑‥‥幾ら自分より釣り合いが取れる相手だから、彼女が決めた事だからと納得しようとしてもできないんだ‥‥だから、俺は紗弓を強奪する!」
「え? 強奪ってまさか‥‥花嫁を強奪!?」
「式に乗込むんだ!」
 ぐっと握りこぶし、強く強く葵は決意して、立ち上がった。
 それを吉淑は落ち着いて、と諌める。
「‥‥冗談じゃない、そんな事して誰も幸せになんか‥‥」
 と、葵を説得しようとするものの、想いを決めた葵を止められるはず無い。
 葵はそのまま、家を飛び出して行った。

●花嫁の婿とその周りの事情
「結婚かぁ」
 しみじみと、静真(天城 静真(fa2807))は呟いた。その言葉を隣で聞いていた妹、サラダ(春雨サラダ(fa3516))は静真を見る。
「本当は、兄様の思う通りにして良いのですよ」
「いや、大丈夫だよ」
 にこりと笑うものの本心からではなく、サラダは静真を残して部屋をでる。
 ぱたりと閉じた扉に背を預けて一息。
「‥‥兄様のために出来ること‥‥」
 ぽつりとサラダは呟く。そして何か思い立ったかのように歩き出すのだった。
 そんな妹の行動を知らず、静真は一人になると溜息を一つ。
「僕の思う通りか‥‥そんな、今更‥‥」
 実は思う人がいるのだけれども。
 そしてその、静真の想い人もまた悩みを抱えていた。
「結婚‥‥あの人が」
 想い人が結婚する、と聞き愛理は一瞬目の前が真っ暗になる。
 以前行われたパーティーで見かけて一目惚れした相手を想い続けていたのにこの現実。
 こんなのは嫌、という想いがこみ上げてくる。
「‥‥結婚式なんて、壊して‥‥あ、駄目、そんなの‥‥でも」
 そう呟きつつ、愛理は結婚式が行われるという結婚式場へと知らず向かっていた。
 結婚式場。
 見上げる式場は白で統一され、いかにもこれから新しい出発を迎える二人に相応しくある。
「あら‥‥」
 愛理はふと、自分と同じように結婚式場を見るものをみつけ不思議に思う。
 今日ここで結婚式がある様子はないし、それにその人物の様子はどこか浮かない表情で。
 どうしたのだろうと思い、声をかけてみる。
「どうしたした? 気分でも悪いんですか?」
「あ、いえ‥‥今度ここで結婚式あるんだなぁって思ってきただけで‥‥」
 はぁ、と溜息をついてその人物は言った。
「ありますね。ぶち壊しますけど‥‥あ、言っちゃった。忘れてください」
 にこりと笑顔で言うのだけれども、忘れられるわけなく。
 その人物、吉淑は驚いた表情をする。
「え、どういうことですか‥‥? 壊すなんて‥‥」
「‥‥どうやらワケ有り、みたいね。実は‥‥」
 かいつまんで愛理は吉淑へと話す。
 と、その途中で愛理の携帯電話が鳴る。
「ちょとごめんなさい。もしもし‥‥はい、ええ‥‥ありがとう、それじゃあまた連絡するわ」
 ぷつり、と携帯電話を切ると愛理は吉淑を真っ直ぐ見る。
「あなたも結婚は反対みたいだから‥‥」
「そうだけど‥‥」
「心が固まらないみたいね。いいわ、決心がついたら連絡して」
 手帳に一ページに自分の電話番号をさらっと書いて破り、愛理は差し出す。
 それを吉淑は受け取り、そして一晩考え込み彼女へ連絡を取ることとなる。

●根回し事情
「資金なんかの面はあたしがバックアップするから、好きにやっちゃいなさい」
「ありがとうございます」
 任せなさい、と胸を張るのは現在結婚して家をでている静真の姉カノン(大曽根カノン(fa1431))。
 妹のサラダから話を聞きカノンは自分の楽しみもかねて裏で動いている計画に参加することとした。
 建前は、弟の幸せのために。
「本当に、こんな良い子がいるのにあいつは‥‥」
「姉様の言う通りです」
「しっかりこっちを見てもらいます。それと‥‥どうやら花嫁さんの方も似たような‥‥」
 愛理は二人に花嫁の事情も話す。
 そして一層、この計画を成功させなければと思う。
「もうすぐそちらの事情を良く知ってる方がきます。色々と聞きましょうね」
 愛理が微笑んで言う。
 そして彼女の言う良く知ってる方というのは吉淑のことで。
 その本人はこの時、葵と会っていた。
「本当にやるからな、やるぞ。指輪も‥‥買ってきたんだ」
「月並みだけど‥‥やった後悔よりも、やらなかった後悔のほうが大きくて後を引くと思うんだ‥‥葵」
「だな、何もしないなんてできない」
「‥‥幸せになって欲しい」
 不安もあるだろうに明るい葵に吉淑は背中を押すように言葉をかける。
「ありがとうな、吉淑」
 にっと笑顔を、葵は吉淑に向けた。

●結婚式当日
 そしてとうとう結婚式の日。
 ひかる(ヒカル・マーブル(fa1660))はなにやらごそごそと活動している面々を和やかに眺めた。
「あらあら‥‥何かあるのかしら。お目出度い日ですものね〜」
 黒スーツを着こんでまぁ何かあるのはいつものこと、とのんびりと自分の仕事をこなす。
「そろそろ花嫁さんを呼んでこなくちゃ駄目ですね〜」
 花嫁の控え室へひかるは向かう。ノックして時間ですよ、と告げる。
「いよいよ‥‥だわ‥‥」
 緊張しつつ、紗弓は花婿である静真の元へと向かう。
 自分の父のエスコートでヴァージンロードをゆっくりと、歩む。
 恋人の葵とも終わりなのだろう、と紗弓は思う。
 そして静真のところへあと一歩、のその時だった。
「その結婚、待った!」
 勢い良くドアをあけて登場したのはシャツにジーンズ、この場に似つかわしくない格好の葵だった。
 その突然の登場に視線が集まるのにも関わらず、葵は紗弓の元へ歩む。
「遅くな‥‥」
 葵が何か言い切る前に、教会内にはぱしっと小さな音が響く。
 紗弓が葵の頬をぱしっと叩いたのだ。
「迎えに来る位なら、もっと早くに来なさいよ!」
「ごめん、だから‥‥これを」
 怒るっているようなのだけれども、本当は照れて嬉しそうな表情の紗弓に葵はすっと指輪を差し出す。
「結婚してくれ」
「‥‥その言葉を、待ってたの!」
 周りの状況構わず、幸せな二人。
 ざわつく周囲と、唖然とする静真。何がどうなっているのかわからない。
「‥‥ということは、どうすれば‥‥」
 おろおろとする静真の隣にはいつの間にかカノンが。
 ぽんぽん、と肩を叩き、彼女はとある方向に指先を向ける。
「あんたの目は節穴だったのかしら?」
「え‥‥?」
 その指の先には愛理が。
 思わぬ人物の登場に、静真は一度目を瞬く。
「ほら! あんたにはあんた相応の女の子がいるっていうことよ」
 どん、と背中を押されて静真は愛理の前へと、進み出る。
 愛理は、緊張した面持ちだった。
「わッ、私、あにゃた、あなたの事が! すっ、すっ‥‥好きでしたぁっ!!」
「え、あ‥‥じ、実は僕も‥‥」
 照れつつ恥らいつつ、けれどもしっかりとそれぞれ想いを伝え合う。
 けれども幸せカップル二組に好意的な視線を送るのは少数。
「さて、あと一仕事だね」
「はい!」
「あらあら、お手伝いしますわ〜」
「あんまり迷惑かけないようにしよう」
 困惑する親戚関係をわけのわからぬ状態のまま教会の外へと締め出し。
 この計画を知っていた二組の花嫁花婿の友人達はそれに協力を惜しまない。
「はい、では式を二組一緒にいたしましょう〜」
 ひかるののんびりとした声が響く。
 場は和み、そして本当に幸せな結婚式が、再開された。
 本当に良かったと理解してくれるものたちに四人は祝われて歩んでいく。
「やっぱり‥‥姫抱っこだよな」
「え? きゃあ!」
「あ、僕も」
 ふと、葵は紗弓を抱え上げる。それをみた静真もそれに倣って。
 仲睦まじく、二組の新婚は教会の扉を開けその幸せを感じるのだった。

●プロモドラマ上映後
 できあがったプロモーションビデオをスタッフと出演者で見終わる。
 花嫁強奪発案者の二人はにこにこと笑顔だった。
「いやぁ、いいね、花嫁強奪、それに便乗告白! 新しい流れが今ここに! 霧島君、思いついてくれてありがとうな」
「そのままだとちょっと不吉なのでは‥‥と思ったので。良い方向に向いて良かったです」
 にこりと、愛理は笑みを浮かべこたえる。そんな彼女の肩を叩いてスタッフはお疲れと声をかける。
 それは他の出演者に対しても同じように。
「だなあ、いやー本当に良いものにしてくれてご苦労さん」
「お疲れ様でした〜、スーツ‥‥胸元がきつかったですけど、無事に終ってよかったです〜」
 ヒカルはにこにこ笑顔でスタッフと撮影中の思い出を話したり労いあう。
「あの後の話、作るとしたら花嫁、花嫁同士にも友情みたいのが芽生えたりすんのかね」
「それもいいな‥‥ところで天城君、君のキャッチコピーなんだが」
「お?」
「先方に伝えたらいいな、ということで採用みたいだ」
 静真はそうか、と頷く。
「幸せ2倍のハッピーウェディング、使って貰えて嬉しいもんだ」
「私もそんなところでいつか‥‥ひらひらのドレス、憧れるなぁ」
 プロモの余韻に浸りながらサラダはうっとりと。
 そんな様子をカノンは見て笑う。
「できるといいね」
「はい!」
「その時は僕も呼んでほしいです。でもその前に‥‥」
 吉淑も話のる。だけれども視線はつつーと移動。
 その視線につられるように全員の視線が二人に、向く。
「え、何だ、何だその視線は!?」
「二人とも結婚しちゃえよー」
 ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべ、スタッフの一人が言う。
 その言葉にうんうん、と周囲は頷いて。
 葵と紗弓はこの後このネタで、弄られることになる。