ハーレム計画を打壊せ!アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 葵桜
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1.2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 11/03〜11/07

●本文

●謎の男
 某アイドルプロダクションの通路を毎日多くのプロダクション関係者及び所属アイドル達が行き来を繰り返している。
 関係者以外立ち入りを禁じている為、玄関先の警備は固いものの室内はさほど厳しくはない。


「まぁ! なんて可愛いのかしら〜」
 ある男がこれから育つであろう2人の無名のアイドルに目をつける。
 金髪の美しい長髪をなびかせて男はスキップをしながら2人の女性へと近づき、綺麗な顔からは想像できないような話口調で話しかけてきた。
「すばらしいわ! 貴方たち可愛いわね!!」
「ええ、あ‥どうもありがとうございます」
 圧倒されつつ困った様子の女性2人に男は薔薇の花束を差し出した。
「私は美薔薇・真人(みしょうび・まこと)よ、バラと呼んでちょうだい」
「わぁ。綺麗です〜」
 性格はともかく綺麗な顔を近づけられた2人は真っ赤になり、頭がぼーとする。2人は嬉しそうにで受け取った真っ赤な薔薇の匂いに浸る。

「あれっ‥」
 女の一人が違和感に気が付いた時には薔薇の匂いを嗅いでいた仲は床に倒れこみ、続くように女の意識も遠のいていた。

●ハーレム計画
「ちょっと、其処の君。やっぱり‥お肌つるつる」
「えっ? あの‥」
 薔薇はまたしても美しい者を求めてプロダクションの通路で張っていた。
 今度のターゲットは新人アイドルの少年だ。男女見境なく美しい者が好きらしい。
 突然近づいたかと思うと少年のすべすべの頬を触り幸せそうだ。そしていつもの手口で薔薇の花束を差し出す。
「いい匂い‥‥」
「でしょう〜。私のお屋敷で栽培しているものなのよ」
 不意をつかれた少年は少し警戒心を解く。だが、少し経つと目の前がクラクラとして少年は不振に思い逃げようとするが思うように足が動かない。
「睡眠薬?」
「お休みなさい、坊や」
 感づいた時には時既に遅し。少年は薔薇の腕の中でぐっすりと眠っていた。

「これでまた、私のハーレム計画が一歩前進ね‥」


 突然姿を消したアイドル達の異変にマネージャーが気付かないはずがない。警察沙汰にしたくはないプロダクションは薔薇の情報を独自に集め会議を開いていた。
「彼は以前、他のプロダクションのメーク担当をしていたみたいよ‥」
 集めた情報をメモ帳に纏め上げて、会議を取り仕切っている代表者が報告をしていた。
 メーク担当時代にも彼は自分の事を薔薇と名乗っていた。メークの技術は誰もが絶賛する程の腕前だ。
 しかし、美しい者好きの彼はメークする人間を選ぶ事はプロダクション内では有名で、メークを断った際には度々アイドル達から反感をかっていた。その上、アイドルへのセクハラ問題が重なり首になっていた。

 所属していたプロダクションに話を聞くと美薔薇・真人とはメーク時代に自分でつけた芸名で、薔薇男のイメージと一致していた為、誰しもが薔薇と呼んでいたようだ。
 本名を相当毛嫌いしているのだが、所属プロダクションを辞めたのは随分前なので本名は分からないと返答された。
 薔薇の最大の目的は美しい子達を屋敷に集めてハーレムを作る事らしい。
 薔薇は可愛いものや美しいモノ好きで自分に周りに常に美しいモノを置いときたいという欲望が強いらしい。
 しかし屋敷の場所は未だに特定されていない。

「とにかく、騒ぎになる前に探し出さなくてはいけないわ‥」
 マネージャーの一人がざわめく会議室で冷静に一言発すると周りも頷いた。
 拉致されたアイドル達にとっては今が一番大切な時期だ、もし警察が介入してスキャンダルになれば多大なダメージになる。一刻も早く薔薇を見つけ出し、事件を解決しなくては。

「そうそう、薔薇男は警察には突き出さず、ここに連れてきなさい」
「何故ですか?」
「‥‥理由は貴方が知らなくてもいい事です」
 先ほどから一人だけ冷静沈着な女マネージャーに質問すると、ワンテンポ遅れて答えを返された。

●今回の参加者

 fa0201 藤川 静十郎(20歳・♂・一角獣)
 fa0441 篠田裕貴(29歳・♂・竜)
 fa0566 藍染 右京(22歳・♀・一角獣)
 fa0768 鹿堂 威(18歳・♂・鴉)
 fa0918 霞 燐(25歳・♀・竜)
 fa1081 三条院真尋(31歳・♂・パンダ)
 fa1449 尾鷲由香(23歳・♀・鷹)
 fa1814 アイリーン(18歳・♀・ハムスター)

●リプレイ本文

●ファーストコンタクト
「素敵な着物♪ 和を感じるわ〜」
 霞燐(fa0918)の提案により、声をかけやすい人目につかない裏口の駐車場をうろうろしていた着物姿の藤川静十郎(fa0201)が突然誰かに呼び止められる。振り返ってみると其処には美しい男の姿があった。
「あら‥やだ、3人共可愛いわ‥」
 着物姿に惹かれていた男は連れの2人の姿を見て目を輝かせて更に興奮する。
「あら、近づいてみると貴方、長身なのね‥だけど‥」
「何でしょうか?」
 静十郎は近づけられた顔を拒否する事もなく、冷静な表情で薔薇を見遣る。
「綺麗な事に違いはないから、私は好きよ〜」
 にこやかに微笑む姿に静十郎も軽く微笑んで返事を返す。

「所であなたは誰です?」
 ふんわりとした柔らかい笑みを浮かべて藍染右京(fa0566)は尋ねる。
「私はバラよ。よろしくね‥あら、貴方男の子?」
 じっ、とまじかに顔を近づけた薔薇はさりげなく薔薇の花束を右京に差し出す。
「可愛い子には私からの贈り物よ」
「可愛いものや綺麗なものは私も好きですよ‥」
 真っ赤な薔薇の花束を受け取った右京の姿に薔薇のテンションは最高潮に達す。
「お隣の笑顔の可愛いお嬢さんにもプレゼントしちゃうわ」
「わーい、ありがとう‥」
 機嫌をよくした薔薇は右京の隣にいた明るくニコニコと微笑むアイリーン(fa1814)にも薔薇の花束を差し出すと快くアイリーンは受け取る。
「着物の姿の貴方にもあげちゃう」
「貴方の前では全てが霞み、薔薇の花束なんて目に入りません‥」
 差し出された花束を3人がすんなり受け取ってしまうと怪しまれると勘ぐった静十郎はさり気なく花束を避ける。
 一変して薔薇の表情が切なげに変わる。薔薇の表情から怪しまれていない事を確信する。だが、静十郎の演技に騙されている姿に人恋うる演技をする役者魂に火がつく。
「薔薇の花束をいただくよりも貴方のお傍に置いて下さい」

「あら、貴方‥ますます気に入ったわ。なら、薔薇を受け取ってくれれば貴方は私のものよ」
 さらに心をよくした薔薇が、もう一度薔薇の花束を差し出してみると静十郎は微笑して受け取る。
「どう? よい香りでしょ?」
「ええ‥素敵な香りですわ‥」
 アイリーンは薔薇の花束を顔に近づけて甘い香りに浸っていると、一瞬体がふんわりとする。気がついた時には2人が床に倒れこんでいた。アイリーンもすぐに意識を失い、眠りの世界へと誘われていった。


●追跡
「この3人の顔だ‥覚えたか?」
 鹿堂威(fa0768)は数匹のカラス達に薔薇に接触する3人の写真を見せる。カラス達は首を縦に振ると美しい漆黒の羽を広げて空へと舞い上がり、仲間を集める。

「彼の名前が調査で分かったわ。之が彼の写真よ」
 加えて、前に写真を受け取った霞燐は裏口の駐車場に狙いをつけて張り込みをしている最中だと三条院真尋(fa1081)は話す。

 薔薇の元プロダクションへと潜り込み、薔薇にメイクしてもらったアイドルや彼を知るものに話を聞いて事前調査を行なっていた真尋の表情は楽しそうだ。
 興味津津に返事を待つ威と篠田裕貴(fa0441)と尾鷲由香(fa1449)に耳を近づけるように手招きして小声で薔薇の本名を打ち明ける。
「うわぁ‥それって微妙だ‥」
 由香は苦笑を浮かべ、薔薇の美しいもの好きの性格ならばと納得した表情を見せる。


 ピルルルルッ。
 突然、裕貴の電話が鳴り、一度きりで切れる。
「おっ! 静十郎さんから連絡かな‥‥」
 連絡が途切れぬようにと充電をフルにした裕貴の携帯は電波も好調だ。ワン切りされた通話記録を見ると静十郎からのワン切りだと発覚する。
 そして空を見上げると少し先に威の放ったカラスの群れが空を渦巻いて移動をし始めていた。待機していた者達は急いでカラス達を目印に現場へと急行した。



「こっちだ‥」
 小声で手招きして呼び止めたのは先にバイクで薔薇の後を追いかけていた燐だ。人気のない場所に現れると予測していた燐の予想が的中して、先に囮の者達を追いかける事が出来た。
「薔薇の甘い香りは漂って来るんだけど、薔薇庭園がいったい何処なのか‥」
 周囲の異変にすぐに気がついたのは由香だった。周辺は高級住宅街が並び、塀や柵で囲まれて、中を覗き見る事ができない家が数多く並ぶ。
「ああ、それなんだが‥調べはついている」
 同じ異変に気がついた燐は皆が来る合間を利用して偵察を行なっていた為、屋敷の場所は既に特定されていた。
 後は予定されている決行時間の夜まで待つ事となった。


●手がかり
 空もあっという間に暗くなり、辺りは静けさを保っている。進入するのには絶好のチャンスが訪れていた。
「人助けの不法侵入ならば、神様は許してくださる‥よな?」
 裕貴は苦笑しながら、ロザリオを軽く握り締めて薔薇の家の塀を、普段から空手をしている身軽さも役立って軽々と登り、中へと進入する。
 中へ入ると部屋の明かりは点いていて、締め切られたカーテンの隙間から真尋は中の様子を窺い見る。
「よく見え‥きゃっ!」
 中を覗こうとしていると突然、窓が開き真尋は勢いよく倒れこむ。潜入した他の者達に緊張が走る。
「貴方、なにをしているの?」
「あの‥貴方のメイクがお上手だと伺って、拝見したかったの。私も化粧には興味があって‥‥」
 なんとか真尋は苦しい言い訳をする。だが、機嫌悪そうに真尋を見下ろしていた薔薇の表情が嬉しそうな表情へと変わる。
「まぁ‥貴方、綺麗物好きね‥美の為に努力する事ってすばらしいわ」
 予想外に食らいついてきた薔薇の態度を利用して真尋は皆に軽い合図を送りながら薔薇を引きつける。
 その間に他の者達は薔薇に気付かれぬように慎重に屋敷へと急いで乗り込んだ。

 屋敷へと入ると美しい美術品や骨董品、写真などが並べられていて家は隅々まで掃除が行き届いている。
「さて‥どの部屋から回るか?」
 頭を使うことが苦手な由香は皆の判断に任せようと返答を待つ。
「電気が灯ってたいのは恐らくリビングだろうな‥‥」
 ある程度、家の構造についても調べがついていた燐は位置から推測する。
 誘拐された者達を助ける手がかりは今の所はリビングしかないようだ。見つからないように一行は急ぎ足で向かう事にした。


●結末
「はて? ここは何処かしら?」
「あら? 目が覚めたの?」
 右京はぼんやりとしながら声の主を見上げると、そこには薔薇の姿だけではなく、化粧の施された静十郎、アイリーンと真尋の3人の姿があった。
 何故だか、囮になった2人と真尋はソファーに座って優雅にお茶を飲んで談話を楽しんでいる。状況把握の出来ない右京は、まだ虚ろな頭で会話を聞き取る。
「ですから、貴方のメイクは間違っているわ! メイクをするのは人に自信を与えるものよ!」
「そんな事ないわ、美しくしてあげているのよ。素敵なことじゃない!!」
 メイクを学ぶ身として、化粧をするという本来の意味を取り違えている事を教え込むために熱く語ってしまうアイリーンと薔薇の対立しあう会話が聞こえる。意外な会話に右京は一気に目が覚める。

「そろそろ、時間も遅いですし、私達はこれで‥‥」
 静十郎が時計に目を遣り、時間を見ると既に午後11時を回っていた。
 だが、帰ると口にようとした瞬間、突如に薔薇の表情が一変して不機嫌な表情になる。
「駄目よ、返さないわ! 貴方達はずっとここに居るのよ!!」
 近くに居たアイリーンの腕を力いっぱいに掴み、薔薇は子供のように駄々をこねる。
「痛っ‥痛いわ! 離してよ!」
 見た目とは反比例した男の腕力に、アイリーンは腕を振り解くことが出来ない。

「いいかげんにしろっ!」
 隠れて様子を窺っていた裕貴が突然ドアを蹴飛ばして、一直線に薔薇の元へと向かい平手で一発薔薇を殴りつけた。
 薔薇は殴られたショックで言葉を失う。いそいそと鏡を覗き込むと、ほんのりと頬っぺが赤くなっていた。
「残念だけど、誘拐したアイドル達は既に屋敷にはいないよ」
 捕らえられたアイドル達を先に見つけだした由香は既に屋敷から安全な場所へと避難させていた。
 薔薇はショックの余りにその場に気が抜けたように座り込み、動けない。
 威が不意に薔薇の元へと近づき、二度とこんな事がない様にと交渉する為に腰を下ろす。
「捕まえた! 貴方も美しいわね‥」
「離してくれないか?」
 腕を掴まれているのに何故か冷静な威に薔薇は警戒心を感じながらも腕を離さない。
「一言言っておくが、俺が大声をだしたらカラス達が庭の薔薇をついば‥」
 言葉の意味を察した薔薇は瞬間的に威の腕を放し、真っ青な顔で威の表情を伺う。
「大人しく掴まってくれるかしら?」
 真尋の一言に薔薇は首を縦に何度も振る。薔薇庭園を荒らされる心配があまりにも大きいようだ。

「今度はお客として薔薇庭園を楽しませてくださいね」
「ついでに、私を自由に出来るのは唯一人なんですよ‥」
 優しく微笑みかける右京の表情と静十郎の表情に、普段ならば綺麗な者達へ嬉しいほどの快感を覚えるはずなのだが、今の薔薇には恐怖でしかなかった。


 その後の薔薇はというと、無事にマネージャーに引き渡された後にマネージャーの下で償いも兼ねて、せっせとメイクの仕事をしているようだ。
 所で薔薇の本名についてたが、それは知っている者達だけの秘密にしておくとしましょう。